日本は、巨額の外貨準備を保有しています。
その金額を見ると、「これを国内の景気対策や社会保障に使えばよいのでは」と思うかもしれません。
このエピソードでは、外貨準備金とは何か、なぜ日本が保有しているのか、そして国内で自由に使えるお金とは性質が違う理由を整理します。
外貨準備は、為替介入や国際的な支払いへの備えなどに使われる外貨建ての資産です。
日本の場合、その多くは外国為替資金特別会計を通じて管理されており、一般会計の予算とは別の仕組みで動いています。
そのため、外貨準備が大きいからといって、そのまま円に換えて国内支出へ回せばよいとは限りません。
大規模に円へ換えれば、為替市場にも影響を与える可能性があります。
また、為替介入では実際にどのようなお金が動くのか、外貨準備がどのような役割を果たすのかも見ていきます。
「巨額の資産があるのに、なぜ国内に使わないのか」という疑問を、会計と為替の仕組みから考えるエピソードです。
このエピソードは、Webメディア「ねんごろ」で公開している記事をもとに制作しています。
元記事:
https://nengoro.com/column/economy/foreign-reserves/
YouTube:
このエピソードの音声は、生成AIを利用して制作しています。
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あの、もし私が、日本政府が、たった1日で5兆円という途方もない金額を使ったのに、国の金庫からは1円もお金が消えていない、なんて言ったらどう思いますか?
まあ、それはまるで手品か、あるいは何かの詐欺みたいに聞こえるでしょうね。私たちの日常の感覚とは完全に矛盾していますから。
ですよね。私たちが普段、スーパーで1万円札を出して買い物をしたら、お財布から1万円は確実に消えていなくなりますよね。
ええ、もちろんです。
だから、お金を使った、減ったと実感するわけですけど。でも、これが国家レベルの経済ニュース、特に外貨準備や為替採入の話になった途端に、その直感的なお財布のルールが全く通用しなくなるんですよね。
そうなんですよ。
なんか突然、巨大なブラックボックスを見せられているような感覚になりませんか?
ということで、今回の深掘りテーマは、まさにこの巨大な数字の裏側を解き明かすことです。
これは非常に重要なテーマですね。経済ニュースを見ていると、日本には世界トップクラスの巨額の外貨準備があるとか、数兆円規模の為替採入が実施されたといった、ちょっと桁が外れの数字が飛び交えますよね。
はい、よく聞きます。5兆円とか過去最大とか。
しかし、その数字の裏にある本当の資金の流れを正確に理解している人は驚くほど少ないんですよね。
そうなんですよね。ニュースの表面的な情報だけを見ていると、誰もがこう思うはずなんです。
それだけ巨額のお金があるなら、今すぐ減税の財源にしたり、給付金として国民に配ってくれればいいのにって。
なるほど。
あとは、5兆円の為替採入って、私たちの税金が一瞬で無駄に遂げちゃったんじゃないの?とか、やっぱりそう思っちゃいますよね。
その疑問は、日常生活のお財布の感覚としては極めて正しい反応だと思います。
ただ、マクロ経済の仕組みにおいては、まあなんというかその前提自体が少しずれているんですよね。
ずれている。
最初に抑えておくべき最も重要なポイントを言いましょう。
それは、外貨準備は政府が自由に使える予算でも、日本銀行の地下金庫にドルの現金が大量に積まれたお財布でもないということです。
ちょっと待ってください。お財布じゃない?
じゃあ、日銀の地下にある巨大な金庫に、映画みたいにドルの札束の山が積まれているわけじゃないんですか?
残念ながら違います。
違うんだ。
はい。まずはそこから解きほぐしていきましょうか。
最初に、誰がこれを管理しているのかという主体の部分から整理しますね。
外貨資産を保有して、いつどのように使うかという政策を決めているのは、実は日本銀行ではないんです。財務省なんですよ。
え、日銀じゃないんですか?為替介入のニュースだと、いつも日銀が出てくるイメージがありますけど。
そうですよね。そこが絶妙な役割分担になっていまして。
役割分担?
ええ。財務省が、よし、介入するぞという意思決定を下すんです。
そして、その指示を受けて、実際の市場での売買という実務を担うのが日本銀行なんです。
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ああ、なるほど。
つまり、日銀が自分たちの好き勝手に使えるお金を持っているわけではないんですよ。
あくまで財務省の資産であって、日銀はエージェント、代理人として動いているに過ぎないんです。
なるほど。意思決定をする人と実行部隊が分かれているんですね。
じゃあ、その財務省が持っている外貨準備の中身って一体何なんですか?
