異常気象と生命の適応
まちほくラボの八枚おろし。 この番組はまちほくラボの提供でお送り致します。
9月第2週目。 こんばんは。
こぶちざわから アンジーでございます。
台風が東から西へ向かったり、 じっとしてほぼ動かず停滞したり、
秋雨前線はかつてなくたっぷりすぎるほど 大地を潤していますね。
かつて経験のない気象現象に、次々と見舞われています。
ヒマラやネパールでのあの延長、 なんと100キロメートルを超える土石流の流れ下る災害には、
まひれ伏す驚愕であります。
山の民の庶民の清楚な暮らしにもたらす甚大な悲劇、 心からの哀悼の気持ちでいっぱいであります。
自然の猛威に私たち人類は、 より謙虚に真摯にさせられます。
だからこそ、今あるこの命、 今を生かされていることへの感謝を忘れてはなりませんよね。
安易単純に地球温暖化の影響などとは片付けたくありませんが、
私たち生命とは、地球の環境、現況を受け止めて、 変化を受け止めて、しっかりとこれに適応をしていかなくてはなりません。
嘆いてばかりもいられません。
できる限りの精一杯の適応と工夫を真摯に目指すのです。
都度、新たな努力や改善が必要なのでしょう。
そもそも、生命としてこの宇宙世界に、 地球第一の上に命を得て、
体を働かせ生きていることこそが、 尊い奇跡なのであります。
その聖なる存在をありがたいものとして、 ありがたいこととして感謝しつつ、
この生命を全うするのであります。
ただそれだけです。
そして、これは永遠の命でもありません。
ここは、そうでも、命を繋ぐこと、育み合うことで、 いかに持続させていけるかも目指すところなのです。
ここの生命が、永遠でなく儚いものであるという覚悟、
その必ずやってくる終焉の時までは、 懸命にこの大地で生き抜く、我らの宿命なのでしょう。
そんなあらゆる縁起の中で、
松枯れの仕組みと人為的拡散
今日は、ある種の昆虫と特定の木々を枯らしてしまうという、
現在進行形の生態系現象についてのお話をしてまいります。
今、この山梨の大地に、 木を枯らす昆虫生態のある圧力がいくつか働いています。
一つは、もう久しいことでありますが、 松林松の木のことであります。
松の材仙虫と、松のマダラカミキリという、 二つの虫のことであります。
これは、昭和の頃からの松枯れとして有名であり、
リスナーの皆様も、この現象としてはある程度はご存知のことでしょう。
全国で松の木がどんどん枯れて激減していきました。
特に西日本などでは、壊滅的な被害で、
それでも八ヶ岳南陸辺りは、松の木にとってのそもそもの敵地であったので、
松林は標高が高いということもあり、 被害を受けつつも、いまだに残っているのは幸せなことです。
戦後の日本列島で松枯れというものが始まった頃、
一体なぜどんな要因から、こんなに松の木が次々と枯れていくのか、
そのメカニズムは、実は専門家も科学もわかっていませんでした。
昭和もう50年を過ぎた頃になって、その仕組み、
被害をもたらす虫たちとの連関の仕組みがようやくわかってきたのです。
松の幹の中で、水分の通道を阻害してしまう虫がいる、そして枯らしてしまう。
直接の犯人は小さな白い煎柱でありました。
その名の通り、松の在煎柱なのでした。
煎柱であるこの虫は、松を枯らす直接原因ではありながら、
羽根もなく、隣の木へは自ら移動ができません。
それでは、なぜ次から次へと枯れが広がっていくのでしょうか。
そう、ここに、運び屋としての紙切り虫がいたのであります。
こけ茶色で地味なマダラ模様の紙切り虫であります。
この虫が産卵とともに交食という一連の活動の中で、
松の木を行ったり来たり移動してしまうので、
その体内に潜り込むことのできた煎柱は、
あたかもバスの便だとか飛行機便に搭乗して移動するかの如くの様相になっていたわけです。
実に精明な仕組み特風がそこにありました。
松の在煎柱は水分の通動を妨げてしまうので、
実はあっという間に葉が茶色となって大きな松が一気に枯れてしまいます。
一旦感染するとほぼ治療の方法はありません。
5月頃から松のマダラ紙切りが羽化して他の木に広がっていきます。
自ら虫は約2キロぐらいは移動ができるといいます。
2キロ以内だったらそんなに広がらなかったのですが、
これらが実は人間が運転するトラックや車両にくっついて遠方へ移動し運ばれるということになって、
要するに人間たちがこの拡散に寄与してしまっていたといわれます。
だから国内でも高速道路や幹線道路沿いから被害が広がってしまうことをしばしば見られた現象でした。
被害を受けた罪を移動させてはならないというルールがいつの間にか存在していますが、
意外と知られていないのでこれを利用する目的で運んでいるのは実は我ら人間なのです。
