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            お勢登場 前編
2023-01-07 16:24

お勢登場 前編

015 230107 江戸川乱歩 お勢登場 前編 朗読:冨士原圭希

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おしゃべり本棚 この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。 江戸川乱歩作
お勢登場 前編 廃病闇の角太郎は今日もまた
西君に置いてけぼり送ってぼんやりと留守を守っていなければならなかった 最初のほどはいかなお人よしの彼も激憤を感じ
それを種に離別をもくらんだことさえあったのだけれど 病という弱みがだんだん彼を諦めっぽくしてしまった
先の短い自分のこと可愛い子供のことなど考えると乱暴な真似はできなかった その点では第3者であるだけ
弟の角二郎などの方がテキパキした考えを持っていた 彼は兄の弱気をはがゆがって時々いけんめいた口を聞くこともあった
なぜ兄さんはそうなんだろう 僕だったら
とっくに利縁にしてるんだがな あんな人に憐れみをかけるところがあるんだろうか
でも 子供のことを考えるとね
そう一概なこともできないよ この先1年もつか2年もつか知れないが俺の寿命は決まっているのだし
そこへ持ってきて母親までなくしてはあんまり子供がかわいそうだからね まあもうちょっと我慢してみるつもりだ
なぁにそのうちにはおせいだってきっと考え直すときが来るだろうよ 角太郎はそう答えて一層弟をはがゆがらせるのを常とした
今日もおせいは朝から年入りの身じまいをしていそいそと出かけていった 西君が出て行ってしまうと彼は所在なさに趣味を持ち出した盆栽いじりを始めるのだった
裸足で庭へ降りて土にまみれていると それでもいくらか心持ちが楽になった
また一つにはそうして趣味に夢中になっている様を装うことが 他人に対しても自分に対しても必要なのであった
お昼自分になるとお手伝いがご飯を知らせに来た あのお昼の用意ができましたのですがもうちょっと後になさいますか
03:04
お手伝いさえ遠慮がちに痛々しそうな目で自分を見るのが角太郎はつらかった ああ
もうそんな自分かい じゃあお昼としようか
坊やを呼んでくるといい彼は虚勢を張って快活らしく答えるのであった この頃では何につけても虚勢が彼の習慣になっていた
そういう日に限ってお手伝いたちの心尽くしか 食前にはいつもよりご馳走が並むのであった
でも角太郎はこの一月ばかりというもの美味しいご飯を食べたことがなかった 子供の生一も家の冷たい空気にあたると
外のガキ大将がにわかにしよしをしてしまうのだった ママどこへ行ったの
ん 彼はある答えを予期しながらでも聞いてみないでは安心しないのである
おじいちゃまのところへいらっしゃいましたが お手伝いが答えると彼は7歳の子供に似合わぬ冷笑のようなものを浮かべて
ふん と言ったきりご飯をかき込むのであった
子供ながらそれ以上質問を続けることは父親に遠慮するらしく見えた それと彼にはまた彼だけの虚勢があるのだ
パパ お友達を呼んできてもいい
ご飯が済んでしまうと生一は甘えるように父親の顔を覗き込んだ ああ
呼んできてもいいがね おとなしく遊ぶんだよ父親の許しを受けると
これもまた子供の虚勢かもしれないのだが生一は 嬉しい嬉しいと叫びながらさも快活に表の方へ飛び出していって
まもなく3、4人の遊び仲間を引っ張ってきた そして角太郎がお膳の前で用事を使っているところへ
子供部屋の方からもうドタンバタンという物音が聞こえ始めた 子供たちはいつまでも子供部屋の中にじっとしていなかった
鬼ごっこか何かを始めたとみえて部屋から部屋へ走り回る物音や お手伝いがそれを制する声などが角太郎の部屋まで聞こえてきた
中には戸惑いをして彼の後ろの襖を開ける子供さえあった おじさんがいらー
彼らは角太郎の顔を見ると決まり悪そうにそんなことを叫んで向こうへ逃げていった 始まりには生一までが彼の部屋へ侵入した
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そして ここへ隠れるんだなどと言いながら父親の机の下へ身を潜めたりした
