そうですね、あらかじめ混ぜておくわけです。
そしてそれを限界まで押しつぶしたところに、
点火プラグというライターのような部品でカチッと火花を散らしてドカーンと着火する。
その通りです。
しかし、ディーゼルエンジンは最初のアプローチから全く違うんですよ。
ディーゼルエンジンは最初のステップで空気だけを吸い込むんです。
空気だけ?燃料はまだ入れないんですね?
ええ、まだ一滴も入れません。純粋な空気だけです。
ここなんですよ、私が驚いたのは。
空気だけを吸い込んで、次の押しつぶすステップで、
その空気を元の体積の20分の1になるまで容赦なくギュギュギュッと押しつぶすんですよね。
はい、極限まで圧縮します。
でも、ただ空気を押しつぶしただけで、どうしてあんな大爆発につながるんですか?
それはですね、物理学の基本的な法則が関係しているんです。
空気を構成している分子を逃げ場のない極小のスペースに無理やり押し込めるとどうなると思います?
うーん、満員連射みたいにギュギュになって身動きが取れなくなる?
まあ、そんな感じですね。分子同士が猛烈な勢いで衝突し始めるんです。
そして、この激しい運動エネルギーが純粋な熱へと変換されるんですよ。
熱に変わるんですか?
ええ。20分の1まで空気を圧縮すると、なんと約550度から600度にまで達するんです。
600度?それって、鉄を熱した時に薄赤く光り始めるくらいの温度ですよね?
そうそう、まさにその通りです。エンジンの中で赤熱空気が作られているってことなんですよ。
エンジンの中で空気が真っ赤になっているなんて想像するだけでちょっと怖いですね。
そして、その赤く熱せられた超高温の空気の中に霧吹きのように経油をシュッと吹きかけるんです。
燃料の経油ですね。するとどうなるんですか?
火がなくても、燃料がその熱に触れた瞬間に勝手に発火して、瞬間最高2000度の大爆発を起こすんです。
これがディーゼルエンジンの自己着火というメカニズムですね。
えー、2000度、すごいな。
いや、あの、ちょっと待ってください。確かに理屈はわかりました。でも、そもそもですよ。
はい、なんでしょう?
わざわざ空気を鉄が赤くなるまで力いっぱい押しつぶして熱くしなくても、ガソリン車みたいに最初から燃料を混ぜておいて、普通に火花で火をつければ簡単じゃないですか。
あー、なるほど。なんでそんな力技みたいなことをしているのかと。
そうなんですよ。なんかわざわざ難しいことをしているように見えちゃって。
それはですね、燃料である経油とガソリンの科学的な性格の違いが理由なんです。
性格の違いですか?
実は、ディーゼル用の燃料である経油は、ガソリンのようにマッチの火を近づけても、簡単にはボワッとは燃え上がらないんですよ。
え、そうなんですか。燃料なのに火がつきにくいって、なんか無人しているような。
ここが面白いところなんですけど、分子の構造が違うんですね。
ガソリンの分子は短くて安定しているので、火花というきっかけを与えてやれば一気に燃え広がるんです。
ふむふむ。
一方で、経油の分子は炭素が長くつながった、少しどろっとした重い鎖のような構造をしていまして。
鎖みたいな感じなんですね。
ええ、この長い鎖は火花を当てても燃えにくいんですけど、黒原の熱と圧力という環境に放り込まれると、鎖がプツプツとちぎれて、酸素と激しく反応し、勝手に発火してしまうんです。
ああ、なるほど。火には強いけど、熱と圧力にはめちゃくちゃ弱いみたいな性格なんですね。
まさにそんな感じです。
ガソリンは自然発火しにくいけど、火花で燃えやすい。経油は火花では燃えにくいけど、熱を与えると勝手に爆発するんです。
完全に逆の性格なんですね。だから経油の性質を最大限に引き出すために、あえて空気を熱々にする環境を作っているんだ。
その通りです。経油は約250℃の熱で自然発火しますが、ガソリンは約300℃まで耐えられます。この科学的な違いを逆手に取ったのがディーゼルエンジンの設計なんですよ。
いやー、よく考えられてますね。
そしてですね、この空気を極限まで押しつぶすというアプローチこそが、トラックなどの大型車がディーゼルエンジンを選ぶ最大の理由、つまり圧倒的なパワーの源へとつながっていくんです。
ああ、ここからがさらに面白くなってきますよね。なぜこの仕組みが力持ちになるのか。
結論から言うと、空気を強く押しつぶせば押しつぶすほど、爆発した時のパワー、つまり外に膨張しようとする力が飛躍的に大きくなるからです。
うーん、バネを思いっきり縮めた時みたいな感じですか?
あ、すごくいい例えです。縮めれば縮めるほど、手を離した時に跳ね返る力は強くなりますよね。
ですよね。どったら、えっと、ガソリンエンジンも同じように限界までバネを縮めるように押しつぶせば、もっとパワーが出るんじゃないですか?
