第六十四話『自分で枠を決めない』-【金沢篇】 実業家 野口遵-
2016-11-19 10:55

第六十四話『自分で枠を決めない』-【金沢篇】 実業家 野口遵-

石川県金沢市出身の実業家に、一代で日本における化学工業の基礎をつくりあげた、「化学工業の父」あるいは「朝鮮半島の事業王」と称された男がいます。
野口遵(のぐち・したがう)。
彼は晩年、病の床で自らの死期を悟ったとき、側近を枕もとに呼んでこう言ったと言われています。
「おい、オレの全財産は、どれくらいある?」
側近が意図をはかりかねていると、気が短い彼はこう続けました。
「古い考えだと思うかもしれんがなあ、オレの人生の最終目的は、徳に報いること、恩をお返しすることなんだ。自分は生涯を通じて化学工業に全精力を傾け、今日を築いた。だから、化学工業の明日に、未来に、全財産を捧げたい。全部、寄付してくれ」
「全部って、全部ですか?」
側近が驚いて尋ねると、
「ああ、全額だ。それからオレは一番最初の礎を朝鮮半島で成すことができた。朝鮮にも奨学資金として役立ててくれ、いいな?頼んだぞ」。
現在の金額でおよそ300億を後進の発展のために捧げました。
その言葉からおよそ4年後。彼は72歳の生涯を閉じました。
彼の遺志を継いで設立された公益財団法人野口研究所は、旧加賀藩の屋敷があった東京都板橋区にその本拠を構えています。
去年創立75周年を迎えたこの団体は数多くの研究者の背中を押してきました。
また2年前には野口遵賞も設けられ、研究の助成金の一助として化学工業の発展に少なからず寄与しています。
彼の想いは時代を越え、研究者たちに勇気を与え、パイオニアスピリットを応援しているのです。
金沢の風土が育んだ、挑戦する心。
風雲児、野口遵が人生で大切にした、yes!とは?

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