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  2. #5 柞刈湯葉『人間たちの話』
2024-12-21 06:08

#5 柞刈湯葉『人間たちの話』

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柞刈湯葉『人間たちの話』の感想などを話しました。

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tantotの時々読書日記、第5回ですね。
今日はですね、柞刈湯葉さんの人間たちの話という短編集について話せればと思います。
こちら、文庫本が出たのが2020年で、刊行本はもうちょっと前なのかなって感じです。
柞刈湯葉さんって知っている人も多いかと思うんですけど、出身作が横浜駅SF。
あとは最近で言うと、まず牛をQとしますみたいな短編集。
SF作家なんですけど、SFなんですけど、めちゃめちゃ壮大なSFっていうわけではなくて、
すごく視点が、ちょっとものすごく斜めから入る、視点とか切り口の面白さっていうところが特徴的な作家さんかなと思っていて、
僕すごい好きなんですよね、柞さんの作品は。
人間たちの話は、表題作人間たちの話っていうのも含めて、1,2,3,4,5,6編入ってますが、
人間たちの話、表題作にもなっている話は、ざっくり言うと、火星で見つかった新しい生命の話と、
新しい生命を探している科学者の家族の物語を交差して語るみたいな話なんですけど、
結構、何ですかね、最後うっかりグッと心を掴まれるというか感動させられてしまうみたいな悔しいながら、すごくいい話です。
これの面白いのが、火星で新しい生命が見つかったっていう大ニュースなんですけど、
それが、これが新しい生命かどうかっていうのを、科学者たちの投票で決めるっていう、
見つかりました、わーっていうよりは、なんか見つかったぞ、これは生命なのか、投票しました、生命と判定されました、
なんかモヤモヤしますよね。
でも、書いているユバさんの後書きによると、多分宇宙生命とのファーストコンタクトっていうのは、探査機でハッと見つかりましたっていう発見ではなくて、
会議による認定だろうっていう風なところを個人的に確信しているって書いてて、その視点がめちゃくちゃ面白いなと思うんですよね。
確かに、生命って定義とかは曖昧だし、曖昧というかそんなカチッと決まっていないし、
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これは本当に生命と言えるのかみたいなのって、結構賛否両論分かれてしまって、最終的に会議で決めるみたいな、
なんかすごくありそうだなっていう話で、そういう視点がすごく面白いなという風に思っています。
ちょっと、あんまりこれ読み上げても、
でも、最初、昔々あるところに、
そういった言葉を浪する哺乳類の一種が神科の枝先にふっと現れる以前から、彼らはそこに存在していた。
彼らの住処は太古の火山活動によって形成された多孔室の岩石だった。
岩石の隙間は水で満ちていて、そこには幾千種もの有機分子が溶解していた。
分子のいくつかは触媒の能力を持ち、ある分子を別の分子に変化させることができた。
それによって生じた分子が新たな触媒能を獲得し、さらに別の分子を生み出すこともあった。
そのような複雑な化学反応の連鎖が多孔室の岩石に含まれる無数のセルでそれぞれ独自に進行していった。
小部屋同士は小さな穴で連結されており、ある小部屋で増えすぎた物質が別の小部屋にゆっくりと染み出していった。
遺伝の法則と呼ぶにはあまりに貧相な記憶の漏洩のようなもので、つさなく脆い秩序を継承されているな。
地中深くでただ静かに、おそらく数億年にわたって自分たちの存在理由を問うこともなく、
火星の岩石の中の化学反応の連鎖が生物っぽい状態になっている。
だが、これはそんな話とはおよそ関係のないとある家族の物語である。あくまでも人間たちの話である。
本当にこのイスカリユバさんは、この人は格読むってウェブの小説投稿サイトからデビューしたというか、そこで頭角を表してデビューした方なんですけど、まあ面白い。
なんでこんなにすごい人にはない切り口というか、ハッとさせられる切り口をこんなにパンパンパンといくつも出してこれるのかなっていう。
本当にそういう意味では、すごく新作出るたびに楽しみにしている作家さんですね。
牛をキューとしますね、すごい面白い話です。
短編集で結構サクサクっと読めるので、結構多くこれ何度もちょっとした時に何度も一節読み返してクスクスっとするみたいな、そんな風な楽しみ方をしています。
こんな感じで、今日はイスカリユバ、人間たちの話、早川文庫から出ているものになります、のお話しさせていただきました。
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ありがとうございます。
06:08

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