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東京に生まれて、芥川龍之介。変化の激しい都会。僕に東京の印象を話せというのは無理である。
なぜと言えば、ある印象を得るためには、印象する者と印象される者との間に、ある新鮮さがなければならない。
ところが僕は、東京に生まれ、東京に育ち、東京に住んでいる。 だから東京に対する神経は麻痺しきっていると言ってもいい。
したがって、東京の印象というようなことは、ほとんど話すことがないのである。
しかし、ここに幸せなことは、 東京は変化の激しい都会である。
例えば、つい半年ほど前には、 石の岐阜市があった京橋も、
この頃では西洋風の橋に変わっている。 そのために、東京の印象というものが、多少は話せないわけでもない。
ことに僕ごとき出武将なものは、 それだけ変化にも驚きやすいから、
幾分か話す種も増えるわけである。