-
-
宮武 徹郎
さらに、何社かメディア企業が売却されたりとか、直近だとリファイナリー29も売却されて、
あとアーティファクトがヤフーに買収されたりとか。
草野 みき
ちょっと残念でしたね、それは。
個人的には、結構いいプロダクトだなと思ったんですけど。
宮武 徹郎
多分、ベンチャーバックレベルの結果を出せなかったって予想してたんじゃないですかね、インスタグラムの創業者2人は。
最初のハートルが高すぎるっていうのが若干あると思うんですけど、彼らとしては。
草野 みき
そうですね、アーティファクトを使ってて、ケビンさん何投稿してるかなって使ってた時、ウォッチしてたんですけど、
自分が飲んだワインの写真しかそれで止まってて、もう終わったのかもしれないって思いました、その時。
それ以降何も投稿してなかったので。
宮武 徹郎
残念ですよね、ちょっと次何するか楽しみですけど。
そんな中で、いまだにオンライン上でニュースを取得する人ってどんどん増えていると思うので、
アメリカですと、どこかの調査によると89%の大人が少なくとも一部のニュースをオンライン上で獲得していて、そこがどんどん増えているんですけど、
結構衝撃だったのが、トップ25のニュースサイトでの合計、一般的なアメリカ人の大人の平均利用時間が毎月5分未満っていう。
草野 みき
ニュースを?
宮武 徹郎
はい、トップ25のニュースサイト合わせてです。
ほぼ読んでないっていうところになる。
たぶんヘッドラインだけチェックしてる。
もしくはそもそも直接サイトに行ってない。
草野 みき
そうですね。
宮武 徹郎
やっぱりめちゃくちゃ競争が激しい中で、これだけ苦しむのも仕方ない部分がある中で、ニューヨークタイムスでめちゃくちゃ成長してるじゃないですか。
なんで今登録者1000万人超えて、しかも確か1年早くその目標を達成したり。
草野 みき
やっぱりなんでこんな人気なんだろうっていうのを、なんかなんていうかその、いやめっちゃ人気なのはわかるんですけど、なんか順調に増え続けてるのってすごくないですか。
宮武 徹郎
いやすごいです、すごいです。
草野 みき
なんか止まらない、飽和しないんだっていうのもすごいですよね。
宮武 徹郎
そうなんですよね。なんかもちろん一時期ちょっと止まるんじゃないかとか、なんかいろいろ噂されたりとかもしてたんですけど、これだけしっかり伸びているっていうのはすごい面白いと思うので、なんでちょっと今日はちょっとニューヨークタイムスがなぜこれだけうまくいってるのかっていうのをちょっと探りたいなと思っていて。
それを探る中で、なんかいろいろ次世代メディアのヒントになったりとか、それこそプロダクト作りの結構ヒントになるものが多いかなと思うので、なんで今日はそこについてちょっといろいろ深掘りしたいなっていうところですね。
まず、新聞とかメディア、ニューヨークタイムスの新聞から始まっているので、メディアの役割って社会の中だと結構重要なインフラとして見られることって多いじゃないですか。
なんかよくその第4の権力みたいな言い方もされるんですけど、その行政立法司法の次。
それぐらいの重要な役割を果たしているっていうところで、なんかそのよく日本でも多分多少ないそうだと思うんですけど、アメリカ、例えばニューヨークタイムスとかそうなんですけど、編集チームとビジネスチームに壁を作ることが多くて、いわゆる編集側はビジネス側のことを気にするべきではないっていう。
草野 みき
記事を作っていくことに専念するっていう。
宮武 徹郎
はい。なので、いい記事を作りなさいっていう指示ですよね、これは。
いわゆるビジネス側に影響されるなっていうところ。
草野 みき
出版とかもそうなのかもしれないですね。
宮武 徹郎
そうかもしれないですよね。
企業として。
特にニュースメディアとかですと、より会社にとって都合のいい話を出さずに真実を出しに行くっていうのを目的としているので、理論上それがすごいめちゃくちゃいい考え方だと思うんですけど、ただ同時に結構フラグが立つような設計になる可能性もあるのかなっていうふうに思っていて、
違う見方で言うと、どれだけいい記事、いわゆるエンドユーザーのプロダクトを出したとしても、お金儲けしない可能性があるっていう。
草野 みき
たとえ真実であっても。
宮武 徹郎
お金儲けできなければ結局意味ないっていう。
草野 みき
ビジネスでやってますもんね。
宮武 徹郎
いわゆるプロダクトとビジネスが連動してない部分があったりするんですよね。
草野 みき