特にやや樹勢が弱っている木とか、土壌の土の条件が必ずしも健全ではない環境では、
松が弱り、矢にも出せず、その害虫抵抗性は弱くなって枯れてしまう可能性が高まっています。
この仕組みがほぼ解明されてからは松枯れの対策として、
かつてはヘリコプターによる空中散布、それからまたは地上からの薬剤散布も行われてきました。
予防としての樹幹注入という幹に薬剤を注射するような手法、
または土壌環境の改良なども様々に行われてきました。
高さが30メートルをも超える木への薬剤散布は山梨県内ではこんな大型の豆粉機器がないので、
わざわざ他県から運んできてお願いしての作業もしたものです。
空中散布というヘリコプターによる散布はあまりにも生態系、他の昆虫への影響も大きいということで、
もう今はすっかり行われなくなっております。
抵抗性のある松の品種改良という、木自体を松の在泉中に強いものに改良するという品種改良も行われてきました。
松そのものがかなり枯れてしまい、なくなってしまいましたので、かなり被害の拡散も減ってきてはいますが、
いまだに現在進行形なのであります。
そもそもこの虫は日本列島にはいなかった外来の虫たちであります。
戦後になってアメリカからの大量の輸送物資、船で運んできた瓶の中にこれらの外来昆虫がいたのであります。
まあですから完全に人間による人災と言えるのであります。
さあ松の在泉中の仕組みについての話はこれくらいにしまして、ここで一曲ファウンブライブレイクといたしましょう。
昆虫の減少とナラ枯れ
秋の夜長の虫たちの声は、この季節の風物詩であります。
が、その虫たちの多くが実は姿を消してしまい、種の多様性が損なわれていること、私たちはもっともっと関心を持つべきだと私は考えています。
虫たちの声が、合唱がかなり小さな音になっていること、それから色々な虫たちの合唱ではなく、特定の限られた虫のソプラノとは言いませんが、単合唱になっているということは残念なことです。
虫が明らかに減っていること、実感として気がついている方がかなり少ないことも問題だと思っています。
人々はこんな田舎町でも、野良や大地とはやや遠くなっていることの表れだと思うのです。
世界的にもサイレントアース、静かな地球などという言葉が使われて、深刻な問題となっているのです。
皆様はこんなことをご存知でしたでしょうか。
人が地球から仮にいなくなったとしても、生態系や野生の動物、動植物たちはあまり困らないと言われています。
しかし、地球からもし昆虫なるものがいなくなるならば、もはや地球の生態系は維持はできないと言われています。
さて、そんな中でも一部の昆虫は局所的に広がっていたり、大発生したりしています。
前回お話しした松の木の例のように、新たな木を枯らす被害が実はこの山梨で進行してしまっているのです。
その一つは、いわゆる奈良枯れ現象であります。
小奈良とか釘木とか、いわゆるどんぐりの実る木、しかもそのうちの太い木、老齢な木を特に枯らしていきます。
これはカシノナガキクイムシという昆虫が原因なのであります。
この昆虫は松と違って外来の昆虫ではなくて、実は日本列島に昔から存在する在来の昆虫なのですが、
近年は大型のどんぐりの木、大きなどんぐりの木が切られずに多くなり、その生育環境が整ったということで、日本列島で増えてしまったということになります。
ここは20年か4半世紀ほどの現象であります。
日本列島各地でこの現象が広がって、すでに収束してきた、そんなエリアもあるのですけれども、山梨県は陸の孤島のごとく本州の中央にあって、この被害の発生が実は最後まで見られなかった県なのであります。
ついに数年前に山梨県も南部の方から被害が見られるようになり、その後はたった数年間であっという間に全県に広がり、もはや標高が千メートル以上の箇所にも広がってきております。
我が小淵沢周辺でも残念ながら大型牧へのこの虫の生息というのが折々見られるようになってきています。
この虫がやってまいりますと、だいたい幹元から数メートル付近の幹、主幹に小さな穴がいくつか開けられ、そこから細かなフラスというものが排出され、
フラスというのはキクイムシの幼虫が木の中にトンネルを掘って進むときの排泄物だとか木屑の混合物なのです。それを穴から外に出すわけですね。
少しくらいの幹線ではまだ木は枯れません。樹体内で一定以上の棟数を超えてしまうと、1本につき3000棟などと言われていますが、木は一気に枯れていきます。
木の中でキクイムシの幼虫はなんと餌となる麹菌を培養しているのであります。なんと餌を木の中で自ら育てて保育をしているんですよね。畑を作っているとも言えるかもしれません。
実はこのカシノナガキクイムシのメスの背中あたりにマイキンギアという部分があって、ここにラファエリア菌という培養菌類を宿しているのですね。
