作品名:手袋を買いに
著者:新美南吉(にいみ なんきち)
図書カード:https://www.aozora.gr.jp/cards/000121/card637.html
青空文庫:https://www.aozora.gr.jp/index.html
7・15・23・31日更新予定
#青空文庫 #朗読 #podcast
BGMタイトル: Maisie Lee
作者: Blue Dot Sessions
楽曲リンク: https://freemusicarchive.org/music/Blue_Dot_Sessions/Nursury/Maisie_Lee/
ライセンス: CC BY-SA 4.0
【活動まとめ】 https://lit.link/azekura
【文庫関連商品】 https://amzn.to/4hmvye0
著者:新美南吉(にいみ なんきち)
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作者: Blue Dot Sessions
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サマリー
物語では、冷たい冬の日に親子のギツネが手袋を買うために町へ出かけています。子供ギツネは人間の世界の不思議や優しさを経験し、母ギツネは人間に対する不安を抱えながら、その冒険を見守っています。
寒い冬の森の冒険
手袋を買いに、新美南吉、寒い冬が北方から、キツネの親子の住んでいる森へもやってきました。
ある朝、ホラーなから子供のキツネが出ようとしましたが、「はっ!」と叫んで、目を抑えながら、母さんギツネのところへ転げてきました。
「母ちゃん、目に何か刺さった。抜いてちょうだい。早く早く。」と言いました。
母さんギツネがびっくりして、あわてふためきながら、目を抑えている子供の手を、おそるおそる取りのけてみましたが、何も刺さってはいませんでした。
母さんギツネは、ホラーなの入り口から外へ出て、はじめてわけがわかりました。
昨夜のうちに、真っ白な雪がどっさり降ったのです。
その雪の上から、お日様がキラキラと照らしていたので、雪はまぶしいほど反射していたのです。
雪を知らなかった子供のキツネは、あまり強い反射を受けたので、目に何か刺さったと思ったのでした。
子供のキツネは遊びに行きました。
まわたのように柔らかい雪の上をかけまわると、雪の子がしぶきのように飛び散って、小さい虹がすっとうつるのでした。
すると突然、後ろでドタドタザーッとものすごい音がして、パンコのような粉雪がふわーっと子ギツネに追っかぶさってきました。
子ギツネはびっくりして、雪の中に転がるようにして、10メートルも向こうへ逃げました。
何だろうと思って振り返ってみましたが、何もいませんでした。
それはモミの枝から雪がなだれ落ちたのでした。
まだ枝と枝の間から白い絹糸のように雪がこぼれていました。
まもなくホラーなへ帰ってきた子ギツネは、「おかあちゃん、おててがつめたい。おててがちんちんする。」
と言って濡れてボタン色になった両手を母さんギツネの前に差し出しました。
母さんギツネはその手にはーっと息を吹っかけて、ぬくとい母さんの手でやんわり包んでやりながら、
もうすぐ暖かくなるよ。雪をさわるとすぐ暖かくなるもんだよ。
と言いましたが、かわいい坊やの手にしもやけができてはかわいそうだから、
夜になったら町まで行って坊やのおててに合うような毛糸の手袋を買ってやろうと思いました。
町への旅
暗い暗い夜が風呂敷のような影を広げて野原や森を包みにやってきましたが、
雪はあまり白いので包んでも包んでも白く浮かび上がっていました。
親子の銀ギツネはほら穴から出ました。
子供の方はお母さんのお腹の下へ入り込んで、そこからまんまるな目をパチパチさせながら、
あっちやこっちを見ながら歩いていきました。
やがて行く手にぽっつり明かりが一つ見え始めました。
それを子供のキツネが見つけて、
母ちゃん、お星さまはあんな低いところにも落ちてるのね。
と聞きました。
あれはお星さまじゃないのよ。
と言ってその時、母さんギツネの足はすくんでしまいました。
あれは町の灯なんだよ。
その町の灯を見た時、母さんギツネはある時、町へお友達と出かけて行って、
とんだ目にあったことを思い出しました。
およしなさいっていうのも聞かないで、
お友達のキツネがある家のアヒルを盗もうとしたので、
お百姓に見つかって散々追いまくられて、
命からがら逃げたことでした。
母ちゃん何してんの。早く行こうよ。
と子供のキツネがお腹の下から言うのでしたが、
母さんギツネはどうしても足が進まないのでした。
そこで仕方がないので、坊やだけを一人で町まで行かせることになりました。
坊や、お手手を片方を出し、
とお母さんギツネが言いました。
その手を母さんギツネはしばらく握っている間に、
かわいい人間の子供の手にしてしまいました。
坊やのキツネはその手を広げたり、握ったり、
つねってみたり、かいでみたりしました。
なんだか変だな、母ちゃんこれ何。
と言って、雪あかりに、
またその人間の手に変えられてしまった自分の手をしげしげと見つめました。
それは人間の手よ。
いいかい坊や、町へ行ったらね。
たくさん人間の家があるからね。
まず、表に丸いシャッポの看板のかかっている家を探すんだよ。
それが見つかったらね。
トントンと扉を叩いて、こんばんはって言うんだよ。
そうするとね、中から人間が少し扉を開けるからね。
その扉の隙間から、こっちの手、ほら、この人間の手を差し入れてね。
この手にちょうどいい手袋ちょうだいって言うんだよ。
わかったね。決してこっちのお手手を出しちゃダメよ。
と母さん狐は言い聞かせました。
どうして?