してないからいいっていうところもあるんですけどね。
もちろんあるんですけどね。
宮武 徹郎
一部メディア業界が落ちてるっていうのに対して、記者側、ジャーナリスト側が何もできないって思う人って多かったりするんですけど、その理由ってたぶんこういうところにあって、結局編集とビジネスが別々になっているので。
なんで、自分がいくらいい仕事をしたとしても、会社の利益に直接つながらないっていうところは感じてる人たちも多いんですけど、
このメディアっていうもの自体が結構倫理上考えられることが多かったりすると思うんですよ。
宮武 徹郎
いわゆる社会にとっての貢献っていう。
実はニューヨークタウンの宿命ってなんですけど、歴史上見るとほとんどの新聞ってそのために作られてないんですよ。残念ながら。
社会にちゃんと貢献しましょうとか、もちろんそういう意識を持ってる人たちもいると思うんですけど、それではなくてお金儲けのために作られてる部分も多いので。
別にそれは悪いことではなくて、単純にそうであるっていうだけなんですけど。
例えばなんですけど、ニューヨークタイムズがどういうふうに作られたのか。
これ1851年にニューヨークタイムズが設立してるんですけど、2人の記者が作ったんですよね。
その2人の記者は実は違うニューヨークのニューヨークトリビューンっていう新聞社で働いていた記者で、
その2人が、これは噂によるとなので、いろんな本とかに書いてある話ですけど、
その2人がある日、たぶんニューヨークの冬だったので、ハドソン川が凍ってたんですよね。
ハドソン川を歩いて渡ってたんですよ。凍ってるので。
その時に2人のうち1人が、今自分たちが働いているザ・トリビューンっていう新聞社が、
去年、その前の年に60K分の利益を出したっていう話を聞いたということを伝えたんですよ、もう1人の人に。
当時の60Kってめちゃくちゃ大きい数字で、新聞社でこれだけ儲けられるんだっていうのに、もう1人の人がテンション上がって、一緒にやろうと。
草野 みき
スタートアップ。
宮武 徹郎
はい。それで、いわゆるハドソン川を渡ってたので、渡った時には2人でやろうっていうことを決めてたっていう。
草野 みき
うわー、なんか語り継がれるエピソードですね。
宮武 徹郎
そうですね。これが本当かどうかわかんないですけど、いいストーリーですよね。
草野 みき
確かに。ビジネス、お金儲けのためにスタートしたっていうところなんですね。
宮武 徹郎
別にそれは悪い話ではないんですけど、ニューヨークタイムズは初期からそこのビジネス目線でしっかり見てた媒体であったっていうところを話したくて。
ここが結構肝なんじゃないかなと思っていて、それがちゃんと受け継がれていて、ビジネスモデルをしっかりアップデートし続けているっていうのが結構大きいのかなと思っていて。
そこの一番大きな変化がまず2010年代に起きて、もう1回2020年代に起きてると思うんですよ。
まず2010年代の話をすると、これはよくメディア業界で言われる話ですけど、2014年のニューヨークタイムズのイノベーションレポートと、あと多分2009年もそうかもしれないですけど、それが結構メディア業界にとってショッキングだったレポートで、97ページもあるんですよ、あのレポートって。
草野 みき
すごいですね。
宮武 徹郎
そこでニューヨークタイムズが今どういう課題を持ってて、どういうことをやらなければいけないっていうのを自己分析したレポートなんですよ。
それがリークしちゃったんですけど、そこでいわゆるデジタル時代、デジタルの時代の中ではもう人気が落ちてますと。
当時は76万人のデジタル登録者がいたんですけど、ハフィントンポストとかバズフィードに追い越されたと。
草野 みき
2000年代の時に。
宮武 徹郎
2014年ですね。
しかもなんかホームページのトラフィックが落ちていて、やっぱSNS経由で人がどんどん入り、そのページをニューヨークタイムズの記事を見始めてますと。
草野 みき
全然UIというか思想が全然違いますもんね、バズフィードとかと。
カジュアル、読みやすさでいうとそっちの方が、あれ見ると楽だってなる気持ちわからなくもないですね。
宮武 徹郎
あとやっぱりバズフィードとかってSNSファースト、いわゆる文章型メディアってよく当時言われてたと思うんですけど、
SNSを通して記事に行ってもらう、別にホームページに行かなくてもいいっていうスタンスを持ってた企業でもあったと思うので、
ニューヨークタイムズはそれをこのタイミングでしっかり気づいたっていうところがすごい、
