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- もしですね、クラスメイトが、自分の人種について、ちょっと自虐的なジョークを言ったとき、あなたが共感を示すために、絶対にやってはいけないことって、何だと思いますか?
- そうですね。日本人だと、良かると思ってやってしまいがちなことですよね。
- そうなんです。これ、正解は、一緒に笑うことなんですよ。
- へえ。
- これ、ちょっと意外じゃないですか?
- 今日のこの深掘りではですね、私たちが普段異文化コミュニケーションって呼んでいるものの、もっとこう生々しくてヒリヒリするような真実の姿に迫っていきたいなと。
- はい。非常に興味深いテーマですね。
- 今回の情報源は、2010年代に家族でアメリカへ移住された日本人女性のナッキーさんが執筆したエッセイです。
- へえ。
- グローバルな環境で働く人とか、あとは多様な価値観に触れたいと考えているリスナーのあなたにとってですね、教科書に載っているような綺麗なビジネスマナーなんかではない。
- はい。
- 過民族国家というジャングルで生き抜くための真のサバイバル術とか、暗黙のルール、この辺りを解き明かしていきます。
大人が陥る罠なんかは、かなり強烈なアハテイケになるんじゃないかなと。
- そうですね。
異文解の適用って聞くと、多くの人は新しい言語とかスキルを足していくことだって考えがちじゃないですか。
- ああ、わかります。
英語のフレーズをたくさん覚えるとかそういうことですよね。
- ええ。
でも今回提示されたエピソード群から見えてくるのはですね、むしろ自分の中に無意識に根付いている文化的な反射神経、これをいかに抑え込むかっていう非常にタフな自己制御のプロセスなんですよね。
- いやあ、自己制御ですか。
よし、ちょっとこれを紐解いてみましょうか。
- はい。
- まずはですね、小学校1年生でアメリカのインターナショナルスクールに放り込まれたナッキーさんの長男のエピソードからです。
- ええ。
- 彼は1歳までドイツ、3歳までイギリスで過ごしたんですが、その後日本で3年間暮らしたことで見事に英語力がゼロにリセットされていたそうなんです。
- まあ子供の言語習得って早いですけど忘れるのも早いですからね。
- そうなんですよ。で、登校初日、言葉がわからず、がっくりと肩を落として登校する彼にお母さんが授けた最初の武器、これがたった2つの言葉だったんです。
- ほう。
- それが、メイアイ、してもいいですか?と、イッツマイン、僕のものだよ。この2つでした。
- なるほど。メイアイとイッツマインですね。
- はい。でもちょっと待ってください。確かに大事な言葉ですけど、いくらなんでも語彙が少なすりませんか?
弱肉強食の生一の世界を、この幼児向けのフレーズ2つでどうやって生き残るっていうんでしょうか?
- これですね、表面的な単語として見るとそう思われるかもしれません。でもここで非常に興味深いのはですね、これがコミュニケーションというより、ネットワークのセキュリティ構築に非常に近い概念だっていうことなんです。
- セキュリティ構築ですか?
- はい。イッツマインはですね、自分の領域への不正アクセスをブロックする強固なファイアウォールなんです。
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- ああ、なるほど。
- 一方で、メイアイは他社のネットワークに接続させてもらうための正式なハンドシェイクのプロトコルなんですよ。
- これってなんか、アイテムを何も持たずにRPGゲームの難関ステージに放り込まれたプレイヤーにですよ?
- ええ。
- お母さんがこの2つのチートコードだけ持っていきなさいって最強の魔法を与えたようなものですよね?
