あの、リスナーの皆さん、中東のサウジアラビアにですね、えーと、ギネス記録に認定されたすごく巨大な架空のキャラクターの立像があるのをご存知ですか?
ああ、あの、金属製の彫刻ですよね。高さが33メートル以上もあるっていう。
そうなんです。しかもそれ、今から約50年前に日本で作られたロボットアニメの立像なんですよ。
50年前のアニメが、遠く離れた中東でそこまで愛されてるって、ちょっと想像がつかないスケールですよね。
はい。さらに驚くことに、同じアニメが1970年代後半のフランスで、若者の間で最高視聴率100%という、もう信じられないような数字を記録しているんです。
100%って、テレビをつけている若者が全員見ていたってことですからね。異常な熱狂ですよ。
ですよね。でも正直なところ、日本ではマジンガーレッドの後にやってたアニメだな、くらいの印象を持っている人も少なくないんじゃないかと思うんです。
ええ、確かに日本国内の知名度でいうと、前作ほどの爆発力はなかったかもしれませんね。
なので今回はですね、よし、これを紐解いていきましょうということで、日本の子供たちが当時、普通に楽しんでいたアニメが、
なぜ中東やヨーロッパで、ほとんど宗教的なレベルの文化的アイコンになったのか、この巨大な謎に深くそごっていきたいと思います。
はい、この現象はですね、単なるエンターテイメントのヒットという枠組みじゃ全く説明がつかないんですよね。
現実の歴史とか国際情勢、それに人間の根源的な喪失感みたいなものとすごく深く結びついているんです。
なるほど、単なるロートアニメの枠を超えていると。
ええ、そうなんです。
ということで今回はその伝説的なアニメ、グレンダイザード新旧の世界に迫る深掘りです。
当時の海外での熱狂のメカニズムから、なんと2024年にサウジアラビアの資本で制作されたリブート版グレンダイザーUの衝撃的な内容まで、
全くこの作品を知らない方にも分かるように整理していきますね。
はい、よろしくお願いします。
まずはですね、この物語の根っこの炎から教えてもらえますか。
当時の巨大ロボットアニメって、地球の熱血少年が世界征服を高む悪の組織をスカッとぶっ飛ばすみたいなフォーマットですよね。
ああ、まさにそこが本作が他のロボットアニメと決定的に違ったところなんですよ。
主人公はですね、地球の熱血少年じゃないんです。
地球から遠く離れた平和な星、フリード星の王子である宇宙人なんですよ。
えっと、ちょっと待ってください。主人公が異星人の王子なんですか。
そうなんです。で、ある日突然ですね、強制大王ベガ、強制大王ベガが率いるベガ星連合軍という圧倒的な軍事国家によって、彼の美しい故郷は侵略されてしまうんです。
いきなり故郷が侵略されるところから始まるんですね。
ええ、しかも単に破壊されるだけじゃなくて、資源を奪い尽くされて、放射性物質で汚染されて、生命が全く進めない死の星にされてしまうんです。
バカンス中にひっそりやればまあ誰も見ないし文句も出ないだろうと。
で、これが初めて触れる、なんていうか教育的ではないストーリー重視の熱いアニメだったんですよ。
確かに。当時のアニメといえばディズニーみたいな童話ベースのものが主流だった時代ですもんね。
ええ。しかもただロボットがかっこいいだけじゃなかったんです。
ベガ星連合軍が星を汚染して侵略するっていう描写は環境破壊への継承として受け取られました。
ああ、なるほど。
それがウモン大助が白樺牧場で自然を愛すむ姿とすごく見事な対比になっていたんです。
さらにフランスの視聴者を驚かせたのが彼の武士道に通じるような戦いの哲学なんですよ。
武士道ですか?
ええ。彼は暴力で支配しようとする敵に対しても決して好戦的にならず、愛する者とか自然を守るための盾としてのみロボットの武器を使ったんです。
この高潔な精神性が絶大な支持を得たんですよね。
フランスの子供たちが環境問題とか武士道の入り口としてこれを受け入れていたので本当に驚きです。
でもさらに衝撃的なのが中東とかアラブ世界での爆発的な共感なんですよね。
はい。そこがこの作品の最も突屈すべき点かもしれません。
資料によるとアラビア語の吹き替え版ではウモンダイスケとかカブトコウジといった日本名がそのまま使われたとあります。
そうなんです。そして一番注目してほしいのはその吹き替えがいつ誰によって行われたかという点なんですよ。
と言いますと?