メディア業界としても結構衝撃だったと。いわゆるあのニューヨークタイムズか長年いたニューヨークタイムズがこれだけ変えようとしてるっていうところで、
当時は3分の1の読者しかホームページに行ってないと。
しかもそこにホームページに行ってる人たちがどんどんホームページの滞在時間を落としてると。
なんでやっぱりどうしても変えないといけないってなったときに、彼らがかなり注力したのがサブスクファーストの会社にならなければいけないですと。
草野 みき
すごい舵の切り方ですね。
宮武 徹郎
そうですね。
草野 みき
なんか結構お金払ってニュース見るって今だと結構ありますけど、なんかあんまりうーんって思います。
それこそ前話したような、ちゃんとヘッドラインは別の無料のところで見れるし、いいかなって思っちゃいますもんね。
宮武 徹郎
それをしっかり判断できたのはすごいですよね、本当に。
宮武 徹郎
結果的に去年ですと1000万人登録者超えてますし、去年ですとデジタル側の登録者からの売上だけで1ビリオン超えてるので、明らかにちゃんとそのシフトをやったんですけど。
この2014年のレポートってすごい人気、業界内では人気なんですけど、個人的には2017年のレポートの方が実は重要だったんじゃないかなと思っていて。
ここで完全にサブスクファーストに切り替わるっていう判断をしたんですよ。
2014年はもう少しデジタルに合わせた戦略シフト。
2017年は多分デジタルの中でどういうふうに戦っていくのかっていうのをしっかり説明したレポートで。
そうですね、サブスクファーストになるっていうところで、
彼らが多分気づいたのが、それこそ数エピソード前に我々も話したと思うんですけど、
サブスクのプロダクトと広告のプロダクトの違いっていうところで、サブスクは未来を打ってる。
将来いいクオリティのコンテンツを出すっていう約束をしてる。
それをサブスクとして打ってるっていうところを考えると、
ニューヨークタイムズもそっちに寄せないといけないっていうのを気づいたんですよ。
草野 みき
どうして気づけたんですかね。
宮武 徹郎
やっぱりニュースコンテンツがどんどんコミュニティ化されてるのを多分気づき始めたんですよね。
多分まさにSNS上で調べると、ほとんどみんな同じニュースをしか言ってないっていう。
当時2017年のニューヨークタイムズって、毎日200ぐらいのコンテンツを配信してたんですよ。
もちろんその中で、多分世界でもトップレベルのコンテンツも出していたんですけど、
ただ同時にインパクトとかオーディエンスが十分でないコンテンツも出してたことを、
この2017年のイノベーションレポートに認めてるんですよ。
そういう記事は別にあってもいいかもしれないんですけど、
草野 みき
その記事によってニューヨークタイムズが行きたくなる場所にはならないと。
宮武 徹郎
それはどう微妙な記事って位置づけるんですかね。
多分なんですけど、これが彼らの判断になったんですけど、
いわゆる日常的なニュースのカバレッジをやりますと。
草野 みき
ただそこにはめちゃくちゃ投資しませんっていう判断をしたんですよ、このレポートで。
もっとユニークなものとか。
宮武 徹郎
もっと例えば調査型のニュースとか。
草野 みき
そうですね、確かに。調査系のポッドキャストとかも。
宮武 徹郎
ポッドキャストとかも出ますもんね。
そっちでニューヨークタイムズって独特な優位性っていうか、
強いコンテンツを出してるじゃないですか。
この判断ってこの2017年に行われたものなんですよ、実は。
こっちにしっかり投資すると。
草野 みき
ネットフリックスみたいですね。
オリジナルコンテンツというか、調査とかに、
宮武 徹郎
サブスクでやっぱりそこに登録してもらう理由を作るみたいな感じですよね。
確かに、そのネットフリックスの例えはいいかもしれないですね。
もともと他社のコンテンツもいっぱいあったんですけど、
それがいわゆる他社のコンテンツがいろんな場所に、いろんな場所でも使われ始めていて、
そこでやっぱりオリジナルのコンテンツを作らないといけないっていうのをたぶん気づいたっていうところですよね。
同時にニューヨークタイムズが追加の目的地を作らないといけないっていう発言をしていて、
ちょうどそのタイミングでワイヤーカッターっていう結構人気のレビューサイトを買収してるんですよ。
これがたぶん彼らのいわゆるバンドル戦略への本気の展開。
草野 みき
どういうレビューなんですか?
