作品名:風
著者:竹久夢二
図書カード:https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card46434.html
青空文庫:https://www.aozora.gr.jp/index.html
ブンゴウサーチ for Kids:https://bungo-search.com/juvenile
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00:05
風 竹久夢二
風が山の方から吹いてきました。
学校の先生がお通りになると、
町で遊んでいた生徒たちがみんなお辞儀をするように。
風が通ると、林に立っている若い梢も、野の草も、
みんなお辞儀をするのでした。
風は町の方へも吹いてきました。
それはたいそう面白そうでした。
教会の十字塔を吹いたり、
煙突の口で鳴ったり、
町の角を回るとき、
とんぼ返りをしたりする様子は、
とても面白そうで、
ちょうど、子供たちが
鬼ごっこするもんよっといで、
というように、
ダンスをするもんよっといで、
と言いながら、
風の遊び仲間を集めるのでした。
風が面白そうな歌を歌いながら、
ダンスをして、
踊り回るので、
紐の台のエプロンや、
子供の着物も、
ダンスを始めます。
すると、
木の葉も、
枝の端で踊りだす。
町に落ちていた煙草の吸い殻も、
紙くずも、
空に舞い上がって踊るのでした。
その時、
町を歩いていた、
孝太郎、
という子供の帽子が浮かれだして、
いつの間にか、
孝太郎の頭から飛び降りて、
ダンスをしながら、
町を駆け出しました。
その帽子には、
長いリボンが付いていたから、
遠くから見ると、
まるで鳥のように飛ぶのでした。
03:04
孝太郎は驚いて、
止まれ!
と号令をかけたが、
帽子は聞こえないふりをして、
風とふさげながら、
どんどん大通りの方まで飛んで行きます。
一生懸命に、
孝太郎は追っかけたから、
やっとのことで追いついて、
帽子のリボンを押さえようとすると、
また、どっと風が吹いてきたので、
今度はまるで、
輪のようにくるくると回りながら駆け出しました。
坊ちゃん、
なかなか捕まりませんよ。
帽子が駆けながら言うのです。
すると、
今度は大通りから、
横丁の方へ風が吹き回したので、
孝太郎の帽子も、
風と一緒に横丁へ曲がってしまいました。
そして、
そこにあったビール樽の陰へ隠れました。
孝太郎は大急ぎで、
横丁の角まで来たが、
帽子は見つかりません。
僕の帽子がないや。
孝太郎は、
もう泣き出しそうになって言いました。
帽子を連れて行った風も、
孝太郎を気の毒になってきて、
坊ちゃん、
私が見つけてあげましょう。
そう言って、
ビール樽の陰の帽子の尻尾を、
ひらひらと吹いてみせました。
孝太郎は、
すぐ帽子のあるところを見つけました。
バンザイ!
孝太郎は帽子の尻尾を掴んで叫びました。
風やい。
もう取られないぞ。
孝太郎は、
帽子の唾を両手でしっかり握って言いました。
06:08
ほうほう。
風はそう言いながら、
飛んで行きました。
エプロン!
エプロンも、
木の葉も、
紙くずも、
またダンスをしていたけれど、
孝太郎の帽子は、
もうダンスをしませんでした。
06:41
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