事前調査ログの音声概要
感想
まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!
サマリー
岩手県宮古市を拠点とするNPO法人「宮古ベース」は、地方特有の体験格差や人間関係の固定化といった構造的課題に対し、独自の取り組みを展開しています。彼らは、単なる地方支援に留まらず、街全体をハッキングするような仕掛けで、子どもたちが失敗を恐れずに挑戦できる「ミクロな社会シミュレーション」を構築。ミヤッコハウスでの自己肯定感の回復、仮想都市ミヤコタウンでの税金や選挙を通じた自己効力感の育成、外部との交流による寛容なカルチャーの醸成など、多角的なアプローチで地域社会の息苦しさを打破しています。これらの活動は、かつての参加者が地域を動かす側に回るという美しい循環を生み出し、最終的には地域の大人の意識をもアップデートする壮大な学びのコミュニティを形成しています。
宮古ベースの活動と地方の課題
あの,もしあなたが,大学も多様な仕事の選択肢もない,そんな小さな街で育ったとしたら,どんな未来を思い描くでしょうか?
そうですね,なかなかパッとは想像しにくいかもしれませんね。
ええ。今回私たちが深掘りしていくのは,岩手県宮古市を拠点とするNPO法人,宮古ベースの活動なんですけど,
これただの地方のNPO活動紹介じゃないんですよ。一見すると小さな街の取り組みに見えるこれらの資料には,実は地域社会の生き苦しさを破壊して,街全体をハッキングするようなとんでもない仕掛けが隠されていたんです。
ええ。まさにその通りです。今回集めた彼らの公式発表とか,事業報告,それにノオトの活動記録なんかを読み解いていくとですね,
彼らがやっていることって単なる地方支援の枠を完全に超えているんですよね?
そうなんですよ。今回の私たちのミッションは,地方特有の体験格差とか人間関係の固定化っていう分厚い壁をどう打ち破るかというところなんです。
彼らがコミュニティそのものをどう再生させているのか,その本質的なメカニズムを解明していきます。
これを聞いているあなたの職場やコミュニティづくりにも,今日から応用できるヒントがたくさん詰まってますからね。
はい,とても楽しみですね。
さて,これを紐解いていきましょうか。
設立の背景と早川代表の原体験
まずこの,都ベースという組織がどうやって生まれたのか,ここを少し掘り下げる必要がありますね。
なるほど,起源を探るわけですね。
そうです。なぜ彼らが今あえて目に見えにくい構造的な問題に挑んでいるのか,その理由がくっきりと浮かび上がってくるんですよ。
資料によると,現在の代表の方,早川さんですね,彼はもともと宮古市の出身でもなければ,何の縁もなかったそうですね。
ええ,全くのよそ者だったんです。大学を卒業した後,彼はオーストラリアのバナナファームで働いたり,
バナナファーム?
そうなんですよ.あとは記者カメラマンとして活動したりと,ワーキングホリデーで世界を飛び回っていたんですね。
アクティブですね。
そこで彼が得た最大の収穫が,自分の人生は自分で切り開いていけるんだという強烈な手触り感だったそうなんです。
ああ,なるほど。
そしてその感覚を胸に日本へ帰国したわずか10日後にですね,東日本大震災が発生したんです。
帰国してすぐ10日後ですか?それはなんというか,そこからどうやって宮古市とつながったんでしょうか?
