1. 青空文庫朗読する人
  2. 幸福/島崎藤村
2024-10-26 06:49

幸福/島崎藤村

spotify apple_podcasts youtube
作品名:幸福
著者:島崎藤村

図書カード:https://www.aozora.gr.jp/cards/000158/card53185.html

青空文庫:https://www.aozora.gr.jp/index.html

ブンゴウサーチ for Kids:https://bungo-search.com/juvenile
BGMタイトル: Maisie Lee 作者: Blue Dot Sessions 楽曲リンク: https://freemusicarchive.org/music/Blue_Dot_Sessions/Nursury/Maisie_Lee/ ライセンス: CC BY-SA 4.0

サマリー

島崎藤村の物語では、幸せがさまざまな家に訪れ、貧しい姿で迎えられない様子が描かれています。

幸せの訪問
幸せ 島崎藤村
幸せがいろいろな家へ訪ねていきました 誰でも幸せの欲しくない人はありませんから
どこの家を訪ねましても みんな大喜びで迎えてくれるに違いありません
けれども それでは人の心がよくわかりません
そこで幸せは 貧しい貧しい
小敷のようななりをしました 誰か聞いたら自分は幸せだと言わずに
貧乏だというつもりでした そんな貧しいなりをしていても
それでも自分をよく迎えてくれる人がありましたら その人のところへ幸せを分けておいてくるつもりでした
この幸せがいろいろな家へ訪ねていきますと 犬の飼ってある家がありました
その家の前へ行って幸せが立ちました そこの家の人は
幸せが来たとは知りませんから 貧しい貧しい小敷のようなものが
家の前にいるのを見て お前さんは誰ですか
と訪ねました 私は貧乏でございます
ああ貧乏か 貧乏はうちじゃお断りだ
と そこの家の人は
戸をビシャンと閉めてしまいました おまけにそこの家に飼ってある犬が恐ろしい声で追い立てるようになきました
幸せは早速御免をこむりまして 今度は鶏の飼ってある家の前へ行って立ちました
そこの家の人も幸せが来たとは知らなかったと見えて 嫌なものでも家の前に立ったように顔をしかめて
お前さんは誰ですか と訪ねました
私は貧乏でございます ああ貧乏か
貧乏はうちじゃたくさんだ
と そこの家の人は深いため息をつきました
それから飼ってある鶏に気をつけました 貧しい貧しい
乞食のようなものが来て 鶏を盗んで行きはしないかと思ったのでしょう
コッコッコッコッと
そこの家の鶏は用心深い声を出して泣きました 幸せはまたそこの家でも御免をこむりまして
情けの心
今度はうさぎの飼ってある家の前へ行って立ちました お前さんは誰ですか
私は貧乏でございます ああ貧乏か
と言いましたが そこの家の人が出てみると
貧しい貧しい乞食のようなものが表に立っていました そこの家の人も幸せが来たとは知らないようでしたが
情けというものがあると見えて 台所の方からおむすびを一つ握ってきて
さあこれをお上がり と言ってくれました
そこの家の人は黄色いたくあんのおこうこまで そのおむすびに添えてくれました
グー グー
グー グー
とうさぎは高いいびきをかいて さも楽しそうに昼寝をしていました
幸せにはそこの家の人の心がよくわかりました おむすび一つ
たくあん一切れにも人の心の奥は知れるものです それを嬉しく思いまして
そのうさぎの飼ってある家 幸せを分けて置いてきました
06:49

コメント

スクロール