ニューヨーク・タイムズ記者国外退去の背景
この時間は、日替わりコメンテーターが独自の切り口で、多様な視点を提案するCatch Up。 月曜日は、元RKB開設委員長で、福岡女子大学副理事長の飯田和郎さんです。
飯田さん、おはようございます。 おはようございます。
さて、今日の話題テーマなんですけども、アメリカを代表する新聞のニューヨークタイムズの北京特派員が、中国当局によって中国から国外退去の処分を受けたと。
トランプ大統領習近平指摘による首脳会談が北京で行われたばかりですけども、米中関係の行方はどうなるのか。そしてこれ、そもそも一体何があったのかというところを、今日は掘り下げていくわけですね。
はい。国外退去処分になったのは、ニューヨークタイムズのビビアン・ワンという名前の記者です。
シカゴで育った中国系のアメリカ人の女性なんですよ。
ニューヨークタイムズ社には2017年に入社して、2020年から2年間香港に駐在し、その後北京に赴任して中国特派員を務めてきたということです。
ニューヨークタイムズの特派員ということで、非常に優秀なジャーナリストなんでしょうね。
そうでしょうね。香港に駐在した時は、例の新型コロナのパンデミックが起きてたんです。
ワン記者は中国当局のコロナ対策の失敗を追求する取材チームの一員だったんですよ。
このコロナに関する一連の報道は世界的にも高く評価されました。
この他のハイテクを駆使している中国の国家ぐるみの、いわゆる監視社会ぶりの実態についても報道してきましたね。
逆に中国側からすると、報道されたくないテーマばかりとなると思いますけども、
このビビアン・ワン記者は中国当局からすると、いわば目障りな存在っていうふうに見えるってことですかね。厄介笑いみたいな。
中国当局の取材規則と外国人記者の実態
そうですね。今月1日に中国外務省の記者会見で、日本のテレビ朝日の記者がこのワン記者の追放について質問してるんですよ。
質問を受けたスポークスマンはこういうふうに答えていました。
その記者は中国に駐在した間、偽って取材をしていたかくたる記録があります。
常駐外国報道機関及び外国人記者の取材に関する規則に違反しました。
中国は法律に基づき、その記者の在留許可を取り消しました。
常駐外国報道機関及び外国人記者の取材に関する規則。
私も新聞記者として北京に合わせて7年間駐在していたんですけど、
この規則を守るように命じられて、時には袖を破ってきた一人なんですよね。
簡単に説明すると、中国政府が決めたルールの中で取材活動をしなさいと。
それに違反すると罰します。そういうことなんですよ。
ただ、中国当局の宣伝機関が監督する中国の国有メディアのニュースを
北京のオフィスに座ってウォッチしてるだけでは何もありませんよね。
さらに言うと、当局が許可する取材をするだけなら、中国の真の姿は見えてきません。
だから多くの外国人記者は様々な手段でニュースの現場に接近しようとするわけですよ。
ニュースの現場って何?と問われると、ワン記者が追いかけた新型コロナ対策の実態、
その他、民主化問題や宗教や人権問題、また中国の貧富の格差といったテーマだと思いますね。
ただ、そのルールがあるということですけど、
中国当局が定めた外国人記者が守るべきルールを逸脱してしまうとどうなるんですか?
外国人記者を管理する中国外務省。中国外務省はこういう管理もしてるんですよね。
そこから呼び出されて厳重注意を受けます。
私も呼び出された経験があるんですけど、また政治的な敏感な地域、
例えば新疆イグル自治区やチベット自治区に取材に入ると、
現地の公安当局の監視を受けて理解されたり、時には尋問を受けたりしてますね。
台湾独立問題とニューヨーク・タイムズへの苛立ち
ただ、今回のニューヨークタイムズのワン記者の退去処分については、別の理由もあるようなんですよ。
中国外務省のスポークスマンは、先ほど橋本さんに紹介してもらった退去理由の説明の前に、
井上一番にこんなことを言ってるんですよね。
ニューヨークタイムズは台湾独立に関する台湾当局のデタラメの主張を広める場を提供しました。
また台湾地区を公然と国家と表現しました。
これは台湾独立勢力に重大な誤ったメッセージを送るものであり、
中国は断固として反対します。
なるほど。
ニューヨークタイムズは台湾独立に関する台湾当局のデタラメの主張を広める場を提供したってますね。
つまり、ワン記者個人の活動とは別のところに中国外務省の苛立ちがあったようなんですよ。
別のところっていうのは、ニューヨークタイムズっていう新聞社全体にってことなんですか?
