2022-03-04 30:49

74. SF短編『気楽に殺ろうよ』

藤子・F・不二雄先生のSF短編シリーズ、今回は『気楽に殺ろうよ』をご紹介

今作は価値観、とりわけ倫理観について印象的な問いかけを含むお話です。いや、これは問いかけなのか?只の狂った世界??なんとも後味が悪く、尾を引く読後感を与えてくれる短いお話です。F先生の丸っこいキャラクター造形と低い等身で繰り広げられるのが、また…響くんです…


☆番組では皆様からの感想をお待ちしています

同じ藤子・F・不二雄先生のファンの方々、より詳しい方々など一緒に番組を盛り上げて下さる皆様からの補足情報、ご指摘、アドバイスも有難く頂戴します!

こんなテーマで話してほしい!等のテーマリクエストも頂ければ、とても嬉しいです


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00:05
すこしふしぎナイト。この番組では、藤子F不二雄先生のすこし不思議な物語について、楽しくおしゃべりします。
はい、みなさんこんばんは、ゆうすけです。
さっぱです。
よろしくお願いします。
お願いします。
はい、というわけで、あの、SF短編のね、シリーズがまた始まってますけども、
はい。
えーと、今回取り上げる作品、
うん。
気楽にやろうよ。
はい。
すごくいい言葉ですよね。現代人、疲れてますし、ストレスためがちやし。
あー。
ね。
うん、はい。
難しいこと考えちゃうからさ。
まあ。
気楽にやろうよと。
全部ひらがなだったら、いいですけどね。
ちょっと。
ね、Take it easyですよ。
うんうん。
はい。ただ、そうね、今言ってくれたように、
全部ひらがなだったらね、っていうふうにね、言ってくれたんですけども、
この気楽にやろうよというのが、やろうよのところがね、殺すという字を書いて、やろうよ。
はいはいはい。
なんですよね。
はい。
なんてセンセーショナルなタイトルだと。
うーん。
で、SF短編とかって、あの、冊子、コミックとかになるときに、短編集の形を取るわけじゃないですか。
はいはいはいはい。
なので、1巻、2巻、3巻とかに、その表題がつくんですよ。
うん。
で、そのSF短編の2巻とかのタイトルが、気楽にやろうよ、みたいになってるので、
うん。
この1目見ただけで、え?ってなるこのタイトルは、けっこう有名だったりします。
うんうんうん。
ね、読んだことなくても、あの本棚にね、フジコFフジオコーナーの本棚に、
気楽にやろうよと書かれた背拍子の本があるので、
まあ、存在ぐらいは、もしかしたら見たことあるかもわからないですね。
うーん。
で、まあ、えらい話です、これは。
まあ、はいはい。
で、タイトルだけ見て、え?読んでみたいなと思った方いると思うので、今回も、
導入だけちょっと、さわりだけね、お話しして、
ぜひ、ぜひ読んでほしいなというので、またネタバレ回避隊もつくりますね。
はい。
はい。じゃあ、始めていきます。気楽にやろうよ。
これが、えっとですね、
1972年の5月ですね。
ありがとうございます。
はい。
じゃあ、中身に触れていきましょうか。
はい。
よくあるんですけども、サラリーマンの青年、中年が主人公です。
うんうん。
で、政府短編はそんなのが多いですね。
うん。
で、彼が朝、何気なく、何もない平和な朝を迎えるかと思いきや、
ですよ。いつものように新聞を取りに行ったら、
03:02
はい。
突然ね、背中にハモンドでも突っ込まれたかのような激痛が走って、
5分間の倒置回ってと、死ぬ思いをしたんです。
っていうエピソードを、これはお医者さんかな?
