ホテルレストランでプロポーズを支える
小島ちひりのプリズム劇場
この番組は、小島ちひり脚本によるラジオドラマです。 プリズムを通した光のように、様々な人がいることをテーマにお送りいたします。
お! 今日、プランPのお客様いるじゃん!
上原さんが、冷蔵庫に貼られた予約一覧を見てつぶやいた。 そうなんですよ! 気合い入りますよね!
小倉は、昔からプランPは好きだな。
当たり前ですよ! お客様の一生の思い出になるんですよ! やりがいしかないじゃないですか!
おうおう! 今日も頑張るか!
ディナータイムが始まってから、30分ほど経った時だった。
すいません。812号室の飯田です。
私は、その名前を聞いてハッとした。
お待ちしておりました。お席へどうぞ。
飯田様をお席へご案内した後、私はキッチンへ急いだ。
上原さん!プランPのお客様、いらっしゃいました!
了解!
飯田様のテーブルにお料理を運ぶたび、お連れ様は嬉しそうにニコニコされていた。
私までなんだか嬉しくなってきた。
メインディッシュを運んで落ち着いたと思われる頃、飯田様のもとへ行った。
お持ちしてもよろしいでしょうか?
私がそう言うと、飯田様は小さくうなずいた。
上原さん!今です!
あいよ!
上原さんは丁寧に、それでいて素早い動きでデザートプレートにマリーミーと書いた。
気をつけて持っていけよ!
ありがとうございます!行ってきます!
私はデザートプレートを持って、飯田様のテーブルへ向かった。
お待たせいたしました。お連れ様からです。
お連れ様の表情がパーッと明るくなる。
私は静かに離れ、飯田様のテーブルを見守る。
他にも3人のスタッフがカタツを飲んで見守っている。
お、俺と、俺と、俺と、頑張って!
思わず口から出てしまう。
け、結婚してください!
わー!よくできました!
よくできました?
私は嬉しくて、飯田様の元へ向かった。
おめでとうございます!
私たちはポケットに隠していたクラッカーを一斉に鳴らした。
ありがとうございます!ありがとうございます!
飯田様のお連れ様は、嬉しそうに私たちとハイタッチをした。
指の異変と病気の告知
その日はとてもよく眠れた。
充実感に満ちていて、とてもいい夢を見た気がする。
枕元のスマホを探し、掴んだと思った。
しかし、指にうまく力が入らず、スマホは手の中からスルリと抜けていった。
あれ?うまく指が動かない気がした。
昨日はお客様も多く、運んだお料理も多かったから、疲れてしまったのだろうか。
今日は休みだし、整体でも行こうか。
小倉さん、お久しぶりですね。どこかおつらいところありますか?
定期的に通っているつもりだったが、気がついたら3ヶ月空いていたようだ。
関さんは変わらず、はつらつとした雰囲気だった。
朝から指に力が入りにくくて、仕事張り切りすぎたのかも。
指ですか?今もですか?
いや、今は普通に動くかも。
関さんはすごく考えた顔をした。
もしかしたら、病院に行ったほうがいいかもしれません。
関さんは真剣な顔でそう言った。
理由待ちですか?
簡単に言うと、免疫の異常によって、手や足の関節が痛くなったり、腫れたりする病気ですね。
治療をすれば治るんですよね。
私の質問に先生はしばらく無言になった。
白髪じりの髪が先生の憂いを語っているようだった。
最近はいい薬も増えましたからね。進行をかなり遅らせられるようになりました。
でも残念ですが、感知させることはできません。
先生は優しい声でゆっくりと言った。
この先、私はどうなるんですか?
だんだん関節が腫れたり痛んだりするようになります。
もっと進行すると軟骨がなくなり、最終的には関節が破壊されます。
仕事を続ける不安と最後のプランP
胸の奥から不安が煙のように体中に広がっていくような気がした。
仕事は続けられますか?
どんなお仕事をされているんですか?
レストランです。ホテルのレストランで働いています。
今すぐできなくなるということはありませんが、健康な方のように、
この先10年、20年と続けることは難しいと思います。
私はふと、この間の飯田様たちの笑顔が脳裏に浮かんだ。
小倉、どうした?元気ないのか?
次の日、ディナーの準備中に上原さんに言われた。
いえ、そんなことありませんよ。
お前は元気が取り柄なんだから、
お前が静かだとレストランの雰囲気が悪くなるだろう。
私一人でそんな変わらないですよ。
ここはホテルのレストランだからさ。
やっぱり味だけじゃなくて雰囲気が大事なんだよ。
雰囲気ですか?
そう、美味しい料理を楽しんだっていう思い出を持って帰ってほしいだろう。
そうですよね。
お疲れ様。
その時、予約担当の竹中さんが入ってきた。
竹中さん、お疲れ様です。
お蔵さん、あなたの好きなアレが入ったわよ。
お、プランPですか?いつですか?
1ヶ月後、婚約指輪もホテルに送ってくるらしいわ。
今回もうまくいくように期待してるわよ。
私は涙がこみ上げてきた。
お蔵さん?
お客様の大事な1日のために、精神整備、務めさせていただきます。
そう、たとえそれが最後になったとしても。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、あなたの1日が素敵なものでありますように。
小島千尋でした。