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🌋【耳毒GNB】人の記憶も“生成条件”がマーキングされているだけ…ってこと?
2026-09-01 34:58

🌋【耳毒GNB】人の記憶も“生成条件”がマーキングされているだけ…ってこと?

元ソース⬇️
https://youtu.be/SG1yBsDyevU

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感想

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00:00
はいどうも、薩摩訛りのみやけんです。
今回の耳毒GNB、ジェミニノートブックなんですが、
今回ね、ちょっと難しい内容になってて、しかも時間も長いです。
ですが、ちょっと時間をとって、集中して聞いてもらいたいなというふうに思っております。
なぜかというと、記憶とかの仕組みについて、私自身が結構思い違いというか、思い込んでいたところがあるなと思ってて、
もちろん今回話しされているものは、最新の科学研究の中の一つの実験結果を結びつけた一つの結論だったりするわけであり、
脳に関する研究を専門でやっていらっしゃる方もスタイフ会にもいらっしゃるので、
一概には一つの説ということではあるとは思うんですが、
かつて言われていたようなことというのはちょっと違うんだろうなということがいろんな実験を通して今語られているという話になると思います。
人の記憶がどうなっているかということ、私自分の記憶がどうなっているかということが分かると、
やっぱり人とのコミュニケーションの中においての一体はないとか、そういうのがいかに不毛であるかと。
そしてこの自分自身の記憶というのが、いかにそれこそAIに生成された画像のように曖昧なものかということを考えさせられるお話でございまして、
それを踏まえると正しいコミュニケーションとはどうあるべきかという先のことも考えられるなということで、
非常にこういう部分を把握しておくのは大事なことなんだろうなと思ったので取り上げさせていただいております。
では改めてちょっと長いですが、できれば聞いていただきたいなということで、
本編参りましょう。耳読GNPでございます。ではどうぞ。
いきなりなんですけど、あなたにちょっとお願いがありまして、
昨日の夕食、何を食べて、誰と一緒にいて、どんな匂いがしたかちょっと思い出してみてくれませんか。
03:01
どうでしょう。おそらく今あなたの頭の中にその時の映像とか感覚がこう、うっすらと浮かび上がってきたんじゃないかなと思うんですが。
うっすら浮かびますね。
ここで質問なんですけど、その映像って今脳のどこから出てきたんでしょうか。
なるほど、どこからかですね。
私たちって無意識のうちに脳の奥深くに大切な記憶の保管庫みたいなものがあって、
そこから古いアルバムのページをめくるように特定の写真を引っ張り出してきたんだって考えがちですよね。
そうですね。脳内写真感っていうメタファーはすごくわかりやすいですし、
私たち自身のアイデンティティを守る上でもすごく安心感のある捉え方なんですよ。
安心感ですか。
過去の自分という絶対的なデータが脳のどこかの棚に安全に保管されているってやっぱり思いたいですからね。
本当にそう思いたいです。でも今日その安心しきった常識を真っ正面から壊しに行こうかなと。
壊しに行きますか。
実はですね、あなたが今思い出したその夕食の光景、それを頭に思い浮かべたその瞬間、
あなたの脳内でその記憶はなんと分子レベルで一旦ドロドロの不安定な状態に逆戻りしているんですよ。
え、これただの言葉のあやとかじゃなくて、本当に物理的な現象として起きていることなんですよね。
そうなんです。ここが今日の探究の一番スリリングな部分でして。
はい。記憶っていうのは私たちが想像するようなステータティックなデータなんかじゃなくて、
常に後ろ行って変化し続ける生きたネットワークなんですよね。
というわけで今回のディープダイブのテーマは、脳に写真感はなかった記憶の正体を追う100年の探究です。
数十年にまたに毛科学とか心理学の膨大な研究を紐解きながら、
私たちが普段どこにどのように記憶を保存していると思っているのか、
その根本的な誤解を解き明かしていきます。
そして、私たちの脳が毎日いかにドラマチックでちょっと恐ろしいほどの編集作業を行っているのか、
その真髄に迫っていきましょう。さて、ここから少し解きほぐしていきましょうか。
よろしくお願いします。この探究が本当に面白いのは、
これが単なる生物学的なメカニズムの話で終わらないっていう点なんですよ。
と言いますと?