うん。
に、相談してる場面から始まるんですよね、このお話。
うん。
で、そんなに苦しい思いをしたのに、けろっと収まりましたよと。
うんうん。
ただ、気がついたら何かが違う。
うん。
身の回りで起こってることの何かが違うと。
うん。
で、その違和感について、こんな話していく主人公。
その違和感が、僕ら読者から読んでても、
うーん、なんかやっぱり確かにおかしいよねって思われるようなエピソードを、
これからどんどんどんどん打ち明けていくわけですけども、
うんうん。
どんどんどんどん価値観がね、逆転していったり、
主人公の行く末が心配になってきたりという、
読み進めば読み進めるほど、この不安が高まってくるお話なんですけども、
うん。
この気楽にやろうよ、殺そうよというタイトルに最後を結びつくんです、これが。
うん。
はい、これがエピソードの導入ということなんですけども、
はい。
ちなみに、過去の少し不思議な人に1回登場してます。
はいはいはいはい。
コテンラジオからね、樋口清則さんが、
はい。
ゲストに来ていただいたときに、いくつかのSF短編を紹介していただいたんですけども、
うん。
その中にこの作品もすごいと、
うん。
マストですと、
うん。
さっぱさん、これは宿題ですと言って、
はい。
ちょうど1年ぐらい前かな、
そうですね。
ゲスト会やったときに、
はい。
一瞬ね、取り上げてくださったので、
はいはいはい。
まあ、こっから1回止めて漫画読みに行く人は、
うん。
今回の樋口さんの回も聞いてね。
ということで、
はい。
宣伝しとく感じでね。
うん。
まあ、そちらでも価値観の逆転というか、
いうところがこの作品の魅力だということまでは、
はい。
言っときましょう。
うんうん。
また読んだら帰ってきてください、読みたい人は。
はい。
というわけで、じゃあこっから本編の内容に触れていきます。
はい。
主人公、これ調べたら川口さんっていうらしいんですけど、
へえ。
彼が感じた違和感っていうのが、
まず自分の知ってる家が、まるで自分の知らない家みたいな感じがすると、感覚的なもんでね。
彼には奥さんと子供が1人ずついてて、
いつも通りの朝を迎えてるわけですよ。
新聞を広げて、
はいはい。
パパ、おはようみたいな。
うん。
で、ふと時間が気になったので、じらって見たら、
おお、こんな時間だと。大変だと。
うん。
で、おい、早くしろと。飯だ、飯だっていうことで、この大声を上げるわけですね。
うん。
そしたら、奥さんが真っ赤な顔をしてね、
近所に聞こえるじゃないですかって言いながら走ってくると。
うん。
不思議ですよね。
うん。
ご飯最速するのが何がおかしいんだよと。
06:01
うんうん。
って言うけど、もうやだわーって言いながら顔真っ赤にしてどっか行っちゃうとね。
うん。
うん。
で、もういい、出かける出かけるって仕事の用意をしながら行くんですけども、
いや、ご飯できましたって、ちっちゃい声で言って、
朝ご飯食べることになるんやけど、カーテンを閉め切って、鍵をかけて、
なんかこう、もそもそもそもそやってるとね。
うんうん。
なんでご飯食べるのに、カーテン閉めて鍵かけるんだよと。
うん。
これ、主人公が思い出して話してる場面と、
お医者さんに相談してる場面が幸運に出てくるので、
うんうん。
お医者さんの場面に戻って、こんなことがあったんですよと、
ねーっておかしいと思うでしょって。
うんうん。
でもまあまあそれは、ちょっとおかしいかもしれないけど、異常ではありませんよと。
うん。
正常ですよと。
こういう食事という行為をもっともっとオープンにしていこうっていう運動は、
欧米でもね、行われているし、大変進んでるんじゃないでしょうかと。
なんか噛み合わへん返事をくれるわけですよね。
うんうん。
