1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #390 能動態と受動態(フィリ..
2021-11-24 10:31

#390 能動態と受動態(フィリピンの言語) from Radiotalk

関連トーク
主語についてのトーク
https://radiotalk.jp/talk/596592

参考文献
The Oxford Handbook of Linguistic Typology (Jae Jung Song (ed.), Oxford University Press)
『明解言語学辞典』 (斎藤純男ほか編、三省堂)

Twitter
https://mobile.twitter.com/sigajugo
LINEオープンチャット
https://line.me/ti/g2/1-H1J1-BG2v9VTOvbipREA?utm_source=invitation&utm_medium=link_copy&utm_campaign=default
オリジナルグッズ
https://suzuri.jp/sigajugo
おたより
https://radiotalk.jp/profile/165482/questions/create
BGM: MusMus
http://musmus.main.jp/

#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
00:06
始まりました、志賀十五の壺。みなさんいかがお過ごしでしょうか。高田隼士です。
今日のトークは、フィリピンの言語についてお話ししていこうと思います。
まあ、あえてここでフィリピン語みたいな言い方をしなかったのは、
まず、フィリピンという国で話されている言語は何百とあるんですね。
一応、公用語としてフィリピの語というものがあるんですけど、
これは、そういうたくさんの言語の中からタガログ語というのを元に、ベースに制定されたものなんですね。
今日のトークもタガログ語が中心になってくるかと思います。
思いますけど、そのタガログ語以外にもフィリピンではたくさんの言語が話されているということをね、
とりあえず強調しておこうと思います。
そのため、フィリピンの言語という言い方をしているということですね。
平等でいうと、このフィリピンで話されている言語は、
オーストロネシア語族という言語のグループに属して、
近いところで言えばインドネシア語なんかが親戚だし、
次は台湾先住民語と言われる言語もフィリピンの言語の親戚ですね。
もうちょっと離れればね、ハワイ語とかニュージーランドのマオリ語なんかも遠い親戚ということになっています。
フィリピンの言語、タガログ語を含めですね、
我々にちょっと馴染みのない特徴として、まず動詞で始まるっていうのがあるんですね。
日本語は動詞で文が終わるっていうのが普通なので、
ちょうど逆の語順に感じられることがあると思います。
そして今回のトークでメインで取り上げたいのは、
フィリピンタイプのボイスというものなんですね。
かなり専門的な言い方ですけど、そもそもボイスっていうのは何かというとですね、
簡単に言うと受動体ってことになると思います。
英語で受動体はパッシブボイスなので、
ボイスをそのまま日本語にすると体、能力の脳の下に心がついてるやつになると思います。
このボイスっていうのは主語の配置転換みたいなものですね。
例えば先生が私を叱ったに対して、私は先生に叱られたといった場合、
03:05
もともと能動体、能動文で目的語だったものが主語に配置転換されてるわけですよね。
こういうふうに主語じゃなかったものが主語になる、
そして動詞の形が変わる、叱るから叱られるみたいに、
こういったものがボイスというシステムなんですね。
英語もだいたい同じようなことが言えますよね。
目的語が主語になって、かつ動詞がB動詞プラス過去分詞形という、
ちょっと長ったらしい表現になりますよね。
日本語にしろ英語にしろ、皆さんの感覚として特に日本語の場合かな、
能動文の方がデフォルトというか元になって、
受動体っていうのが派生している、作られてるっていうふうに感じるんじゃないでしょうか。
それは形の面でも言うことができて、さっきの繰り返しになりますけど、
叱るに対して叱られるっていうふうに、
能動、能動詞の形に受動の標識がくっついてるっていう感じなので、
ある意味受動体の方が特別な形ってことになりますよね。