記憶がどうやって作られて、どう書き換えられるのかを知ることって、
最終的に今ここにいる私とは一体何者なのかっていう哲学的な問いに直結していくんです。
いや、ぞくぞくしますね。
じゃあ、その壮大な謎を解き明かすために、
まずは記憶が失われた時に何が起きるのかっていう少し悲劇的な原点から見ていきたいと思うんですが。
はい、1953年の症例ですね。
アメリカのヘンリー・モレーゾンという、当時27歳の男性の症例です。
脳科学の歴史において、長年HMというイニシャルで呼ばれ続けてきた方ですね。
06:02
そうです。彼の人生は、記憶というものを科学的に理解するためのいわばゼロ地点になったんです。
ゼロ地点?
はい。彼は幼い頃から非常に重い転換発作に苦しんでいまして、
その治療のために、脳の奥深くにあるカイバとその周辺組織、変動体などを外科手術で切除することになったんですよ。
手術自体は成功して、命を脅かすような転換の発作は劇的に減ったんですよね。
しかも、知能テストの点数なんか落ちるどころか少し上がって、
言葉遣いとか、ユーモアのセンスとか、元々の穏やかな性格も全く変わっていなかったそうですね。
そうなんですよ。でも、彼には決定的な変化が起きてしまったんです。
彼は新しい出来事を記憶に留めること、これが全くできなくなってしまったんです。
全くですか?
何十年にも渡って彼を観察し続けた、ブレンダー・ミルナーという有名な研究者がいるんですが、
HCMにとって彼女が部屋に入ってくる度に常に初対面だったんですよ。
病院の廊下で毎日顔を合わせるお医者さんのことも覚えられないですし。
毎日会っているのに?
ええ。自分が今何歳でどこにいるのかも数分おきに尋ねるような状態でした。
彼の意識は永遠に現在という数分間の中に閉じ込められてしまったんです。
それは壮絶ですね。でも不思議なのが、彼が全ての記憶を失ったわけではないっていう点ですよね。
そうなんです。そこがすごく重要で。
手術前の子供の頃の記憶とか、両親の顔とか、言葉の意味ははっきり残っていたんですよね。
さらに、例えば5、8、3みたいな数字を聞いて、数秒間だけ頭の中で半数して覚えておくような、
ごく短い作業用の記憶、これは普通に機能していたんですよね。
そこが最大のポイントです。つまり、彼から失われたのは、
今起きている新しい経験を長期的に残る形へと変換する機能、それだけだったんです。
なるほど。古い記憶を取り出すことはできる。数秒の記憶も保てる。でも、新しい長期記憶を作れないんです。
ちょっと待ってください。それって、例えるなら、あの巨大な倉庫自体は無傷で存在しているし、
古い荷物を取り出すこともできるのに、新しく届いた荷物を倉庫に運び込んで整理する、
搬入係だけがストライキを起こしていなくなっちゃった、みたいな状態ですか?
ああ、そのイメージにすごく近いですね。でも、さらに驚くべき事実が隠されているんですよ。
まだあるんですか?
実は、搬入係は一人ではなくて、複数いて、それぞれ全く違う入り口を使っていたんです。
違う入り口?