ガソリンエンジンでそれをやると致命的な問題が起きるんですよ。
え、何が起きるんです?
ガソリンエンジンは最初に空気と燃料が混ざったガスを吸い込んでいると言っていましたよね?
はい、あらかじめ混ざってるって言ってました。
そのガスをあまりにも強く押しつぶすと、点火プラグで火花を散らす前に圧力の熱によって燃料が勝手に爆発してしまうんです。
あー、まだピストンが上まで行ききってない、つまりバネを縮めきっていない途中の段階で、意図せずにドカンと爆発しちゃおうってことですか?
はい。これをノッキングあるいは異常燃焼と呼びまして、エンジンを破壊する原因になってしまうんです。
だからガソリン車は空気をあまり強く圧縮できないんですよ。
なるほど。でもディーゼルエンジンの場合はどうなんでしょう?
ディーゼルの場合はどうなっていると思います?
あ、そうか。ディーゼルは圧縮している時点では空気だけしか入っていないから、どれだけ限界まで力いっぱい押しつぶしても途中で勝手に爆発する燃料が存在しない。
その通り。
だからノッキングを気にせずギリギリまで圧縮できるんだ。
まさにそこなんですよ。だからこそディーゼルは極限まで圧縮して巨大な爆発力を生み出せるんです。
いやーめちゃくちゃ理にかなってますね。
さらに現代のトラックには排気ガスの力を使ってエンジンに無理やり大量の空気を詰め込むターボチャージャーという装置がほぼ確実についています。
ターボ。よく聞きますね。
これも空気だけを圧縮するディーゼルとは非常に相性が良くて、より多くの空気を詰め込んでより強大な力を発揮できるんです。
これあの自転車に乗る時の感覚で例えるとすごくわかりやすいなと思ったんです。
リスナーのあなたもちょっと想像してみてほしいんですが。
自転車ですか。
ガソリンエンジンは軽いギアでシャカシャカ早くペダルを回すのが得意なタイプ。
スポーツカーのようにスピードを出すのに向いていますよね。
抵抗回転が得意ですね。
一方ディーゼルエンジンは重いギアなんだけど立ち漕ぎでグングンと力強くペダルを踏み込んで重い荷物を乗せたまま急な坂道を登っていくのが得意なタイプ。
つまりスピードで後者がトルクつまり押し出す力です。
トルクですね。
10トンもの重い荷物を積んだトラックが停止状態から発進したり急な坂道を登ったりするにはスピードよりも低い回転数でタイヤを力強く回し続ける巨大なトルクが必要不可欠なんですよ。
しかも燃料である経油ってガソリンより安いですし圧縮費が高い分熱効率が良くて少ない燃料で遠くまで走れるんですよね。
おっしゃる通りです。長距離を毎日走る運送会社からしたらパワーがあって燃費も良いというのは非常に大きなメリットです。
まさに一石二鳥じゃないですか。
経済的なメリットは測り知れないからね。トラックにとってこれ以上利にかなったエンジンは存在しないんです。
なるほどな。あの、でもここで一つ疑問が沸くんです。
はい、何でしょう。
さっき空気を20分の1まで押しつぶして瞬間2000度の大爆発って言ってましたよね。
ええ、言いましたね。
それだけ凄まじい圧力と、まあ言ってみれば暴力的な爆発が絶え間なく起きているってことはエンジン自体が切っ端美人に吹っ飛んだりしないんですか。
鋭い視点ですね。当然普通のエンジンの強度ではその爆発には耐えられません。
ですよね。
だからこそディーゾルエンジンは非常に分厚い鋳鉄などで極めて頑丈にそして重く作らなければならないんです。
なるほど。華奢な作りじゃその圧力に耐えきれないんだ。
ええ、そしてその分厚く重い金属の塊の中で極限まで圧縮された空気と燃料が激しく爆発するためどうしても巨大な振動が発生するんです。
振動が。
はい。その結果ガラガラとかカラカラという特有の大きなノック音が出てしまうんですよ。
ああ、トラックの横を歩いている時に聞こえるあのガラガラ音ってただ古いからうるさいわけじゃなくて分厚い金属の中で信じられないような圧力と爆発が攻めき合っているまさにその物理的な音だったんですね。
そうなんです。あれはエンジンが必死に働いている音なんですよ。
力持ちの筋肉質なエンジンが上げているお叫びだと思えばなんだかすごく納得です。
ただですね、この重いドロドロとした燃料を使い純粋な熱と圧力だけに頼って強引に爆発させるという仕組みはどうしても完璧な燃焼にはなりにくいという宿命を抱えていまして。
完璧には燃え切らない?
ええ。そしてその不完全さがディーゼルエンジン最大の歴史的な敵を生み出したんです。それが排気ガスですね。
確かにリスナーのあなたも記憶にあるかもしれないんですが、昔のトラックって発進する時や坂道でアクセルを踏み込んだ時にマフラーから黙々と真っ黒な煙を出して走ってましたよね?
