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2022-10-10 03:48

#59【青空文庫】去年の木

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新美南吉「去年の木」

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Niimi Nankichi titile:Last year's tree

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去年の木、ニーミナンキチ、一本の木と一羽の小鳥とは、大変仲良しでした。
小鳥は一日、その木の枝で歌を歌い、木は一日中、小鳥の歌を聞いていました。
けれど寒い冬が近づいてきたので、小鳥は木から別れて行かねばなりませんでした。
さよなら、また来年来て歌を聞かせてください、と木は言いました。
ええ、それまで待っててね、と小鳥は言って、南の方へ飛んで行きました。
春がめぐってきました。野や森から雪が消えていきました。
小鳥は仲良しの去年の木のところへまた帰っていきました。
ところが、これはどうしたことでしょう。木はそこにありませんでした。
根っこだけが残っていました。
ここに立ってた木はどこへ行ったの?
と小鳥は根っこに聞きました。
根っこは、木こりが斧で打ち倒して、谷の方へ持って行っちゃったよ、と言いました。
小鳥は谷の方へ飛んで行きました。谷の底には大きな工場があって、木を切る音がビーンビーンとしていました。
小鳥は工場の門の上に止まって、
門さん、私の仲良しの木はどうなったか知りませんか?
と聞きました。
門は、木なら工場の中で細かく切り刻まれて、
マッチになってあっちの村へ売られて行ったよ、と言いました。
小鳥は村の方へ飛んで行きました。
ランプのそばに女の子がいました。
そこで小鳥は、
もしもし、マッチをご存じありませんか?
と聞きました。
すると女の子は、
マッチは燃えてしまいました。
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けれど、マッチの灯した火がまだこのランプに灯っています。
と言いました。
小鳥はランプの火をじっと見つめておりました。
それから去年の歌を歌って火に聞かせてやりました。
火はゆらゆらと揺らめいて、心から喜んでいるように見えました。
歌を歌ってしまうと、小鳥はまたじっとランプの火を見ていました。
それから、どこかへ飛んで行ってしまいました。
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