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スピーカー 1
カランコローン
いらっしゃいませ。喫茶クロスロードへようこそ。
スピーカー 2
いよいよ週も後半。 ちょっと疲れたなぁ。
スピーカー 1
今週もなんだかバタバタしていたなぁ。 そんな気持ちが膨らんでくる頃ではないでしょうか。
そんな時こそ一休み。 ここでのんびりしていきませんか。
喫茶クロスロードでは、毎週木曜日、 月ごとのテーマに沿ったエッセイ朗読をお届けしています。
スピーカー 2
今月のテーマは、雨。 今日は、遠い異国の地での思い出を綴った
スピーカー 1
ブアちゃんのエッセイを、私、しほがお届けします。 それではどうぞ。
雨とビニール袋 ブアちゃん
特別な雨の日を思い出すことがある。 数年前、エチオピアで生活していた時のことだ。
スピーカー 2
雨というより、滝に近い。 少し大げさかもしれないが、
スピーカー 1
とても激しい大雨。 傘はとても役に立たない。
気候としては、大雨期というらしい。 6月から9月までの約4ヶ月間。
スピーカー 2
その間、2ヶ月近く、学校は休校となる。 予想できない突然の大雨で、
スピーカー 1
道路は水浸しになり、通れなくなったり、 停電したり、一度にいろいろなことが起こる。
スピーカー 2
道行く人は一人もおらず、 突然、一時停止ボタンが押されたように、
みんなの行動が止まる。 そしてひたすら、
スピーカー 1
雨が止むのを待つのだ。
スピーカー 2
雨宿りする場所は、まさに一期一会。
また降ってきたね。 サラムの
やあ、元気かい? うん、まあね。
あなたは元気?調子はどう? などと、
世間話をしながら過ごす。 うんよくカフェの近くだと、
スピーカー 1
コーヒーを飲みながら過ごす。 停電していなければの話だが。
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スピーカー 1
そして雨が止んだら、何事もなかったかのように 動き出す。
その光景が私には新鮮だった。 この地の人はこの雨を受け入れているのだろう。
降っているから止むまで待つのだ。 私はこの雨を受け入れるまでに少し時間がかかった。
買い出しのために市場に行こうと思っていたのに行けなくなり、 夕飯が食べられなくなったり、
人と会う予定だったのに突然会えなくなったりした。 日本では当たり前にできていたことができなくなる。
その度に雨との付き合い方を考えさせられた。 停電になったときは特に孤独だ。
特に夜中。 トイレに行くときあちこちにぶつかる。
小さなろうそくの明かりを頼りにじっと過ごす。 強い雨の音だけが響く。
スピーカー 2
静かな時間だった。 そんな中で私を癒してくれた友達は
スピーカー 1
Kindleにしまい込んだたくさんの本たちとバイオリンだった。 あの時に読んだ多くの本のタイトルや内容は思い出せないが、
小説やエッセイ、詩集、漫画、新書、雑誌、あらゆる本を読んだ。
紅葉語のアムハラ語と英語付けの日々の中で触れた日本語は 私の心を安心させてくれた。
本に触れている時間は満たされていた。 特に料理の本は見ているだけで楽しかった。
こちらでは簡単に手に入らない食材が多く、 調理することは難しかった。
納豆が食べたくて発酵させてみたが、 日本で食べるような味には届かず、とても恋しくなったことを思い出す。
そしてなんとなく誰かと話したくなった時は、 日本から持ってきたバイオリンを奏でた。
学校で一緒に働いていた同僚が、 突然仕事に来なくなった時。
スピーカー 2
先生を指導する役割のはずが、 慣れない現地語で授業を行うことになり、
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スピーカー 1
クラスがめちゃくちゃになった時、 スコールが過ぎるのをただ待つ時、
スピーカー 2
頭を真っ白にして、ただ奏でる。 音の美しさとじっくり向き合えたのは、
スピーカー 1
この時が初めてだったかもしれない。 働いていた学校では上層教育が担当だった。
スピーカー 2
上層教育とは何か、ずっと自分に問いかけてきた。 孤独な心に響いた美の経験は、
何より私にその意味を教えてくれたように思う。 子供たちとたくさん音楽に触れる機会を作りたくて、
スピーカー 1
音楽クラブを立ち上げた。 受け期間中も可能な限り活動することにした。
スピーカー 2
何曜日何時から始めるよ、 とは言ったものの、
スピーカー 1
子供たちは来るのだろうか。
私の言った言葉は、ちゃんと伝わっただろうか。 現地の先生なしで、果たしてできるのだろうか。
いろいろな不安を抱えながら、バスに乗って一時間。 朝学校に行くと、
子供たちが待っていてくれた。 私の姿を見た子供たちは、ほっとした様子で微笑んでくれた。
彼らの姿を見て、私もほっとする。 連絡手段がないので、お互いに顔を合わせるまで不安なのだ。
校舎に私と子供たちだけ。 限られた言葉でのコミュニケーション。
それでも何とかなった。 幼い子供を抱き、面倒を見ながら来てくれる女の子。
毎回来てくれていた。 音楽を楽しんでいる子供たちの目が忘れられない。
とっても美しかった。 輝いていた。
スピーカー 2
小雨の日。 子供たちは大丈夫か心配になりながら学校に行ってみると、
何人かの子供たちはすでに集まっていた。 傘の代わりにビニール袋の持ち手を耳にかけて、
帽子代わりにかぶって待っている。 ニコニコと笑顔で待っている子供たちの姿が何とも愛らしく、
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スピーカー 1
彼らのことを思い出しては、くすっと笑ってしまう。 今頃どうしているだろうか。
スピーカー 2
元気でいてくれているといいなあと思う。 あの頃の雨の匂いや空の色。
スピーカー 1
そして子供たちの笑顔や目の輝きを、 私はこれからも忘れないだろう。
いかがでしたか。 さて名残惜しいですが閉店のお時間です。
スピーカー 2
今後も喫茶クロスロードは、あなたがほっこりした時間を過ごせるよう、
スピーカー 1
毎週月曜日と木曜日、 夜9時よりゆるゆる営業していきます。
それでは本日はお越しいただきありがとうございました。
またお待ちしております。