昨年12月にニューヨークタイムズの本拠であるニューヨークで、あるイベントが開かれました。
これはニューヨークタイムズが主催したんですけど、そこに台湾の賴清徳総統がビデオインタビューの形で登壇したんですよ。
賴清徳総統はそのインタビューで、中国の軍事的脅威にさらされている台湾の現状などについて語っていました。
また私も映像を見たんですけど、習近平政権に対してかなり刺激的な表現も用いていましたね。
そのニューヨークタイムズ主催のイベントに賴清徳総統がビデオ出演したことで、台湾独立に関する台湾当局のデタラメの主張を広める場を提供したっていうことですか?
そうですね。もちろん中国側はこの優秀な賴清徳総統の日頃の取材活動、彼女が書いた記事もここでよく思っていなかったんでしょう。
ですから賴清徳総統の取材活動に加えて、ニューヨークタイムズ主催のイベントに台湾の総統が出演したことで、賴清徳総統の国外退去処分に踏み切ったと言えるんじゃないでしょうかね。
過去の外国人記者追放事例と米中関係への影響
こういう中国に駐在する外国人記者が国外退去を受けるってことは過去にもあったんですか?
はい。1960年代に始まった例の文化大革命ですね。
この時、北京駐在の日本の新聞や通信社、また放送局の記者は、ごく一部の新聞社を除いて国外退去が命じられました。
その時のことを調べてみたんですけど、理由は様々なんですよね。
中には最高指導者、つまり文化大革命を発動した毛沢東ですが、最高指導者を日本の新聞漫画で侮辱したってこともありました。
最近でもウォールストリートジャーナルとかワシントンポストなど、アメリカの有力な新聞の中国特派員が締め出しを食らってますね。
とりわけ、秘密文書の入手や入手しようという試みなどには、中国当局は敏感に反応してますね。
ただ、アメリカメディアの記者が次々と国外退去処分を受けると、トランプ大統領も黙ってないんじゃないですかね。
そうですよね。普段は国内のメディアと色々対峙しているトランプ大統領なんですけど、
中国が相手となるとまた話が違うんですよね。
5月29日には対抗措置として、中国の国営通信社、新華社のアメリカ駐在の記者のビザを閉じ消してます。
これは考えてみると、トランプさん自身の北京訪問、米中首脳会談のわずか2週間後なんですよね。
なるほど。ただ、いずれにしても閉鎖性というか、締め付けを強める習近平政権を象徴しているようなことですね。
報道の自由の重要性と中国の現状
はい。当然、ワン記者の所属するニューヨークタイムズの最高編集責任者は、先日声明を発表していました。
ワン記者の追放は、世界第2位の経済大国中国に関する正確で独立した、そして深く掘り下げた報道に
世界の読者が接する機会をさらに難しくするでしょう。
ジャーナリストの活動環境の悪化を食い止め、米中関係において情報の自由な流通を最優先事項とするよう、米中両国政府に強く求めます。
心の叫びのような感じがしますよね。かつて私が北京に駐在した時も、報道の不自由、報道の自由じゃなくて報道の不自由を感じ続けたんですけど、
習近平大政下の現在は、私のいた時とは比較にならないほど、外国メディアの取材環境は厳しさは増しています。
しびつけも増しています。リスナーの皆さんがラジオやテレビで、また新聞で、中国初のニュースに接するときがあると思います。
現地の都会員たちが、そんな厳しい環境の下で取材して報道していることを、少し想像していただきたいなと思います。
もう一つ、今の我々が自由に発言し、自由に報道できている日本の民主主義は、これは当たり前のことじゃないんだということを強く思うし、私自身もそういうふうに問いかけたいと思っています。
ちょうど先日、天安門事件からも節目を迎えましたもんね。改めて民主化というか、自由に発言できるということの意義というのをすごく考えさせられますね。
飯田さん、ありがとうございました。
ありがとうございました。
はい、ありがとうございました。