なんかこっそり実は立食パーティーの写真を集めてるんですとか言いながら、
ちょっとニヤニヤしたりとかしてね。
うんうん。
なんかもうその時点で、主人公はもうこの医者だめやって思って帰ろうとするんやけど、
いやいやなんで帰るんですかみたいな。
はいはいはい。
だってもう全然噛み合わないんですもんみたいな話をすると。
うんうん。
主人公はおかしいと思ってるけども、周りの人はおかしいと思ってないっぽいなっていうところが、
この段階でわかるんですね。
うん。
でね、このお医者さん、たぶん精神科医やと思うんですけど、非常に優秀です。
うん。
わかりましたと、やり直しましょうと。
うん。
一切の常識とか固定観念とかすべて捨てましょうと。
うん。
私たちは宇宙人になったつもりになって、初めてこの星を訪れておかしなものを見たと。
うん。
あーみんなおかしいことやってるなと、それを私に教えてくださいねみたいなことで、
患者さんを否定するわけもなく、受け入れるわけもなく、面接のね、スキルを使いながらね、話を聞かせてくれよということで、
主人公を帰らさずに続きの話を聞き出すわけです。
うん。
主人公はそういうことでしたらということで話を続けるんだけど、食事の雰囲気が異様だったと。
うん。
なんとなく罪深い感じがするし、みんなうつむいてこそこそやってるしと。
うんうん。
なんか自分の知ってる楽しい食卓じゃないなみたいな。
うん。
で、じゃあ行ってくるよって言って出かけるんだけど、どこに行くのあなたと。
うん。
いやいや、会社に決まってるでしょって。え、月曜日なのに会社に行くの?みたいな。
うん。
もうこの辺僕らもパニックですよ。
はい。
同じ立場に置かれてね。
うんうん。
周りの人は何言ってるんだろうっていう感覚にどこか落ちるわけですけども、
とりあえず黙って出てきましたと変なこと言われるけど。
うん。
休日出勤ですか?みたいなこと言われたりとか、近所のご家族とすれ違うんだけど、
09:04
あれ?あそこのお家って一人っ子じゃなかったっけ?みたいな。
うん。
一人っ子だと思ってたところのご家族が何人も子供連れて歩いてると、
あれ?おかしいってあそこ一人っ子じゃなかったっけ?みたいな感じで帰って、
もうなんかおかしいなと。
うん。
なので、やっぱりその主人公の感じてる違和感っていうのは、だんだん現実味を帯びてくるわけですね。
はいはいはい。
でも会社に行くのはやめて、もうぼーっとしてると。
うん。
ふー抜けた感じでね、ソファに座って。
でも奥さんがいろいろ喋りかけてくるけど、全部まあ上の空なんですよ。
うん。
うん、そうだね。
うんうん、みたいな感じで。
うん。
あなたったらいつも話聞いてないんだから、みたいなこと言われるわけですけども、
その内容が、あのこないだのお話考えてくださったのはあなた。
山田さんに権利証譲る話でしょ。
山田さんったらね、100万円ぐらいは出してもいいって言ってるから。
うん。
どうかなって思い切って権利証譲ったらどうかしらと、100万円くれるって言ってるしと。
うん。
私たち差し当たり殺した人だっていないしって、
ああそうだねって言って、
え?今なんて言ったの?っていうね。
うんうん。
もうあなたったらもう話聞いてないんだからと。
でも、わけがわかんないんですよね。
権利証がどうとか、殺したい人がいないとか、
100万円積まれるとか、さっきもなんか食事の雰囲気変やったし、みたいな。
はいはいはい。
でも、奥さんとも言い合いになって、喧嘩になって、
で、夫婦喧嘩追っぱじめるもんやから、
あの娘ちゃんもね、わーんって泣いちゃってね。
うん。
ごめんねごめんねって、怖かったねみたいな。
大人の話はまた夜中にでもね、することにして、
子守りというか、娘ちゃんの相手をするわけですよ、この主人公は。