えっと,彼はいてもたってもいられずすぐにボランティアとして宮古市に入ったんです。
そこで,自らも被災して家や学校が大変な状況なのに,自分たちも地元の復興に関わりたいと熱望する高校生たちと出会うんですよ。
すごい熱量ですね,高校生たちの。
ええ,普通大人は子供は守られるべき存在だと蓋をしてしまいがちですよね。
確かに危ないからって止めちゃいそうです。
でも彼はオーストラリアデータ自分で切り開くという感覚を彼らにも持たせたいと考えて,高校生サミットという対話の場を立ち上げたんです。
ああ,それが資料にあったあのマップ作りにつながるんですね。高校生たちが自ら足で稼いで地元のお店を紹介するアウェコナビですよね。
はい,そうです。なんと3000部も発行して大成功を収めたんです。
3000部,すごい成功体験ですね。ボランティアと地元の若者の熱量が生んだ素晴らしい結果です。
震災復興後の構造的課題
でもあの震災の復興っていうのはある意味でわかりやすい共通の目標じゃないですか。
ええ,おっしゃる通りです。
時間が経つにつれてその熱量を維持するのって難しくなる気がするんですが。
いや,非常に鋭いご指摘です。まさにそこがターニングポイントだったんですよ。
やっぱりそうですか。
ええ,活動を続ける中で街のインフラは徐々に回復していきますよね。
震災復興という開発的な動機が落ち着いてきた時,彼らは宮古市が抱えるより根深く慢性的な構造課題に直面することになるんです。
慢性的な課題ですか。
はい,それが体験格差とロールモデルの欠如という問題でした。
体験格差,具体的にはどういうことなんでしょうか。
あの,宮古市には四年生大学がないんです。
なので,高校を卒業すると多くの若者が進学や就職で市街へ出てしまいます。
地方都市ではよくあることですよね。
ええ,日常の中で多様な大人と出会う機会が極端に少なくて,新しい習い事とか珍しい体験をしようと思ったら,わざわざ遠くの大きな街まで行かないと体験できない環境なんですよ。
なるほど,それって例えるなら,自分の人生のメニュー表にカレー,ラーメン,うどんの3つの料理しか載っていないような状態ですよね。
ああ,まさにそんな感じです。いくらその3つが美味しくて素晴らしい料理でも,世界には何千種類も料理があることを知らなければ,そもそも新しいものを注文してみようとか,そういう挑戦の発想自体が生まれないじゃないですか。
本当にその例えの通りです。メニューの存在すら知らない状態では,自分の未来を自由に思い描き選択することは不可能なんですよね。
「機会と関係性」のデザイン
でも,ここでちょっと素朴な疑問なんですが,
はい,何でしょう。
大学とか大きなエンタピー施設がない地方の街で,どうやってそのメニュー表を増やすことができるんですか?いきなり立派なテーマパークを建てるわけにもいかないですよね。
ええ,箱物を作るのは無理ですよね。だからこそ彼らが着目したのは,箱物を作ることではなくて,機械と関係性をデザインすることだったんです。
機械と関係性。
ええ,ここからが非常に興味深いのですが,彼らはメニュー表を増やすための具体的な解決策として,街の中に独自のミクロな社会シミュレーションをいくつも構築し始めたんです。
ミヤッコハウスと自己肯定感の回復
ミクロな社会シミュレーションですか,なんか壮大ですね。
はい,例えば,商店街の空き店舗を改修して作ったミヤッコハウスという場所があります。
はいはい,資料にありました。ここは学校でも家でもない,いわゆるサードプレイス的な余白の空間なんです。最近では不登校の児童生徒も受け入れているんですが,そこで何をしていると思いますか?
うーん,やっぱり遅れた勉強を取り戻すための補修とか,あとは進路相談とかですかね?
いいえ,違うんです。プレッシャーのない環境で,ただ一緒に泥団子を作ったり,ボードゲームで遊んだりしているんですよ。
えっと,泥団子ですか?
そうです,泥団子です。学校のように評価されることも,家のように心配されることもないんです。
なるほど,ただそこにいていいと。
ええ,安全な心理的シェルターの中で,大人が本気で泥団子作りに付き合うんです。そうやって削られてしまった自己肯定感をゆっくりと回復させているんですね。
ええ,何かを教え込むんじゃなくて,まずは安全基地を作っているわけですね。
その通りです。そして,安全な屋内のシェルターができたら,次は外の自然へと目を向けます。
みやっこ遊びたいと非認知能力の育成
外ですね?
ええ,実は来月,2026年6月7日からは,みやっこ遊びたいという,4歳から8歳向けの自然体験プログラムが本格主導する予定なんです。
おお,来月からですね。それはどんな狙いがあるんですか?
週末に地元で質の高い自然体験を提供することで,親が遠くへ連れて行く負担を減らすと同時に,子どもたちの非認知能力を育む仕組みになっています。
あ,ちょっと待ってください。非認知能力って最近よく聞く言葉ですが,具体的にはどういうメカニズムなんでしょうか?
えーと,簡単に言うとですね,テストの点数とかIQのように数値化できる認知能力に対して,目標に向かって頑張る忍耐力とか,他者と協調する力,自分の感情をコントロールする力なんかのことです。
ああ,数値化はできないけれど,人生の土台になるスキルですね。
そうです。自然の中で予測不能な遊びをすることで,この能力が鍛えられるわけです。
なるほど,算数や漢字のテストでは測れない,人間としての基礎体力みたいなものですね。
仮想都市ミヤコタウンの挑戦
えー,まさに。そしてここからが彼らの取り組みの中で最もスケールが大きくて,まさに社会の宿図と呼べるプログラムなんですが,
はい,気になります。
ミヤコタウンという仮想都市についてお話ししましょう。
あ,これ資料読んでいて私が一番驚いたやつです。130名もの子どもたちが参加する仮想都市なんですよね。
ええ,そうです。
大人は一切立ち入り禁止で,子どもたちは会場のハローワークで仕事を探して,ベスカっていう地域通貨で給料をもらう,ここまではよくある職業体験だなと思ったんですけど,
稼いだ給料から,なんと20%の税金を納めなきゃいけないって書いてあって,目を疑いましたよ。
ふふふ,驚きますよね。しかも,その税金を計算して徴収する税務所の職員も子どもたち自身が勤めているんですよ。
いやいや,ちょっと待ってくださいよ。子どもの遊び場で所得税20%って,いくらなんでもリアルすぎてシビアすぎませんか?
