野球の悔しさの法則
いちです。おはようございます。
このエピソードでは、野球と研究についてお届けをします。
このポッドキャストは、僕が毎週お送りしているニュースでたSTEAMニュースの音声版です。
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このエピソードでは、STEAMニュース第203号から、野球と研究という話題でお送りをしていきます。
このエピソードは、2024年11月4日に収録しています。
というわけで、今回も25分間どうぞお付き合いください。
このエピソードでは、僕が個人的に気になっている野球に絡めて、
野球と研究について、思いつくままにお話をしていこうかなと思っています。
昔ですね、あのラジオの野球中継で、販毒経験のある解説者がこんなことを話されていたんですね。
野球には悔しい負け方が3種類あります。
さよなら負けと、あと1点が取れなかったという負けと、そして1点しか取れなかったという負け。
さよなら負けというのは、9回裏に点数を入れられて、金庫を破られて、あるいは逆転されて負けるという負け方ですね。
さよなら負け、そしてあと1点が取れなかった、9回の裏の工房であと1点取れば同点、あるいは逆転につながるというところでその1点が入らなかったという負け方。
どちらも悔しいですよね、さよなら負け、あるいは1点差の負け。
その監督経験のある野球解説者の方が他にもう1種類、さよなら負けと、あと1点が取れなかった負けの他に1点しか取れなかったという負けを挙げられているんですね。
相手が10点取っても11点取っても、こちらが1点しか取れなかった場合、これも悔しいそうなんですね。
無得点、10対0で負けるよりも10対1で負ける方が悔しいということなんだそうです。
僕なんか素人の感想で言うと、0点に封じられるということの方が悔しそうに思えるのですが、
無得点の場合、こちらが0点というのは相手が強すぎたということで納得できるものの、こちらが1点取れた場合、10対1の場合は、
1点取れたんだからもう少し工夫すれば勝てたんじゃないかというふうに思うそうなんですね。
それ故に悔しさが募るということなんだそうです。
よくよく考えていくと、野球というゲームを越えた人間の真理というものが見えてくるかもしれません。
目前の勝利を逃した。あと一歩及ばなかった。
人たちだけは浴びせられたが、とどめをさせなかった。
つまりは、60点で合格のところ59点だったという悔しさと共通するのかもしれません。
絶対に手の届かないものよりも、指先が触れるか触れないかの距離のものの方が取れなかった悔しさが増すというものなのかもしれませんね。
これを仮に59点の悔しさと名付けておきましょう。
3種類の悔しい負け方から1つの法則を導いてみることを抽象化と呼んだり、機能と呼んだりします。
抽象化はあらゆる学問の基礎であるため、高等教育では必ず叩き込まれるものですし、
そうですね、僕たち科学者はいつも抽象化できないかなというふうに世界を見ています。
物事を抽象化する最大の利点は、そこに普遍的な法則を発見できる可能性があることなんだと思います。
もう一度野球に立ち返ってみますね。
日本の野球では、ノーボール2ストライクから1球外す、つまりボール玉を投げて1ボール2ストライクにするという習慣があります。
これですね、戦術としてはさほど意味がないとされているんですが、
この59点の悔しさルールを思い出すと納得できるんですね。
ノーボール2ストライクからヒットを打たれると悔しいというね、そういう心理的な理由から生まれた習慣なんだと推論できるわけです。
ものすごく種語を大きく言うと、日本文化にはこの59点の悔しさというのが埋め込まれているとも言えるかもしれません。
これ、剥除するとですね、この話には僕の私情も挟まっていまして、
とある大型研究所さんに応募したんですが、1点差で落とされたんです。
なんで1点差と思うんですけども、結果は仕方ありません。
そんな結果を受けたこともあって、ちょっとこの59点の悔しさというのもお話ししてみました。
研究者の役割と打順
次はですね、野球の打順と研究者の役割についての内容です。
日本の野球では打順についてこんなふうに考えます。
これね、メジャーリーグとはちょっと違うかなと思うんですが、あくまでも日本の野球ではこんなふうに打順を考えます。
1番打者は切り込み体調、2番打者はつなぎ役、
3番打者は何でもできるマルチタレント、そして4番打者はいつもホームランを狙える最強打者。
5番打者は当たると怖い長距離法。
ここらへんね、多少意味合いの違いはあっても大体同意していただけるかなと思います。
研究者にも1番打者タイプ、2番打者タイプというふうにね、打順というか役割みたいなものがうっすらとあります。