それが明らかになったのが、HMに行われた鏡影描写という有名なテストでした。
ああ、あの、鏡に映った像だけを頼りに、星の形をした二重線をはみ出さないようになぞるテストですね。
ええ、そうです。あれ、自分の手元は見えないから、右に動かそうとすると左に動いちゃって、
09:05
普通の人でも最初はイライラするほど難しいやつですよね。
その通りです。ミルナーは彼にこのテストを何日にもわたって繰り返し行わせたんですね。
でも彼は新しい記憶が作れないから。
そう、当然彼は毎回、こんなテストは見たこともない、初めてやりますって答えるんですよ。
記憶がないんですから。
ですよね。
そうすると、日曜ごとに明らかにミスが減って、驚くほどスムーズに星をなぞれるようになっていったんです。
しかも、その浄化スピードは、記憶に全く障害のない一般の人と変わりませんでした。
記憶がないって言ってるのに、体はやり方を覚えているってことですか。これ本当に不思議ですよね。
つまり、今日何を食べたかとか、あの人と何を話したかといった語れる記憶、いわゆる陳述記憶と、
自転車の乗り方みたいな体で覚える手続き記憶、これらは脳の中で全く別のルートを通ってるってことですか。
その通りです。言葉で説明するための記憶の入り口である会話は失われても、運動を学習するための別の入り口は無傷だったんです。
なるほど。
だから、密かに別のルートで経験が蓄積されていたんですね。
記憶が一つの大きな塊ではなくて、複数の異なるシステムで成り立っていることが、この時初めて証明されたんです。
すごい発見ですね。でも、そこで一つの巨大な疑問にぶち当たりませんか。
会話がその陳述記憶の入り口だということが分かったなら、その入り口を通った荷物が行き着く先、つまり本当の保管場所は脳のどこにあるのかってことですよね。
実は、この記憶の物理的な痕跡のことを1904年にリヒアルト・ジェーモンがエングラムと名付けていました。
エングラム。
そして、HMの省令の出るよりも前から、このエングラムの保管場所を血神になって探していた人物がいるんです。
心理学者のカール・ラッシュリーです。
ラッシュリーさん。
彼はなんと30年もの間、ネズミを使ってこのエングラム探しに没頭しました。
30年ですか。相当な執念ですね。具体的にはどんな実験だったんですか。
ネズミに迷路の構造を完全に覚えさせた後、そのネズミの脳の様々な部位を結果的に切り取って、迷路の記憶がどこに保存されているかを突き止めようとしたんです。
大脳皮質の前を削り、後ろを削り、横を削りと、特定の場所を切り取れば、あ、迷路の記録が切れたってなるはずだと信じて。
それって最初の写真館のメタファーで言うなら、写真の右端をハサミで切り取れば、そこに写っていた人が見えなくなるはずだっていう発想ですよね。
まさにそうです。
でも結果はどうだったんですか。
彼の期待は無残に打ち砕かれました。脳のどこを削っても、ネズミは迷路を完全に忘れることはなかったんです。
えー、どこを削っても?
もちろん脳を削る量が増えれば増えるほど、迷路を解くスピードや成績は全体的に低下していきましたよ。
12:05
でもここを削ると記憶が消えるという特定のスポットはついに見つかりませんでした。
なるほど。
ラシュリーはこれを、等脳性、つまりどの部位も同じように記憶に関わっていると呼びまして、
失意のうちに脳の中に特定の記憶の痕跡など存在しないのではないかと結論づけそうになったんです。
どこを削っても消えないって直感に反しますよね。
それこそ写真の右半分を切り取ったのになぜか写真全体のぼんやりとした輪郭は残っているみたいな状態じゃないですか。
どうしてそんなことが起きるんですか?