まあ,そう感じますよね。
一生懸命働いて稼いだお金をいきなり転引されたら,子どもたち理不尽に感じて嫌がりません?私が子どもなら絶対に文句言いますよ。
普通はそう思いますよね。大人の境の嫌な部分を見せているだけじゃないかと,でも,起きている現象は全くの逆なんです。
逆ですか?どういうことでしょう?
税務所に集まった税収額は,こまめに会場内で公表されるんです。そして,その税収が目標額に達すると,なんと,会場内の暗かったエリアにパッと本物の電気が点滞たり,
え,電気が?
ええ,それに,今までいけなかった公園エリアへの橋が架かったりしてインフラが整うんです。
わあ,税金が物理的なインフラに変わるのをその場で目の当たりにするんですか?
そうなんです。ただお金を取られるだけじゃなくて,自分たちが税金を払うことで,自分たちの街のインフラが充実していくという圧倒的な手触り感を得るように設計されているんです。
それはすごい仕掛けですね。
これにより,子供たちは,街は自分たちの力で作れるんだという強烈な成功体験を得ます。これがまさに,自己効力感の育成に直結している理由なんですよ。
自己効力感,つまり,自分には状況を変える力があるという確信ですね。自分が社会の一部として機能していることを肌で理解できるんだ。
さらに驚くべきことにですね,実際の市の選挙管理委員会から本物の機材を借りて,模擬選挙も行われるんです。
本物の機材で?本格的ですね。
ええ。そこで選ばれた子供議員と子供市長が子供議会を開くのですが,過去には,昇進の転売に対する罰金とか,起業する人への500ベスカの補助金といった条例が可決されているんです。
転売対策に起業補助金ですか?もう立派な国家運営じゃないですか。
ええ,全開一致で可決されたりするんですよ。
地方における「失敗を許容する場」の重要性
自分たちの社会のルールを自分たちで決める,まさに生きた社会勉強ですね。でも,お話を聞いていて,ひとつ疑問が湧いたんですが。
はい,何でしょう?
なぜ,こうした安全なシミュレーションとか,失敗できればを作ることが,特にこの宮古市のような地方においてそこまで重要視されているんでしょうか?
都市部でもこういう取り組みはありますよね?
ああ,そこは非常に重要なポイントです。実は都市部の若者支援と地方の若者支援の根底には決定的な前提の違いがあるんです。
前提の違い?
はい,都市部の若者コミュニティって基本的に個人のスキルアップとかキャリア形成に焦点が当てられがちですよね?
まあ,そうですね。
なぜなら,都市部は匿名性が高くて,ひとつのコミュニティが合わなければ別の場所,別の居場所をいくらでも探せるからです。
確かに,都会ならちょっと失敗しても,電車に乗って隣の駅に行けば,誰も自分のことを知らないまっさらな人間関係が作れますよね?
ええ,でも地方ではそうはいきません。地方は人間関係が固定化していて,誰のうちの子かまで知られていることが多いんです。
ああ,耳が痛い話ですね。
一度の失敗やトラブルがずっと目立つとか,新しいことをやろうとすると,前例風習主義の大人たちから浮いてしまうという非常に息苦しい,リアルな圧力があるんですよ。
なるほど,これは例えるなら,大都市が広大な匿名性の海だとすれば,地方は固定された小さな水槽なんですね?
おお,素晴らしい例えです。
水槽の中では,少しでも水が濁る,つまり誰かが失敗したりすると,逃げ場がなくてずっと目立ってしまう。
まさにその濁りを恐れる水槽だからこそ,若者は挑戦しなくなってしまうんです。そこで,都ベースが強力なフィルターになって,安全な水槽の中で小さく試せて,失敗しても笑って戻ってこられるという空気を作っているんです。
地方社会の圧力を緩和するバッファー?干渉剤の役割なんですね?
ええ,意図的に作っているわけです。
外部との交流と寛容なカルチャーの再構築
だからこそ,彼らの活動は単なる個人の支援ではなくて,地域づくりや地域の存続そのものに直結しているんだ。でも,水槽の水をきれいに保つには,外から新鮮な水を入れる必要もありますよね?
