こんにちは。チャコウェブラジオは、株式会社Cyber Catsが運営するチャコウェブのスタッフが、
ウェブアクセシビリティやSNS運用など、ウェブに関するテーマについて楽しくお話しするポッドキャストです。
進行を担当するゆみこです。よろしくお願いします。
みあ:みあです。よろしくお願いします。
ゆみこ:本日のテーマは、WCAG 2.0 解説シリーズPart12「『ガイドライン2.3 発作の防止』とその達成基準」です。
みあ:今回は、4つの原則の2つ目「操作可能」のガイドラインのうち、3つ目のガイドライン2.3 「発作の防止」についてやっていきたいと思います。
このガイドラインは、光によって引き起こされる発作やその対策に関するものです。
発作を起こしやすい体質のユーザーでも利用できるようにするために重要な項目となっています。
ゆみこ:これは、第11回で詳しくやった内容ですね。
みあ:はい、そうです。
以前の回では、WCAG 2.0 解説書の文言についてあまり触れていなかったので、今回は解説書に沿っておさらいしていきたいと思います。
ゆみこ:はい、お願いします。
みあ:ガイドライン2.3「発作の防止」を解説書で見ると、このように書かれています。
「発作を引き起こすようなコンテンツを設計しないこと」
第11回で解説した通り、光により引き起こされる発作は、ウェブコンテンツを作る上で特に注意が必要なものの一つです。
なぜなら、発作を引き起こすようなコンテンツがあると、一部のユーザーはウェブサイトの閲覧や利用ができなくなってしまうからです。
ゆみこ:うん、発作を起こす可能性のあるものは避けて、誰でも安全に使えるようにする必要があるんですね。
みあ:はい、そうなんです。さて、以前の回で発作の原因となるような光を「閃光」と呼ぶとご紹介しました。
それでは、閃光とはどのようなものだったか覚えていますか?
ゆみこ:はい、日本語表現的には瞬間的にピカッとする光のことを指しているんですよね。
ただ、WCAGにおける閃光は、この言葉のイメージとは異なるものだったと思います。
確か、明るさが暗くなったり明るくなったりと交互に変化するもので、それが面積や頻度の程度によって、一部の人の発作を引き起こす可能性があるものが閃光として定義されていましたよね。
みあ:はい、その通りです。WCAGにおける閃光は、相対輝度という言葉を使って説明されています。
相対輝度とは、色の明るさを0から1の範囲で表し、最も暗い黒を0、最も明るい白を1として色を比べるもののことです。
WCAGでの閃光の定義は、「相対輝度の交互の変化で、ある程度の面積と特定の頻度によって、一部の人の発作を誘発する恐れがあるもの」とされています。
「相対輝度の交互の変化」については、「明るさが交互に変化すること」というように解説したと思います。
ゆみこ:そうでしたね。それから、閃光と点滅の違いについてもやりましたよね。
たしか、点滅も日本語表現とWCAGの定義ではニュアンスが異なっていたと思います。
みあ:はい、WCAGの定義だと点滅は「注意を引く意図で、二つの視覚的な状態を交互に切り替えること」とされています。
また、「ある程度の面積をもち、ある程度の明るさ、特定の頻度で点滅するものは、閃光に分類されることもありうる」とも書かれています。
このことから、明るさが交互に変化するもの全体を点滅とし、その中で発作を引き起こすレベルのものを閃光として区別しているとお話ししましたね。
ゆみこ:はい、そうでした。明るさが交互に変化すること自体は点滅で、その中でも発作を引き起こすレベルのものを閃光としているんですよね。
みあ:はい、そのような解釈で良いと思います。
それでは、閃光で引き起こされる発作とはどのようなものだったかは覚えていますか?
