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さあ、今回の深掘りセッション、早速始めていきましょうか。
海外旅行に行った時とかにですね、 うっかり変圧器を持たずに、日本から持参したヘアドライヤーを、現地のコンセントにそのまま挿しちゃった経験ってありませんか?
ああ、やっちゃうやつですね、それ。
そうなんです。一見ね、コンセントの穴の形は似ていて、で、同じ紙を乾くすっていう目的のインフラに見えるんですけども、
根本的な電圧の仕様が全く違うから、スイッチを入れた途端にパチッとショートして煙が吹いてしまうという。
そうですね。あの、焦げ臭い匂いとともに、お気に入りのドライヤーが一瞬でただのプラスチックの塊になる瞬間ですよね。
まさにそれです。本当に悲しい瞬間なんですけど。
ええ。事前知識がないまま、見た目が同じだから機能も同じだろうと思い込むと、痛い目を見るという典型ですね。
そう、まさにそこなんです。そして今回私たちが深掘りしていくソース資料はですね、この電圧のミスマッチみたいな現象が、家電ではなくて人間の髪の毛で起きてしまったという。
はい。
あの、ナッキー氏による海外エッセイなんですけど、タイトルがですね、アメリカ生活、不活エリーをオーダーしたらツタンカーメンになった話、というものでして。
ツタンカーメンですか。
そうなんです。これドイツ、オランダ、そしてアメリカという三か国での美容院体験が綴ざれているんですが、単なるよくある海外での失敗談じゃないんですよ。
ほう。
異文化における見えない仕様の違いが引き起こす、ある種の喜劇であり悲劇の記録なんですね。
なるほど。タイトルにあるツタンカーメンのインパクトが相当強烈なんですけれども。
ええ、めちゃくちゃ気になりますよね。
はい。ただここで私たちが注目したいのは、なぜそんな悲劇が起きたのかというそのメカニズムの部分なんですよね。
メカニズムですか。
ええ。文化的な美の基準と生物学的な身体的特徴がどう衝突するのか。そこには実は非常に論理的な理由が隠されているんです。
へえ、論理的な理由。なんかすごく面白そうです。えっと、じゃあまずは著者がドイツに住んでいた頃のエピソードから入っていきたいんですけど。
はい、ドイツ時代ですね。
そうです。現地の美容院に果敢に挑んだ若い日本人留学生たちがですね、次々とアフロヘアーになって帰ってくるという軽減症が起きていたそうなんですよ。
アフロヘアーにですか。
はい。これ素朴な疑問なんですけど、なんでアフロになっちゃうんですかね。なんかこう、言葉の壁でゆるふわにしてくださいっていうニュアンスが伝わらなかっただけなんですかね。
ああ、言葉の問題もゼロではないでしょうね。でもここで非常に興味深いのは、根本的な原因がそこではないということなんです。
え、違うんですか。
物理的な紙質の違いが、そのまま薬剤の強さという標準設定の違いに直結している点なんですよ。
標準設定。
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はい。一般的な白人の方の紙質というのはですね、非常に細くて軽いんですね。
ああ、確かに。なんか柔らかそうですよね。
そうなんです。ヘアスティック1本でふわりとまとまるようなシルクのような軽やかさがあるんです。
それに比べて日本人のあの重くて太いしっかりした直毛とは全然違いますよね。
全く違いますね。そしてここからが重要なのですが、紙が細くて柔らかいということは、実はパーマ液が浸透しにくい、つまり効きが悪いということでもあるんです。
ああ、なるほど。柔らかいから効きやすいのかと思ったら逆なんですね。
そうなんです。弾かれちゃうんですね。ですから現地の美容院では日本の基準からすると劇薬に近いような、かなり強めのパーマ液が標準の強さとして設定されているんです。
そういうことか。じゃあちょっと弱めの薬でお願いしますって言えば済む話じゃなくて、そもそもお店側にとっての普通が日本人にとっては強すぎるってことですか?
まさにそうです。先ほどのドライヤーの例えで言うなら、変画機なしで220ボルトの電流をドカンと流すようなものです。
うわあ、それはショートしますね。
ええ。薬剤が効きやすいアジア人の太い髪に、白人用の強力なパーマ液をデフォルトで使えば、当然チリチリに縮れ上がってアフロ状態になってしまう、そういう物理的な理由があるんです。
恐ろしいですね。いやでもちょっと待ってください。同じドイツに住んでいる日本人でも、駐在院の奥様たちはアフロになっていないんですよね?