その通りです。彼らは地方だからうちに閉じるのではなくて,意識的に外の水を注ぎ込む戦略を取っているんですよ。
具体的にはどんなこと?
例えば,全国から外部の大学生インターンを積極的に受け入れたり,オンラインを活用して外と繋がることで,情報を循環させているんです。
外部の異物,つまり,よそものをあえて水槽に入れていると。資料にもありましたね。国際クルーズ船,コーラルプリンセスですか?
はい,コーラルプリンセスですね。
宮古港に寄港した外国人乗客に向けて,地元の高校生がチャレンジショップを出展したという記録。
ええ,ええ。
それに,ルーキーズカレッジというプログラムでは,市内の別々の企業に就職した若手社会人を集めて,合同研修を行って,企業の垣根を越えた横のつながりを作っているとか。
そうなんです。外からのインターン生という異物が入ることで,地元の若者が刺激を受けるのはもちろんですが,実は地元の大人たちも気づかされるんですよ。
大人たちがですか?
ええ,あれ?今まで前例がないからダメだと思っていたけど,よそから来た若者がこんなに面白いことをやっているって,広い視点で全体像と結びつけてみると,彼らがやっているのは単なる若者支援じゃないんです。
というと?
地方における失敗を許容する寛容なカルチャーの再構築そのものだということが見えてきます。
息苦しい水槽のルールそのものを外からの水で書き換えているんですね。では,このカルチャーの再構築は最終的にどんな具体的な成果や循環を生み出しているんでしょうか?
支援の循環と現実社会への影響
最も美しくて確実な循環が起きていますよ。例えば,かつて中高生として参加していた若者が県外での経験を経てUターンして,現在はスタッフとして働いている事例があります。坂本沙耶さんという方がその一人ですね。
かつて支援されてメニュー表を増やしてもらった側が,今は次の世代のためにメニューを増やす側に回っているんですね。
ええ,さらに象徴的なエピソードがあります。先ほど子どもたちがルールを作る都タウンの議会の話をしましたよね?
はい,模擬議会ですね。
あの議会で子どもたちの議論をサポートする議長を務めていたのは,実は都ベースのOGであり,現在は本物の都市議会議員として活躍している佐々木誠議員なんです。
えっと,本物の市議会議員ですか?
そうなんですよ。
それは鳥肌が立ちますね。かつて自分たちの街をどうにかしたいと考えていた地元の若者が本当にリアルな街を動かす側の人間になっている。
まさにシミュレーションが現実の社会をアップデートしている決定的な証拠じゃないですか?見事な循環です。
ええ,寛容なカルチャーは一朝一夕にはできませんが,こうした機械と関係性のデザインを続けることで確実な一歩から社会は変わっていくんです。
真のターゲットは大人たち
これを聞いているあなたにもぜひ考えてみてほしいですね。あなたの職場やコミュニティにはこうした失敗を許容する余白や多様なロールモデルと出会えるフィルターは機能しているでしょうか?
そうですね,とても大切な問いだと思います。
最後に一つ,資料を読み込んでいて私がどうしても気になったことがあるんです。
はい,何でしょうか?
みやっこベースのプロジェクトの中に大人の自由研究という多世代交流のプログラムがあるんですよね?
ええ,ありますね。
大人が子供の頃のように自分の好きなテーマを探究して発表するというものなんですが,これを見てハッとしたんです。
ほう。
彼らは子供を若者支援を掲げていますが,実は最大のターゲットは私たち大人たちなのではないでしょうか?
なるほど,というのは?
子供たちが堂々と夢を語り,みやっこタウンで社会のルールを作り,失敗しながらも挑戦する,その姿を一番間近に見ているのは地元の大人たちですよね?
ええ,ええ.
彼らが生き生きと動く姿を見せつけることで,前例がないとか,どうせ地方だから,と閉塞感を感じていた地域の大人の心に火をつけて,大人自身を再教育しているんじゃないかと.
なるほど.
子供を支援しているように見せて,実は街全体の大人たちの意識をアップデートしていると.
はい.
つまり彼らの真の姿は,街全体を巨大な学びのコミュニティに変えてしまう壮大な仕掛けなのかもしれません.
確かに,そう考えると全ての点が繋がりますね.
これを聞いているあなたの周りでも,実は子供たちや後輩たちの無邪気な挑戦が,凝り固まった大人たちを目覚める最強のカンプル剤になるかもしれません.
もしあなたがメニュー表に3つの料理しかない街や部署にいたとしても,今日から新しい料理を書き加えることはいつだってできるはずです.
17:37
コメント
スクロール