Powers of Ten™ (1977)▶︎https://youtu.be/0fKBhvDjuy0?si=CJqkgKaT-X6JGcwB
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「あいまいもこ」
大学時代は本当に楽しかった。たくさん時間があったおかげで、自分と感覚が近い人たちに触れることができ、その人たちが建築やものづくりに興じているのを知ることができたからだ。その1つが本編でも話したチャールズ&レイ・イームズによる「Powers of Ten」という映像作品だった。ある種の世界の連続性とどんなスケールのものにも「宇宙」が存在するという真理のようなものを表現されているように思う。はたまた、建築家、原広司は、世界各地の集落調査のなかで見出した自己相似性、自己完結性といったある種の法則性を「すべてのものにすべてがある」と表現し、自身の建築表現にも落とし込んでいる。五十嵐大介の絵や漫画の持つ世界にも似たようなものを感じる。これは以前鍋モツで話したことがあるかな?「ウムヴェルト」「魔女」なんかがおすすめです。
こういった、遺伝子、細胞、血液、身体の仕組み、生き物の生態系、それらが生きる環境、文化、思想・・・といった様々なスケールの世界に「宇宙」を見出す感覚が、大好物だ。
そんな様々な感覚や表現に出会う中で、とにかく僕の感性にブッ刺さったのは「象設計集団」であった。「team zoo」を自称するこの設計集団のつくる建築は「宇宙」的な何かを感じざるを得ない。
象設計集団は7つの原則という設計哲学を掲げている。「場所の表現」「住居とは何だろう? 学校とは? 道とは?」 「多様性」「五感に訴える」「自然を受けとめ、自然に親しむ」「あいまいもこ」「自力建設」の7つだ。象の建築にはこの原則をしっかりと感じる。この話はまたどこかで・・・。ともかく、どれもはちゃめちゃに影響を受けているのだけども、とくに大好きなのは「あいまいもこ」だ。
漢字だと「曖昧模糊」。はっきりしない様、ぼんやりした様、ぼんやりとしてあやふやなこと、というような意味だが、この概要欄を読んでいるそこのあなた!ぜひ、今、身の回りを見渡してみてほしい。「あいまいもこ」なものはあるだろうか。
社会は、経済合理性によって整理整頓され、わかりやすく、スピードがあるものが良しとされ、明確に、切り分け、区別することで、多くの物事が均質化の一途を辿った。あなたがこれを読んでいるその場所、空間、身の回りのものは、どこの誰がいつどうやって、何を使い、どういう意図でつくったのかも、誰が管理しているのか、明確だったりしませんか?根っこを辿ると、ほとんどが聞いたことある、もしくは似たような企業や原産地に行き着いたりしませんか?
・・・あんまり書くと、ラディカルな現代批判思想を持ってるやつだと思われちゃうのでこの辺にしておくが、とにかく、ものづくり(に限らず物事のほとんど)はシステマティックになっている。同じレールにのってできている。そのシステムから抜け出さない限り、本当の意味での新しいもの、面白いものは、ドキドキは、生まれないと感じている。(勿論自戒も込めて!)
「あいまいもこ」はそれに真っ向から立ち向かうための言葉だと思っている。
理由や意味なんてどうでもいい。どこの誰がいつどうやって、何を使い、どういう意図でつくったのかも、誰が管理しているのか、どこから生まれたかもわからない。なんだかよくわからない「あいまいもこ」な状態に、魅力を感じたい。あやふやで、はっきりせず、つかみきれない、解明できないものごとに、最高にドキドキしたい。ドキドキさせたい。
そこにはとんでもなく広大な「宇宙」が広がっていると思うから。(セ)