ドルのサスタブじゃないなら何を持っているんですか?
主に外国証券、外貨預金、金、そしてSDRなど複数の資産で構成されています。
いろいろあるんですね。
ええ。なので、ドルの現金がそのまま置かれている割合というのは、実はごくわずかなんです。
ちょっとストップしていいですか?そのSDRって何ですか?初めて聞きました。
SDRですね。これはIMF、つまり国際通貨基金が加盟国のために作っている特別な準備資産なことです。
特別な準備資産?
はい。すごく簡単に言えば、一般の市場では使えないんですけど、国と国との間で、いざという時に外貨を引き出し合える緊急用のVIPチケットのようなものだと考えてください。
国と都のためだけの特別なチケット。なるほど、それは私たちが知っている現金とは全然違いますね。
ええ、違いますね。
でも日本の外貨準備の大半は、そのチケットじゃなくて別のものなんですよね。
その通りです。圧倒的な割合を占めているのが、アメリカ国債をはじめとする外国証券なんです。
アメリカ国債。ここなんですよ、ずっと気になっていたのは。
はい。
なんでわざわざアメリカの国債なんて持っているんですか?やっぱり金利が高くて儲かるからですか?
国が資産運用で高い利回りを狙っているとか。
個人の投資家であれば利回りは最も重要な指標になりますよね。
そうですね、少しでも増えた方がいいですから。
しかし、国家の外貨準備において利回りはあくまで副次的な要素に過ぎないんです。
最大の理由は、圧倒的な監禁性の高さなんですよ。
監禁性の高さ、つまり売りやすさですか?
ええ、必要な時にいつでも一瞬で売りやすいからです。
外貨準備というのは、いざという時の備えですから、売りたい時に売れなければ全く意味がありません。
確かに。
そしてもう一つ重要なのが、巨額の売買をしても市場を混乱させない巨大な市場規模があることです。
ああ、なるほど。規模の問題ですね。ちょっと例え話をさせてもらってもいいですか?
ええ、どうぞ。
もし私が世界に1枚しかない10億円の激レアな野球カードを持っていたとしますよね。
すごいお宝ですね。
はい。でも今日どうしても10億円の現金が必要になったからといって、そのカードを強襲にその価格で買ってくれる人を見つけるのってほぼ不可能じゃないですか。
そうですね。すぐには見つからないでしょう。
だから無理やり強襲に売ろうとしたら足元を見られて1億円とかで買い叩かれてしまう。
まさにその通りです。市場が小さいと自分の巨大な売り注文そのものが価格を暴落させてしまうんです。これがいわゆる流動性が低いという状態ですね。
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でもアメリカ国債はそれとは違うと。
ええ、全く違います。
何というかカジノの監禁所で使うチップみたいなもので、世界中の人が常にものすごい量で売り買いしているから、数兆円規模の国債をいきなりドカンと現金化しようとしても市場がビクともせずに吸収してくれる。
はい。
だからいざという時のためにアメリカ国債の形で持っているんですね。
完璧な理解です。アメリカ国債市場は世界で最も深く最も流動性の高い市場ですからね。だからこそ外貨準備として選ばれているわけです。
理由はすごくよくわかりました。でも、ですよ。理屈はわかってもやっぱり感情的に引っかかる部分があるんですよ。
と言いますと?
外国の国債を何兆円もたくさん買っているって聞くと、それって要するに海外への資金援助じゃないですか。
なるほど。
私たちから集めた税金を国内のために使わずにアメリカにばらまいているように見えちゃうんですけど。
ああ、ここが最も誤解されやすいポイントなんですよ。無償の援助、つまりばらまきと国債を買うことは経済のメカニズムにおいて全くの別物なんです。
全くの別物?