あるいはね、皆さんがもし外国人に日本語を教えるとしたら、
能動文から教えるはずですね。
叱られるみたいな受動体を先に教えるって人はまずいないんじゃないかなと思います。
そういう面でも受動体っていうのは、ある意味デフォルトではない、
ちょっと特別な形ということができると思います。
ではフィリピンタイプの受動体は何が面白いかというと、
同じような仕組みはフィリピンの言語にもあるんですね。
タガログ語の例ですけど、
例えば買うっていう表現で、
その買った人、動作主が主語となる場合、
つまり能動体みたいな場合は、
動詞がぶみりという形になります。
一方買ったもの、
例えば本とか魚とか何でもいいですけど、
買ったものが主語となる場合、
受動体っぽい場合、
動詞の形はびにりとなります。
これだけ聞くとね、
能動体と受動体がそれぞれあるじゃないかと思われるかもしれませんけど、
日本語や英語の能動体受動体と違うのは、
どっちがデフォルトとは言えないんですね。
さっき言ったように日本語や英語の場合は、
06:00
明らかに能動文の方がデフォルトで、
受動体っていうのが派生した形っていう感覚があると思うんですけど、
タガログ語の場合はそれが言えなくて、
というのが、
買うっていう動詞はぶりっていうんですね。
ただこのぶり単体では使うことができなくて、
動作主が主語の場合は、
つまり能動体っぽいときは、
ぶみりっていう派生した形を使うし、
買ったものが主語の場合、
受動体っぽいときはびにりっていう風に、
こちらも派生した形を使うんですね。
なので、動作主が主語である文がデフォルトであるとは、
タガログ語では言えないということになります。
さらに面白いのは、
タガログ語では場所が主語になることもあるんですね。
その場合も動詞の形が変わって、
びにるはんという言い方になります。
こうなると、
買ったっていう動詞なんですけど、
その場合主語が場所になるんですね。
こういった表現は日本語や英語にはないですよね。
動作主や買ったものが主語になるだけで、
場所が主語になる構文はないので、
結構イメージしづらいんじゃないかなと思います。
というわけで、こういうフィリピンタイプのボイスの変わっているところは、
我々が知っている能動体・受動体と違って、
どの構文がデフォルトとは言えないっていうのがまず面白いんですね。
それに加えて、場所とか、
あるいはその利益を受ける人が主語にもなったりして、
様々なものが主語になれるっていうのも、
フィリピンタイプのボイスの面白いところなんですね。
このフィリピンタイプのボイスっていうのは非常に面白いんですけど、
なかなか僕の力では魅力が伝わってないんじゃないかなと思います。
本当は番書とかして説明した方がすごいわかりやすいんですけど、
ひとまずいろんなものが主語になって、
その度ごとに動詞の形が変わるということですね。
こういう特徴を持つ言語はフィリピンの言語だけです。
他の世界中の言語では見られない特徴なんですね。
繰り返しになりますけど、
日本語の能動体・受動体に似てると言えば似てますけど、
どれがデフォルトかっていうのは決めづらいシステムになっているということです。
そもそも主語って何なのかっていうのも難しい問題なんですよね。
09:01
便宜上このトークでは主語っていう用語を使いましたけど、
それを定義するのもまず難しいと。
簡単に言えば主語っていうのは特別扱いを受ける名詞と言っていいと思います。
例えば動詞に一致する名詞とかいろんな言語で見られます。
英語の場合は3単元のSとかB動詞とかせいぜいそのくらいにしか見られませんけど、
主語の認証によって、あるいは数によって動詞の形が変わるっていう言語はたくさんありますよね。
日本語にも一応敬語っていうものがあって、
動詞の形を尊敬語にするのが主語っていう定義の仕方ができると思います。
先生がご覧になるみたいに、このご覧になるっていう風に動詞の形を変えているのは、
いろんな名詞があったとしても先生がしかありえないんですね。
そういう風に特別扱いを受ける名詞が主語と言っていいと思うんですけど、
そしてこの辺りの話も面白いんですが、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。
というわけで最後まで聞いてくださってありがとうございました。
また次回のトークでお会いいたしましょう。
お相手はシガー15でした。
10:31

コメント

スクロール