1番打者タイプの研究者が新しい研究を切り開いて、2番打者タイプ、つまり最初のフォロワーですね、リーダーに対する最初のフォロワーがその研究を研究分野にします。
そして3番打者あるいは4番打者がその研究分野を学問にしていきます。
1番打者、2番打者には打点がつかなくて、その果実、その成果は3番打者や4番打者が持っていくというところも野球と似ています。
学問の場合ね、この打点というのがノーベル賞のような学術賞と言えるかもしれません。
ネットファンならよくご存知のデレック・シバーズのテッドトーク、社会運動はどうやって起こすかというね、2分ぐらいの短い、だけど社会を、世界を変えてしまったテッドトーク、社会運動はどうやって起こすかはリーダーは過剰評価されているフォロワーの価値をもっと認めようという内容なんですが、
これ野球に例えると、1番打者が過剰評価されているが、2番打者こそ評価しようというふうにも読み取れます。
学術の世界ではどうしても4番打者が過剰評価されているのですが、1番打者こそ評価しようというふうに読み取ることもできるかなと思います。
1番打者を見つけるってね、実はすごく難しい問題で、これは2024年のノーベル物理学賞についても言えるんじゃないかなと思います。
本当にね、あの2024年のノーベル物理学賞というのはディープラーニングの研究者に与えられたんですが、
本当にパイオニアに最初に切り開いた人に与えられたかというと、特に日本を中心に疑問の声は上がっているわけなんですが、これはもう難しいです。
ご本人がね、今年度、2024年度のノーベル物理学賞、もしこれがディープラーニングAIに与えられるとしたら、これは正当な評価であるというふうに言われているので、まともな評価ということにはなるのでしょうが、
じゃあ一番打者にノーベル賞が贈られたかというと、それはまだ疑問符がつきます。
で、白状するとこの話、一番打者の評価についても僕の思情が少し挟まっています。
というのは、このスティームFM、そして僕がメールでお送りしているニュースレター、スティームニュースについても、いつも一番打者に光を当てたいなというふうに思ってはいるんですが、これ本当に難しいんです。
まず、一番打者研究を初めて手をつけた人が文章を残しているかどうかという問題、公開された文章を残しているかという問題、そしてそれがアクセスできるかという問題、最後にそれを見つけられるかという問題が生じます。
特に18世紀以前の科学者であったりすると、そもそも公表しないということもよくある話ですし、それが母国語でしか公開していないということもあります。
これは日本でも同じことがあって、卒業論文で書いたのが実は世界初だったということもあるので、実はこの一番打者研究、科学研究における一番打者を見つけるというのは本当に難しいです。
大谷翔平選手の記録
そして3つ目の野球と研究の関係。野球では三冠王というのが難しいのでよく話題になるんですが、それに絡めてちょっとお話をさせていただきたいと思います。
2024年、ロサンゼルスとジャズの大谷翔平選手が本ルイダー、50投類を達成しました。
これメジャーリーグでも大記録で、もちろん史上初で大記録で作られるとは思っていなかった記録で大騒ぎになったわけですね。
本ルイダーというパワー、そして投類というスピードの両方を兼ね備えた選手というのは、そうそう現れるものではないということなんだと思います。
これはですね、この選手の体づくりにおいてパワーを目指すのか、スピードを目指すのか、どちらかを選ばないといけないということなのかもしれないなと素人ながらに思うわけなんですが、
日本プロ野球では本ルイダーの数と打率の両方でトップに立つことが希少とされています。
こちらも本ルイダーというパワーを目指すのか、ヒットでいいからボールに当てるというテクニックを目指すのかの選択かもしれません。
あちらを立てればこちらが立たずということが起こるわけですね。
ホームランバッターは打率を下げてでも本ルイダー、ホームランを狙いに行くというふうに言います。
例えば、ある打者がヒット狙いなら10打席中4打席成功するが、本ルイダー狙いならば10打席中2打席しか成功しないとしましょう。
ヒット狙いなら10打席中4打席4割、本ルイダー狙いなら10打席中2打席2割しか成功しないとしましょう。
ヒットだけ狙えば4割なので4割バッターになるところなんですが、このバッターはホームランバッターなので、
最初の5打席だけヒットを狙って、残りの5打席は本ルイダー、ホームランを狙うとしましょう。
研究と野球の要素
結局最初の5打席中2打席、4割ですね。2打席をヒットにして、残りの5打席中1打席をホームランにします。
ということは、両方合わせると10打席中3打席で打ったということになりますね。
10打席中3打席、うち2打席はヒット、1打席はホームランということになるでしょう。