はい、ソース資料によればそうですね。
留学生だけが犠牲になっている。これって行く美容院の価格帯が違うとか、そういうことなんでしょうか?
いえ、決定的な違いは情報網もんです。
情報網ですか?口コミみたいな?
ええ。駐在院のコミュニティには、あそこの美容院はアジア人の扱いを知っているとか。
ああ、なるほど。
あるいは、帰国するまで現地の美容院には絶対に行くな、といった先輩たちから受け継がれる強固なサバイバル情報が存在するんです。
サバイバル情報、まさに生き残りをかけた情報船ですね。
そうなんです。一方で、単身でやってきた若い留学生にはそのネットワークがないですから。
いやあ、単なる科学反応の悲劇じゃなくて、情報格差が生み出した悲劇でもあるわけですね。
その通りです。
ちなみに著者自身はですね、そのアフロになってしまってどうしようって泣きそうになっている留学生を慰めつつ、心の中では爆笑していたらしいんですよ。
なかなか怖くもない面ですよね。メグライアンのようだったかもしれないなんて解雇されていますし。
本当に人間味があって面白いですよね。でも彼女自身は、この他人の犠牲からしっかり学んで、ドイツでは絶対に美容院に行かないという鉄壁の防御策をとっていたわけです。
他者の失敗を観察して自己防衛するというのは、未知の環境においては非常に合理的な戦略ですよね。
ええ。
しかしその鉄壁の防御が、次の滞在国であるオランダで、ある予想外の形であっさりと解かれることになります。
そうなんですよ。ドイツでの教訓からすれば、現地の美容院には絶対に行くなが正解のはずですよね。
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はい。本来なら。
でもオランダで、著者が日本人の知人の髪がものすごくツヤツヤになっているのを発見するんです。
ええ。
で、どうしたのそれって聞いて、ある美容院を紹介されるんですよね。それがなんと韓国人オーナーの美容院だったという。
はい。
しかも驚くことに、そのお客さんの半分以上が黒人の女性たちだったと。
そう記録されていますね。
ちょっと待ってください。オランダで、韓国人の美容院に黒人の女性たちが集もっている。なんか情報量が多すぎて頭が追いつかないんですが。
一見すると不思議な組み合わせに思えますよね。でも実はこれ、非常に理にかなったエコシステムなんです。
エコシステムですか?
ええ。時代背景としては、西暦2000年頃のお話です。ちょうど冬のそなたなどの影響で。
ああ、ありましたね。
韓国の女優たちの美しいロングストレートヘア、いわゆる色毛矯正の技術が世界的に脚光を浴び始めていた時期なんですよ。
確かに。日本でもあの頃みんなこぞって色毛矯正当ててましたもんね。サラサラにするやつ。
ええ、そうです。でもなぜそこに黒人の女性たちが集まっていたのか。
そこなんですよ疑問なのは。
黒人女性の多くは非常に強い癖気を持っていらっしゃいます。彼女たちの髪をまっすぐに滑らかに整えたいという強いニーズと。
はい。
韓国系美容院が持っていた強力な色毛矯正技術が見事に合致したんです。
ああ、なるほど。パズルのピースがカチッとはまった感じですね。
ええ。異なる人種が色毛矯正という共通の目的のために、同じコミュニティ、つまりその美容院に集まっている。これは非常に面白い事実です。
わあ、なんかすごく素敵な話ですね。ことごも文化も違うのに髪の悩みっていう一点だけでつながれる、一種の秘密のオアシスを見つけたようなワクワク感があります。
そうですね。悲劇から一転しての大成功体験です。
著者自身も長年の癖毛の悩みから解放されて顔の作りまで美しくなった気分だって大絶賛していますしね。
ええ、大満足の結果を得たわけです。
ただ、これだけはどうしても突っ込みたいんですけど。
何でしょう?
