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鵙征伐 夢野久作
お父さんのカエルが田んぼへ虫取りに行ったまま帰ってきませんので おかみさんのカエルと子供のカエルが心配をして探しに行きましたら
かわいそうにお父さんカエルはモズに捕らえられて カヤの刈り株に突き刺されて日干しになって死んでいました
これはモズが冬、食べ物がなくなった時食べようと思ってしまっておいたのです
母カエルと子カエルは抱き合って泣きました 泣く泣くお父さんのカラカラの死骸を担って
つぶれた蓮の葉のお寺に担ぎ込んで 親類や友達カエルが寄ってたかってお念仏をしてお弔いを済ました
そこへ一匹のスズメが通りかかって お前たちは何をしているかと尋ねました
カエルどもが訳を話しますと スズメは肩を怒らして申しました
だいたいあのモズという奴は高いところへ止まって キーキー威張った憎いやつだ
よし俺が仇を取ってやるから 泣くな泣くなと言って飛んでいきました
スズメは友達を大勢集めて評議をしましたが やがて八方に飛び散って鳥刺しを探しました
鳥刺しが見つかるとスズメどもは大勢連れ立って 鳥刺しの前をちゅうちゅう泣きながら飛び回りました
鳥刺しは止まったと思って近づくとパッと逃げます また近づくとパッと逃げる
こうして深いドブのところまで誘ってきますと 案の定鳥刺しは夢中になってドブの中に落ちました
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その時に取り落とした持ち座を スズメどもは寄ってたかって引っ加えて山の方へ飛んできて
いつもモズが来る木のてっぺんに立てかけておきました
何にも知らぬモズはいつもの通り遠方からキーキー泣きながら飛んできて
いつも止まる木の一番高いところに止まりますと 怖いかに足がピタリと吸いつきました
大変だと思って飛び立つと 今度は羽が餅に絡まってしまいました
キーキーキーキー 助けてくれ
と一生懸命もがいて居るところへ 最前ドブに落ちた鳥刺しが持ち座を追っかけてきてこの様子を見ると
スズメがモズを取ってくれた と喜んでモズの首をキュッとひねって袋に入れて
持ち座を担いで帰っていきました