ゆみこ:はい。光感受性発作や光過敏性発作と呼ばれるものだったと思います。
光の刺激により目の痛みや頭痛、めまいを起こしたり、中には痙攣や意識障害を起こすなどで救急搬送される場合もあるんですよね。
海外でも報告がある症例ですが、日本では約30年ほど前に社会問題になったことがありましたよね。
みあ:はい。子供向けのアニメに閃光を用いた演出が使用され、それが原因で視聴していた子供たちが痙攣などを引き起こし救急搬送をされたという出来事がありました。
そういったことから、現在では子供向けアニメの冒頭に「部屋を明るくして離れてみてね」といった注意書きが入ることもあります。
しかし、WCAG 2.0 解説書には、子供はこういった注意書きを見逃すことも多く、この警告はあまり効果がないというように書かれています。
また、自分が発作を起こしやすい体質であることを発作を起こす前は知らないケースも多いようです。
そのような事情から、このガイドラインは発作を起こす可能性のあるコンテンツを制作しないことに重きを置いています。
ゆみこ:うん。注意書きを入れるなどではなくて、そもそも発作を引き起こすようなコンテンツは作らないようにしようということですね。
それでは、このガイドラインにはどのような達成基準があるのでしょうか?
みあ:このガイドラインに関連する達成基準は2つのみですが、1つはレベルAAAに指定されています。
ですので、今回はレベルAに設定されている達成基準2.3.1のみをご紹介します。
達成基準2.3.1「3回の閃光、又は閾値以下」は、解説書にこのように記載されています。
「ウェブページには、どの1秒間においても3回を超える閃光を放つものがない、
又は閃光が一般閃光閾値及び赤色閃光閾値を下回っている」
ゆみこ:閾値という少し難しい言葉が出てきましたね。
これは、反応や興奮などを引き起こす刺激の最低量といった意味の言葉だったと思います。
みあ:はい、その通りです。
先ほどの解説書の記述を簡単にすると、
「ウェブページには1秒間に3回を超える閃光を放つコンテンツがないか、
もしくは、発作を引き起こす刺激の量として定められている
一般閃光閾値や赤色閃光閾値という基準を下回っている」というようになります。
ゆみこ:1秒間に3回を超える明るさの変化があると危ないと言われているんですよね。
それから、人間は他の色よりも赤色の閃光に対して敏感であるため、
彩度の高い赤色の閃光に対しては、他と異なる基準が設けられています。
みあ:はい、そうでしたね。
ゆみこ:それでは、この達成基準はどのように満たせばよいのでしょうか。
みあ:えー、方法はいくつかありますが、一番簡単なのは閃光を避けることです。
閃光を含むコンテンツが必須でない場合は、使用しないのが一番だと思います。
どうしても閃光を含むコンテンツが必須である場合は、
閃光がどの1秒間でも3回を超えないようにすることが重要です。
ゆみこ:どの1秒間でもというのは、
閃光を放っている間のどこの1秒間を切り取ってもという意味でしたよね。
例えば、0秒から1秒の間と1秒から2秒の間は3回の閃光で、
2秒から3秒の間は4回閃光を放つといった場合は、達成基準に不適合となります。
みあ:はい、その通りです。
どの1秒間を切り取っても、必ず3回を超えないようにする必要があります。
また、1秒間に3回の閃光を使用する場合は、
その区間の開始と終了は同じ明暗状態である必要があります。
例えば、暗い状態から始まって、
明るい色、暗い色、明るい色、暗い色、明るい色、暗い色と6回変化する場合です。
これは、開始と終了がどちらも暗い色であり、3回の閃光なので許容範囲内です。
一方で、暗い状態から始まって、
明るい色、暗い色、明るい色、暗い色、明るい色、暗い色、明るい色と7回変化する場合を考えてみましょう。
始まりは暗い色ですが、終わりは明るい色です。
この場合、3.5回の閃光になってしまうため、許容範囲を超えてしまいます。
ゆみこ:うーん、1秒間に3回の閃光を使用する場合は、その区間の開始と終了は同じ明暗状態じゃないと、3.5回の閃光という扱いになってしまうんですね。
細かい部分ですが、注意が必要ですね。
みあ:はい。他の対策方法としては、閃光が表示される領域を小さくするというのがあります。
閃光を放つ領域が視野10度の25%未満なら、1秒間に3回より多くの閃光があっても許容されるんですね。
それから、達成基準の説明にもある通り、一般閃光閾値と赤色閃光閾値を下回るようにするという方法もあります。
ゆみこ:なるほど。こういった方法もあるんですね。
みあ:はい。ただ、こういった対策は評価方法が複雑だったり、専用の検証ツールを用いる必要があったりします。
そのため、基本的には閃光を避けるか、1秒間に3回を超えないようにするのが良いと思います。