宮武 徹郎
もちろんテック系の商品もあるんですけど、今ですとライフスタイルグッズとか家庭用品とかそういうものがいっぱいあって、
最近でもワイヤーカッターでレビューされたお皿かキッチン用品がめちゃくちゃバズって即売り切れになったみたいな話もあったんですけど。
草野 みき
ワイヤーカッターっていうのはどういう意味なんですか?
宮武 徹郎
ワイヤーカッターの意味合いってどういう意味であの名前にしてるんですかね?
草野 みき
意味的にはワイヤーをカットするみたいなことですか?
宮武 徹郎
かもしれないですし、なんか違う意味合いもある気がします。
草野 みき
直訳するとそういうことですか?
宮武 徹郎
そうですね。で、もしかしたらなんかそのカットルチェイスじゃないですけど、そのなんかダイレクトになんかそのそれを何かまあいわゆるレビューサイトなのです。
それについて話すみたいな表現の仕方かもしれないですし。
草野 みき
あー確かに。
宮武 徹郎
わかんない。そこのそこのどうなぜそのワイヤーカッターにしたのかっていう依頼は何か考えたことなかったです。
草野 みき
なんかかっこいい名前だけどういう意味なんだろうってちょっと思いましたね。
宮武 徹郎
こここれを30ミリオンぐらいでまあ噂ベースですけど、で買収されしてたんですけど、
なんか彼らニューヨークタイムズとしてはその彼らが投資したいのが、
そのもうなんか本当に毎日のようにめちゃくちゃいいコンテンツを作る母体になれば、
もう毎日読みに来ないといけない場所になりますと。
でもなんかもちろんそれってなんか普通のニュースも含めてではあるんですけど、
それだけ普通のニュースだけを出してしまうとあのめちゃくちゃ重要な記事にならないので。
なのでしっかりその目的地を作るっていうのが、
彼らの結構何回も言ってる言葉なんですけど、そのdestinationを作る。
草野 みき
どういうことですか。
宮武 徹郎
まあいわゆるその特徴的な記事だったり、そのいわゆる調査型の記事だったり、
そのまあなんかユニークな視線でしたり、
なんかまあそういうただ情報を伝えない、よりその希少性のあるコンテンツを作る。
でそれを毎日のように作れる舞台になれば、それはサブスクでお金払ってくれますと。
まあいわゆるその未来の約束、いいコンテンツを出せるっていう約束をそれを果たせると。
草野 みき
めちゃくちゃなんかでも簡単なようでめっちゃ難しいことしてますよね。
めちゃくちゃ難しいです。
多分メディアやってる方とかは私たちもそうですけど、
いいコンテンツを出したら成功するっていう、やっぱり夢みたいな、やっぱすごいなって思いますよね。
でも本当に確かにいいコンテンツだと思いますし、
でも本当にニューヨークタイムズの記事って他のメディア、同じヘッドラインみたいな記事でもちょっと目線が違ったり、
ライターの人も面白いですもんね。
宮武 徹郎
そうですね、やっぱりそこの、記者の選び方から多分そうだと思うんですけど、
あと多分彼らのスタンダードが一番あると思うので、
それをしっかり作っているっていうのはちょっと、
僕もいろいろ社内のKPAとかそういうの調べたいですけどね。
どういうふうに記者を評価してるのかとか。
草野 みき
確かに、ビューなのか。
ビューじゃなさそうですよね。
宮武 徹郎
どちらかというと、それこそ昔だと多分チャートビートってメディアのアナリティクスツールを使ってたと思うので、
場合によってはどれだけちゃんと記事を読まれていたのか。
っていうのを判断されてたかもしれないですけどね。
でも、この2014年と2017年のイノベーションレポートで、
重要な方向性が2つ決まったと思うんですよ、ニューヨークタイムズにとって。
1つが、広告ファーストではなくてサブスクファーストになること。
2つ目がバンドル化すること。
この2つがすごい重要になって、まずはサブスクファーストの話をしたいと思うんですけど、
2017年ってすごいメディアにとって面白い年で、
極端にメディア業界の中で、広告ファーストになるべきかサブスクファーストになるべきかっていう意見がすごい分かれてたんですよね。
例えば、BuzzFeedのジョナ・ペレッティさん、CEOの方ですよね。
彼があるウォルシティ・ジャンナルのインタビューで、
広告モデルが正しい生き方だと、メディアにとって。
もちろん多少なり他のマネタイズモデルとかも必要ではあるんですけど、
ベースは広告モデルが正しいですと。
一部の理由は、メディアとして役割が社会に情報を伝えないといけないので、
サブスクにするとそれが限られてしまうと。
確かにそれが正しいと思うので。
逆側に、それこそ後にニューヨークタウンジで買収される会社ですけど、
The Athleticっていうスポーツメディアがいて、
彼らは広告一切やりませんと。
広告をやるとクリックベイト的な記事とかを出してしまうので、
なのでサブスク型が正しいですと。
いろんな意味で両者が正しくて間違ってたっていうところがあって、
BuzzFeedに関しては、マス向けにする場合は広告モデルが正しいっていうのは、
それはめちゃくちゃ正しくて。
ただ結果的にですけど、彼らはニュースチームとかを結局シャットダウンしているので、
逆にThe Athleticとかは結果的にいい売却をしてるんですよ。
550ミリオンでニューヨークタウンジに買収されてるので。
すごいですね。
それすごいですよね。
ただ、買収後にThe Athleticが今後何がプライオリティかって聞かれた時に、
広告を導入することだって言ってたんですよ。
草野 みき
それは買収された後のニューヨークタイムズの人が言ってたんですか?