と坊やの狐は聞き返しました。
人間はね、相手が狐だとわかると手袋を売ってくれないんだよ。
それどころか捕まえて檻の中へ入れちゃうんだよ。
人間って本当に怖いものなんだよ。
決してこっちの手を出しちゃいけないよ。
こっちの方、ほら、人間の手の方を差し出すんだよ。
と言って、母さんの狐は持ってきた二つの白銅貨を人間の手の方へ握らせてやりました。
子供の狐は町の灯を目当てに、雪あかりの野原をよちよちやっていきました。
はじめのうちは一つきりだった火が二つになり、三つになり、果ては十にも増えました。
狐の子供はそれを見て、火には星と同じように赤いのや黄色いのや青いのがあるんだなと思いました。
やがて町に入りましたが通りの家々はもうみんな灯を閉めてしまって、
高い窓から暖かそうな光が道の雪の上に落ちているばかりでした。
けれど表の看板の上には大抵小さな電灯が灯っていましたので、
狐の子はそれを見ながら帽子屋を探していきました。
自転車の看板や眼鏡の看板やその他いろんな看板が、
あるものは新しいペンキで書かれ、あるものは古い壁のように剥げていましたが、
町に初めて出てきた小狐にはそれらのものが一体何であるかわからないのでした。
とうとう帽子屋が見つかりました。
お母さんがみちみちよく教えてくれた黒い大きなシルクハットの帽子の看板が、
青い電灯に照らされてかかっていました。
小狐は教えられた通りトントンと戸を叩きました。
こんばんは。
すると中では何かコトコト音がしていましたが、
やがて戸が一寸ほどゴロリと開いて、
光の帯が道の白い雪の上に長く伸びました。
小狐はその光がまばよかったので、
めんくらって間違った方の手を、
お母様が出しちゃいけないと言って、
よく聞かせた方の手を隙間から差し込んでしまいました。
このおててにちょうどいい手袋ください。
すると帽子屋さんは、
おやおやと思いました。
きつねの手です。
きつねの手が手袋をくれというのです。
これはきっと木の葉で買いに来たんだなと思いました。
そこで、
先にお金をくださいと言いました。
小狐は素直に握ってきた白銅貨を二つ帽子屋さんに渡しました。
帽子屋さんはそれを人差し指の先に乗っけて、
かち合わせてみると、
チン、チンと良い音がしましたので、
これは木の葉じゃない、
本当のお金だと思いましたので、
棚から子供用の毛糸の手袋を取り出してきて、
小狐の手に持たせてやりました。
小狐はお礼を言ってまた元来た道を帰り始めました。
人間との出会い
お母さんは人間は恐ろしいものだっておっしゃったが、
ちっとも恐ろしくないや。
だって僕の手を見てもどうもしなかったもの、
と思いました。
けれど小狐は一体人間なんてどんなものか見たいと思いました。
ある窓の下を通りかかると、
人間の声がしていました。
なんという優しい、
なんという美しい、
なんというおっとりした声なんでしょう。
小狐はその歌声はきっと人間のお母さんの声に違いないと思いました。
だって小狐が眠る時にも、
やっぱり母さん狐はあんな優しい声でゆすぶってくれるからです。
すると、
すると今度は子供の声がしました。
母ちゃん、こんな寒い夜は森の小狐は寒い寒いって泣いてるでしょうね。
すると母さんの声が、
森の小狐もお母さん狐のお歌を聞いて、
ホラーなの中で眠ろうとしているでしょうね。
さあ、坊やも早くねんねしなさい。
森の小狐と坊やとどっちが早くねんねするか。
きっと坊やの方が早くねんねしますよ。
それを聞くと小狐は急にお母さんが恋しくなって、
お母さん狐の待っている方へ飛んでいきました。
急にお母さんが恋しくなって、
お母さん狐の待っている方へ飛んでいきました。
お母さん狐は心配しながら坊やの狐の帰ってくるのを
今か今かと震えながら待っていましたので、
坊やが来ると温かい胸に抱きしめて泣きたいほど喜びました。
二匹の狐は森の方へ帰っていきました。
月が出たので狐の毛並みが銀色に光り、
その足跡にはコバルトの影がたまりました。
母ちゃん、人間ってちっとも怖くないや。
どうして?
坊、間違えて本当のお手手出しちゃったの。
でも帽子屋さん捕まえやしなかったもの。
ちゃんとこんないい温かい手袋くれたもの。
と言って手袋のはまった両手をパンパンやってみせました。
お母さん狐は
まあと呆れましたが
本当に人間はいいものかしら。
本当に人間はいいものかしら。
と呟きました。
16:42
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