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この時間は、日替わりコメンテーターが独自の切り口で、多様な視点を提案するCatch Up。
木曜日は、クリエイティブプロデューサーの三好剛平さんです。
今日はリモートでのご出演です。三好さん、おはようございます。
おはようございます。
髪切った。
さっぱり。
実はですね、僕ね、昨年の年末から実はもう着てたんですけど、帽子でずっと隠してました。
そっか、帽子でかぶってたのに気づかなかったのか。
さっぱりとね、短く。
はい、新年になりました。
さて、今日はどんなものを紹介してくれるんでしょうか。
はい、本日ご紹介するのは、現在キノシネマ展示にて、年末から公開中のドキュメンタリー映画
占領都市という映画をご紹介します。
占領都市?
はい、この作品なんですけれども、現行最上級とも言うべき座組で制作された、極めて実験的なドキュメンタリー映画です。
このコーナーを聞くほとんどの方が、間違いなく経験したことのないような映画体験になると思います。
大丈夫ですか?
大丈夫です。
すいません。僕もですね、昨夜鑑賞して以来なんですけれども、
ずっとその要因の中にまだいるような感覚で、その魅力をここからご紹介していきたいと思います。
はい。
この占領都市という作品ですけれども、イギリス・オランダ・アメリカの合作で、
2023年に現地で発表されて、日本では昨年年末から順次公開されているドキュメンタリー映画です。
その内容はというと、第二次大戦中の1940年5月から5年間、ナチスドイツの占領下に置かれ、
10万人以上が虐殺されたオランダの首都、アムステルダム。
その土地の恐怖の記憶というのを描いた作品が、この占領都市という作品になります。
もともと歴史家であるビアンカ・スティグターさんという、
女性が手掛けられた原作本というか、書籍がありまして、
それを着想元として制作されたドキュメンタリー映画になります。
冒頭で最上級の座組でということで申し上げたんですけれども、
これ2つあって、まず1つがこの作品の監督ですね。
監督を務めたのがスティーブ・マック・イーンという監督で、
これ有名な大俳優と同姓同名なんですけど、別人です。
別人なんですね。大雑草じゃないんですね。
大雑草じゃないです。パピオンじゃないです。
英国人のイギリス人の監督でスティーブ・マック・イーンさんという監督が務めました。
この監督なんですけど、2013年のアカデミー賞で、
19世紀のワシントンで売り飛ばされた自由黒人が奴隷として扱われた体験記を映画化した、
それでも世は明けるという作品があったんです。
この作品で史上初のアカデミー賞の黒人監督として初の作品賞を受賞した監督で、
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映画界でその時点で頂点を極めたような作家でもあるわけですけど、
実はスティーブ・マック・イーンさんは映画界で活躍する傍らというか、
実はそれより前に、もともと90年代末からコンテンポラリーアートのシーンで活動していた、
現代美術家さんなんですよ、この人ね。
もともと99年にはイギリス人の優れたアーティストに与えられるターナー賞、
そして2002年と2007年には現代美術最高峰の国際展であるドクメンタという美術展にも出展されていたりとか、
あるいは2009年にはベネチア・ヴィネンナールにも選出されている、
現代アートシーンでは最高峰の作家なんですね。
そんな彼なんですけれども、現在自身の活動拠点にもしているオランダを舞台に、
その歴史的記憶を映し取ったというのが今回の占領都市ということになるわけですね。
そんな本作の制作を手掛けたのが最上級の座組といったもう一つのポイントなんですけど、
今や世界を代表する作家主義映画制作集団であるA24ですね。
ここが制作型としてついて、最高の座組で実現したのが今回の作品であるということが言えると思います。
そんな作品なんですけれども、先ほど申し上げたように第二次大戦下のオランダで、
ナチスドイツ占領時の記憶というものを映し取る作品になるんですけれども、
それをどのように映し取ったのかというのが今回の一番のポイントになるわけですけれどもね。
オランダでナチスドイツの記憶といったら、
多くの人が例えばアンネの日記を連想する方が多いと思います。
あるいはドキュメンタリー作品ということで言えば当時の写真だったりとかアーカイブ映像だったりとか、
あるいは生き延びた人々のインタビューなんかを積み上げて、
その歴史的記憶を紐解こうとするという構成を当然誰もがイメージすると思うんですけれども、
この映画には当時の写真も映像もインタビューも何一つ登場しません。
一切登場しない。
その代わりにこの映画を構成するのは徹底的に削ぎ落とされた二つの要素だけなんですね。
その一つは、当時の記録を淡々と読み上げるナレーション。
そしてもう一つ、これがすごいんですけど、そのエピソードに登場する130箇所にも及ぶ、
そのエピソードの現場になったその場所の2020年代現在の様子を捉えた現代の映像とナレーション。
その二つだけなんですよ。
なるほどね。
だから映像だけ見ていると何かというと、何気ないオランダの日常風景を延々と見ているだけになるんですよ。
なんだけど、それに占領家当時の記録を朗読する声が重ねられるとどうなるかという、そういう映画になるわけですね。
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しかもこれ驚くべきが、この映画上映時間251分あります。
4時間超えてません?