- まさにその通りです。自己主張をしなければ誰も空気を読んで気遣ってはくれない世界ですからね。
- いや、本当にそうですね。だからこそ、It's Mineで自分の権利と所有物を明確に主張して守り抜く。
そして、メイアイで相手の領域を侵すらないという共存のルールを示す。
- なるほどなあ。この個人主義社会の最も基礎的なOSがこのたった2号に集約されているわけです。
- 実際に彼はですね、休み時間にコンピューターを独占している子に対してメイアイと言いながら指を指すことで見事にその難関をクリアしたそうなんです。
- 素晴らしい実践力ですね。
- しかも彼の場合イギリス式教育の名残も持っていたんですよ。
先頭の子がドアを開けて待っていて、通る子がみんなセンキューっていうあの紳士淑女の文化ですね。
- ああ、それは非常に強力な組み合わせですね。イギリスのセンキューという社会の潤滑位を持ち合わせながら、
アメリカのメイアイ、イツマインで個人の境界線をバシッと引く。
6歳にして異文化はサバイブするための強固なセキュリティと円滑な通信プロトコルの両方を稼働させているわけです。
- だからわずか半年で友人を家に泊めるほど適応したっていうのもすごく納得です。
- ええ、本当に見事です。
- ただですね、6歳の彼がこの基礎的な境界線を学んでいく一方で、年齢が上がるとその境界線って目に見えない、もっと複雑なものになっていきますよね。
- そうですね。社会的なリュールが絡んできますから。
- ここから中学生から英語環境に入った次男のゲンタ君のエピソードに入ります。
ここからは何を言うかではなく、何をしてはいけないかという話にシフトしていきます。
- はい。
- 彼が入学早々、日本人の知的な友人ケン君から教わった鉄則。
それが冒頭でお話しした、絶対に人種差別を匂わせる発言はしないこと。
そして最も重要なのが、黒人の生徒たちが自分たちで自虐的な発言をして笑い合っていても、絶対に一緒になって笑ってはいけないというものでした。
- これは多様性社会における最も繊細でかつ致命的なルールの一つですね。
- 正直なところ、日本で生まれ育った私からすると、これってすごく葛藤があるんです。
リスナーのあなたもそう思いませんか?
- 日本だと空気を読むことが重視されますからね。
- そうなんですよ。
日本では誰かが自虐ネタを言ったときに無表情でいると、逆にノリが悪いなとか冷たいなって思われますよね。
- ええ。
- 一緒に泳いで笑ってあげるのが、共感とかあなたのことを受け入れていますよっていうサインになることが多いじゃないですか。
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- そうですね。
- でもアメリカの多様性の中では、それが全く逆の意味を持ってしまうっていうことですか?
それってどういうメカニズムなんですか?
- そこで重要になるのが、イングループ、つまり内集団とアウトグループ、外集団という社会心理学的な壁なんです。
- 内側と外側ですか?
- はい。同じ人種やマイノリティといった属性を共有する内側の人間同士であればですね、歴史的な背景や社会から受けてきた痛みを共有しているわけです。
だからこそ、自称的なジョークが一種の連帯感とか痛みを和らげるガス抜きとして機能するんですよ。
- ああ、少し腑に落ちてきました。
これって日本国内のローカルな話題に置き換えると、
例えば関西出身の人たちが、大阪ってほんと柄悪いよなーって笑い合っているところにですよ、
東京出身の人が、そうそう大阪って柄悪いよねーって乗っかったら、一気に場が凍りつく、あの感覚に近いですか?
- メカニズムとしては非常に近いですね。
内側からの自虐は許されても、外側からの同調は攻撃とか見下しに変換されてしまう。
- なるほど。
- ただ、アメリカの他民族社会におけるそれは、単なる地域性のプライドの違いなんかじゃないんです。
- と言いますと?
- 奴隷制度や公民権運動といった、非常に重く血の流れてきた歴史的文脈に直結しています。
だから、外側の人間がそのジョークを消費して笑うことは、共感ではなく、無神経な搾取、あるいは差別の容認と受け取られてしまうんです。
- いやー、怖いですね。
つまり、悪気なくただ仲良くなりたいっていう思いから笑ってしまっただけで、社会的な死を意味するほどの非難を浴びるリスクがあるっていうことですよね。
- その通りです。
- ケン君が中学生にして教えたのは、他者の歴史的な痛みの領域に土足で踏み込まない、という極めて高度な知性だったんですね。
- ええ。言語の文法よりも遥かに重要な社会の文法と言えますね。
- そして、ここからが本当に面白いところなんですが、このゲンタ君が中学生にして回避した罠にですね、大人であるお母さん自身が見事にはまってしまうというエピソードがあるんです。
- なるほど。大人が自分の文化的な成功体験をそのまま持ち込んでしまったわけですね。
- そうなんです。当時、アメリカでは教育熱心すぎるアジア系の母親を揶揄するタイガーマザーというパロディ動画が流行っていました。
- ああ、よくあるステレオタイプですね。
- はい。そこでナッキーさんはですね、英語クラスのチューターである白人のアメリカ人男性に対して、あるあるネタとして共感を示すつもりでその動画を見せたんです。
- それは先ほどのイングループとアウトグループの法則をプロフェッショナルな場で踏み抜いてしまったわけですね。
