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葉桜と魔笛_後編
2025-06-21 16:44

葉桜と魔笛_後編

0141 250626 太宰治 葉桜と魔笛 後編 朗読:池尻和佳子
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初めてMacを手にした感動は忘れられない。
ネットの声をご紹介します。
ハンドルネームドクターレインさん。
何もかもスムーズで、早くてビビった。
iPhoneとの連携も最高。
続いてMr.Incredible4883さん。
Appleシリコンのおかげで、バッテリー切れのストレスから解放された。
初めてのMacでそう感じたそうです。
次はあなたが体験する番。
全く新しいMacBook Neo。
心躍るMacが嬉しいプライスで登場。
詳しくはApple公式サイトをご覧ください。
おしゃべり本棚。
この時間は、福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
太宰治作。
葉桜と魔笛。
後編。
MTはその城下町に住む貧しい家人の様子で、
卑怯なことには妹の病気を知るとともに妹を捨て、
もうお互い忘れてしまいましょうなど、
残酷なこと平気でその手紙にも書いてあり、
それっきりいつも手紙もよこさない具合でございましたから、
これは私さえ黙って一生人に語らなければ、
妹は綺麗な少女のままで死んでゆける。
誰もご存知ないのだと、
私は苦しさを胸一つに収めて。
けれどもその事実を知ってしまってからは、
尚のこと妹がかわいそうで、
いろいろ機械な空想も浮かんで、
私自身胸がうずくような甘酸っぱい、
それは嫌な切ない思いで、
あのような苦しみは年頃の女の人でなければわからない
生き地獄でございます。
まるで私が自身でそんな浮き目にあったかのように、
私は一人で苦しんでおりました。
あの頃は私自身も本当に少しおかしかったのでございます。
姉さん、読んでごらんなさい。
何のことやら私にはちっともわからない。
私は妹の不正直を真から憎く思いました。
読んでいいの?
そう小声で尋ねて、
妹から手紙を受け取る私の指先は、
淘汰するほど震えていました。
開いて読むまでもなく、
私はこの手紙の文句を知っております。
03:03
けれども私は何食わぬ顔をして、
それを読まなければいけません。
手紙にはこう書かれてあるのです。
私は手紙をろくろく見ずに声たてて読みました。
今日はあなたにおわびを申し上げます。
僕が今日まで我慢してあなたにお手紙差し上げなかったわけは、
すべて僕の自信のなさからであります。
僕は貧しく無能であります。
あなた一人をどうしてあげることもできないのです。
ただ言葉で、その言葉にはみじんも嘘がないのでありますが、
ただ言葉であなたへの愛の証明をするより他には、
何一つできぬ僕自身の無力が嫌になったのです。
あなたを一日も、いや夢にさえ忘れたことはないのです。
けれども僕はあなたをどうしてあげることもできない。
それがつらさに僕はあなたとお別れしようと思ったのです。
あなたの不幸が大きくなればなるほど、
そうして僕の愛情が深くなればなるほど、
僕はあなたに近づきにくくなるのです。
おわかりでしょうか。
僕は決してごまかしを言っているのではありません。
僕はそれを僕自身の正義の責任感からと返していました。
けれどもそれは僕の間違い。
僕ははっきり間違っておりました。
お詫びを申し上げます。
僕はあなたに対して完璧の人間になろうと、
我欲を張っていただけのことだったのです。
僕たち寂しく無力なのだから、
他に何にもできないのだから、
せめて言葉だけでも誠実込めてお送りするのが、
誠の謙譲の美しい生き方であると、
僕は今では信じています。
僕はもう逃げません。
僕はあなたを愛しています。
毎日毎日歌を作ってお送りします。
それから毎日毎日あなたのお庭の塀の外で
口笛吹いてお聞かせしましょう。
明日の晩の六時には早速口笛、軍艦マーチ吹いてあげます。
僕の口笛はうまいですよ。