このお店の料金システムですよ。レジ前でメジャーで髪の長さを測って1センチ長くなるごとに値段が上がるっていう。
ああ、あの奇妙な会計システムですね。非常にユニークの重量課金制というか。
いやいや、重量課金ってかっこよく言いますけど、店員さんが髪を引っ張る強さ次第で数センチなんて簡単に誤差が出るじゃないですか。
まあ、おっしゃる通りですね。
これって究極の自家というか、どんぶり勘定ですよね。
確かに厳密な価格設定とは言えないシステムですよね。
しかし、著者にとってはそれすらも気にならないほど仕上がりのクオリティが高かったということでしょう。
まあ、結果が良ければ全て良しみたいなところはありますからね。
ええ。そして重要なのは、彼女の中で海外の美容院に対する恐怖や不信感がこのオランダでの成功体験によって完全に安心感へと上書きされてしまったという点です。
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ああ、なるほど。安心感。そしてリスナーの皆さんもお察しの通り、その安心感という油断がですね、次のアメリカでのクライマックス、つまり最大の悲劇への引き金になってしまうわけですね。
その通りです。アメリカに渡った著者はオランダでの成功体験から気が緩んでしまいまして、事前の下調べを一切せずにネットの好評価だけを頼りに現地の美容院を予約してしまうんです。
いやー、フラグが立っちゃいましたね。そこで著者は、日本の女優である深津恵理さんのショートヘアーの写真を見せるんですよ。
ええ、少し短めのスタイルですね。
すっきりしてて、頭の形が小さく見える、あの洗練されたスタイルです。でもアメリカ人の美容師はその写真をたった1秒。
はい。
一別しただけでいきなりハサミを入れ始めるんです。
顧客の不安をよそに自信満々で作業を進めていくわけですね。
本来、アジア人の太くて重い直毛を白人とは違う骨格に合わせて切るというのは、作業中に何度も写真と見比べて微調整するべき難易度の高い仕事のはずなんですが。
そうですよね。慎重に言ってほしいところですよ。しかも切り方が昭和のお母さんが子供の髪を切るようなパツンパツンの横切りだったと。
ええ、ハサミを縦に入れず横にまっすぐ切っていくスタイルですね。
これちょっと物理的なメカニズムをお聞きしたいんですけど。
はい。
なぜパッツン切りをするとツタンカーメンになってしまうんですか?
深津恵理さんの髪型には全然見えないですよね。
それはですね、タミノケの気化学的な問題と言えます。
気化学的ですか?
ええ、アジア人の髪は1本1本が太くて硬く、自然な波打ち、ウェーブがほとんどありません。
それを全く段、つまりレイヤーを入れずに水平に切り揃えるとどうなるか?
えっと、どうなるんでしょう?
重力に従ってまっすぐ落ちた髪の毛の断面が毛先で一箇所に集中するんです。
そうするとお互いに押し合いへし合いして、外側にぶわっと広がってしまうんですよ。
ああ、上から下に向かってどんどん体積が増えていくから、結果的に三角形というかヘルメットみたいな形になっちゃうんだ。
その通りです。白人の型の細くて柔らかい髪なら、同じ切り方をしてもペタンと下に落ちるだけなんですが。
ええ。
アジア人の髪だと末広がりのピラミッドが形成されてしまうんです。
最悪のピラミッドですね、それ。著者は目の前で自分の頭がどんどん巨大化していくのを見てパニックになるんですが、ここで言葉の壁が立ちはだかるんですよね。
はい、専門用語の壁ですね。
パッツン切りしないでとか、もっと段を入れてとか、髪をすいてとか、これ日本語なら一瞬で言えるじゃないですか。
ええ、そうですね。
で、いざ英語で言おうとしても。
ドンとカットイットストレートアクロスとか、ポイントカットみたいな表現はよほど準備していないと咄嗟には出てこないですよね。
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そうそう、これってまるでブレーキが壊れたジェットコースターに乗っているのに、緊急停止ボタンの英語表記が読めなくてパニックになっている状態ですよね。
まさに焦れば焦るほど言葉が出てこない。
そしてここからが本当に面白いところなんですけど、とどめのブローですよ。
ブローですね。
書者は必死にボリュームを抑えたいと思っているのに、美容師はドライヤーとブラシを使って、サイドの髪をこれでもかと外側へ外側へと大きく膨らませていく。
はい。
結果、鏡の中にいたのは不活エリではなく、黄金のマスクをかぶった3300年前の王、ツタンカーメンだったという。
なかなか劇的な結末ですね。
いや本当に笑い事じゃないんですけどね、想像したら面白すぎますよね。でも私どうしてもせさないんです。
と言いますと。