そこで全く新しいパラダイムを持ち込んだのが1949年のドナルドヘッブという神経心理学者です。
彼はこう考えました。
記憶というものは特定の細胞の中にデータとして保存されているわけではない。
そうではなく、細胞と細胞のつなぎ目の強さこそが記憶なのだと。
つなぎ目の強さ。
これが有名な同時に発火した細胞同士はつながるというヘップの法則です。
つまり記憶は点ではなくてネットワーク全体として存在しているということですか。
そうです。何千何万という細胞が網の目のように結びついている状態を想像してください。
はい。
その網の一部がごっそり切り取られたとしても、残った細胞のネットワークが生きている限り、記憶の全体像を何とか保管して引き出すことができるんです。
これをパターン保管と呼びます。
パターン保管。あ、なるほど。
例えば街を歩いていて、昔の恋人がつけていた香水の匂いをふっと嗅いだだけで、
ええ。
当時の情景とか感情とか流れていた音楽までが一瞬にしてブワッと注がれてくる現象はありますよね。
あれは匂いを感知した一部の細胞が発火したことで、それと強く結びついていた他の細胞群がドミノ倒しみたいに一斉に発火したからなんですね。
その表現は完璧ですね。
そして1973年、実際にウサギの刈刃を使って特定の刺激を繰り返し与えると、
細胞同士の電気的なつながりが長期的に強くなる、長期増強という現象が発見されました。
長期増強。
ヘップが予言したつなぎ目が強くなるという記憶の土台が細胞レベルでついに確認されたんです。
ネットワークの強さこそが記憶だっていうのはすごく納得できました。
でもあのちょっと意地悪な質問をしていいですか?
もちろんです。
いくらネットワークだと言われても、あの日のあの部屋での出来事みたいな特定の記憶が具体的に脳のどの細胞群のつながりなのかをピンポイントで特定することなんて物理的に可能なんですか?
非常に鋭い指摘です。まさにそれが21世紀に入るまでの脳科学の最大の壁だったんですよ。
やっぱり壁だったんですね。
記憶がネットワークだとはわかっていても、何十億とある細胞の中から特定の記憶を担うエングラム、つまり細胞群だけを目なしで捕まえる技術がなかったんです。
15:11
まあそうですよね。
しかし、2012年から2013年にかけてマサチューセッツ工科大学のトネガワ新研究室がついにこの壁をぶち破りました。
さあここからがSF映画を超えてくる領域ですよね。特定の記憶を物理的に捕まれる、どうやってそんな魔法みたいなことを実現したんですか?
彼らは光遺伝学、オプトジェネチクスという最先端の技術といくつかの遺伝子工学のツールを組み合わせたんです。
簡単に言えば3つの道具を使います。
3つの道具?
1つ目は脳の細胞がまさに今活動したという瞬間にだけ発現するCホスという遺伝子を利用して活動中の細胞に因をつける仕組み。
2つ目は青い光を当てるとその細胞を強制的に発火させることができる特殊なタンパク質、シャネルロドプシンです。
光で強制発火?
そして3つ目が薬を使ってこの因をつけるシステムを好きなタイミングでオンオフできるスイッチですね。
なんかものすごい仕組みですが、つまりある出来事を経験している瞬間にだけ後から光で操作できる特殊なスイッチを脳細胞に埋め込むみたいなことですか?
ええ、まさにそれです。
彼らはマウスを使った実験でこの技術の威力を証明しました。
まずマウスを部屋Aという環境に入ります。
部屋A?
そして足に軽い電気ショックを与えてマウスにこの部屋は怖い場所だと学習させます。
この時薬でスイッチをオンにしておいて部屋Aの恐怖を学習しているまさにその瞬間に活動したカイバの細胞群にだけ光で反応する因をつけたんですよ。
恐怖を感じているエングラムだけをマーキングしたわけですね。
はい、そして翌日そのマウスを全く別の部屋Bに入れます。
形も匂いも全く違う安全な部屋です。
当然マウスはリラックスして探索を始めます。
まあ安全ですからね。
そこで研究者たちはマウスの脳に細い光ファイバーを挿してカイバに向けて青い光を照射しました。
するとどうなったと思いますか?