で、じゃあ絵本読もうって。
絵本読んで、シンデレラの話をね、こう一緒に読むわけですよ。
ガラスの靴をね、探して、
あ、シンデレラはガラスの靴見たいでしたと。
シンデレラは王子さまとめでたく結婚しました。
ということで、娘ちゃんと一緒に絵本読んでと。
で、結婚式のページで終わるのかなと思いきや、続きがあって、
で、ぴらっとめくるとそこには、なんと、
王子さまとシンデレラのペットシーン。
わーって。
で、主人公大混乱ですよ。
誰がこんな本買ってきたのって、あなたじゃないのと。
で、おしまいのページ見てみろって。
これのどこがおかしいの?結婚したところでしょ?みたいな。
奥さんに通じないと。
おかしのことだらけですよね、この世界ね。
でも、先生も変だと思うでしょうって、こんなことがあったんですよって、ちょっとまた感情的になって、
くって書かれるような感じで、精神科医の先生に言うと。
で、あ、そうですね、変ですねと。
おかしいな、地球人って変ですよね、みたいな宇宙人設定やからね。
で、どこがおかしいですか?みたいなことを聞かれるわけですね、先生からも。
12:02
ここまでの話を整理しますと、
先生が整理してくれるわけですよ、僕らに対しても。
食欲に関すること一切がひめごとになっていると。
逆に、性欲に関することがあまりにもあけっぴろげっていうのがおかしい。
そうなんですと。やっとわかってくれましたか?ということでね。
そこにつけて、この先生は、その2つについて考えてみようということで、主人公にないかけてくるわけですね。
食欲、それから性欲、これはともに最も根源的な欲望でしょうと。
どちらがかけても、地球人っていうのは滅亡してしまうわけですよね。
そうですよね、あってますよね、ここまでね。
じゃあ、この2つのうち、どちらかを恥ずかしがらないといけないとすれば、果たしてどっちでしょうかと。
みなさんも考えながら聞いてください。
食欲とは何か。個体を維持するためのものである。
個人的なもの、閉鎖的なもの、独善的な欲望というふうに考えられます。
対して、性欲というのは、種族の存続を目的とする欲望である。
公共的であり、社会的であり、発展的な性格を有しておりますと。
こう考えれば、このあり方もおかしくないですよねと、言われちゃうわけですよね。
いつからそうなったんですかって聞いたら、いや、もう昔からだと思いますよっていうふうに先生にも言われるとね。
そうかな、おかしいなって。
主人公もだんだん、説明をされたもんやから、自分の考え方おかしいのかなってなってくるんですよ、だんだんとね。
それは置いといてと、違和感っていうのはそれだけじゃないんだと。
食欲と性欲の逆転だけじゃないんだと。
どうしたのよ、あなた、今朝からおかしいわよって、またその回想場面に戻りますと。
夫婦喧嘩の炎上で、とりあえずいたたまれなくなって、外出ますと、街に。
言われてみれば、駅前にいつもあったはずの寿司屋さんもラーメン屋さんもお菓子屋さんもないんですよね。
で、場面変わりましてと。
彼は友達に話しかけられますと。
たぶんこれは同僚なんかな?わからんけど、特に紹介がなかったんでね。
どこ行くんですか?みたいな。
今から僕デートなんですよ。みたいなことを言う、ちょっと調子のいい、お調子者っぽい友達が声かけてきて、どっか行くっていう場面が挿入された後に、
駅でね、駅のホームでね、主人公はひひしてるわけですよね、ベンチに座って。
もう何が何だかわからないみたいな感じで。
その傍ら、ホームに学生さんのカップルがおりますと。
で、その2人の会話が聞こえてくるわけですね。
15:00
カップルというか、彼女さんのほうは赤ちゃんを抱いてるんです。
でね、あんたってね、この子ったら、もうバカに最近重くなってきたのよと。
ミルク減らしてみたらどうだよとかね。