ええ。ここを混同してしまうと実態が完全に見えなくなってしまいます。
別物ですか?だってお金はアメリカに行っちゃってるじゃないですか。
では政府のお財布の構造を少し覗いてみましょうか。私たちが普段ニュースでよく見る給付金や公共事業、教育などに使われる予算は一般会計と呼ばれます。
はい、一般会計。よく聞きます。
これは皆さんが納めた税金などを財源にしてお金を支払って終わる取引です。スーパーでリンゴを買って食べるのと同じですね。
はい。食べたらリンゴも払ったお金もなくなります。
一方で外貨準備の取得や管理を行っているのは一般会計とは切り離された外貯め特会、つまり外国為替資金特別会計と呼ばれる特別な仕組みなんです。
外貯め特会。
ええ。
この外貯め特会での取引は税金を財源にして消費しているわけではないんですよ。
え?税金を使ってないんですか?じゃあどうやって何兆円もするアメリカ国債を使うお金を用意しているんですか?錬金術じゃないんですよね?
もちろんです。簡単に言うと、政府が市場で短期の証券を発行して、一時的に円の資金を調達、つまり借金をしているんです。
円を借りてくるんですね?
はい。そしてその調達した円を売ってドルを買い、そのドルでアメリカ国債などの債券という金融資産と将来元本や利息を受け取る権利を手に入れているんです。
あの、ちょっと整理させてください。
つまり外貯め特会は国民の所得税を取り上げてアメリカにあげているわけじゃなくて、金融市場からお金を調達して、そのお金で資産を買っている。
その通りです。調達した資金、つまり負債と同等の価値を持つアメリカ国債、つまり資産を交換しているだけなんです。
交換しているだけ?
はい。これをバランスシートで見れば、負債と資産が同時に膨らんでいるだけで、純粋な意味での出費ではありません。
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だから、1兆ドル分の外貨準備を持っているからといって、1兆ドル分の税金を海外にばらまいたことにはならないんです。
なるほど。単なる資産の交換なんですね?
はい。
リンゴを買って食べてしまう一般会計とは違って、価値のある金買、資産を買って倉庫に保管しているようなものですね?
まさにそのイメージです。
資産の交換だということは、すっきり腹落ちしました。でも、だからこそ、次の大きな矛盾にぶつかるんですよ。
なんでしょうか?
権利のある立派な資産なんですよね?
そうです。
しかも、いつでも監禁できる圧倒的な流動性がある。
はい。だったら、そのアメリカ国債をさっさと売って現金に戻して、日本の病院や支払いや減税の財源、あるいは子どもたちの教育費として国内向けに使えばいいじゃないですか。なんでそれをやらないんですか?
ああ、それこそがこの仕組みを理解する上での最大の壁であり、多くの方が陥るジレンマですね。
いや、だって普通に考えたらそう思いませんか?
もちろんです。結論から言うと、外貨立ての資産を国内の財源として使うためには、システム上、超えなければならない致命的なハードルがあるんですよ。
致命系なハードル?ただ売るだけなのに?
では、実際にそれをやろうとしたら何が起きるか、順を追ってシミュレーションしてみましょうか。
はい、お願いします。
ステップ1として、まず保有しているアメリカ国債を市場で売却します。ここまでは問題ありません。売ればドルなどの外貨が手に入ります。
はい、ドルを手に入れました。倉庫の金塊を売ったわけですね。
ステップ2です。その手に入れた巨額のドルを、日本の病院や国民への給付金としてそのまま入れますか?
いや、無理ですね。日本のスーパーや病院ではドルは使えませんから、円に両替しなければいけない。
そうです。国内で使うには円が必要です。実はここが最大のネックなんです。
ネックですか?
ええ。もし、減税の財源を作るために数十兆円規模の外貨を一度に売って円を買うという取引を為替市場で行ったらどうなると思いますか?
え、巨額のドル売りと巨額の円買いが市場で一気に発生するということですよね?
あ、気づきましたね。
つまり、それってとんでもない規模の円高を引き起こすってことですか?
その通りです。大規模なドル売り円買いの津波が市場を襲います。規模によっては為替市場のバランスを完全に破壊して強烈な円高圧力を生み出してしまいます。
これ、さっきの私の例え話の続きですね?