そうですね。昔はよく見かけました。
でも最近のトラックって全然煙を出さないじゃないですか。あの黒い煙一体どこに行っちゃったんですか?
あの黒い煙の正体は燃料の経由が不完全燃焼した際に出るPMと呼ばれる微粒子状物質、つまりススなんです。
ススですか?
ええ。大きさは100分の1ミリ以下と非常に小さくて、これを人間が吸い込むと肺の奥深まで入り込んで、喘息などの深刻な健康被害を引き起こしてしまうんです。
それはまずいですよね。どうやってなくしたんですか?エンジンの燃やし方を変えたとか?
燃焼のコントロール自体も進化しているんですが、最も劇的な変化をもたらしたのはDPFという装置なんです。ディーゼル微粒子補修フィルターの略ですね。
フィルター。資料にあったDPF.comの解説すごく面白かったんですよ。
ほう。どのあたりが面白かったですか?
フィルターの内部が蜂の巣のようなハニカム構造になっていて、目に見えない微細な穴がたくさん開いた多孔質セラミックでできているんですよね?
はい。その通りです。
排気ガス、つまり空気はその壁を通り抜けられるけど、ススの粒子は大きすぎて壁に引っかかり外に出られないという仕組み。
ええ。物理的な壁を使って有害なススをフィルターの内部にがっちりと閉じ込めているんです。
現在、トラックなどのディーゼル車にはこの装着が義務付けられていて、これによって排気ガスは驚くほどクリーンになりました。
でもですね、そこで当然の疑問として、それじゃ家の掃除機のパックみたいにいつかはススでパンパンに詰まっちゃうじゃないかって思うんです。
もちろん、そのまま放置すれば詰まってしまいますね。
トラックの運転手さんが毎週マフラーを外して、ススが溜まったフィルターをゴミ箱にポンって捨てて新しいのをつけてるんですか?
いえいえ、手動で交換しているわけではないんですよ。ここからが現代の科学技術の面白いところなんですが。
はい、ワクワクしますね。
実はこのDPFには、自分で自分の掃除をする自己再生機能が備わっているんです。
自己再生機能?どうやってフィルターの中のススを消し去るんですか?溶かすとか?
簡単に言うと、最近の高級なオーブンレンジについているセルフクリーニング機能のようなものです。
オーブンの?
オーブンが高温になって庫内の油汚れを焼き切るのと同じで、フィルター内に溜まったススを高温で自己燃焼させて完全に焼き切ってしまうんです。
本当にそうですね。古くからある力強さと現代の精密な環境テクノロジーが見事に融合した素晴らしい技術体系ですよね。
リスナーのあなたも次に横を大きなトラックが通り過ぎたときは、ぜひその無骨なボンネットの中を想像してみてください。
今、あの分厚い金属の中で空気を吸って限界まで押しつぶして、赤熱した空気の中でダリ爆発して吐き出すという4つのステップとプラチナの自動掃除フィルターがフル稼働しているんだなって。
きっと見え方が変わると思いますよ。
きっとあのガラガラという大きなエンジン音が少し愛用しくそして頼もしく聞こえてくるはずです。
仕組みのなぜを理解すると日常の風景の見え方が全く変わりますからね。
はい。そして最後にもう一つ、リスナーのあなたに刺激的な視点を提供して終わりにしたいと思います。
資料の中にバイオ燃料や合成燃料に関する記述があったんですよ。
これ、事前に専門家と一緒に話していてハッとしたんですが。
ディーゼルの未来に関する非常に興味深い可能性のお話ですね。
ディーゼルのエンジンって厚く圧縮した空気に燃料を吹きかけて爆発させるというすごく原始的でシンプルな仕組みですよね。
ということは極論を吹きかける燃料は絶対に今の化石燃料つまり経由じゃなきゃダメってことはないんですよね。
その通りです。燃えやすい性質さえ持っていれば極端な話、テンプラー油の廃油でも走ることができるんです。
テンプラー油ですごいな。もし今後植物由来で大気中のCO2を支出的に増やさない100%バイオディーゼル燃料や再生可能エネルギーを使って人工的に作られて
ススを一切出さない次世代の合成液体燃料が主流になったとしたらどうなると思います。
どうなるでしょうね。
この古くて重くてガラガラうるさい力強いディーゼルエンジンこそが最新のバッテリーカーつまり電気自動車を物もぐ
重い荷物を運ぶための究極のエコで力持ちな未来のスーパーエンジンとして君臨し続けるかもしれないんです。
テクノロジーの歴史では古いアプローチが新しい素材や燃料によって再評価されることはよくありますから
ディーゼルの歴史はまだまだ終わらないかもしれませんね。
古い技術だと思っていたものが新しい燃料と出会うことで最先端のグリーンテクノロジーに台場下するこれすごくワクワクしませんか。
リスナーのあなたはどう思いますか。
圧力と熱の芸術の進化はこれからが本番ということですね。
いやー今日も最高に指摘好奇心が刺激される深掘りでした。
それでは次回のキリオシティーノーツリプライでまたお会いしましょう。