アラビア語版の制作を担当したのはレバノンのスタリオだったんですが、当時はまさにレバノン内戦の真っ只中だったんです。
そして声優やスタッフの多くがパレッシナ人だったんですよ。
え?つまり彼ら自身が現実の紛争によって故郷を追われた人々だったということですか?
その通りです。美しいアラビア語の文語で吹き替えられたセリフにはもうすまさましい魂がこもっていました。
祖国であるフリード星を失って逃れた先の地球で新たな家族を守るために必死に戦うウモンダイスケの姿は、
内戦下のレバノンに生きる声優陣や中東の視聴者たちの境遇そのものだったんです。
いやー、ちょっと鳥肌が立ちました。
架空の宇宙人の亡命物語が、現実の紛争とか故郷喪失の痛みを癒すものすごい強烈な自己投影の鏡になっていたんですね。
本当にそうなんです。
だからこそサウジアラビアに巨大な立像が作られるくらい、愛と平和の象徴として今でも語り継がれているわけですか?
はい。そういう歴史的な背景があるからこその熱狂なんですよね。
でもここで一つ大きな疑問が残るんですよ。海外でそこまで深刻化された作品なのになぜ本元の日本ではそこまで圧倒的な伝説的な存在になれなかったんですか?
あー、それはですね、日本の視聴者がある強烈な前作のフィルターを持っていたからなんです。
まず、昭和アニメ特有の哀愁漂う大人のトーンをしっかり味わってほしいからです。
宇宙から来た違法人としてのデュークフリードがどれほど影を背負っていたか、そしてカブトコウジとの本来のパワーバランスはどうだったかっていう精神を知ることができるんですよ。
本来の姿を知っておくまでですね?
ええ。さらにロボットの武装のビジュアルも必見です。
両肩から巨大な三カケツ状の鎌を取り出してつなぎ合わせるダブルハーケン、前腕部から赤いトゲが飛び出てドリルになってロケットパンチとして飛んでいくスクリュークラッシャーパンチとか、
今見ても色あせないけれんみたっぷりのアクションを確認してほしいんです。
あのトゲトゲが回転して飛んでいくロケットパンチですね。想像しただけでめちゃくちゃかっこいいです。
で、第一話で本来の姿をインプットしたら、次はどうすればいいですか?
次に、2024年版のリブート作グレンダイザーUを視聴します。
原点のストイックスを知った上で見ると、カブトコウジがどれほど暴力無人な大富豪に変貌したかとか、新キャラクターのテロンナがどれだけ物語の前提をぶっ壊してかき回していくのか、その脱構築の異常さが曲上のエンターテイメントとして笑って楽しめるはずなんです。
楽さを楽しむわけですね。
はい。現代の美麗な作画で描かれるマジンガーZとグレンダイザーの激突も見逃せませんよ。
そしてさらにディープに楽しみたい人のためのおまけのステップもあるんですよね。
ええや。1975年のテレビシリーズ放送直前に公開されたパイロット版の映画、宇宙円盤大戦争です。ここにはグレンダイザーの初期構想メカであるガッタイガーが登場します。
ガッタイガー。
はい。完成されたグレンダイザーのデザインと比べると、どこか垢抜けなくてレトロな円盤ロボットなんですけど、そのデザインの進化の過程を見るのは歴史資料としても非常に面白いですよ。
つまりまずは正統派のクラーシックな悲劇を味わって、その後に現代資本で混沌とリミックスされたバージョンを浴びて、最後にプロトカイプの歴史を振り返ると、完璧なコース料理ですね。
この順序で体験すれば、ただのアニメ鑑賞を超えて、一つのIPが50年かけてどう変容していったかという極めて奥深い文化的な体験になるはずです。
いやー、今回の深掘りは本当に面白かったです。1970年代の環境問題とか武士道から始まって、レバノン内戦下での難民たちによる魂の吹き替え、そして50年後にサウジアラビアの資本で主人公がメンヘラ化してサイドキックが大富豪になるリブートが作られる。
一つのアニメが現実の世界の痛みを癒したり、国境を超えて巨大なビジネスとノスタルジーの渦を生み出したりするって、物語の力って本当に私たちの想像を遥かに超えていますね。
そうですね。そして最後にリスナーのあなたに一つ考えてみてほしいことがあるんです。
何でしょうか。
今回のグレンダイザーUはサウジアラビアの資本によって実現しましたよね。かつて日本のアニメはあくまで国内向けに作られて、それが偶然海外でヒットしていました。