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- こんにちは。あ、突然なんですけど。
- こんにちは。はい、何でしょう?
- もし明日、世界中のデジタルデータが全部消えちゃって、知識を得る手段が誰かの手書きの巻物だけになったらって、ちょっと想像してみて欲しいんですよ。
- いやー、それは、えーと、かなりゾッとしますね。
- ですよね。今日はですね、今回ソースを送ってくださった方に向けて、まさにその究極の情報革命といえる社会を変えた科学、つまり印刷技術の歴史について深掘りしていくミッションです。
- さらに、それがなぜ現代の異世界アニメと繋がるのかっていうところまで読み解いていきたいなと。
- いいですね。15世紀のヨーロッパって、教会とか一部の貴族が知識を完全に独占していたんですよね。
そこに情報を解放する爆弾を落とされたっていう、非常にスリリングなテーマだと思います。
- そうなんですよ。私、当時の情報格差って、現代のネットが繋がらないみたいなレベルじゃないなっていただいた資料を読んで痛感したんです。
- えー、全く違いますね。
- なんていうか、知識へのアクセスがゼロっていうことは、神の言葉すら自分で読めなくて、もう権力者に言われるがままになるしかないっていう、すごく極端な世界ですよね。
- まさにその通りで、そこで1450年頃に登場したのが、あのグーテンベルグの活版印刷なんです。
- はいはい、歴史で習うやつですね。
- えー、これによって聖書が安く大量生産されるようになって、一般の市民が、あれ、教会の言ってることと聖書の内容って違わないかって気づき始めたわけです。
- あー、自分で直接読めるようになっちゃったから。
- そうなんです。これが宗教改革を引き起こして、やがて大航海時代とか、産業革命へと連鎖していくことになります。
- なるほど。
- つまり、一部の人間に集中していた特権構造を根本から破壊したんですよね。
- 知識が特権階級から解放されたってことですよね。でもあの、資料にあったマーク・トゥウェインの言葉がちょっと引っかかってて。
- あ、今日の世界は、良くも悪くも彼に覆うところが大きい、という言葉ですね。
- そう、それです。この、悪くもっていうのは具体的にどういうことなのかなって。
- 情報が安く、しかも早く拡散できるようになったことで、実はフェイクニュースとかプロパガンダの原型もここから生まれたんですよ。
- えー、そうなんですか?
- 魔女狩りを煽るようなパンフレットなんかも、カッパ印刷のおかげで爆発的に広まっちゃいましたからね。
- ってことは、情報革命は真実だけじゃなくて、嘘も民主化しちゃったってことですね。
- そういう因縁もあるんですよね。
- そう考えると、この技術の持つ強大な力に魅了されたりとか、
自分もその力を使ってみたいって空想する人が後を絶たないのも分かりますね。
- えー。興味深いことに、先ほど触れたマーク・トゥエイン自身もその一人なんですよ。
- あ、そうなんですか。
- 彼は1889年に、アーサー王宮廷のヤンキーっていう小説を書いていまして。
- はい。
- これ、現代のアメリカ人が中世にタイムスリップして、近代技術で無双するっていう内容なんです。
- え、それってまさに。
- はい。現代の異世界転生者の元祖とも言える作品なんですよね。
- いやー、面白いですね。でもちょっと待ってください。
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私、常々疑問に思ってたんですけど。
- 何でしょう。
- 現代の知識があるからって、異世界でゼロからカッパ印刷みたいな技術を作るのって、そんなに簡単なんですかね。
- あー、なるほど。
- なんか、ワインの圧削機と金属を組み合わせるだけなら、現代人ならすぐできちゃいそうな気もするんですけど。
- そこが歴史の面白いところなんですよ。実は、フィクションでもそのアプローチって分かれていて。
- 分かれているって言うと?
- 例えば、アネメのドクターストーンなんかだと、天才的な主人公が科学の原理を駆使して、次々と技術を爽快に再現していきますよね。
- はいはい、あれは見てて気持ちいいですよね。
- でも、現実はそんなに甘くなくて。もう一つの作品、本月の下穀場っていうアネメでは、凡人の主人公がすごく泥臭く試行錯誤するんです。
- へぇー。
- 実は、実際のグーテンブルクもまさにこのやり方だったんですよ。
- えー、ワインの圧削機を改造するだけじゃダメだったんですか?
- ダメなんです。当時のインクって水性なので、金属の活地に塗ると弾かれちゃうんですよね。
- あー、そっか。素材の相性があるのか。
- だから、金属にしっかり定着してすぐ乾く、有性インクを一から開発する必要がありました。
- なるほど。
- さらに、均一な圧力をかけても破れないような強度の高い紙とか、その圧力を正確にコントロールするプレス機も必要で。
- へぇー、全部バラバラの分野じゃないですか。
- そうなんです。これら異なる分野の技術をすべて噛み合わせるのに、彼はなんと10年以上も一人で試行錯誤を続けたんです。
- ちょっと待ってください。単なる思いつきじゃなくて、インクの化学蘇生から機械工学まで全部を再発明する10年だったんですね。
- はい。
- それはちょっと、凡人には厳しすぎますね。
- しかもすごく残酷なことに、彼は実用化の直前で資金を出してくれていたパトロンに裁判を起こされちゃうんですよ。
- えー、ひどーい。
- 結果として、工房も印刷機も、その10年の成果をすべて奪われてしまいました。
- うわー、それって完全に15世紀のスタートアップ、追放劇じゃないですか。発明の果実だけ持っていかれるなんてシビアすぎますよ。
- そうなんですよね。だからこそ、頂いた資料にある本月の下国城という作品が非常に高く評価されているんです。
- あー、そこと繋がるんですね。
- 作中で主人公が本を作り始めて、知識が広まるにつれて、強固だった貴族社会の基盤が開きみ始めるんですよ。
- なるほど、権力構造が由来でいくわけですね。
- えー、カッパ印刷が知識の独占を崩して、やがて市民革命を生み出したという歴史の必然の構造ですね。
- はい。
- ファンタジーの世界で見事に絵描き法をしているんです。これが日本における集合賞ともいえる西雲賞を受賞した大きな理由ですね。
- 単なり技術開発の苦労話じゃなくて、新しい技術がどうやって社会の権力構造を破壊していくかっていう、重厚なシミュレーションになっているわけですか?
- まさにその通りです。
- ちなみにその本月の劇場のアニメ第4期が、4月4日からYTスタジオっていう新しい制作体制でスタートするという情報も入ってます。
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- おー、それは楽しみですね。
- これも見逃せませんよね。
- 歴史のうねりとフィクションが、本当に見事にリンクしています。
- 本当にそうですね。では、今回このテーマを送ってくださった方に向けて、最後に一つ考えてみていただきたいことがあるんです。
- 何でしょうか?
- かつての印刷技術のように、現在の私たちの社会構造とか特権を静かに、でも根本から崩壊させようとしている、現代の技術って一体何なんでしょうか?
- うーん、深い問いですね。次はどんな壁が壊れるのか、ご自身でもぜひ考えを巡らせてみていただきたいですね。
- 次回の配信もお楽しみに。さようなら。