宮武 徹郎
The Athleticが言ってて、もちろん多分ニューヨークタイムズと話した方針の中っていうところではあるところですね。
草野 みき
なるほど、言ってることが。
宮武 徹郎
若干矛盾したってところがあるんですけど。
じゃあどっちが正解なんだっていう話なんですけど、
多分なんですけど、これはケースバイケースっていう逃げ方はもちろんできると思うんですけど、
草野 みき
場合によってですね。
宮武 徹郎
違う逃げ方として、どっちもっていうパターンを取ります。
ただ、どっちを先にプライオリティに置くかっていうのが重要なポイントになってくる。
ところで、これはメディア企業として自分の立ち位置をすごい理解しないといけなくて、
自分の扱ってるコンテンツがニッチなコンテンツなのか、スケールできるコンテンツなのかっていうのがまず知らないといけないですと。
もう一つは、コンテンツを制作するコストがどこから来てるのかっていうのを見ないといけない。
この2つを理解すれば、広告ファーストにするべきか、サブスクファーストにするべきかっていうのが分かりますと。
ほとんどの今のメディア企業って、これはアメリカに限っていますと、既存の昔の新聞業界のやり方はそのままコピーしてるんですよ。
なので、それがあってリーチを増やしたり、一人当たりの売り上げを増やそうとしているんですけど、根本的に変えないといけない。
これがまさにニューヨーク・タンチがやったことではあるんですけど、さっきニッチかスケールできるかっていう話をしたと思うんですけど、
残念ながらっていう話でもないですけど、ほとんどのメディア企業は正直スケールできるコンテンツではないです。
草野 みき
スケールできるコンテンツってどういうものですか?
宮武 徹郎
これがちょっと後々、どっちの成功パターンはこれから全部話すんですけど、基本的にはたぶんニッチだと思いますと。
まず、サブスクファーストの成功事例をいくつか話すと、まずニューヨーク・タイムズがありますと。
ニューヨーク・タイムズは去年2.4ビリオンぐらいの売り上げで、そのうち1.1ビリオン、45%がデジタルオンリーのサブスク登録者から来ていますと。
去年たぶん318ビリオンぐらいの広告売上があったっていうところで、これはデジタルの広告売上ですね。
まずサブスクの売上の方が高いですと。その後に一応広告売上もあるっていう、デジタルファーストでプラス広告売上がある会社になってますと。
宮武 徹郎
まずそのコンテンツの制作コストがどこにあるかっていうところを見ますと、
あーそういうことか、なるほど。
多分わかりましたよね、草野さん。
草野 みき
これはニューヨークタイムズ。
自分たちで作ってるか、ユーザーが作ってくれてるか。
宮武 徹郎
そうなんですよ、まさに。
それで、いわゆる会社にとってのコストがニアゼロなのか、それとも高いのか。
草野 みき
確かに。
宮武 徹郎
それによって、ほぼゼロであれば、ユーザーから先にお金取らなくていいんですよ。
だから広告モデルが成立するっていう。
でもそれが、例えばニューヨークタイムズとか、それこそネットフリックスかディズニープラスだって余計そうですけど、
いいコンテンツを作るのに結構な制作コストがかかるのであれば、
それに対してアップフロントでお金を出してもらわないといけないですと。
それにとってお金をもらえるからこそ、今後いい商品を、いわゆるコンテンツを作れるっていう約束ができるようになるっていう。
それが成立するっていうところで、まずどっちファーストにするかっていう判断ができますと。
YouTubeですと特に個人クリエイターが作ってるので、コンテンツに対してコストがないっていうところはやっぱり大きいっていうところですね。
多分なんですけど、YouTubeが急にサブスクファーストになりますって言った場合に、多分成立しないじゃないですか。
どうやってあれだけ多くのクリエイターがいるプラットフォームで、サブスク売上げを取ったとしてもどうやって分担するんだっていう話になるんで。
多分今まである程度、例えば1億儲かってた人が多分半分以下の儲けになると思うんですよ。
なのでそれは多分YouTubeにとって良くないので、だからこそ広告モデルがフィットしていますと。
