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2023-11-27 02:45

#118【青空文庫】一日一筆・日比谷公園

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岡本綺堂「一日一筆・日比谷公園」

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Okamoto Kido title:Write one per day・ Hibiya park

サマリー

友人と日比谷公園を散歩していると、二匹の犬が遊んでいる様子が見られます。

00:00
一日一筆 岡本鬼道
4 日比谷公園
友人と日比谷公園を散歩する。
今日は、風もなくて暖かい。
犬の遊び
芝原に二匹の犬がふざけている。
一匹は純白で、一匹は黒淵で、
どこから飼えてきたか知らず、
一足のフルゾーリを奪い合って、
追いつ追われつ、起きつ転びつ、
さも面白そうに狂っている。
見たまえ、実に面白そうだね、
と友人が言う。
うん、いかにも無心に遊んでいるのが可愛い、
と言いながらふと見ると、
白には首輪がついている。
黒淵の首には何もない。
片っぽは野犬だぜ、
と言うと、友人は無言にうなずいて、
互いに顔を見合わせた。
いま無心にむつまじく遊んでいる犬は、
おそらく何も知らぬであろうが、
見よ、一方には首輪がある。
その安全は保障されている。
犬の運命
しかも他の一方は野犬である。
何度きり虐殺の飛雲に会わないとも限らない。
あるいは一時間ないし半時間の後には、
残酷な犬殺しの獲物となって、
その皮を剥がれてしまうかもしれない。
ひい温かき公園の真ん中で、
愉快に遊び回っている二匹の犬にも、
これほどの幸不幸がある。
犬は首輪によって、
その幸と不幸とが直ちに知らされる。
人間にもおそらく、
目に見えない運命の首輪がついているのであろうが、
人も知らず、われも知らず、
いわゆる一寸先は闇のよう、
いずれも面白そうに飛び回っているのである。
われわれもこうしてのんきに遊び歩いていても、
二人のうちのどっちかは、
運命の首輪に見放された野犬であるかもしれない。
「おい君、そこらで酒でも飲もう。」
と友人は言った。
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