作品名:気にいらない鉛筆
著者:小川未明
図書カード:https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card52054.html
青空文庫:https://www.aozora.gr.jp/index.html
ブンゴウサーチ for Kids:https://bungo-search.com/juvenile
BGMタイトル: Maisie Lee 作者: Blue Dot Sessions 楽曲リンク: https://freemusicarchive.org/music/Blue_Dot_Sessions/Nursury/Maisie_Lee/ ライセンス: CC BY-SA 4.0
著者:小川未明
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BGMタイトル: Maisie Lee 作者: Blue Dot Sessions 楽曲リンク: https://freemusicarchive.org/music/Blue_Dot_Sessions/Nursury/Maisie_Lee/ ライセンス: CC BY-SA 4.0
サマリー
児童さんは学校から帰る途中、気に入らない鉛筆を持っており、不満を抱いています。そして、女中の木よに新しい鉛筆を買ってきてほしいと依頼しています。その後、木よが間違った鉛筆を買ってしまい、泣いているところに三越さんが優しく助け舟を出しています。
鉛筆の購入を巡る不満
気にいらない鉛筆 小川未明
児童さんはカバンを下げて 時計を見上げながら
「おお、もう遅くなった。 早くそう言ってくれればいいのになあ。」
と、お母さんや女中に小言を言いました。
「毎朝行けと注意されなくても、 自分で気をつけるものですよ。」
と、お母さんはおっしゃったきり、 なんとも言われませんでした。
すると、児童さんはぶつぶつ言っていましたが、
「木よ、僕が学校から帰ってくるまでに これと同じ鉛筆を買っておいてくれね。」
と言いながらカバンの中の鉛筆を出して ちょっと見せて
銭をそこへ投げ出しました。
「自分のことは自分でなさい。」 と、お母さんがおっしゃったけれど
児童さんは聞きませんでした。
「木よ、買っておくんだよ。」 と、児童さんは念を押しました。
「もっちゃん、どこに売っているのでございますか?」
この春、田舎から出てきたばかりの 女中の木よは
たまげたように赤い帆をして尋ねました。
本屋にもあれば、角の文房具屋にだってあるだろう。
児童さんはそう言うと、慌てて靴を履いて
「行って参ります。」 と言って駆け出して行ってしまいました。
「自分のことは自分でするものだと言っても 聞かないのだから
構わんで置いとくといいよ。」 と、お母さんはおっしゃいましたけれど
木よは仕事が済むと 鉛筆を買いに行って参りました。
友情と優しさ
午後になると妹の光子さんが先に帰ってきました。
それから間もなく 児童さんの靴音がして
元気よく
「ただいま。」 と言って帰ってきました。
ちょうどお母さんは外出なされて お留守でありました。
児童さんは机が上にあった鉛筆を取り上げて 見ていましたが
「僕の言ったのと違っているけれど よく書けるか知らん。」
こう言って小刀で鉛筆を削り始めました。
芯が柔らかいと見えて 直に折れてしまうのです。
こんな鉛筆で何が書けるもんか 児童さんは感触を起こして女中を呼びました。
木よ、なんでこんな鉛筆を買ってきたんだい。 柔らかくて書けないじゃないか。
違っているから返しておいでよ。 と鉛筆を投げつけて無理を言いました。
児童さんが怒って出て行ってしまった後で 木よはどうしていいかわからないので
鉛筆を手に持って お勝手元で泣いていました。
こんな時は田舎が思い出されて どんなに自分の家が恋しかったか知れません。
今頃、麦の青々とした畑では ひばりがさえずっているだろう。
また野道へ行くと白い野原の花が咲いて ぷんぷん匂っていることなどが
しみじみと考え出されて 一層ふるさとが懐かしかったのです。
どうしたの? と、この時三越さんが来て優しく訪ねてくださいました。
木よは泣いたりして恥ずかしいと思ったので 前田れで涙を拭きました。
私が間違って違った鉛筆を買ってきましたので 申し訳ありません。
と言いました。 どうしてこの鉛筆がいけないの?
と三越さんは聞きました。 柔らかくて折れるのです。
と、木よは悲しそうに答えました。
兄さんが悪いんだわ。
いいえ、私が悪かったのでございます。
と木よはうつむきました。
自分のことは自分でせいといつもお母さんがおっしゃっているのですもの。
と三越さんは言って走って 自分の筆入れの中から新しい鉛筆を持ってきました。
これを兄さんにあげるといいわ。 私柔らかいのをもらっておくから。
と木よに鉛筆を渡しました。
木よは本当に嬉しく思いました。
木よの田舎には山ゆりがたくさん咲くの? 山へ行くとたくさんございます。
うちの花壇のが咲いたから行ってみましょうよ。
と三越さんは木よを連れてお庭へ出ました。
山ゆりの花が背高く見事に開きました。
金銭花やケシの花も美しく咲いていました。
木よは優しいお嬢さんのことを 国の妹に書いておくる中へと思って
散った真っ赤なケシの花びらを拾ったのであります。
風に葉が光って ひらひらと
蝶々が飛んでいました。
08:48
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