まさか安全な部屋Bにいるのに怖がったとか。
ピタリと動きを止めてすくみ反応という強い恐怖の姿勢をとったんです。
光を消すと再び歩き出し光を当てるとまたガタガタと震え出す。
マウスの体は安全な部屋Bにあるのに脳内では青い光によって部屋Aでの恐怖のネットワークが強制的に発火させられて恐怖の記憶がフラッシュバックしていたんです。
100年越しの悲願である特定のエングラムを物理的に捕まえて人間の手で操作した歴史的瞬間でした。
18:00
いやー鳥肌が立ちました。記憶のスイッチを外からオンにできるなんて。
でもこれだけでも十分に衝撃的ですが話はさらに不穏な方向へ進んでいくんですよね。
翌年彼らは一度も経験していない偽の記憶を植え付ける実験に成功してしまうんですよね。
はい。インセプションという映画をご存知ですか?まさにあの世界です。手順はこうです。
まずマウスを安全で快適な部屋Aに入れてリラックスしている時の空間記憶の細胞群に印を付けます。
今回は安全な記憶に印を付けるんですね。
次に別の部屋Bにマウスを移動させます。
そして今度は部屋Bでマウスの足に電気ショックを与えながら同時に脳内に青い光を当てて部屋Aの細胞群を強制的に発火させたんです。
えっちょっと待って。マウスの体は部屋Bで電気ショックを受けて痛がっているのに頭の中では強制的に部屋Aの景色を思い出させられているってことですか?
その通りです。そして3日目マウスを安全なはずの部屋Aに戻しました。
するとマウスはどうしたか。なんと部屋Aに入った瞬間に脅威で固まってしまったんです。
現実には部屋Aでは一度も痛い目にあっていません。
しかしマウスの脳は部屋Aの景色と痛みという同時に発火した2つの細胞群を勝手に結びつけてしまったんです。
完全に偽の記憶が誕生した瞬間です。
恐ろしすぎる。つまり私たちの脳には細胞のネットワークさえ同時に発火すればそれが現実の出来事などかそれとも想像や外部からの操作によるものなのかを見分ける心眼ラベルのような機能が備わっていないということですか?
残念ながらそういうことです。記憶とはビデオカメラの録画データではなく単なる細胞同士の結びつきにすぎません。
だからこそ現実には起きていないことでも物理的に同時に発火すれば結びついてしまうんです。
これは人間でも同じようなことが起こり得ます。有名なエリザベス・ロフタスの心理学実験をご存知ですか?
ああ、交通事故の映像を見せる実験ですよね。確か被験者に同じ車の衝突映像を見せた後、質問の言葉を変えたんですよね。
はい。車が激突した時のスピードは?と聞かれたグループは、ぶつかった時のスピードは?と聞かれたグループよりも車の速度を早く見積もりました。
言葉一つで?
さらに恐ろしいことに、1週間後、映像の中で割れたガラスを見ましたか?と尋ねると、激突したと聞かれたグループの多くが見たと答えたんです。
はいはい。
実際には映像の中に割れたガラスなど一切映っていなかったにも関わらずです。
質問された言葉の強さだけで、記憶が勝手に書き通り、存在しないディティールまで保管されてしまったと?
でもこれ、あのー、根本的な疑問なんですが。
何でしょう?
もし記憶が後からこんな風に意図も簡単に改ざんできるのだとしたら、記憶は一度脳に保存、つまり固定化されたらずっと普遍のままであるっていう、かつての脳科学の常識と矛盾しませんか?
21:06
まさにそこから記憶の概念を根底から起こす大発見が生まれたんですよ。2000年にカリム・ナダという研究者が行った実験です。
ナダの実験。
彼はラットに特定の音が鳴ると電気ショックが来るという恐怖条件付けを行って、記憶を脳内に完全に固定化、つまり保存させました。
通常、一度定着した記憶はタンパク質が合成されて強固なネットワークになっているため、消えることはありません。
完全に書き留みが終了したデータというわけですね。
はい。そこでナダは数日後にラットに音だけを聞かせて、恐怖の記憶を思い出させました。
そして思い出したその直後に、脳内で新しいタンパク質が作られるのを邪魔する疎外薬を注入したんです。
ふむふむ。
すると翌日、完全に固まっていたはずの恐怖記憶が、なんと綺麗に消え去っていました。
え?薬を入れただけで消えたんですか?じゃあ音を聞かせずに、つまり思い出させずに同じ薬を入れたラットはどうなったんですか?