はい、なんと4時間11分もの時間をかけてそれを見つめていくというのがこの映画なんですね。
もうめちゃくちゃ実験的で研ぎ澄まされたこの演出になるわけですけれども、
それがもたらす効果というのが、皆さんなかなか想像しづらいかもしれませんけれども、
めちゃくちゃ絶大だということをここからプレゼンテーションします。
まず一つ目、現在の風景に音声をかぶせるだけのこの演出ですね。
これすごいなと思ったのが、例えば子どもたちが駆け回る街中のその広場だったりとか、
あるいは散歩する人々とか、自転車が行き交うのどかなその一つの通りだったりとか、
あるいは恋人同士がふざけ合う学校のその一角みたいなところ、
それら一つ一つが実は数十年前の全く同じ場所で、実は恐ろしい出来事が起きていたその現場であるということを
朗読の声が重なることで徐々に観客はそれ一つずつ知覚していくわけですね。
それが一箇所二箇所とかじゃなくて、申し上げたように130箇所あるわけですよ。
130箇所、無数の場所で何度も何度もそれを染み込ませていく、渡らせていくような体験が
この映画の中の知覚体験になっていくわけですね。
その繰り返し、そしてまたその複数性、言ったら130箇所ものあるその複数性が
目の前の風景にそれまで知覚できていなかった現実の奥行きみたいなものを
感じさせていくようになっていくわけですね。
これ言ったらナレーションはいわば言ってみたら
目の前にしている現実の風景に対して付けられた複音声みたいな感じだなって僕は思ったんですよ。
やっぱり複音声って目の前の光景をいきなりそこに何か解釈の幅だったりとか
見えてなかったものを見せるやっぱり効果があるわけじゃないですか。
そういうことを経て最初はただナレーションと風景でしかなかったものが
僕もだいたい上映時間が1時間半を超えたあたりから
明らかに自分の現実認識が変容していくのを感じ取りました。
それは何かというと私たちが今生きているこの今ここっていう
この現在の時勢っていうのが実はやっぱりその以前に
連綿と数え切れないほど無数の営みが積み重ねられてきた
歴史だったりとか記憶だったりとかそういうものの
一番突端に現れている地表とか表面のようなものでしかないっていうことを
すごい体で覚えるような感覚があるんですよ。
これ今見えてるのって今でしかないんだなっていうか
その後ろにもう見えない無数の何かがあるんだなっていうことを体感していく感じ。
私たちを今この世に荒らしめているものが名もなき人々だったりとか
歴史にも残らないそういう時間の無数の歴史による積み重ねによるっていうことを
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思い知らされていくっていうのがこの時間とこの演出が必要とする
がもたらしたすごい効果だなというふうに思いました。
もう一つはこの4時間11分という上映時間なんですよ。
心配しないでください。上映中には折り返しのタイミング2時間超えたぐらいで
15分のトイレ休憩、インターミッションが挟まれるので
お手洗いとかもご安心いただきたいんですけど
とはいえやっぱりこの4時間11分もの時間をかけた
その意図は何なのかっていうことに関しては
監督が語っている言葉をちょっと紹介したいと思います。
この映画は旅でやる必要がありました。
本作の物語の語り方に慣れてもらうには
時間をかける必要があると思ったのです。
徐々に別のモードに入っていくような感じです。
意識が集中する時、漂う時があっても全く問題ありません。
ただインタビューを見ているのとは全く違う体験なのです。
というふうに言うわけですね。
監督の言う通り、僕自身も4時間ずっと集中しまくってたかって言ったら
そうでもないんですよ。当然聞き落とすものもあれば
気がついたらちょっとうとうとしてたりする場面とかも当然ある。
なんだけど、やっぱり時間を共にするということがこの重要さ。
この映画体験は監督の言う通り旅だなと思ったんですね。
時間をかけてその土地の空気とか大気とか
そういうものに慣れていって、徐々にその実景が見えてくるような感覚って
旅そのものだなと思うし、あるいは時間とか時空を股にかけた
旅でもある、タイムトラベル的な旅でもあるとも言えるんですね。
僕自身は数年前にオランダに5日間滞在したこともあったので
この風景とか見覚えがあって、その時に街をひたすら散歩して回った時の
感覚が体に蘇ってくるようなリアリティも感じました。
やっぱり時間をかけて自分の体に現地の光景とか音とかリズムとか記憶とか
そういうのを一つずつ染み込ませていく。
この感じっていうのは、やっぱり映画の中でちょっと長回しで街を捉えるとか
そんな手先の演出では体感できない。圧倒的な体感だなっていう風に感じたんですね。
ましてこの映画をもし配信で見たとしたら、もう残念ながら全く体験の質が変わると思います。
やっぱりスクリーンで。
今後映画館っていうのはこうしたある種の極端な体験を主張する空間として
映画館っていうのが多分機能していくことになると思います。
そういう意味でもこの映画はもう本当に絶対に映画館で見ないと意味がない作品と言ってもいいぐらいだなというふうに思います。
この映画占領都市ですけれども、木野シネマ展示にて今上映中で
あと佐賀県のシアター支援までも上映予定になっているんですけれども
木野シネマには問い合わせたところ、劇場の方では1月23日の木曜日までの上映予定とおっしゃっていたので
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たぶんこれからこれほどの長尺の映画をかけてくれる劇場というのは
映画の現在の興行状況から本当に貴重です。
マジでこれ見逃したらほとんどチャンスないので
ご興味持たれた方は絶対見てくださいというご紹介でございました。
そして来週のこの時間は三好さんとリスナー名作劇場をお送りします。
月の一度のお楽しみということで
今月のテーマは
心温まるラブストーリー話でございます。
いろいろ皆さん思い出されるかもしれません。
ぜひエピソードも添えて送ってください。
メールはgu.rkbr.jp
ファックスは092844-8844
また田畑隆介グログアップのSNSでも発信しておりますので
そちらに返信していただければと思います。
19日日曜日までに送ってください。お待ちしております。
ここまで三好合併のキャッチアップでした。
三好さんありがとうございました。