あんたが体格がいいから、あんたにいっちゃったんだよとかね。
言いながら、そこまでは普通の会話ですよね。
で、次の一言ですよね。
なあ、その子やめちゃってさあって、新しいのこさようぜみたいなことを言い出すと。
で、やったあ、こさようこさようって言って、赤ちゃんをポンって駅のゴミ箱に投げ込んで、
じゃあ、今すぐやろうって言って、駅のホームで追っぱじめるわけですね、この2人。
で、さすがにほら、この場面、やばいじゃないですか。
駅員さんがね、おいおい君たち、君たちっていうことで止めに入るわけです。
むやみに子供をせちゃダメじゃないかと。
ちゃんとスペアを作ってから、保健所に連絡してからっていうのが順番でしょうと。
近頃、ほんとに若いものはっていうことで、去っていっちゃうんですよね。
もう何が何だかですね。
倫理観とかいうのが、もう完全に僕らの今いる世界とは違うんですよね、この場面でね。
で、主人公はもうキョトンとしてるわけです、ついていけんから話に。
でも、F先生、筆を止めません。一切。畳みかけます。
先ほど、これからデートなんだって言ってね、話しかけてきたお友達が、
助けてくれっていうことで、主人公に縋ってくるわけですよ。
家内が私のこと殺すんですって。
でも、最後には、奥さんがもう包丁を持って迫ってて、
あんた隣の実をちゃんとご飯食べようなんて、このケダモノ!って言って、その場で彼を斬りつけて殺してしまいますと。
劇のホームですよ。
あら、川口さん、主人がいつもお世話になっておりました。って過去形で言われると。
でも、主人公もギャーって言って、ちょっとあれですよね、耐えられなくなったというか、精神的に。
もう叫びながら、もう家に帰っていって。
で、家に帰ったら、さっきの奥さんが迎え入れてくれて、言ってた権利証の話の続きをされるわけですよ。
あなたいいところに、山田さんが見えてるんですよって。どうしても権利証が欲しいっておっしゃるのよ。
100万円持ってきてくれてるからって。買いましょう買いましょうみたいな感じでね。
山田さん、すごい人の良さそうなおじさんなんやけど。
ご承知の通り、私のとこには子供が生まれなかったもんで、権利証がもらえないんですよと。
そこでね、どうしても殺したい商売がたきがいるんですよって。
奥さんもね、譲ってあげましょうよって感じで、お金差し出されて。
ついにもう主人公、気がおかしくなって、僕が発音すると放送事故になりそうな悲鳴をあげながら、気が触れてしまいます。
18:09
完全に精神崩壊しました、主人公ここで。何が何だかわからない世界。
これが回想エピソードなのでね、お医者さんの話にまたまめに戻って、
お医者さんは一連のことを主人公から聞いたんでしょうね、報告されて。
なんて恐ろしいと、地球人っていうのは殺人を公認しているんですか。
全く考えられませんね、みたいなことで、一回を同意してくれるわけですね。
ただ、ここはもうカウンセリングの基本的なスキルで、必ず同意して、それから伝えるっていうのがあるんですけど。
じゃあ、またここでね、地球人の視点について考えてみましょうっていうことで、もう一回何かを説明し始めるわけです、彼は。
これ、フジコ作品の他にも出てくるんですけど、地球とか宇宙とかを一つの大きな生命体として見るみたいな発想が、ここでもちょっと使われるんですけども、それをもって説得されるわけですね、主人公は、お医者さんに。
その説得の内容っていうのが、大きな生命体、地球が、だと思ったら、一人一人の人間っていうのは、一個の細胞みたいなもんですと。
体を構成する細胞ですと。
その細胞たちが、互いに殺し合うようなトラブルを抱え込むっていうのは、望ましいことでしょうか、と言われるわけです。
個人的ないざこざは、個人的に解消した方が合理的でしょうと。
