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  2. #111【青空文庫】食べたり君よ..

古川緑波「食べたり君よ・谷崎先生と葡萄酒」

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Furukawa Roppa title:Dining with the Writers・Mr.Tanizaki and grape wine

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食べたり君よ。古川六八。
谷崎先生と葡萄酒。これも、日本ご機嫌なりし昔のこと。
谷崎純一郎先生が兵庫県の丘元に住んでおられた頃である。
今や越境後、ソビエトのどこかに健在なりと聞く岡田よし子。
その頃、日活の大スターたりし岡田よし子である。
と共に、雑誌のようで僕は先生のお宅を訪れたことがある。
要件が済んで先生が、「これから大阪へ出て何か食おうじゃないか。」
と誘ってくださって、岡本から大阪へ出た。
何を食おう。何が食いたい。
結局、創江門町の本宮家へ行って、
牛肉のヘッド焼きを食おうということに話が定まって、
煙卓を拾って乗る。
谷崎先生は煙卓を途中で止めて、「ちょっと待っててくれ。」
と北浜のサムボアという酒場へ寄り、
赤い葡萄酒一本と命じて、やがて葡萄酒の瓶を持って来られた。
そして、思い出す。それは暑い日だった。
本宮家へ着くとすぐ風呂へ入り、みんな裸になって、
岡田よしこを覗く、ヘッド焼きの鍋を囲んだ。
赤葡萄酒を抜いて血の滴るような肉を食い、葡萄酒を飲んだ。
その時である。
牛肉には赤葡萄酒。
ということを僕が覚えたのは。
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