ゆみこ:こんにちは。チャコウェブラジオは、株式会社Cyber Catsが運営するチャコウェブのスタッフが、
ウェブアクセシビリティを実践したい制作者やウェブ担当者に向けて、ゆっくりじっくり解説していくポッドキャストです。
進行を担当するゆみこです。よろしくお願いします。
みあ:みあです。よろしくお願いします。
ゆみこ:本日のテーマは、WCAG 2.0 解説シリーズPart17「『ガイドライン3.1 読みやすさ』とその達成基準」です。
みあ:前回までは、4つの原則の2つ目「操作可能」に関するガイドラインと達成基準を見てきました。
今回からは、3つ目の原則「理解可能」に入りたいと思います。
ゆみこ:はい、よろしくお願いします。
みあ:はい。「理解可能」には3つのガイドラインがあります。今回は1つ目のガイドライン、3.1「読みやすさ」を見ていきましょう。
WCAG 2.0 解説書では、「テキストのコンテンツを読みやすく理解可能にすること」と書かれています。
このガイドラインでは、ユーザーや支援技術がテキストコンテンツを読み取り、理解する上で必要となる情報を提供することが求められています。
ゆみこ:なるほど。ユーザーや支援技術がテキストコンテンツを読んだり、理解したりするために必要な情報を提供するように求めるガイドラインなんですね。
みあ:はい、そうなんです。ユーザーは文章をさまざまな方法で理解します。
例えば、目で見る、耳で聞く、点字を触る、といった方法です。また、この中のいくつかの手段を組み合わせる人もいます。
さらに、文章を読むのが苦手な場合でも、音声読み上げや図解、手話通訳などがあれば、難しい内容でも理解できるという人もいます。
そのため、さまざまな手段の提供だけでなく、理解を助ける情報の提供も必要になるんです。
ゆみこ:「理解を助ける情報」というと、具体的にはどのようなものがあるんでしょうか?
みあ:例えば、難しい言葉や略語、特別な意味で使われている言葉などの説明が挙げられます。文中に難しい言葉が出てくると、難しいと感じたり、文章の意味が理解できなかったりすることはありませんか?
ゆみこ:はい、あります。
みあ:そうですよね。このような場合の対応として、難しい言葉の説明や略語の正式な表現を提供するというのがあります。
これがあるかないかで、その文章を理解できるかどうかが大きく変わるんです。
例えば、「最新のCMSでは」といった書き出しの文章があったとします。このままでは、CMSがなにかを知らない人は何の話題かわからないと思います。
ですが、ここに注釈で「CMSとはContent Management Systemの略。ウェブコンテンツの管理ができるシステムのこと」と書いてあれば、そういったシステムの最新情報なんだな、となんとなくイメージしながら文章を読み進められるのではないでしょうか?
ゆみこ:あー、確かにそうですね。そういえば、WCAGも難しい言葉や略称などがたくさん登場しますが、そういったものには注釈が付いていますよね。
みあ:はい、そうですね。注釈があるとそれを参考に読み進められるので、ないときに比べてスムーズに理解できると思います。
それから、ブラウザなどのユーザーエージェントや、音声読み上げソフトなどの支援技術を利用する上では、その文章がどの言語で書かれているか、左から右と右から左のどちらで読むのかという情報も重要です。
これがわからないと、文章を正しく表示できない、読み上げられないということがあるんです。
また、日本語の場合は、漢字の読み方が分からないと意味が理解できないことがありますよね。そのため、ふりがなが必要な場合もあります。
ゆみこ:「テキストコンテンツを読みやすく理解可能にする」と一言に言っても、さまざまな配慮が必要なんですね。
みあ:そうなんです。ですから、このガイドラインには6つの達成基準があります。レベルAが1つ、レベルAAが1つ、残り4つがレベルAAAです。
ゆみこ:うーん、レベルAAAのものが多いですね。
みあ:はい。最初からレベルAAAの達成基準を満たすのは難しいので、今回はレベルAとAAの2つの達成基準を解説します。
まず、レベルAの達成基準3.1.1「ページの言語」です。
解説書では、「それぞれのウェブページのデフォルトの自然言語がどの言語であるか、プログラムによる解釈が可能である」と書かれています。
これは、そのウェブページで使われている言語、デフォルトの言語は何かを、プログラムが解釈できるようにする必要がある、というものです。
ゆみこ:デフォルトの言語を、ユーザーエージェントや支援技術が理解できるようにしないといけないんですね。どうしてそのようにする必要があるんでしょうか?
みあ:えー、ウェブページで使われている言語が識別できると、ユーザーエージェントや支援技術がユーザーに正しい情報を提供できるからです。
例えば、ブラウザは適切な文字や書体で表示できるようになり、スクリーンリーダーは正しい発音で読み上げられるようになります。
ゆみこ:なるほど。それは重要ですね。
みあ:HTMLでは、HTML要素のlang属性に言語コードを設定することで、デフォルトの言語を定めることができます。
日本語なら、言語コードは「ja」です。
ゆみこ:デフォルトの言語は、言語コードを使用して指定するんですね。
日本語のページなら、デフォルトの言語は日本語ですよね。
他言語のページはどうなるんでしょうか?
みあ:他言語ページでは、一番多く使われている言語をデフォルトの言語とします。
使われている割合が同じくらいの場合は、最初に使われている言語がデフォルトになります。
ゆみこ:うーん。それでは、メインが日本語で、ところどころ英訳があるようなページの場合、デフォルトの言語は日本語ということですね。
日本語と英語が同じ割合で使われているときは、最初に使われている方がデフォルトになるんですね。
みあ:はい、その通りです。
次は、レベルAAの達成基準、3.1.2「一部分の言語」です。
解説書にはこのように書かれています。
「コンテンツの一節、又は語句それぞれの自然言語がどの言語であるか、プログラムによる解釈が可能である。
ただし、固有名詞、技術用語、言語が不明な語句、及びすぐ前後にあるテキストの言語の一部になっている単語又は語句は除く」
ゆみこ:3.1.1が全体の言語で、3.1.2は一部分の言語の設定なんですね。
より厳密な対応が必要なので、適合レベルがAAになっていますね。
みあ:はい、そうですね。3.1.1よりも厳しい条件になっていますが、
これを満たすと、さらに正確な情報を提供できるようになります。
例えば、日本語で書かれたページにある英訳部分が、しっかり英語と認識されることになるため、その部分は英語として表示されたり、読み上げられたりするようになります。
ゆみこ:うん。同じ表記でも、言語によって読み方が異なることがありますから、これは多言語のウェブページではかなり重要ですね。
みあ:はい、そうなんです。実際に、解説書の達成基準3.1.1のページには「多言語サイトはレベルAを目指している場合でも、達成基準3.1.2に適合することを強く推奨する」という内容が書かれています。