思い出さなかったラットの記憶は全く消えていませんでした。
つまり薬が直接記憶を壊したのではないんです。
ということは?
思い出すという行為そのものが、胸口に結びついていた細胞のネットワークを一旦ドロドロに解きほぐして、極めて不安定で書きかまりやすい状態にしていたんです。
なんと。
そして記憶を再び保存するためには、もう一度タンパク質を合成して固め直す必要があった。これを再固定化と呼びます。
思い出すたびに位置から保存し直しているってことですか?
それって例えるなら、パソコンで大事なワードファイルを開いて文字を読み直している最中に電源が落ちたら、元のデータごと全部消え去ってしまうようなものじゃないですか?
なんて欠陥だらけのシステムなんですか?
ふふふ。コンピューターの常識からすれば最悪の設計で見えますよね。
ただ、ワードファイルの比喩より少し正確に言うなら、ファイルを開くたびにシステムが自動的に元のテキストを一旦白紙に戻して、あなたが読み上げた声を聞きながらタイピングし直しているような状態です。
白紙に戻してタイピングし直す?
当然、その時の気分や周囲の環境、つまり文脈によってタイピングのミスや勝手な過ピツが行われるわけです。
うわー、それだと開くたびに少しずつ内容が変わっていくのは避けられないですね。
でも、なぜ脳はわざわざそんな危険な設計を採用しているんでしょうか?
大切な記憶なら、金庫に入れて絶対に書き換えられないようにロックしておくべきじゃないですか?
答えは非常にシンプルかつ生存に直結しているんですよ。
それは、記憶は過去の記録のためにあるのではなく、未来を予測し生き残るためにあるからなんです。
生き残るため?
世界は常に変化していますよね。
あの茂みは安全だという記憶があっても、今日そこに肉食獣がいれば、その記憶は即座に書き換えられなければ命を落とします。
24:08
なるほど。現実と記憶の間にずれ、つまり予測誤差が生じた時に、ただの記録ではなく、今の状況に合わせて情報をアップデートするためにわざわざ記憶の金庫の鍵を開けているのか?
その通りです。記憶が絶えず書き直される設計であるならば、私たちが普段ネガティブに捉えがちな忘却、つまり忘れることの意味も根本的に変わってくるんです。忘れることは単にデータが風化していく受け身の現象ではありません。
確かに、あの有名なエビンガハウスの忘却曲線なんかを見ると、記憶は時間ととめに勝手に薄れていくものだと思っていました。忘れることに積極的な理由があるんですか?
ええ、2010年代以降の研究で、忘却は脳の能動的な機能であることが明らかになってきたんです。驚くべきことに、ラクワンというタンパク質や、学習や報酬の主役だと思われていたあのドーパミンが、なんと学習した直後から積極的に記憶のネットワークを消しにかかっているんですよ。
え、ドーパミンが記憶を消すんですか?快楽とかモチベーションの物質ですよね?なぜそんなことを?
ドーパミンは、現在の目標にとって何が重要で何がノイズかを仕分けるシグノルとしても働くんです。もしあなたが、昨日歩いた道の石ころの数や、すれ違った全ての人々の顔、着ていた服のシワまで全て覚えていたらどうなるでしょうか?
それはもう情報型でフリーズしてしまいそうです。新しい状況に対応できなくなりますね。
その通りです。さらに言えば子供の頃の記憶がない幼児期見望という現象もありますよね。あれも脳が積極的に何かをしている結果なんですか?
