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            やまなし
2023-05-06 16:18

やまなし

032 230506 宮沢賢治 やまなし 朗読:武田伊央

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おしゃべり本棚 この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
宮沢賢治作 やまなし
小さな谷川の底を写した2枚の青い原稿です。 1
5月 2匹のカニの子供らが青白い水の底で話していました。
クラムボンは笑ったよ。
クラムボンはカップカップ笑ったよ。 クラムボンは跳ねて笑ったよ。
クラムボンはカップカップ笑ったよ。 上の方や横の方は青く暗く、鋼のように見えます。
そのなめらかな天井を、つぶつぶ暗い泡が流れていきます。 クラムボンは笑っていたよ。
クラムボンはカップカップ笑ったよ。 それなら、なぜクラムボンは笑ったの?
知らない。つぶつぶ泡が流れていきます。 カニの子供らもポポポッと続けて5、6つぶ泡を吐きました。
それは揺れながら水銀のように光って、 ななめに上の方へのぼっていきました。
ずーっと銀の色の腹をひるがえして、 1匹の魚が頭の上を過ぎていきました。
クラムボンは死んだよ。 クラムボンは殺されたよ。
クラムボンは死んでしまったよ。 殺されたよ。
それなら、なぜ殺された? 兄さんのカニはその右側の足を弟の平べったい頭に乗せながら言いました。
わからない。 魚がまたずーっと戻って下流の方へいきました。
クラムボンは笑ったよ。 笑った。
にわかにパッと明るくなり、 日光の銀は夢のように水の中に降ってきました。
03:05
波からくる光の網が、そこの白い岩の上で 美しくゆらゆら伸びたり縮んだりしました。
泡や小さなゴミからはまっすぐな影の棒が、 ななめに水の中に並んで立ちました。
魚が今度はそこらじゅうの金の光をまるっきりくちゃくちゃにして、
おまけに自分は鉄いろにへんにそこびかりして、 また神の方へのぼりました。
お魚はなぜああ行ったり来たりするの?
弟のカニがまぶしそうに目をうごかしながらたずねました。
なにかわるいことをしているんだよ。 とってるんだよ。
とってるの?
うん。そのお魚がまた神から戻ってきました。
今度はゆっくり落ちついてひれも尾もうごかさず、 ただ水にだけ流されながらお口を輪のようにまるくしてやってきました。
その影は黒く静かにそこの光の網の上をすべりました。
お魚は?
そのときです。
にわかに天井に白い泡が立って、青びかりのまるでぎらぎらする鉄砲玉のようなものがいきなり飛び込んできました。
兄さんのカニははっきりとその青いものの先がコンパスのように黒くとがっているのも見ました。
と思ううちに、魚の白い腹がぎらっと光っていっぺんひるがえり、上のほうへのぼっていったようでしたが、それっきり。
もう青いものも魚の形も見えず、光の金の網はゆらゆら揺れ、泡はつぶつぶ流れました。
二ひきはまるで声も出ず、いすくまってしまいました。
お父さんのカニが出てきました。
どうしたい、ぶるぶるふるえているじゃないか。
お父さん、いまおかしなものがきたよ。
どんなものだ?
青くてね、光るんだよ。端がこんなに黒くとがっているの。
それがきたら、お魚が上へのぼっていったよ。
06:00
そいつの目が赤かったかい?
わからない。
うーん、しかしそいつは鳥だよ。かわせみというんだ。
大丈夫だ、安心しろ。俺たちにはかまわないんだから。
お父さん、お魚はどこへ行ったの?
魚かい?魚は、こわいところへ行った。
こわいよ、お父さん。
いいいい、大丈夫だ、心配するな。
そら、かばの花が流れてきた。
ごらん、きれいだろ。
泡といっしょに、白いかばの花びらが、天井をたくさんすべってきました。
こわいよ、お父さん。
弟のカニもいいました。
光の網は、ゆらゆらのびたり、ちじんだり。
花びらの影は、しずかに砂をすべりました。
に、
十二月、カニの子どもらはもうよほど大きくなり、
そこの景色も、夏から秋のあいだにすっかりかわりました。
白いやわらかな丸石もころがってき、
小さな霧のかたちの水晶のつぶや、
金うんものかけらも流れてきてとまりました。
そのつめたい水のそこまで、
ラムネのびんの月光がいっぱいにすきとおり、
天井では、波が青じろい火をもやしたりけしたりしているよう、
あたりはしんとして、
ただ、いかにも遠くからというように、
その波の音がひびいてくるだけです。
カニの子どもらは、あんまり月があかるく水がきれいなので、
ねむらないで外にでて、
しばらくだまってあわをはいって天井のほうを見ていました。
やっぱり、ぼくのあわは大きいね。
「にいさん、わざと大きくはいてるんだい。
ぼくだってわざとならもっと大きくはいけるよ。」
「はいてごらん。」
「おや、たったそれっきりだろう。
いいかい、にいさんがはいくからみておいで。」
「そら。」
「ねえ、大きいだろう。」
「大きかないや。おんなしたい。」
「ちかくだから、じぶんのが大きくみえるんだよ。
09:03
そんなら、いっしょにはいてみよう。
いいかい。」
「そら。」
「やっぱり、ぼくのほうが大きいよ。」
「ほんとうかい。じゃあ、もうひとつはいくよ。」
「だい、そんなにのみあがっては。」
また、おとうさんのかにがでてきました。
「もうねろねろ。おそいぞ。
あした、いさどへつれていかんぞ。」
「おとうさん、ぼくたちのあは、どっちおきいの。」
「それは、にいさんのほうだろう。」
「そうじゃないよ。ぼくのほうがおきいんだよ。」
おとうとのかには、なきそうになりました。
そのとき、とっぷん。
くろいまるいおおきなものが、てんじょうからおちてずっとしずんで、
また、うえのほうへのぼっていきました。
きらきらっと、きんのぶちがひかりました。
「かわせみだ。」
こどもらのかには、くびをすくめていいました。
おとうさんのかには、とうめがねのようなりょうほうのめを、
あらんかぎりのばして、よくよくみてからいいました。
「そうじゃない。あれは、やまなしだ。
ながれていくぞ。ついていってみよう。」
「ああ、いいにおいだなあ。」
なるほど。そこらのつきのあかりのみずのなかは、
やまなしのいいかおりでいっぱいでした。
さんびきは、ぼかぼかながれていくやまなしのあとをおいました。
そのよこあるきと、そこのくろいみっつのかげぼうしが、
あわせてむっつおどるようにして、
やまなしのまるいかげをおいました。
まもなくみずはさらさらなり、
てんじょうのなみはいよいよあおいほのをあげ、
やまなしは、よこになってきのえだにひっかかってとまり、
そのうえには、げっこうのにじがもかもかあつまりました。
「どうだ。やっぱりやまなしだよ。
よくじゅくしている。いいにおいだろう。
おいしそうだね、おとうさん。
まてまて、もうふつかばかりまつとね、
こいつはしたへしずんでくる。
それからひとりでにおいしいおさけができるから。
さあ、もうかえってねよう。おいで。
12:04
おやこのかにはさんびき、
じぶんらのあなにかえっていきます。
なみはいよいよあおじろいほのをゆらゆらとあげました。
それはまた、こんごうせきのこなをはいているようでした。
わたくしのげんとうは、これでおしまいであります。
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