なんと餌となる菌類を木の中で育てて食事にしますから、幼虫はどんどんとこれを食べて増えてしまうわけです。実に巧妙な仕組みを持っているものですね。
木屑としてのフラスや気候の穴をもし発見しましたら、対策をしなければいずれ枯れてしまいます。完全な防御と枯れを防ぐ効果的な手立ては実は確立されていません。
こちらでも被害物を放置してしまったり、移動させたりすることはできません。枯れ木は直ちに切って、薪割りなどにしてしまうと材が乾くので、中の虫たちも共に死滅をするという。
対策としては、もし枯れ木があったら薪割りをしてほしいというのも一つの手立てなどであります。
クビアカツヤカミキリと桜の被害
さてもう一つの虫たち。これらはついに今年になって山梨県にも侵入をしてきてしまいました。
首赤ツヤカミキリという、これもカミキリ虫なんですね。胸のあたり、背中の部分が真っ赤で、虫の体全体としては真っ黒なカミキリ虫ですから、見つければすぐにわかります。
こちらは今度は松でもどんぐりの木でもなく、桜の木の類を枯らしてしまいます。山梨は果樹王国でありますから、山梨県としては桃やスモモや桜もあり、農業としても深刻な蔓延が今懸念されているのであります。
山梨にある桜などは、公園の庭木のソメイヨシノなども梅も対象となってしまいます。そしてこちらも奈良枯れと同様に、大慶木や老齢木が感染のリスクが高いのであります。
地上部から約3メートルくらいまでの幹や根元から穴を開けて侵入をします。やはり穴が開いて、はじめは湿っていて、うどんのように繋がった色の濃いフラスが出るのです。感染被害の初期段階はそんな様子です。
でも初期の段階では、葉っぱや木の勢いには大きな影響が出ません。感染侵入から2から3年を経ますと、実はフラスがどんどん乾燥してきて粉状となってきます。そして樹勢も一気に衰退してきます。
この段階になりますと、大抵はもう手遅れであります。早めに伐採をして適正に処理をしないと、更なる枯れ被害が他の木に拡散していってしまうのであります。
対策の薬剤として、やはり松の木と同じように幹への注射、樹幹注入や樹皮への浸透薬剤の散布などの予防策もあるにはあるのですが、なにせ対象となるサクラ類はとても多いので、全てを防御することなど到底しきれないのであります。
ある程度の蔓延とコシボク伐採を継続しつつ、虫の活動の収束を待つしかないという見地もありますね。
まだ命あり、サクラも花咲かせる、こんな段階のサクラを伐採するということがやむを得ないケースもあるのであります。
樹木保護・保育・ツリーケア専門の私たちの立場としては、まことに心が痛み残念なことでもありますが、これも一つの適応・対応と考えなくてはならないようです。
鑑賞に浸っている暇はないのであります。
生態系再生と市民の対応
同じサクラ類の木でも、人間社会としては、管理上、農地ならば農務の担当、山ならば林務・森林環境部の担当、公園管理とか、また別の部署になります。
庭木であるならば、これは個人任せとなります。
対処の担当も、責任の所在も、人間社会はそれぞれに違いますから、すべてを同率に徹底されることはほぼ困難なのであります。
果樹などでは、樹幹注入という、注射の予防剤の対策も実はできません。
山梨としては、かなり深刻な感染の初期段階なのであります。
行政としての件も、かなり後手に回って頭を痛めているというのが、今の現状であります。
在野、私たち市民による早期発見と正しい対処法があって、その普及指導も伴って、初めて感染と枯れ被害を最小限に抑えることができるのかもしれません。
栗の木であれば、例えばクスサンというガの幼虫が大発生したり、その他にも色々なガや蝶の幼虫であるケムシたちによる葉っぱの食害など、一定の樹木に対する害虫被害というのは、色々にこれまでもありましたが、
この松の木の松の材仙虫と松のマダラカミキリ、そしてどんぐり類に対するカシノナガキクイムシ、そしてサクラ類の被害としてのクビアカツヤカミキリの増殖と蔓延は、
かなり圧倒的であり深刻であり猛威を振るった被害状況ということでございます。
より健全な土壌の環境とか水分の循環、バランスの取れた生態系環境の再興再生こそは、実は下手な薬剤処理よりも究極の予防でもあり、生物多様性の重要さが損なわれないように対処する。
このあたり人間の知恵も手立てもますます賢くならなくてはならないかもしれません。より根源的な環境を見つめる態度が今求められているのであります。
今週、小淵沢の大滝流水の地にて、このような自然情報をどんどん発信し、仲間と交流もする森荘ネイチャーセンター、ネイチャーアクションの基地を開設いたします。
どうぞ気軽に足を運んでみてください。ともに自然環境を見つめ、賢く動いてまいりましょう。
それではまた来月お耳にかかりたいと思います。アンジーでした。