- そうなんですよ。ナッキーさんとしては、自分がアジア系の母親、つまりイングループだから、これを自虐として提供すればバガワムだろうと考えたんです。
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- ええ。
- でも結果として、チューターの男性は表情一つ変えず、ノーコメントを貫いたんです。
これ自分ではちょっと面白い話題のつもりで投げたボールがですね、実は絶対に触ってはいけない社会的な違いだったという状況ですよね。
その場の空気を想像するだけでちょっと胃が痛くなります。
- ここでリスナーのあなたにも注目していただきたいのは、このチューターの沈黙と真顔の理由なんです。
- はい。なぜ真顔になったんでしょうか。
- 彼は決してユーモアを理解できなかったわけではないんですよ。
彼は多様性社会を生きる、良識ある大人としてのシステムをただ正常に作動させただけなんです。
- システムの作動ですか。
- うん。たとえ当事者が自虐として持ち出したものであっても、公の場や教育の場で他者のルーツや属性に基づくステレオタイプをエンターテイメントとして消費すること。
- はい。
- それに同調して笑うことは、差別や偏見の再生産に加担する行為になってしまうんです。
- なるほどな。
- だからこそ、彼は自分の個人的な感情や目の前の相手への愛想笑いを強制的にシャットダウンして、ノーコメントという態度で一戦を引いたんですよ。
- いや、相手を傷つけないためだけではなくて、自分自身が差別を容認する側に回らないための強固な防衛本能だったんですね。
- そういうことです。
- 島国から来たお母さんに無言で本当の作法を突きつけたわけだ。
- ええ。
- そしてこの属性に対する感覚の違いっていうのは、ジョークの場だけじゃないんです。
日常会話における人物の描写において、日本とアメリカの感覚がいかに乖離しているかという大きなテーマにつながっていきます。
- 人物描写の違いですか?
- はい。当時、イギリスの女子学生たちがSNSを通じて、過激派組織イスラム国ですね、ここに合流してしまった事件がありました。
- ああ、ありましたね。連日ニュースになっていました。
- ええ。あの時、アメリカではメディアも一般市民も、誰も彼女たちの人種的ルーツを憶測で語らなかったそうなんです。それは差別発音になりうるからです。
- なるほど。
- 一向で、日本の感覚はどうでしょう?例えば、日常会話で、知り合いのアメリカ人がね、って話をした時、
え、その人って白人?それとも黒人?ってドイレクトに聞いてくる人が結構いますよね。
- 確かに、ある気なく聞いてしまうことはありますね。
- 石縄のあなたも、頭の中で人物像をありありと思い浮かべるために、全く悪気なく、どこの国の人?とか、肌色は?って聞いてしまった経験ありませんか?
- 日本の文化圏だと、それを単なる視覚的な特徴とか、背の高さと同じようなプロフィールの一部として、無邪気に尋ねてしまう傾向がありますよね。
- でも、それってやっぱりアメリカの社会では、ものすごく危険な行為なんですよね。単純に頭の中で顔をイメージしたいだけなのに、なぜそこまでタブー視されるんでしょうか?
- これをもう少し大きな視点と結びつけて考えてみるとですね。
- はい。
- アメリカ社会において、属性で人を分類するという行為自体が、長年にわたる差別の構造そのものだからなんです。
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- 構造そのもの。
- ね。肌の色やルーツを、特定の行動や性質と結びつけて語ることは、これまで多くの悲劇を生んできました。
- そうですね。歴史的に。
- だからこそ、それを日常会話の単なるタグ付けとして軽々しく扱うことはできないんです。
人種は単なる属性ではなく、触れるべきではない性域として扱う。
これが、多様なルーツを持つ人々が共存するために生み出した一種の安全装置なんですよ。
- なるほど。日本にいると、良くも悪くもみんな同じという前提が強いから、違うところを見つけてラベルを貼ることで相手を認識しようとする。
- ええ。
- でもアメリカでは、そのラベル付け自体が歴史的な地雷を起爆させる行為になり得る。
だからこそ、みんな常に繊細なアンタナを張り巡らせて、言葉を選び、周囲を見て行動しているんですね。
- そうです。ジャングルには、ジャングルの命がけで築き上げてきた均衡がある、ということですね。
- いやー、深いですね。さて、ここまで聞くと、
- うわー、アメリカってなんて地雷だらけで息苦しい場所なんだ。ただビクビクして縮こまるしかないのか、って思ってしまうかもしれません。
- まあ、そう感じる方も多いでしょうね。
- でも、この深掘りの最後を飾るのは、中学生の次男、玄太くんが見せたそのルールを書くような見事な書生術なんです。
- あ、字逆ネタで笑ってはいけないと学んだ、あの玄太くんですね。
- はい。入学から半年ほど経った頃、同じ学校に通う日本全の親御さんたちが、
学校の食堂のランチ行列が長すぎて子供が困っている、と愚痴をこぼしていたそうです。
- ええ。
- でも、玄太くんに聞いてみると、彼は全く困っていないと言うんです。
どうやっているかというと、行列を見渡して友人を見つける。
- はい。
- そしてその友人に近づいて、「What's up?」と声をかける。で、そのまましれっと列に割り込ませてもらうんだそうです。
- それはまた非常に大胆なアプローチですね。
- つまりこれはどういうことなんでしょうか?ちょっと不思議じゃないですか?