ええ。
海外の倉庫に金買い、つまりドル資産を山ほど持っているんだけど、地元の支払いにはリンゴ、つまり円しか使えない。
はい。
だから倉庫の金買いを全部、強襲にリンゴに変えようとしたら、市場の人たちに、日本政府はどうしても円が必要で焦ってるぞと足元を見られて、円の価値が異常に冒頭してしまう。
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非常に的確な状況説明です。もしそんな無計画な巨額な円買いを行えばどうなるか。日本の輸出企業は一瞬で利益を吹き飛ばされてしまいます。
うわあ、それは恐ろしいですね。
ええ。最悪の場合は倒産が相次ぎ、日本経済全体がパニックに陥るリスクすらあります。国内を助けるために資産を売った結果、皮肉なことに国内経済を破壊してしまうんです。
本末転倒ですね、それは。しかも外貨準備を全部国内で使っちゃったら、いざという時の為替介入の資金もなくなっちゃうわけですよね。
その通りです。もちろん外貨運用で得た利子などの利益の一部を一般会計へ移して財源の足しにするという制度自体は存在しています。
あ、利益の一部は使っているんですね。
はい。しかし頑本である外貨準備そのものをドカンと売却して数兆円規模の減税や給付に回すというのは、経済のメカニズムを無視した非常に危険で単純すぎる発想だと言わざるを得ません。
いや、納得です。家の貯金箱を叩き割って中身を夕飯台にするのとは、連動して動く歯車があまりにも巨大すぎるんですね。
ええ、まさにその通りです。
でも、あの、ちょっと待ってください。今のお話を聞いて私、一つ論理的な矛盾を見つけちゃったかもしれません。
おや、何でしょうか。
今、巨額のドルを売って円を買ったら、相場がパニックになって強烈な円高になるから絶対にやってはいけないって言いましたよね。
はい、言いました。
でも、急激な円安が進んだ時に政府がやる為替介入ってまさにそれじゃないですか。
お?
政府が持っているドルを市場にぶつけて円を買っている。何で介入の時は市場が壊れてもいいんですか?
素晴らしい着眼点です。まさにそこが為替介入の本質なんですよ。
本質。
ええ。財源作りのための監禁と、為替潜入では目的が180度違うんです。
目的が違う?どういうことですか?
減税の財源を作るための監禁は為替レートを動かしたくないのに結果として動いてしまう、つまり副作用ですよね。
はい、そうですね。
しかし、急激な円安に対する円買い、ドル売りの為替潜入は相場を力づくで動かす、つまり円安を食い止めることそのものが目的なんです。
ああ、そうか。市場に円があふれすぎて円安になっている時に政府がドルを売って市場の円を強引に吸い上げる。
ええ。
つまり、意図的に相場にショックを与えてブレーキを踏んでいるんだ。
その通りです。そしてここでも先ほどの資産の交換というルールは生きているんですよ。
資産の交換。
はい。例えば5兆円規模の円買い潜入を実施したというニュースがあったとします。これは5兆円分の税金を使い捨てたわけではありません。
はい。
政府の手元からドル資産は減りますが、代わりに市場から吸い上げた5兆円分の円資金が手元に残るわけです。
なるほど。使って消えけなくなるわけじゃないんですね。じゃあ逆に急激な円安を防ぐ時はどうなるんですか?
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それが円売り外貨買い潜入です。円高ということは市場で円が買われすぎている状態ですよね。
はい。
そこで政府は円の資金を市場に放出して売り、代わりに市場からドルなどの外貨を買い取ります。
円を売って外貨を買う。ん?ということはそこで買った外貨はどこへ行くんですか?
もちろん、外貨準備として政府の口座に積み上がります。
わあ、繋がった。つまり、今日本が持っている世界トップクラスの巨額の外貨準備って、過去に円高を食い止めるために市場から買い上げた外貨がそのまま積み上がってできた山ということですか?
まさにその通りです。
へえ。
日本は過去、長年にわたって輸出に不利な円高に苦しめられてきました。それを防ぐために幾度となく円売りドル買い潜入を行ってきたんです。
はい。
その過去の買入の積み重ねが現在の巨大な外貨準備山高を形成する大きな要因の一つになっているんですよ。
面白い。単にアメリカが好きで国債を買い集めていたわけじゃなくて、自国の通貨を守るための防衛戦の痕跡みたいなものなんですね。
ええ、そういう見方もできますね。
為替買入は単なる資産の入れ替えであって、税金の乱使いではない。ものすごくクリアになりました。
資金の流れが見えてくるとニュースの解像度がぐっと上がりますよね。
本当ですね。ただ、ここまでわかった上であえてちょっと意地悪な質問をさせてください。
はい、どうぞ。
買入が単なる資産の交換だとしてもですよ。買入して一時的に円高方向に押し戻しても、数日後や数週間後にまた元の円安水準に戻ってしまうことってよくありますよね。
ええ、よく見られる光景です。
それって結局、焼け石に水というか、買入した意味がなかった失敗だったんじゃないですか?