それがコンテンツ制作っていう軸ですよね。
もう一つの軸がニッチvsスケールっていう話なんですけど、個人的にニッチであれば広告ファーストであるべきではないっていうところで。
なぜかというと、広告ファーストのメディアになった場合に何を売ってるのかというと、アテンションを売ってるので。
アテンションってコモデティなんですよ。
いわゆるYouTubeでもNetflixでもフォートナイトでも本を読むことでも全部アテンションなので。
そこの取り合いになるので、いわゆるアテンションの競争になると全世界と戦うんですよ。
草野 みき
大変だ。
宮武 徹郎
めちゃくちゃ大変です。
草野 みき
もう何時間使うかの戦いですもんね。
宮武 徹郎
まさに本当にその戦いになるので。
いわゆる何でも競合になるじゃないですか。スポーツやりに行くのもご飯食べに行くのも競争になるので。
草野 みき
そりゃ5分しか見ないわっていう感じですよね。ゲームした方が楽しいし、別なことしたいですもんね。
宮武 徹郎
それだけ激しい競争環境の中にいる中だと、全員にリーチしないとそもそも成立しないんですよ、ビジネスとして。
全員にリーチできるようなモデルじゃないと。
だからこそ無料であるべきだったり、全員が見ても楽しめる。
YouTubeとか、もちろん例えば特定のユーザーが嫌いなコンテンツはあるかもしれないですけど、自分が好きなコンテンツも見つけられるじゃないですか。
でもニューヨークタイムズだと違いますよね。
人によってはニューヨークタイムズ大っ嫌いな人もいますし、めちゃくちゃ好きな人もいるので、別に全世界にニューヨークタイムズのコンテンツって通用しないんですよ。
草野 みき
それでもあれぐらいの規模になってるのすごいですね。
宮武 徹郎
すごいです。
草野 みき
すごいな。
宮武 徹郎
ディズニーの映画でもニューヨークタイムズの記事でも、全世界にはリーチするべきではない。
ですけど、YouTubeだとリーチするべきなんですよ。
なので前提として自分のサービスが10億人以上のユーザーにリーチするべきであれば、おそらく広告ファーストであってもいいと。
いわゆるスケールしてないといけない。
草野 みき
YouTubeとかってこと?
宮武 徹郎
YouTubeもそうですし、例えばFacebookもそうだと思うんですけど、どちらかというとプラットフォーム側の方が強いですよね、ここに関しては。
若干トピックがずれますけど、このニッチVSスケールっていう前提で考えたときに、これすごい重要なコンセプトだと思っていて。
自分が売ってるプロダクトがピュアなアテンションのプロダクトじゃなければ、広告ファーストなモデルって成立するのってすごい難しくて。
だからこそ、個人的には去年末の振り返りトップ10でもちょっと話しましたけど、個人的にリテールメディアって今すごい流行ってるじゃないですか。
ここ数年前から。
草野 みき
Amazonとかに出てくる広告とかもリテールメディア。
宮武 徹郎
そこに対して結構課題を感じていて、別にリテールメディアをすること自体は別に悪いことではないと思うんですよ。
ただそこにどこまで頼るのかっていう話で。
草野 みき
広告に手を出してしまった。
宮武 徹郎
これってまさに草野さんが言ったように、Amazonがめちゃくちゃ儲かってるから、多分いろんな企業が自社を自分たちでやりたいと思ってるんですよ。
草野 みき
ちょっとでも信頼を切り売りしてる部分はありますよね。
宮武 徹郎
めちゃくちゃあります。めちゃくちゃあると思います。
草野 みき
いい広告ももちろんあるんですけど、ネガティブに働く部分もありますよね。
宮武 徹郎
基本的に広告ってポジティブに見る人って割と少なめなので。
もちろん税金として見るべきだと思うので、無料の商品であれば税金としてそれがパーソナリズムされてたら、もしかしたらいいかもしれないっていう話だと思うんですけど。
草野 みき
Amazonって去年広告売上げだけで46.9ビリオン出してるんですよ。
宮武 徹郎
46.9ビリオンですね。
46.9ビリオン。
これを比較したほうが分かりやすいと思うので、コカ・コーラの売り上げを超えてますと、去年。
草野 みき
ビリオンって何でしたっけ?