プロの美容師じゃないですか。お客さんが持ってきた写真と明らかに違う、まるでエジプトの壁画みたいな頭になっているのに。
ええ。
なぜ美容師は不活エリの小さくまとまった髪の写真を見たのに、真逆のツタンカーメンに向かってフルスロットルで突き進んだんでしょうか。単純にこの美容師がすごく下手だったってことなんですか。
いえ、これをより大きな視点、ビッグピクチャーに結びつけるとですね。
はい。
筆者は顔を引き連らせながら、ある真の理由に気づくんです。実はこれ、美容師のミスでも技術不足でもなく、美容師の視点からすれば大成功の傑作だったんですよ。
ちょっと待ってください。お客さんを古代のファラオにしておいて大成功ってどういう理屈ですか。
ここで再び標準設定、つまり彼らの文化における美の基準を思い出してみてください。
美の基準。
百人の髪質は細くて柔らかい。彼らの最大の悩みは何だと思いますか。
えっと、さっきペタンと落ちるって言ってましたよね。ということはボリュームが出ないことですか。
正解です。つまり彼らの文化圏では、いかに髪に豊かなボリュームを持たせゴージャスに見せるかが美しさの絶対的な基準なんです。
ああ、なるほど。
細い髪ではなかなか実現できないその圧倒的なボリューム感。そこに太くて重厚で豊かな毛量を持ったアジア人女性が現れたわけです。
うわあ、そういうことか。美容師からしてみれば自分が普段喉から手が出るほど欲しいボリュームを出すという表現を思う存分爆発させることができる最高の素材キャンバスがやってきたわけだ。
ええ、ふかつえりの写真はあくまでショートヘアにするという参考程度だったんでしょうね。
えーっと、そんな。
美容師の頭の中にあるこうすれば絶対に美しくなるゴージャスになるという強固な文化的フィルターを通した結果、
はい。
彼女の技術のすべてを注ぎ込んだ最高にボリューミーなツタンカーメンが誕生したわけです。だからこそ仕上がりを見て満面の笑みでボリューミーでゴージャスでしょうと言い放ったんです。
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なんてことだ。つまり美容師にとっては完璧なマスターピースだったわけですね。悪意もミスもなく、ただ100%の善意とプロ意識のすれ違いだったと。
そういうことです。美しさの定義が全く異なっていたんですね。美というのは普遍的なものではなく、欠乏しているものを補うプロセスで形成されるという深い洞察です。
いやー、これって髪の毛に限らない話ですよね。
と言いますと。
リスナーの皆さんも仕事とか人間関係で相手が良かれと思ってやってくれたことが自分の求めている基準と全く違って絶望した経験ってありませんか。
日常的に起こり得ることですね。
私たちは知らず知らずのうちに自分の常識というフィルターを通して相手のサービスを評価してしまっているんですよね。実はそれって相手が間違っているんじゃなくて単にお互いの正解の基準が違っているだけなのかもしれない。
そうですね。著者が素晴らしいのは帰宅して冷静になった後、この前提の違いに気づけたことです。
青い皿の下ではツタンカーメンも案外威風堂々と輝いていたのかもしれないと、自分の頭を一つの異文化の産物として捉え直しているんです。これは非常に高度な自己客観視ですよね。
本当ですね。単なる英語が通じなかったという表面的な失敗談の奥には、こんなにも物理的で文化的な断層が隠されていたんですね。
はい。私たちが異なる環境に飛び込むとき、相手の標準設定が何なのかを理解しようとする視点を持てるかどうか。それが悲劇を喜劇に変えるための鍵だと言えますね。
いやー深い。本当に深いセッションになりました。さて、今日のお話を通じてリスナーの皆さんにぜひ持ち帰っていただきたい考え方があります。
はい。著者にとって長年コンプレックスだった重くて太い髪は、自分と同じ基準を持つ社会では厄介なものでした。
ええ、そうですね。
でも別の文化圏のプロから見れば、彼らが渇望するゴージャスな表現ができる最高の素材になり得たわけです。
ええ。
これを聞いているあなたが今、自分のここが弱点だ、直さなければいけないと悩んでいる個性やスキル、それはただ、今あなたが所属している環境や業界のデフォルトの基準に合っていないだけではありませんか。
もし評価の軸が全く違う別の環境に移れば、自分の弱点が最大の強みに転じるかもしれない。これは非常に示唆に富む視点ですね。
そうなんです。もし別の美容師、つまり別の環境の前に座ったとしたら、それは誰かにとっての最高の素材として輝くかもしれません。
あなたが輝ける場所は、実は全く違う文化圏や業界にあるのかもしれないですよ。皆さんはどう思いますか。ぜひ考えてみてください。
はい、とても考えさせられるテーマでした。
ええ。それでは今回の深掘りはここまでにしたいと思います。最後までお付き合いいただきありがとうございました。