FP&A Insight 〜FP&Aアーキテクトの鷲巣大輔)と管理会計のその先を一緒に考えていく番組です。
今日のテーマは、データを入れても意思決定は変わらないということですね。
ドイツの大企業322社を調べた2025年の研究です。
結論はですね、我々が思っているのと順番が逆ということですね。
どういうことか、ツールやデータを揃えるのは先ではなくて、それを判断に効かせる行動、そしてその土台になる信頼の方が先だということです。
FP&Aというのは部署ではなくて機能だということですね。
このお話を今日は皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
皆さんこんにちは。FP&Aアーキテクトの鷲巣大輔です。
今日から始まりましたFP&Aインサイト、ぜひ長く聞いていただければなと思いますし、皆さんと一緒にディスカッションできればなというふうに思っております。
このポッドキャストを立ち上げた一つのきっかけでもあるんですけども、よくですね、最近日本企業の中でこのFP&A組織立ち上がっているなというふうに思います。
私の仮説なんですけども、やはり2014年の伊藤レポート、それから2023年の東京証券取引所のPBR改善要請。
こういったことがですね、やはりこのCFOの人たちに対して投資家の期待値に沿った戦略策定実行、これを強く進めなさいねというふうにメッセージとして伝わってきた。
これが背景としてあるのではないかなというふうに思いますね。
こういった要請があることによって、CFO自らの実行部隊としてこのFP&A組織を設置すると、こういう流れになってきたのではないかなというふうに踏んでいます。
実際、多くの会社でこのFP&A組織立ち上がっていますよね。業績の可視化、レポーティングの高度化、BIツール入ってEPM導入されてということで、
結果としてダッシュボードで業績がタイムリーに出るようになって、月次のレポートもオートメーションになってきれいに出てきて、人材も数字に強い人間がどんどんこのFP&A組織に入っていけるというふうに、
多くの会社でいろんな進捗が進んでいるのではないかなというふうに思います。
ただ、本質的なポイント、すなわちこのFP&Aの目的というのは何かというと、この意思決定の質を高めるわけですよね。
企業価値創造に向けて意思決定の質を高める。
じゃあこれが本当に達成できているのかというと、ここはいろんな議論の余地があるのではないかなというふうに思いますね。
もちろんできている会社もあるんでしょうけども、まだまだその途中ということが多いのではないでしょうか。
制度とか仕組みは存在しているんだけども、聞いていないのではないかなと。
私も実際にそういうことをよく感じますし、多くの人からそういうお話を聞いたりもします。
今日は第一回目なんですけども、今申し上げたように、あるんだけど聞いていない。
これにですね、正面からデータで切り込んだドイツの学術研究がありますので、こちらの方を紹介したいなというふうに思っております。
今日皆さんと一緒に考えたいのは、組織もツールも人も揃った、なのになぜ意思決定が変わっていないのかという問いでございます。
今回取り上げたいのはですね、ドイツの会計学者であるベルナー教授、それからウィーナーさん、ギュンダーさんという3名の方がですね、書いた2025年の論文です。
論文のタイトルちょっと長いんですけどね。
Controller Chip Effectiveness and DigitalizationShading Light on the Importance of BusinessAnalytics Capabilities and the Business Partner Role。
覚えなくていいですよ。覚えなくていいです。
覚えておいていただきたいのが、そのベルナー教授が2025年に出したというものですね。
掲載されたのは、Management Accounting Research、有力なジャーナルなんですけども、こちらの66巻ということになります。
この辺り、覚えておいていただければサーチはかけられるんじゃないかなというふうに思うんですが、
この論文ですけども、2024年にオンラインで先行公開されて、2025年に正式に掲載されたということになりますね。
ドイツの大企業322社へのサーベイを行って、構造方程式モデリングという統計手法で分析をしたものということになります。
ドイツなんだけどね。定量分析で、因果までは測定できないけど、相関までは出ているということ。
これが一つのポイントかなというふうに思うんですけども、この論文を今日は読み解いていきたいなというふうに思うんですが、
ちょっとその中身に入る前にですね、我々が普段どういうことを考えているのか、
特に日本のFP&A文脈の中でどういうことを考えているのかというのを整理したいなというふうに思います。
異論はあるかもわかんないけど、大まかこんな2つなんじゃないかなというふうに思いますね。
一つ目、組織を作ってツールを入れる。これが機能化のための条件だというお話ですね。
FP&Aという組織を作って、そこに各種AIも含めてDXツールを入れて、BIとかEPMとか入れて、
この形を整えれば、このFP&Aの機能というのは高度化されるというような考え方です。
どうですかね。皆さん同調ですか。違う人もいるかもわかんないけど。