宮武 徹郎
6兆円以上ですね、多分これ。7兆円ぐらいですかね、もしかしたら。
うわー、すげー。
草野 みき
それはもう元に戻れないですね、もう。
宮武 徹郎
しかもコカ・コーラ超えました、ゴールドワンサックス超えました、ロリエル超えました、ソフトバンクとほぼ同じぐらいですと。
広告売上げだけです。
でもそれを見ると、当然ながら他のリテール企業とかそういう人たちは自分たちでもやりたいと。
草野 みき
これはもうから自分でプラットフォームを作って、検索、広告いっぱい出そうってなりますね。
宮武 徹郎
本当に誰でもやってた時期は、2年前とか本当にホテルとかも立ち上げてたりとか、リテールメディアをいろんなところでやってましたけど。
例えばウォルマートとかも去年3.4ビリオンぐらい広告売上げを出していて。
これはシリアルトークでもちょっと話しましたけど、ウォルマートのCEOが広告売上げに対してちょっと発言をしてたんですけど。
草野 みき
ウォルマートでこれだけのいいマージンがあるビジネス初めて見たって言ってて。
すっごいホクホクしてる。
見つけてしまいましたね。
宮武 徹郎
ウォルマートの利益率って1%とかそんなもんなので。
これ大変ですからね。
そういう意味だと広告売上げって彼らにとってすごい良いマネタイジポイントだったりするんですけど。
ユーバーからマリオットからアップルまで全員アドネットワーク化しようとしてる時代の中で。
やっぱりちょっとミスリードしていると思っていて、リテールメディアの売上げって。
過去のシリアルトークでも話したことあると思うんですけど、インスタカートとか見ると多分めちゃくちゃ分かりやすいと思うんですけど。
これは上々時の売上げで直近の売上げはちょっと僕も見てないのであれですけど、
2022年の取引額の2.6%ぐらいしか広告売上げって占めてないので小さく見えるんですけど、
ただ利益ベースで見ると43%の利益を占めてるんですよ、広告売上げが。
半分ぐらい。
半分ぐらいですよね。
1注文あたり7ドルぐらいインスタカートが取り分取ってるんですけど、そこから広告売上げを引くと4ドルなんですよ。
7ドル中3ドルが広告売上げなんですよ。
草野 みき
インスタカートで食材検索して出てきた広告のお店とか商品とかがクリックされたら広告ってことですよね。
宮武 徹郎
これって果たしてビジネスエコノミックス的にヘルシーなのかっていう。
広告ってさっきも言ったように税金っぽい考え方をするべきかなと思うので、いわゆるアテンションのプレミアムなんですよ。
そこにアテンションがあるから、そこからちょっとそのバリューを取るのが広告なんですよ。
SNSに関してはそもそも100%アテンションビジネスなので、そこに関しては広告しか出せないので、逆に言うと。
草野 みき
そうですね、サブスクも。
宮武 徹郎
難しいですよね。
なんでそのインスタカートってもピュアなアテンションビジネスじゃないじゃないですか。
いわゆるそのプロダクトがあって、いわゆる取引するサービスじゃないですか。
なんでその取引の売り上げが本来であればもっと高くあるべきなんじゃないかと。
草野 みき
その商品買った時の手数料が一番あるべき。
宮武 徹郎
そこから来ていなければ、いわゆるその会社のコアバリュー、いわゆるまだ売上げとか利益の半分以上広告が占めているわけではないですけど、
宮武 徹郎
今後そこにどんどん頼った場合にですよ、半分以上の売上げとか半分以上の利益が広告になった場合に、この会社って何の会社なんだってなるじゃないですか。
草野 みき
アドの企業、アドネットワーク、野菜とかスーパーのものを通したアドネットワーク。
宮武 徹郎
リテール企業のインスタカートも含めてですけど、コアのユーティリティってアテンションじゃないので、プロダクトだったりマーケットプレイスなので、
なので、アテンション自体はコアプロダクトがドライバーとなっているはずなのに、逆転した売上げフォーマットになってしまうと、結構いろんなインセンティブが崩れる可能性があって。
草野 みき
まやくですよね。
宮武 徹郎