今のところそれだけが僕の力でわけなくできる奉仕です。
06:05
お笑いになってはいけません。
いや、お笑いになってください。
元気でいてください。
神様はきっとどこかで見ています。
僕はそれを信じています。
あなたも僕もともに神の長寿です。
きっと美しい結婚できます。
まちまちて。
今年先けり桃の花。
白と聞きつつ、花はべになり、僕は勉強しています。
すべてはうまくいっています。
ではまた明日。
MT、姉さん、あたし知っているのよ。
妹は澄んだ声でそうつぶやき。
ありがとう、姉さん。
これ、姉さんが書いたのね。
わたくしはあまりの恥ずかしさに、その手紙、知事に引き裂いて、
自分の髪をくしゃくしゃ引きむしってしまいたく思いました。
いてもたってもおられぬとは、あんな思いをさして言うのでしょう。
わたくしが書いたのだ。
妹の苦しみをみかねて、わたくしがこれから毎日MTの筆跡をまねて、
妹の死ぬる日まで手紙を書き、下手な和歌を苦心して作り、
それから晩の六時にはこっそり塀の外へ出て、
口笛吹こうと思っていたのです。
恥ずかしかった。
下手な歌みたいなものまで書いて、恥ずかしうございました。
身も余もあらぬ思いで、わたくしはすぐには返事もできませんでした。
姉さん、心配なさらなくてもいいのよ。
妹は不思議にも落ち着いて、崇高なくらいに美しく微笑していました。
姉さん、あの緑のリボンで結んであった手紙を見たのでしょう。
あれは嘘。
わたし、あんまり寂しいから、
おととしの秋からひとりであんな手紙書いて、
わたしにあてて投函していたの。
姉さん、ばかにしないでね。
青春というものはずいぶん大事なものなのよ。
09:06
わたし、病気になってからそれがはっきりわかってきたの。
ひとりで自分あての手紙なんか書いてるなんて汚い。
浅ましい。
わたしは本当に男の方と大胆に遊べばよかった。
わたしの体をしっかり抱いてもらいたかった。
姉さん、わたしは今まで一度も恋人どころか、
よその男の方と話してみたこともなかった。
姉さんだってそうなのね。
姉さん、わたしたち間違っていた。
お利口すぎた。
死ぬなんていやだ。
わたしの手が、指先が、髪がかわいそう。
死ぬなんていやだ。
わたくしは悲しいやら、怖いやら、うれしいやら、恥ずかしいやら、
胸がいっぱいになりわからなくなってしまいまして、
妹の痩せた方にわたくしの方をぴったり押しつけ、
ただもう涙が出てきてそっと妹を抱いてあげました。
そのとき聞えるのです。
低くかすかに、でもたしかに軍艦マーチの口笛でございます。
妹も耳をすましました。
ああ、時計を見ると六時なのです。
わたくしたち、いい知れぬ恐怖に強く強く抱きあったまま、
みじろぎもせず、そのお庭の葉桜の奥から聞えてくる不思議なマーチに
耳をすましておりました。
神さまはきっといる。
わたくしはそれを信じました。
妹はそれから三日目に死にました。
医者は首をかしげておりました。
あまりに静かに早く息を引き取ったからでございましょう。
けれどもわたくしはそのとき驚かなかった。
12:03
何もかも神さまのおぼし飯と信じていました。
今は年とってもろもろの物欲が出てきてお恥ずかしいございます。
あの口笛もひょっとしたら父の仕業ではなかったろうかと、
なんだかそんな疑いを持つこともございます。
学校のお勤めからお帰りになって、
隣のお部屋でわたくしたちの話を立ち向きして不憫に思い、
原告の父としては一世一代の狂言したのではなかろうかと思うこともございますが、
まさかそんなこともないでしょうね。
父が在生中なれば問いただすこともできるのですが、
父が亡くなってもうかれこれ十五年にもなりますものね。
いや、やっぱり神さまのお恵みでございましょう。
わたくしはそう信じて安心しておりたいのでございますけれども、
どうも歳とってくると仏欲が起こり、
信仰もおすらいでまいっていけないと存じます。
先ほどのスライディングの泥汚れをかなり気にしていますね。
うったー!特大!
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