こういうのはよく言われることなんじゃないかなというふうに思うんですよね。
もう一つ、ビジネスパートナーとしての意識を持てば変わるんだよ。
一人一人が集計係ではなくて、事業のパートナーというふうに自己認知を新たにし、
そういうふうなマインドセットを持てば変わるんだよというお話ですね。
これは主観的な話になっちゃうかもわかんないけど、日本のFP&Aの議論を見てると、
この2つの論調は多いなというような感じがしています。私はこのどちらも否定はしてません。
基盤も意識も、やはりこれが必要かなというふうに思いますよね。
これがないと話が始まらないという意味で言うと。
ただこれ、必要条件であって十分条件ではないんじゃないかなというふうに思っているわけです。
この十分条件に耐え得るものって何なのか。
これがですね、ベルナー教授の322社のドイツの企業のデータ、調査データということなんじゃないかなというふうに思っています。
これは本論の中で話したいと思うんですけども、答えは何を持つかではなくて、
何が起きているかなのではないかなというふうに思うわけです。
ベルナー教授の研究というのは、この起きていることというものが何なのかというものを解明してくれたんではないかなというふうに私は考えているということですね。
このベルナー教授の本質というのは、私が思うにすごく中核な命題が一つあるかなというふうに思っています。
それは何かというと、仕組みというものと成果というものは直線では結ばれていないということですね。
イメージしてもらうと分かりやすいかも分からない。
頭の中にちょっと絵を描いてほしいんですけども、左側に仕組みという箱を置くということですね。
これは何かというと、技術とかデータとかシステムとか、あとはFP&A組織みたいな、オーガニゼーションチャートみたいなのもそうですよね。
こういうのが仕組み。これが左側にありますよと。
右側にですね、成果という箱があるということですね。
この成果というのは何かというと、意思決定の質というふうに言い換えてもいいんじゃないかなというふうに思います。
多くの人たちは、この左から右側に1本の矢印がいくんではないかなというふうに想像されるんではないかなと。
すなわち仕組みがあれば成果が出る。成果を出すには仕組みが必要だということなんですけども、
ベルナー教授はですね、この1本の矢印の真ん中にもう1個箱を置きました。
統計の言葉では倍解変数という言い方をするんですけども、この仕組みというのはこの真ん中の箱を通らないと右の成果に届かないという。
これがベルナー教授の発見ですね。この真ん中の箱が何なのか。
これがですね、FP&Aのビジネスパートナーとしての役割だということです。
1個だけ注意点。ビジネスパートナーとしての役割というのは、意識しましょうとかそういうマインドセットを持つではない。
そうではなくて行動の束だというふうに考えてもらったらいいかなと思います。
どういうことかというと、例えば将来どういうふうになりそうなのか、外部環境、内部環境を見ながら想定されるシナリオを描くとかね、
そのシナリオに基づいたシュミレーションをいくつか感度分析を走らせながら定量化させて、
どれがベストシナリオ、ワーストシナリオなのかを書いて提示をするとかね、
この結果を基に将来の事業の姿を経営人とけんけんがくがく議論をするとかね、
マインドセットではなくて行動という行動として活動して、それが束になって動いて、
初めてこの左の仕組みというのが右側の方につながっていくっていう、そういうようなお話でございます。
これベルナー教授の論文、読みたい方は本文を読んでいただくのをお勧めするんですけども、
今日はですね、私が気になった3つの数字というのをちょっとご紹介したいなというふうに思います。
この3つの数字を通じてベルナー教授の研究の本質というものに入っていきたいなというふうに思います。
ベルナー教授たちの発見、3つの数字に集約をすると申し上げました。
今から申し上げますね。1つ目、-0.124です。これは何か。-0.124。
これは仕組みですね。技術とかデータとか組織とか、そういった仕組み。
これが真ん中の箱を通さないで、直接右側の意思決定の室に効くかどうかという指標が-0.124。
この-0.124の数字は-1から1までの間を動くので、-0.124というのはプラスじゃなくてマイナスですよね。
すなわち、真ん中の行動の束を経由しないツールに対する投資だったりとか、仕組みの設計だったりとか、
こういったものというのは意思決定の室に対して、むしろ足を引っ張り売るんだという話ですね。
面白くないですか。入れただけのツールとか、作っただけの組織とか、こういうのは効かないどころじゃなくて、むしろマイナスに動くんだよっていう。
これがまず1つ目の数字ですね。-0.124。2つ目、0.007。何でしょうね。
FP&Aが数字を作って配る記録係であるスコアキーパーなんていうふうに論文では書かれてますが、
スコアキーパーに留まっている場合においては、意思決定の影響を説明できる度合いがほぼゼロですよ。
だから真ん中にビジネスパートナーという名前の人がいたとしても、やっている内容が単なる数字の集計とかであれば、
これは言ってみたら意思決定の質にはほぼ統計的に意味のある水準には届かないってことですよね。
耳が痛い。3つ目、322社のうちおよそ200社が先ほど申し上げたスコアキーパーだったってことですね。