めちゃくちゃまやくなんですよ。で、草野さんが言ったように、広告がたとえばいっぱい表示されてしまうと、場合によってユーザー体験がどんどん落ちていくので。
草野 みき
うん、気づかない。やってる、これはもう狩るぞって、ウォルマートみたいにホクホクしちゃったらもう戻れないですよね、これは。ユーザーが違和感感じ始めても。
宮武 徹郎
これってすごい有名な話があるんですけど、グルーポンのCEOがこれを似たような問題を1回感じたことがあって、これは広告ではないんですけど、まやく的な効果の、いわゆる影響の怖さっていう話なんですけど、グルーポンって昔1日1回しかメール送らないっていう社内ルールがあったんですよ。
で、それをあるPMの人が2回送ったらどうですかと。で、CEOはその時断ったんですよ。いや、うちらは社内ルールとして1回しか配信しないっていうルールにしてるので、ユーザー体験が落ちるので、それで。
で、言ったら、そのPMが言った言葉がめっちゃ怖い言葉なんですけど、「検証しない文化なんですか?」みたいなことを聞いたんですよ。別に検証だからいいんじゃないですかっていう。
かましてきますね。
理論上正しいじゃないですか、それって。で、それに対して断れなくて。
草野 みき
やらないんですか?やらないで。
宮武 徹郎
確かたぶん、たぶん、実際言った言葉が、「ナレッジに対して反対してるんですか?」みたいなことをたぶん言ったんですよ。
草野 みき
おー。
宮武 徹郎
なんか、もっと理解度を高めたくないんですか?みたいな。めっちゃ怖いですね。
草野 みき
怖いですね。確かにやってみるかとはなっちゃう。
なっちゃいますよね。
宮武 徹郎
で、その時に社長が、「わかった、じゃあやります。」と。ただ、検証目的だけで実際やりませんよと。で、1回検証したんですよ。
数字が良すぎて。
ちょっと気持ち悪くなっちゃった。
もう2回配信するしかなくなって、そのオプションしかないっていう風になったんですよ。
で、それが後に3回、4回、5回となって、で、どっかのタイミングでゼロになったんですよ。
いわゆる全員スパム扱いされたっていう。で、それで1個のチャンネルが消えたっていう。
草野 みき
欲張りすぎた。
宮武 徹郎
これは完全に広告の話ではないですけど、広告もいわゆるそういう麻薬的な効果が特にリテール企業に対してあるので、
自分たちが売ってるプロダクトが何かっていうのを最初にまず気づくべきっていうところですよね。
草野 みき
難しいですね。とはいえ、みんながやってるし、これやったら絶対に儲かるってことが、割と結構大きながら儲かるってことが分かってる中でやらないっていうのは、結構上場企業からしたら難しいですよね。
宮武 徹郎
しかも多くのメディア企業苦しんでますし、例えば上場してる会社とか、上場してなくて未上場でも株主からすごいプレッシャーを受けてるわけじゃないですか。
なんで売上がフラットなんだよとか、なぜ20%成長してないんですよっていうのを言われたりするので、余計そのプレッシャーを感じますよね。
なんですけど、ここに関してはたぶんすごい、広告もそうですし、サブスクファーストになるべきか広告ファーストになるべきかっていうポイントもそうなんですけど、
自分たちの何を優位性と思っているのかっていうのを理解するのが重要で、ニューヨークタイムズはそれに気づけたっていうところですね。
草野 みき
難しい、それは。ちゃんと自分のコアなプロダクトの重要なものを忘れない、絶対に。大事ですね。
宮武 徹郎
そうなんですよ、めちゃくちゃ大事なんですよね。
一旦ここで終わらせて、ちょっと長くなっているので、今たぶん自分の台本見たら半分ぐらいしか言ってないんで、
バンドル戦略だけで1時間ぐらいかかっちゃうんで、それはちょっと来週しようかなと思うんですけど、
今週の話に関してはこのサブスクファーストか広告ファーストっていうところの気づきっていうところが、
ニューヨークタイムズとしてちゃんとデジタル領域の展開とサブスクファーストの展開をしっかりできたっていうのが、
まずスタート地点として重要で、来週話す内容はそれをさらにどうニューヨークタイムズが広げるのかっていう、