はい。カイバでは生涯にわたって新しい神経細胞が生まれ続けているんですが、これを神経新生と言います。特に幼児期はこれが最も活発なんです。
新しく生まれた細胞が既存のカイバのネットワークにどんどん入り込んで、新しい回路を作っていく。すると、物理的に古いネットワークの血栓が邪魔されて、上書きされるように消えてしまうんです。
なるほど。
人生で最も学習し、世界を吸収している時期だからこそ、脳は大規模な配線の組み替えを行っていて、結果として古い個別の記憶にはアクセスできなくなるんです。
大規模なソフトウェア等のアップデートを回線を繋ぎ替えながら行っているから、古いバージョンのデータは読み込めなくなるわけか。でも、消去しなくても大容量のハードディスクみたいに全部残しておけばいいじゃないですか。
それがいかに残酷かを示す有名な症例があるんですよ。ロシアの心理学者アレクサンドル・ルリアが長年観察したソロモン・シェレシフスキーという人物です。
シェレシェフスキー?
はい。彼は見聞きしたほぼ全ての情報を鮮烈なイメージとして完璧に記憶することができました。しかしそのせいで彼は悲劇的な人生を置くことになります。
27:06
全てを覚えているのに悲劇的?
ええ。例えば彼が物語を読むと書かれている全ての単語が強烈な色や音、匂いといった具体的なイメージを彼の脳内に引き起こしてしまって、情報が爆発して物語の要点やあらすじをつかむことができなかったんです。
処理が追いつかないんですね。
さらに知人の顔を見るときも光の当たり方や表情が少し違うだけで、彼の脳はそれを全く別の新しい顔として記憶してしまい、同一人物だと認識するのに苦労したそうです。
全ての細部を記憶してしまうから、これとこれは同じだっていう共通点を抜き出すことができないんだ。
そうです。細部を落とす、つまり忘れるからこそ複数の経験から共通点が残り、それが法則や概念になる。
腕経とは記憶を劣化させることではなく、現実世界で使える形に抽象化するための極めて高度な編集作業なんです。
忘れることは理解することと同義なんですね。深いなあ。
でもあの、編集作業だとしても、私たちが日常で経験する、あれ?あの人の名前なんだっけ?もどまで出かかっているのに、みたいな現象ありますよね?
ジェッツ先現象。
はいはい。
あと、エビングハウスの実験でも、完全に忘れたはずのリストでも、もう一度覚え直すときは最初より早く覚えられるというのがあります。
あれは、記憶のデータが消えたのか、それとも奥底に残っているのかどっちなんですか?
ついに、記憶における最大のミステリーですね。思い出せないとき、中身自体が消失したのか、それとも中身はあるのにアクセスが遮断されただけなのか。
ええ。
この100年越しの論争に終止符を打ったのが、2015年のトネガワ研究室、トーマス・ライアンらの画期的な研究です。
彼らは、先ほどお話ししたタンパク質合成阻害薬を使って、マウスの記憶の固定化を邪魔し、完全に忘れてしまった逆光性顕望状態のマウスを作りました。
普通なら、記憶が定着しなかったんだから、データは作られなかった、で終わりですよね。
しかし彼らは、記憶を持っていたはずの細胞群、あらかじめ因をつけておいたエングラムですね。
ここに直接青い光を当てて強制発火させたんです。
すると、マウスは再び恐怖のすくみ反応を示しました。
えっと、忘れたはずの記憶が光で蘇ったんですか?
はい。この実験が証明したのは、薬によって失われていたのは、ヘップの法則でいう細胞同士のつなぎ目の強さ、つまり入り口の広さだけであり、
どの細胞とどの細胞が結びついているかという物理的な配線、ネットワークの中身は脳内にしっかり残っていたということです。
これをサイレントエングラム、沈黙の記憶痕跡と呼びます。
配線は残っているのに、電流を流すスイッチの接触が悪くなっているだけだったと。
30:03
つまり、私が人の名前をどうしても覚え出せないとき、脳内のデータが完全に消去されたんじゃなくて、ただ検索ホルダーへのショートカットリンクが切れているだけなんですね。
まさにその表現がぴったりです。
ダイバーが水中で覚えた単語は、陸上よりも水中の方が思い出しやすいという有名な実験がありますが、
これも水中という状況がショートカットキーとなって、入り口の強さを一時的に引き上げるからです。
すごい、全ての謎が繋がってきました。
でも、日々の膨大な経験の中で、どのショートカットを残して、どの記憶をサイレントにするかという仕分け作業は、いつ行われているんですか?