お兄ちゃんは、恋愛と他者の領域に配慮して許可をもらっていましたよね?
- そうですね。
- でも、弟の玄太くんは、順番待ちという社会のルールを完全に無視して割り込んでいる。
なぜこれでもめごとが起きないんですか?
- そこがですね、インフォーマルなソーシャルキャピタル、つまり社会関係資本の力なんです。
- ソーシャルキャピタルですか?
- はい。彼は割り込ませてと許可を求めているわけではないんですよ。
ワッツアップと声をかけ、親しげに会話を始めることで、周辺の人間に対して、
私はこの人物の仲間であり、ここに正当な理由があるという視覚的なシグナルを送っているんです。
- ああ、列に並んでいる赤の他人に対して、
俺はこいつの友達だから、グループとして一緒に並んでいるんだぞという既成事実をアピールしているわけだ。
- その通りです。公式な順番というルールを、個人の関係性という見えない力で上書きしているわけです。
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- なるほど。
- テン君から学んだ、人種のタブーには踏み込まない、というトラブルを避けるための極めて資料深い繊細なアンテナ。
- ええ。
- それと同時に、現地の友人たちから学んだ、目的を果たすためのづといサバイバル術。
この一見矛盾する二つの能力を両立させることこそが、他民族社会というジャングルを生き抜くマスタークラスの技術なんですよ。
- いや、お見事です。ただ恐れて縮こまるんじゃなくて、システムの構造と地雷の位置を正確に把握した分で、
ルールの抜け道を波乗りするように乗りこなしているんですね。
- 本当にしたたかな生命力です。
- さて、今回の情報源から得られた試験を振り返ってみましょう。
言葉が通じない環境で、いつまいんで自分の領域を確保し、名誉愛意で相手に許可を求めた6歳の兄。
- ええ。
- 自虐のタブーや人種の性域という複雑なルールを学びつつ、
What's Appで行列をショートカットする舌高さを身につけた中学生の弟。
- はい。
- 一方で、大人はどうだったか。
タイガーマザーの動画で、自分の文化圏のノリで無邪気に笑いを取りに行き、
良識の壁に激突して思い知らせられました。
- そうですね。子供たちは周囲を観察して、新しい環境のルールをスポンジのように吸収し、適応していきました。
- ええ。
- したし大人は、すでに自分自身の文化や価値観が完成していますから、
異文化の暗黙のルールに飛び込んだとき、それをアンインストールするのが非常に難しいんですよ。
- そう、そこなんですよね。
今回の深掘りを通して、リスナーのあなたに最後に考えていただきたいある問いがあります。
- はい。
- 異文化に適応するということは、あのESLのチューターのように、常にアンテナを張り巡らせて、
自分が良かれと思って発動しそうになる共感の笑いとか、悪気のない質問を意図的に押し殺し、時に真顔を貫くことが求められます。
私たちが異文化に適応し、良識ある大人として振る舞うとき、私たちは自分自身の文化的なアイデンティティや人間らしいユーモアを一体どこまで削り落とさなければならないのでしょうか?
- これは、多様な世界を生きる私たちが常に考え続けなければならない非常に深く重い課題ですね。
- そうですね。どこまで自分を保ち、どこからを削るのか、ぜひあなた自身のこととして考えてみてください。
今回も深い分析にお付き合いいただき、ありがとうございました。
それでは、また次回の深掘りでお会いしましょう。