00:00
- こんにちは。今回資料を送ってくださった方、本当に素晴らしいテーマをありがとうございます。 3月3日に88歳で亡くなられた伝説の漫画家、つげ義春さんに関する文献の深掘りですね。
- そうですね。ただ送ってくださった方、この資料、単なる追悼記事のまとめというわけではないんですよね。
- はい、私も読み込んで驚きました。
- 一見全くバラバラに見える福島県、それから日本の漫画史、さらに現代のアニメやオタク文化ですね。これらが、つげ義春という特異点を通して見事に繋がっているんです。
- その複雑な構造を読み解いていくっていうのが今回のミッションですよね。まず私が驚いたのが、その福島との好きな縁なんですけど。
- ああ、出生のエピソードですね。
- そうなんです。お母様が福島県のいわき市よくらから引っ越す途中で産気づいて生まれたっていう、なんかあと数日ずれていたら福島県いわき市生まれになっていたという、すごく惜しいタイミングですよね。
- 本当に運命のいたずらというか、でもまあ、そこから福島への強い執着が生まれたのか、後に県内の温泉を10カ所くらい巡礼されているんですよ。
- 10カ所もですか。
- 特に天英村の二木温泉なんかは、作品の重要な舞台、いわゆる聖地になりましたからね。
- なるほど。ただ資料を読んでいて、私が少し寂しくなったのが、その天英村にあった杉吉原資料館という文化拠点がですね、
- はい。
- 2022年にひっそりと解散してしまったという事実なんです。
- ファンにとってはかなりいたてでしたね。NPO法人が運営していた素晴らしい空間だったんですが、やっぱり物理的な拠点を維持し続けるのは難しい時代なんでしょうね。
- そうですよね。でも物理的な場所が消えたからといって、その影響力とかレガシーが完全に消滅するわけじゃないと思うんです。
- と言いますと?
- なんていうか、タンポポのワメガミみたいに、風に乗って全く別の場所に飛んでいって、そこであの、しぶとく新しい根を張るんじゃないかなって。
- ああ、そのタンポポのワメ毛という表現、まさに今回の革新をついていますね。
- 本当ですか?
- ええ。実は、杉さんが飛ばした最大のワメ毛は、土地ではなく人に根付いたんです。
- 人ですか?
- はい。時場草に入る前の話なんですが、当時福島県出身の横田特王さんと、後にギャグ漫画の王様になる赤塚富士夫さんが同居していたんですね。
- はいはい、有名なエピソードですね。
- そこに遊びに来た杉さんが、かしぼと漫画が近道だぞって二人にアドバイスしたんです。
- ちょっと待ってください。後に、おそ松くんとかを描くあの超ポップな赤塚富士夫が、あのシュールで純文学的な杉義晴のアドバイスを素直に聞いたんですか?
- そうなんですよ。
- 作風が水と油じゃないですか。それに、そもそもなんでかしぼと漫画が近道だったんですか?
- 鋭いですね。まずなぜかしぼとかという点ですが、当時の大手雑誌は連載枠がガチガチに固まっていて、新人が入る隙がほとんどなかったんです。
03:02
- ああ、なるほど。枠が空いていないと。
- ええ。一方で、かしぼと業界は常に新しい単行本を求めるため、需要が高くてハードルが低かったんですよ。
つまり、実践を積みながら原稿料をもらえる完璧なインキュベーターだったわけです。
- それはすごく理にかなったビジネス戦略ですね。でもなんで、作風の違い若塚さんたちがその言葉を信じたんでしょうか?
- ここが人間の面白いところでして、当時の杉さん、かわいい彼女を連れて早速と現れたらしいんです。
- ええ、彼女ですか?
- ええ。要するに、めちゃくちゃ売れてる、できる男に見えたらしいんですよ。
- あはは、なるほど。
- だから、若塚さんたちも、この人の言う通りにすれば間違いないって信じ込んで、かしぼと業界に飛び込んで、結果的に才能を開花させました。まさに日本の漫画史が大きく動いた瞬間ですね。
- 人間の生々しい憧れが歴史を動かしたんですね。そしてそのわめげは、ついには現代のアニマ文化にまで飛んでいくと。
- はい。それが、押井森監督のアニメ、「うるせえ奴ら」ですね。
- 「うるせえ奴ら」ですか?
- ええ。押井監督は、杉さんの代表作、「ねじしき」などの、前衛的でシュールな要素を、あのドタバタラブコメの中にパロディーとして大量に投画したんです。
- ええ、なぜまた、うるぼし奴らに、そんなシュールなものを。
- 杉作品の不条理だけど圧倒的な世界観が、押井監督の常識を破壊するような演出スタイルに、完璧にマッチしたからなんですよ。
- なるほど、相性が良かったんですね。
- そうなんです。結果として、オタク文化において、杉吉原の元ネタを知らないと、高度のパロディーが理解できないという、ある種の必修科目になりました。
- つまり、アンダーグラウンドな前衛芸術が、メインストリームのポップカルチャーの構造的な土台になったわけですね。
- その通りです。そして、2020年、押井監督のアニメ、ブラドラブの第9話、ボルト式でそれが完璧な円を描くことになります。
- ボルト式、もうタイトルからしてレジ式のオマージュですよね。
- そうなんです。しかもなんと、この回の作家監督を務めたアニメーターの、押山清高さんは、福島県本実吉の出身なんですよ。
- うわ、ここで福島に繋がるんですか。杉吉原のシュールなDMA、それをアニメに組み込んだ、押井守、そして作画を手がけた福島出身の押山清高。
- ええ、見事に一点で交わりましたよね。
- 奇跡的ですね、本当に。タンポモの豆毛が時間を越えて、世代を越えて、最終的に福島というキーワードと共に再び花を開かせたってことですよね。
- そういうことになります。
- 今回資料を送ってくださった方、私も本当に驚きました。この杉吉原という存在を知らないと、私たちが普段楽しんでいる円溜めの根底にある文脈をかなり見落としてしまうことになりますね。
- ええ、送ってくださった方にもぜひこの視点を持っていただければと思います。
私たちが何気なく消費している現代の円溜め作品の背後には、こうした隠れた前衛的な影響源が、まるでタテモモの基礎工事のように存在しているんですよね。
- 確かに、そうですね。
- はい、終わってくださった方、私たちが普段何気なく楽しんでいる現代の円溜め作品の背後には、まだ気づいていない隠れた影響源がどれほど存在しているのでしょうか。ぜひ探究してみてほしいですね。
06:12
- 次のコンテンツを見る目が確実に変わりますね。次回の配信もお楽しみに。さようなら。