それこそが睡眠の最大の役割なんです。
あなたが起きている間に経験し、発火したカイバの細胞の順序が、眠っている間にリップル波という特殊なノウハウに乗って、
なんと10倍から20倍という超高速で再生されているんですよ。
寝ている間に10倍速でリプレイ?
起きている間の経験を、脳は睡眠中に猛スピードでリプレイし、大脳皮質との間で通信を行って、ネットワークを調整しています。
この睡眠中の再生を邪魔すると、記憶は定着しません。
超高速リプレイで復習して、重要度を仕分けしているんですね。
さらに2017年の画期的な研究で、記憶の引っ越しに関する真実も明らかになりました。
これまで、記憶は数週間かけて、会場から大脳皮質へと移動していくと思われていたんです。
違うんですか?
実は、学習したその初日からすでに皮質、前頭前夜にもサイレントエングラムとして記憶の配線が作られていたんです。
最初から会場と皮質の両方にバックアップが作られていたと?
ええ。ただ最初は皮質側は沈黙していて、会場が主役として働いています。
しかし時間が経ち、毎晩の睡眠中の高速再生を通じて皮質のネットワークが成熟していくと、
やがて皮質側が自然にアクセスできるようになり、逆に会場のエングラムが沈黙していく。
なるほど。
記憶が移動したのではなく、最初から両方に存在していて、主役が後退しただけだったんです。
私たちの頭の中で、毎日こんなにもドラマチックなデータの構築と再編集が行われているなんて圧倒されました。
今日学んだこの驚き事実、リスナーの皆さんの実生活にもすぐに活かせますよね?
ええ、もちろんです。
例えば、記憶は思い出すことで一旦解け、書き直されて強くなる、再固定化されるわけですから、
何かを逆襲する時に一番効果的なものは、教科書を何度も読むことではなくて、本を閉じて、うなりながら思い出す練習をすることですね。
おっしゃる通りです。
少し忘れかけたタイミングで、自力で引き出そうとすることが、最も強固なネットワークを作ります。
そして何より重要なのは、睡眠を削らないことです。
33:01
睡眠大事ですね。
睡眠を削るというのは、せっかく入力したデータを高速リプレイで定着させ、
皮質へとバトンタッチする高度な編集作業の時間を、自ら奪う行為です。
どんなに情報を入力しても、編集できなければ、記憶として使えませんからね。
入力ばかりで編集しない動画データが、いつかハードディスクをパンクさせるのと同じですね。
いや本当に、記憶って、引き出しの中の埃をかぶった写真なんかじゃなくて、
今この瞬間に形を変えながら動いている生き物みたいなものですね。
亡くなった大切な人の記憶も、決して色あせて固まった標本ではありません。
次にあなたがその人の顔や声を思い出すとき、
あなたは今の自分の感情や状況と共に、その記憶のネットワークにもう一度手を入れることになります。
あなたの記憶は常に変化し続ける今のあなたと共に生き続けているんです。
いやー素晴らしいですね。
となると最後に一つ、少し怖いような、でも最高にワクワクするような問いが浮かび上がってきます。
リスナーのあなたに問いかけたいのですが、
もし私たちが最も大切にしている鮮烈な思い出が、思い出すために今の自分の感情や状況によって知らず知らずのうちに上書き保存され続けているのだとしたら、
今あなたが自分自身だと思っているその人格やアイデンティティは本当に過去の絶対的な真実によって作られているのでしょうか?
それとも現在のあなたが無意識に紡ぎ出し続けている脳の最新のフィクションに過ぎないのでしょうか?
非常に考えさせられる問いですね。
次に昔のアルバムを開いて懐かしい写真を見るとき、ぜひこのことを考えてみてください。
今回は記憶の正体を覆う100年の探求をディープダイブしました。
それではまた次回、さらに深い地の海だお耳にかかりましょう。
34:58

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