つまり10打席中3打席打ち返したということで打率は3割になるんですが、
それでも10打席に1回はホームランを打ったということになるわけですね。
これはもう昔からのことわざで野球でも言えるんじゃないでしょうか。
2投を追うものは1投も得ずなんですが、1投も得ずはちょっと言い過ぎかもしれませんが、
2投を同時に打率も最高、ホームランの数も最高というわけにはいかないというお話ですね。
研究であるとか、そして事業の世界も同じだと思うんですが、
2投ではなく3投を、つまり3匹のうさぎを追わないといけない、追わざるを得ないということがあると思うんです。
その3つなんですが、僕の言葉で言うと、速い、上手い、安いです。
英語で言うと、スピード、クオリティ、プライス。
事業で言うと、納期、品質、価格、この3つなかなか揃わないですよねという話をさせていただいたんですが、
実はメールでお送りしているスティームニュースの読者の方から、
いや、それ3つ揃えるのが企業の役割ですというふうにお叱りをいただきまして、
それもその通りだなと思って反省しました。
僕自身も非常に小さなコンピューターメーカーですので、
この3つ揃えるのは本当に苦労します。
速い、上手い、安い、あるいは納期、品質、価格。
これ揃いませんよ。2つまでかなというふうに勝手に想像をしています。
事業ではなくて、研究だとすると、これはもう確実に言えると思うんですが、
研究で言えば最先端で人類に多大な貢献をして、
予算が安くつくこと、この3つ揃うことはないです。
もちろん文科省とか財務省からは、この3つを揃えろと言われるのですが、
この3つは揃いません。
最先端で人類に多大な貢献をして予算が安い、これ2つ選ぶしかないです。
もう2つ選べです。
最先端で人類に多大な貢献をするのであれば予算が高くつきます。
人類に多大な貢献をして予算が安くつくものというのは最先端ではありません。
予算が安くて最先端の研究というのは人類に貢献をしません。
もうこれは3つ揃わないんですよ。本当にしょうがないんですよ。
本当に文科省の方、そしてその背後にいらっしゃる財務省の方、
ぜひ検討していただければと思います。
早い、安い、うまいは3つ揃わない。
2つまでしか揃わないということなんです。
日本プロ野球の感慨
というわけでこのエピソードでは研究と野球についてお届けをしてみました。
個人的に僕が日本プロ野球の、というか阪神タイガースのファンで
2024年シーズンは残念なことになってしまいましたが、
昨年2023年は優勝することができて、
本当に久しぶりだったなというふうに思います。
2024年の日本の野球シーズンも、僕から見るとすごく意外だ。
横浜ベイスターズファンの皆様、日本一おめでとうございます。
まさかね、西リーグ3位から日本一になるとは。
おそらくファンの方もびっくりされていると思うんですが、
僕も便乗してびっくりさせていただきました。
本当におめでとうございます。
僕の尊敬する研究者の方がベイスターズファンで、
すごくツイッターで喜んで、ツイッターXで喜んでいらっしゃる投稿を見かけて、
同じく、おそらくタイガースファンとベイスターズファンの方はメタに優勝しないので、
その気持ち共有していると思うんですが、
その気持ちわかるぞというふうに拝見をしていました。
実はこの2週間ばかりですかね、ちょっとプライベートな事情があって、
僕の住む長崎と、そして実家のある兵庫県と行ったり来たりしています。
長崎空港から神戸空港へ飛行機で移動をしています。
そんな中でね、ちょっと移動時間とかがあると、
なかなかね、ポッドキャストを収録するということが時間が取れなかったりするんですが、
今後は少し時間が取れそうなので、またポッドキャストのアップデートをしていきたいと思っています。
またね、2024年の、つまり今年の11月17日には
TEDx再会というイベント、僕がかつてリーダーを務めさせていただいたイベント、
今は別の方がリーダーをされているんですが、
このTEDx再会が対面で開催をされます。
スピーカーは決まっていて、そのうちの一人が数学者で、日本人の数学者の方なのですが、
現在韓国の大学に滞在されていて、このイベントにめがけて日本に帰って来られるということで、
オンラインで何度も打ち合わせをさせていただいているところなんですが、
めちゃくちゃ面白いです。
イベント終わったらね、また僕なりの解釈で彼のお話をお届けしようかなと思うんですが、
本当に面白いです。
もしね、再会、長崎県の本当に西の端、日本の西の端に行けるよという方は、
11月17日アクセスしてみてください。
というわけで、今回のエピソードも最後まで聞いてくださってありがとうございました。
お相手はSteamFMのイチでした。
ご視聴ありがとうございました。