いやー、もうそんな無茶苦茶なと、主人公はもう倫理観が揺るがされることを恐れて、言うわけですよね。
さらに、地球の汚料から考えると、現在の社会っていうのは、もう成長期を過ぎてしまったと見なさるべきですと。
いやいやいや、そのことない、そんなことないっていうことで、医者の言うことに一つずつ一生懸命反論しようと思うけど、具体的なことは何も言わないわけです。
お医者さん続けます。これ以上膨れ上がることは許されません。あとは個々の細胞の代謝だけ。
いやー、そんなことない。しかししかし。
出生率は年々増加するのに、自然死は減る一方。となれば、無理のない形でどんどんどんどんうまびきさせる必要もありますと。
主人公もすでに言葉を失ってるんですね、この時点で。
では伺います。なぜ生命は尊重しなくちゃならぬのですか。
うん。
主人公はね、わかりきったことだっていうふうに言うんですけども、
それでは答えになりませんと。論理的に説明してください。
さあ、さあ、さあ、さあということで答えを求められますけども、主人公は返す言葉が見つからない。
ここでカウンセリングのシーンはおしまい。
21:04
その病室というかね、その病院のね、待合のところで奥さんが心配そうに座ってて、主人公はお医者さんに連れられて出てくるわけですよ。
ご安心ください。ご主人はすっかり妄想から解放されましたよ。
まあよかった。ってね。
主人公もすべてを受け入れたような顔で、こっそりね、奥さんの耳打ちで、
実は朝から腹ペコなんだって。
恥ずかしいこと言ってみたいなこと言いながら、ラブラブですよね、この2人。
僕本当にちょっとどうかしてたんだよ、と。
もうそのことは言わなくていいのよ、あなた。っていうことで、この主人公はこの世界のすべてを受け入れてましたと。
このお話、エピローグ的な展開が最後にありましてね。
山田さんね、権利証買いに来たでしょ?100万円で。
その権利証は結局売らないことにしたんですよ、奥さん。
あんなに100万円に目がくらんでね、うろうろうって言ってたけども、
なんでかっていうと、主人公も誰かに殺されようとしてるっていう噂が立ってるんですよね。
出世を防ぐために、たぶん同僚か何かがあなたを殺したがってるって聞いたのよ、と。
えー、そうだったのか。あいつ前から嫌なやつだったんだ。
じゃあ、俺、この権利証を使ってあいつを殺してやるよ。主人公も起死にするわけですよ。
別に、そのことはこの世界では普通のことなので、奥さんも頑張ってねって。
娘ちゃんも、パパ、しっかり頑張ってね、みたいな感じで送り出してくれるわけですよね。
で、まあ、月ものが落ちたように、次の日の朝、すっごいすっきりした目覚めなんですよ、主人公にとって。
で、うーん、よく寝たと。すっきりした朝だと。
うーん、何かちょっといつもと違うな気がするなっていう気になる一言を言った後に、
いやいや、ばかなと。せっかくね、この気持ちのもやもやが治ったのに、
その違和感のことは一旦忘れることにして、
よっしゃ、主人公はやるぞっていうことで、こうナイフをたずさえて、
行ってらっしゃい、パパ、みたいな。家族に送られて、こう家を出て行きます。
後ろで奥さんが叫ぶんですよね。
あなた、お弁当。
あー、もう気づかずに行っちゃったわ、仕方ない人ねと。
で、主人公は最後のコマで、よーし、僕はやるぞと。
なに、なんでもないことなのさと、こう勢いよーっとした顔で街を歩いていくんですが、
その背景にはラーメン屋さんもあれば、アイスクリーム持って歩いてるカップルもあれば、
主人公は気づかないけども、僕らは気づいてしまう。
っていう終わり方をするのが、この気楽にやろうよというお話。ちょっと長くなっちゃいましたけどもね。
混乱しますね、このお話。
24:01
そうですね。
さっぱさんは、このお話を読んでみての率直な感想はどう思います?