それは非常によくある、そして的厳しい指摘ですね。しかし、その評価は買入の目的を誤解していることから生まれているんです。
誤解ですか?
はい。為替買入の目的は、特定の為替レートを永遠に固定し続けることではありません。
違うんですか?なんか1ドリ140円の防衛線みたいなものを作って、そこを刺繍するためのものだと思ってました。
違います。最大の目的は過度な変動、つまり急激な値動きを一旦抑え込むことなんです。
スピード違反を取り締まるみたいな。
ええ。ですから、買入が成功だったか失敗だったかを評価するときには、単に元のレートに戻ったかどうかだけでなく、3つの視点を持って相場を見る必要があるんです。
3つの視点、何ですか?
1つ目は値幅です。買入によってどれくらい相場が反対方向に動いたか。
値幅、はい。
2つ目は速度。それまで続いていた急激な一方方向への動きが買入後にどのようになったかどうか。
速度ですね。
そして3つ目ない継続性。その変化した状態がどのくらいの期間続いたかです。
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値幅、速度、継続性ですね。
ええ。為替相場という巨大な海は、日本と海外の金利差や各国の金入政策、景気の見通しといった根本的な要因、ファンダメンタルズという引力で動いています。
ファンダメンタルズ。
はい。為替買入という一時的な力だけで、その根本的な引力をすべて消し去ることは不可能なんです。金利差がある限り、いずれまた円安方向へ圧力がかかるのはある意味自然なことなんですよ。
なるほど。買入は経済の重力をかき換える魔法の杖じゃないんですね。
そういうことです。
なんか下り坂を猛スピードで暴走している車のブレーキを外から思いっきり踏んであげるようなものですね。
いい例えですね。
最終的に坂の下まで折り切ってしまったとしても、途中でブレーキを踏んだ意味は全くなかったとは言えない。そのまま壁に撃突して経済がクラッシュするのを防いで、安全な速度に落としたことにこそ意味があるわけだ。
その通りです。それに加えて、市場の陶器筋、つまり相場を煽って儲けようとしている人たちの心理に、これ以上やりすぎるとまた政府の買入が飛んでくるかもしれないという警戒感を植え付ける効果もあります。
なるほど。心理戦でもあるんですね。
ええ。この心理的な牽制こそが速度を落とす大きな役割を果たしているんですよ。
いや、ものすごく全体像が見えました。つまり、外貨準備も為替買入も、何兆円という見出しの金額の大きさだけで一騎一遊していると、実態を完全に見やまるってことですね。
ええ。本日の結論としてはまさにそこに行き着きます。外貨準備をそのまま国内に運べる巨額の現金と考えたり、為替買入を同じ金額の税金を消費しつくす取引と考えたりしないこと。
はい。
ニュースを見るときは、政府は今どんな資産を持っているのか、何を売って代わりに何を受け取ったのか、そして何のためにその資産を持っているのかという裏側にある資産の流れに注目していただきたいですね。
何兆円という数字の裏にある資産の交換をイメージする。これを知っているだけで、明日からの経済ニュースの見え方が全く違う風景になりそうです。
へえ、きっと面白くなると思いますよ。
さて、ここまで巨大な数字の裏側を論理的に解き明かしてきたわけですが、最後に資料を読み込んでいて気づいた、ちょっと不思議で少し含みな視点を皆さんに共有してもいいですか?
もちろんです。どんな視点ですか?
外貨準備の残高って、政府が新たに買入で売買を行わなくても、為替レートが変動したり、持っているアメリカ国債の市場価格が変化するだけで、評価額が勝手に上下しますよね。
ええ、資産の価値は日々、帰国と市場で変動していますから当然そうなります。
ということは、私たちがニュースの見出しで、日本の外貨準備高が過去最高更新、とか激減して危険水位に、と大騒ぎしているとき、
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はい。
実は政府は一本動かしていなくて、ただ相場の波で計算上の数字が膨らんだり縮んだりしているだけの幻の数字を見ているのかもしれないんですよね。
なるほど、確かにその通りですね。
私たちが普段見ている経済の巨大な数字、果たしてどこまでが政府の意図した実態で、どこからが単なる相場の波が作り出した評価額の波紋なんでしょうか。
深い問いですね。
直感的なお財布の感覚からは、もう遥か遠くに来てしまった気がします。
次にニュースを見るとき、皆さんもぜひこの数字の正体について考えてみてください。
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