真ん中の箱は用意されているんだが、これドイツなんでね、コントローラーっていう部署って言いますか、役職がある。
日本ではFP&Aの方が一般的かもわかんないですけど、箱はあるんだと。
ただその実態として本来のビジネスパートナーとして動けているのはおよそ104社で、残りの200社というのはスコアキーパーの方が優位だったってことです。
すなわちドイツにおいて長らくこのコントローラーという部門があったとしても、現実というのは記録係の方が多いということですよね。
これドイツの話ではあるんだけども、日本においても管理会計部とか事業企画とか経営企画とかFP&Aとか、
名前はあれども実態は数字の記録係というのは少なくないんではないのかなというふうに思うわけですよ。
じゃあこの3つの数字、1つ目-0.124、仕組みというものが直接右側の意思決定の室に聞くのかという数字が-0.124だよ。
2つ目-スコアキーパーとして活動していると、意思決定の室に影響を与える度合いは-0.007、ほぼゼロだよ。
3つ目-322社のうち200社は記録係、スコアキーパーだったよ。
この3つの数字、まとめて何を言っているのかということなんですけども、ベルナー教授たちの発見を一言でまとめてみたいと思います。
つまると、FP&Aは組織を作っただけでもダメ、仕組みを入れただけでもダメ、ビジネスパートナーを名乗っただけでもダメ、やはりそこには行動が必要。
具体的には将来の想定シナリオを描いたりとか、それぞれのインパクトを定量化したりとか、シナリオを評価したりとか、将来の事業展望を経営陣と議論したりとか、
こういうような行動の束があって、初めてビジネスパートナーとしての活動が成り立つ。
仕組みとか、制度とかデータとか、組織とか、そういったものっていうのは、この行動の束を経由しなければ、発現しないってことですよね。出現しない。
こうなって初めて意思決定の質を高めることができる、貢献できるっていう。
これがですね、ベルナー教授が322社のデータ研究を通じて、実証データを通じて教えてくれることだなというふうに思いますね。
厳密にちょっとだけ正確性を期して言うとするのであれば、この仕組みといった中にもいろんなものがあるわけですよ。
ベルナー教授の発見の中で唯一データドリブンの文化とか、経営者の強いコミットメントとか、
彼の言葉で言うとインタンジブル無形な仕組みに関しては、実は行動の束がなくても直接効く。
ただし、ビジネスパートナーがいて行動の束があれば、これがブーストされるというようなことをおっしゃってるんですけども。
行動がゼロなら全部が無駄じゃないよっていうことはベルナー教授も指摘をしているので、そこだけはちょっと正確に申し上げておきたいなというふうに思います。
でもどうですか。結構面白いよね。仕組みだけ作ったって、ビジネスパートナーを名乗ったって、行動の束が伴わない限り意思決定の質は変わらないというのが、このドイツの研究の成果だということでございます。
ということで、ベルナー教授の論文の紹介をしてきたんですけども、ここからはちょっと私の解釈をお話ししたいなというふうに思っています。
明らかですよね。その意思決定の質に対して、やっぱり行動しないと、行動の束がないと効かないっていうのが明確になったわけです。
これは私も言われてみりゃそうだよねって思うわけですよ。単なるスコアキーパーでは、それは意思決定の質なんか高まらないよねって思うわけですよね。
何かしらの働きかけみたいなものがないと変わらないってわかる。
でも、わかってるじゃないですか。質問は、なんでこんな多くの会社がドイツにおいてコントローラーっていうポジションがあるにもかかわらず、
200社もがスコアキーパーという状態に留まっているのかということ、これをちょっと考えてみたいなというふうに思うんですよね。
私はですね、人間誰しも合理的に帰結するもんだっていうふうな強い信条があってですね、
記録係でスコアキーパーで居続けるっていうのも、これは合理的な選択としてそうなってるんではないかなっていうふうに思ってるわけですよ。
どういうことかっていうと、やっぱり人は評価をされることに晒されるわけですよね。
やっぱり資料を記述通り正確に出すとか、会議においても実績を正しく説明するとか、明確に説明するとか、
こういうことがやはりこの管理会計に携わっている人たちに期待されていることであり、それが評価対象。
逆に言うと論点形成とかね、そういった段階から予算の議論に呼ばれることがまずないので、
そうすると最適な行動は何かっていうと、やはりスコアキーパーとしてその精度を高くするっていうことが評価されるのであれば、
そうなってしまうのは必然じゃないかなっていうふうに思うんですよね。
むしろ例えばシナリオを書いて、将来こうなりそうだよ、こういうリスクがありますよなんていう話を経営陣に出したとしても、
評価されないどころか、むしろお前何を俺の領域に入ってくんだよっていう。
踏み込みすぎじゃねえかと、そこは事業部の領域なんで、お前ら会計屋は入ってくんじゃねえかって煙たがれる。
そうすると、そういうふうに虎の尾の尻尾を踏むぐらいであれば、正確な資料を出す方が評価されるのであれば、
スコアキーパーにとどまるっていうのは極めて合理的なんじゃないかなっていうふうに思ってるわけですよね。
怠けてるわけではない。インセンティブの設計がスコアキーパーを最適解にしているっていうことが言えるんじゃないかなっていうふうに思うわけです。