これって、なんだったんだろうっていうのを結構思って。
結局なんだったのかっていうのが気になるよね。
夢の中で見たことに、脳がそれでバグっちゃったみたいなことなのか、
この数日間というか、1日2日なのかわかんないですけど、
これは一体何者なんだろうってすごい気になりますけどね。
なんかこう、別の世界に迷い込んでしまったっていうふうにも取れるし、
主人公の始めから妄想だったっていうふうにも取れるし、っていうところはあるよね。
このお話、混乱するので、僕読みながら何回もページの始めに戻って、
それぞれのキャラクターが言ってることを、
あ、こういう意味で言ってたんやっていうのを振り返りながら読んだんですよ。
結構難しいね。
この1回で読み終えて、そうだったのかって納得するのは、結構読解力いる感じはするんですけども。
そうですね。私も戻りました。
この話、整理すると、ちょっと話を整理すると、
主人公が迷い込んだ、あるいは妄想の中だったのかもしれないけど、
いた世界っていうのは、食欲と性欲っていうのが逆転してますね、まず。
で、人を殺すことを容認されてる。
で、そのためには権利書が必要。
やたらめたら殺していいわけじゃなくて。
で、その殺しの権利書を得るためには、どうやら子供を作ることが必要なんですね。
子供1人作れば、人を殺していいっていう権利が得られる。
で、それはちゃんと保健所に連絡してとかって言ってるので、ちゃんと法律として整備されてる。
なので、死理滅裂に見えながらも、一応筋は通ってるんですよ、この世界っていうのは。
おかしいけどね、倫理観はね。
その他にも、日曜日に出勤するとか、月曜日かどうとか、そんなのも出てきたけども、
ここはもう、あんまりちゃんと説明されなかったけどね。
このお話のやっぱり肝っていうのが、さっきの性欲と食欲の考え方よね。
食欲っていうのは、個人が満足するだけやと。
性欲っていうのは、種が反映するために必要な欲求だと。
どっちが恥ずかしいですか?っていうふうに聞かれる。
っていうのが第一ポイントね。
で、もう一つが究極のね、どうして命は尊重されないといけないんですかと。
地球全体で見たら、間引きって必要ですよね、みたいなこと言われて、主人公は返せなかったんです、その言葉に対して。
わかりきったことだっていうふうに返すんやけど、それは理由にはならないって言われてしまうと、難しいなと。
27:09
結局、これはね、論理的にどういうふうに答えればよかったかなって話ではなくて、
こうこうこうだからこうですよって説明するんじゃなくて、大切にしないといけないっていう、それこそが倫理観じゃないですか。
そこを投げかけてるんだよなっていう感じはしますね。問題提起的な部分でいくと。
難しいですよ、この話は。
そうですね。
多分、主人公と同じ立場でこうやって詰め売られると、僕もなんて答えたいかわかんなくなっちゃうし、
だって大事なんだもんって言うしかないしね。
もう一個ショッキングなのは、僕この作品は割と初期、異色短編を読み始めて、初期に出会った作品なんですけども、
バンバン人が殺されますね、話の中で。
駅のホームで切りつけられるだろう、赤ちゃんがゴミ箱に投げられるだろう。
こういう絵を藤子作品で見るのに耐性がなかった頃なんで、結構衝撃は大きかった。
あとは、オチの怖い終わり方ね、ブラックの終わり方ね。
これ僕の話でどれぐらい伝わったかわかんないですけども、わかっていただけました?最後のラストの気味悪さ。
そうですね。実際には、この人は殺しちゃって捕まっちゃうんですかね?
だろうね、たぶん。やる気満々で、気楽にやる気満々で、同僚のとこ向かった場面で終わるからね。
背景にほら、食べ物屋さんがあるっていうことは、もはや主人公がいた世界じゃなくて、元の世界に戻っていることを意味してるので、
じゃあ、この世界でお殺しはダメですよと。複雑だよね。向こうの世界ではOKだったんだけど、こっちではダメなんですよって、そういう理由で罰せられるものでもないからさ、生命っていうのは。
でも、それこそ心身的におかしかったみたいな感じで、裁判とかでなりそうな話じゃないですか?
そうやね。
ラストの展開を見ると、サッパさんが言うように、このここ数日の出来事って、もしかしたら実際に起こったわけじゃなくて、
ちょっと精神のバランス崩して見てしまった妄想だったんかな?みたいなふうに、受け取らざるを得ないところはあると。
気楽にやろうよですよ。
そうですね。
このタイトルのセンスよと思いましたよ、僕も。
これは、先ほどというか、冒頭も言ったけども、非常にキャッチーではないね。
30:02
なんて言ったらいいの?この目を引くタイトル、名付けのセンスとかも含めて、有名なお話ではあるんやけども、
他のSF短編、今まで紹介したやつとも、ベクトルの違うというか、倫理観を疑わせられるみたいなところを投げかけてくる究極の短編かなと思います。
名作、名作でございます。
というわけで、今回は藤子 F. 藤代先生のSF短編、気楽にやろうよ、こちらをご紹介いたしました。
ありがとうございます。
30:49

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