坊や そんなに暴れるのは良しにしてパパが面白いお話をしてあげるからみんなを呼んどいで
いやー嬉しい それを聞くと生一はいきなり机の下から飛び出してかけていった
パパとてもお話が上手なんだよ やがて生一はそんな困っちゃくれた紹介をしながら
童貞を引き連れた格好で角太郎の部屋へ入ってきた 彼はそこでこの頃になく元気づいて子供たちの喜びそうなお話を思い出しながら
昔ある国に欲の深い王様があったのだよ と始めるのであった一つのお話を終わっても子供たちはもっともっとと言って聞かなかった
彼は望まれるままに2つ3つとお話の数を重ねていった そして子供たちと一緒におとぎ話の世界をさまよっているうちに彼はますます
上機嫌になってくるのだった じゃあお話は良して今度はかくれんぼをして遊ぼうか
おじさんも入るのだよ 始まりに彼はそんなことを言い出した
うんかくれんぼうがいいや 子供たちは我が意を得たと言わぬばかりに立ちどころに賛成した
じゃねぇここの家中で隠れるのだよ いいかいさあ
じゃんけん 最初に3度は彼はわざと鬼になって子供たちの無邪気な隠れ場所を探し回った
それに飽きると隠れる側になって子供たちと一緒に 押入れの中だとか机の下だとかへ大きな体を隠そうと骨を負った
もういいか まだだよ
という掛け声が家中に狂気めいて響き渡った やがてめいめい発見されて後は彼一人になったらしく
子供たちは一緒になって部屋部屋を探し歩いている気配がした おじさんどこへ隠れたんだろう
おじさーんもう出ておいでよ などと口々に喋るのが聞こえて彼らはだんだん押入れの前へ近づいてきた
えっ パパはきっと押入れの中にいるよ
09:00
松一の声ですぐとの前で囁くのが聞こえた 角太郎は見つかりそうになるともう少しじらしてやれという気で押入れの中に
あった古い長持ちの蓋をそっと開いてその中へ忍び 元の通り蓋をして息を凝らした
中にはふわふわしたヤグカなんかが入っていてちょうど寝台にでも寝たようで 居心地が悪くなかった
彼が長持ちの蓋を閉めるのと引き違いにガラッと重い板戸が開く音がして おじさんめっけた
という叫び声が聞こえた あら
いないよ だってさっき音がしていたよ
ねえ何々ちゃん あれはきっとネズミだよ
子供たちはひそひそ声で無邪気な問答を繰り返していたがいつまで経っても 薄暗い押入れの中はひっそりして人の気配もないので
お化けだー と誰かが叫ぶとわーっと言って逃げ出してしまった
そして遠くの部屋で おじさーん出ておいでよ
と口々に呼ぶ声がかすかに聞こえた まだその辺の押入れなどを開けて探している様子だった
だが気がついてみると子供たちの方は探しあぐんでか ひっそりしてしまった様子だった
しばらく耳を澄ましていると つまんないなぁ
表へ行って遊ばない どこの子供だかきょうざめ顔にそんなことを言うのがごくかすかに聞こえてきた
パパちゃーん 小市の声であった
それを最後に彼も表へ出ていく気配だった 角太郎はそれを聞くとやっと長餅を出る気になった
飛び出していってじれ切った子供たちをうんと驚かせてやろうと思った そこで勢い込んで長餅の蓋を持ち上げようとすると
どうしたことか 蓋は密閉されたままビクとも動かないのだった
でも最初は別段なんでもないことのつもりで何度もそれを押し試みていたがそのうち に恐ろしい事実がわかってきた
彼は偶然長餅の中へ閉じ込められてしまったのだった 彼は大声を上げて小市の名を呼びながらガタガタと蓋の裏を叩いてみた
だが子供たちは諦めて表へ遊びに出てしまったのか何の答えもない そこで彼は今度はお手伝いたちの名前を連呼してできるだけの力を振り絞って長餅の中で暴れてみた
ところが運の悪い時には仕方のないもので お手伝いたちはまた井戸端で油を打っているのかそれともお手伝い部屋にいても聞こえるのか
12:10
これも返事がないのだ彼はもがきながら かすれた声で罪もないお手伝いどもを呪った
息子の小市をさえ呪った 距離にすればおそらく20件とは隔たっていない彼らの悪意なき無関心が
悪意なきが故になおさら恨めしく思われた パンチバッテン少女隊のバッテンラジオ隊
バッテン少女隊の春のキーナと青いリロアです rkb ラジオでお送りしているガールズパンツ
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