みあ:それではまず、達成基準2.4.4「リンクの目的(コンテキスト内)」についてです。
この達成基準をWCAG 2.0 解説書で見ると、
「それぞれのリンクの目的が、リンクのテキスト単独で、又はリンクのテキストとプログラムによる解釈が可能なリンクのコンテキストから判断できる。
ただし、リンクの目的がほとんどの利用者にとって曖昧な場合は除く」と書かれています。
簡単に言うと、リンクやリンクと関連するテキストからクリックした時にどこに飛ぶのかをユーザーが予測できるようにしましょう、という達成基準です。
これはレベルAの達成基準となっています。
ゆみこ:なるほど。リンクの行き先を明確にしておくことが求められる達成基準なんですね。
みあ:はい、そうなんです。リンクを張る場合は、URLをそのまま表示したりせず「会社概要へのリンク」や「トップページに移動する」といったように明確に表示することが推奨されています。
ゆみこ:うん、そのような表現だとわかりやすいですね。
みあ:ただし、1点注意点があります。
「詳しく見る」「詳細はこちら」といった表現はさまざまなウェブサイトで目にしますよね。
実は、この表現はあまり適切ではないんです。
ゆみこ:えー、そうなんですか?そういったリンクはよく見ますが、前後の文脈を見ればどこに飛ぶか大体はわかりますよね。
例えば、採用について書かれている部分に「詳しく見る」というリンクがある場合は、採用情報が書いてあるページに飛ぶことが予想できます。
みあ:瞬時に前後関係が把握できるユーザーは、そのように推測できるでしょう。
しかし、誰にとってもそれが可能だとは限らないんです。
支援技術を使用しているユーザー、特にテキストリーダーユーザーは、リンク先が不明確だと不便を感じる可能性があります。
ゆみこ:それはどうしてでしょうか?
みあ:スクリーンリーダーには、ページ内のリンク一覧を取得して読み上げる機能があるんです。
その時に「詳しく見る」「詳細はこちら」「続きを読む」というリンクが並んでいても、どのリンクが自分の求めているものなのか判断できませんよね。
ゆみこ:あー、なるほど。そういった理由があるんですね。
たしかに、「詳しく見る」といったリンクが並んでいてもどこに飛べばよいのかわからないですね…。
みあ:それでは、「会社概要を見る」「採用情報を見る」「お問い合わせはこちら」といったように、リンクの目的が具体的に分かるテキストが並んでいる場合はどうでしょうか?
先ほどよりわかりやすくなったのではないでしょうか。
ゆみこ:はい、それならわかりやすいです。そういった具体的な説明があった方がよいですね。
ひとつ質問なのですが、解説書の最後の一文「ただし、リンクの目的がほとんどの利用者にとって曖昧な場合は除く」というのはどのような意味でしょうか?
みあ:これは、誰にとっても行き先や目的が不明なリンクは、この達成基準の例外になるということです。
例としては、ゲームなどが挙げられます。ドア1、ドア2、ドア3というリンクがあり、どれを選ぶかで結果が変わる場面があるとします。
この場合、どのドアを選ぶとどうなるかというのは、障害の有無や支援技術の利用の有無に関係なく、誰にとってもわかりませんよね。
ですから、こういった場合は、ドア1、ドア2、ドア3といった曖昧なリンクテキストでも問題はありません。
ゆみこ:ああ、なるほど。むしろ、どのドアを選ぶとどうなるかを説明するとゲーム性が失われてしまいますよね。そういった場合はこの達成基準の対象にはならないのですね。
みあ:はい、そうなんです。また、基本的にはリンク単体で意味がわかるのが望ましいですが、
他の部分にある説明的なテキストとリンクを結び付けたり、文章とリンクを同じ段落にすることでリンクの目的を特定できるようにするという方法もあります。
この達成基準にはさまざまな達成方法がありますので、ぜひWCAG 2.0 解説書の「達成基準2.4.4を理解する」のページを確認してみてください。
ゆみこ:はい、あとで確認してみたいと思います。
みあ:はい。続いて、達成基準2.4.5「複数の手段」について見ていきます。
この達成基準について、解説書では「ウェブページ一式の中で、あるウェブページを見つける複数の手段が利用できる。
ただし、ウェブページが一連のプロセスの中の1ステップ又は結果である場合は除く」と書かれています。
こちらは、ウェブページ一式の中からあるページを見つけるための方法を複数提供する必要があるという内容の達成基準です。
レベルAAとなっています。
ゆみこ:うーん、新しい言葉がでてきましたね。「ウェブページ一式」とは何でしょうか?
みあ:解説書には、「共通の目的を共有し、同じコンテンツ制作者、グループ、又は組織により制作されたウェブページの集合」と書かれています。
基本的には、ウェブサイトのことだと考えて大丈夫だと思います。
ゆみこ:そうなんですね。そうなると、達成基準の内容は「ウェブサイトの中からあるページを見つけるための方法を、複数提供する必要がある」ということですね。
みあ:はい、その解釈でよいと思います。
ゆみこ:複数提供する必要があるということですが、どのような方法があるのでしょうか?
みあ:えー、いくつか挙げると、関連ページへのリンクを提供する、サイトマップを提供する、検索機能を提供する、サイト内のすべてのページへのリンク一覧を提供する、ホームページからサイト上のすべてのページにリンクをするといった方法があります。
ゆみこ:なるほど、色々あるんですね。どうしてこのような複数の手段が必要なんでしょうか?
みあ:それは、ユーザーによって使いやすい方法が異なるからです。
メニューを確認するよりも検索機能を使う方が簡単だというユーザーもいれば、サイトマップのような一覧から目的のページを探す方がわかりやすいというユーザーもいます。
そういったさまざまなユーザーのニーズに応えられるよう、複数の手段を用意する必要があるんですね。
ゆみこ:それぞれ使いやすいものは異なるので、複数用意してユーザーが選べるようにしておくということですね。
みあ:はい、その通りです。
ゆみこ:それでは、達成基準に適合するにはどうすればよいのでしょうか?先ほど挙げられたものすべてに対応する必要があるんでしょうか?
みあ:いえ、すべてに対応する必要はありません。先ほど挙げたような達成方法のうち、2つ以上が利用できればよいとされています。
ゆみこ:それでは、「サイトマップの提供と検索機能の提供を行う」といった感じに対応すればよいんですね。
みあ:はい、そうなります。
それから、達成基準の説明の最後の一文にある「ただし、ウェブページが一連のプロセスの中の1ステップ又は結果である場合は除く」というところは、例外について書かれています。
ゆみこ:例外があるんですね。この「一連のプロセスの中の1ステップ又は結果である場合」というのは、具体的にどのような場合を指すんでしょうか?
みあ:例えば、オンラインバンキングの送金完了画面や、検索エンジンの検索結果ページがこれにあたります。
こういったページは、送金や検索などそのプロセスを実行する以外に到達する方法がありません。そのため、この達成基準の対象にはなりません。
ゆみこ:なるほど。たしかに、どちらも一連のプロセスの結果ですね。こういった場合は例外として扱われるんですね。