十月の昼過ぎ、風の強い日。中島はKのハウスでアルケミラに灌水しながら、新規就農の仲間たちを待っていた。それぞれ別の師について学び、独立して五年ほどになる者たちが、互いの畑を見て回る。人が他人の畑を見たがるのは、自分の畑を知るためである。待つあいだ、中島はヘリアンサスとヘレニウムを支えていた紐と支柱を外した。花の季節が終われば、支えも用を終える。
町内の役員会で、中島は人々が争わないことに驚いた。規格と量と品質が各自の利益に直結する六合の花部会では、議論はたびたびぶつかる。近くに住む者どうしは、なるべく戦わないことを選ぶのかもしれない。あるいは町内会とは物事を決める場ではなく、すでに決まったことを調整する場なのだろう。表の静けさは、裏で何も動いていないことを意味しない。
その日は人からの便りが重なった。関東農政局の取材記事が掲載されたという知らせと、アメリカ海外農業研修の同期、彰人君からの電話である。彼はいま沖縄でカボチャを作っている。前日、勢いで送った誕生日の祝いが、遠く離れた二人をふたたび結んだ。思いついたことをひとつやってみる。事態はそうやって動き出すのだと、中島は記した。
気分は三。体が温まり、また走りたくなっていた。そこへ仲間がやって来て、中島は録音を止めた。
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サマリー
Kのハウスでアルケミラに灌水しながら、独立して5年目ほどになる新規就農者たちの畑を見回る会を待つ。先輩農家のもとで研修後に独立した仲間と、畑の管理や苦労、アイデアを共有する予定を話す。町内役員会では、利益に直結する花の部会とは違い、近隣に住む者同士が争いを避けているように感じた。関東農政局の掲載連絡や、沖縄でカボチャを作る海外農業研修の同期からの電話もあり、思いついて誕生日を祝うだけでも再びつながりが生まれると振り返る。