1. イタラジ
  2. デカメロン 第六日 第一話
2024-12-12 05:07

デカメロン 第六日 第一話

デカメロンから、朗読です。翻訳:柏熊達生

サマリー

デカメロン第六日第一話では、オレッタ夫人が騎士から話を聞くために苦悩している様子が描かれています。騎士の語る興味深い話が、彼の不適切な話し方によって台無しにされる状況が展開されます。

オレッタ夫人の苦悩
お若い祝女のみなさん、
輝かしい晴れた夜には、星が空の飾りであり、
春には花が緑の草原の、若葉をつけた寒木が丘の飾りであるように、
気の利いた言葉は、招談すべき作法や、立派な談話の飾りでございます。
それは簡単なものでございますから、男子の方々よりも、婦人の方々にふさわしいものなのですが、
婦人の方々はたくさん喋りすぎて始末の悪いものでございます。
ところで私たちの才能は変わっているためか、私たちの時代に、天からもたらされている特別の嫌悪のためか、
その理由はどうでありましょうとも、適当な時に何か気の利いた言葉を言ったり、
それが言われた場合に間違いなくこれを理解することができるような婦人は、
今日ほとんどまたは一人も残っておりません。
これは私たち婦人全部にとっての一般的な恥でございます。
でも、このことにつきましては、もうパンピネアに乗って十分に話されましたので、
それ以上、私はそれについて申し上げるつもりはございません。
でも、うまく機会をつかんで言われた言葉が、どんなにそれ自身良いものであるかということをご覧に入れるために、
ある騎士に対して、ある貴婦人が丁寧に沈黙を命じたそのやり方を、私は皆様にお話ししたいと存じます。
あなた方のうち多くの方々はご覧になってご承知かもしれませんし、また噂を耳にしていらっしゃるかもしれませんが、
私たちの町に、まだそう古いことではございませんが、一人の貴賓のある振る舞いの見浴びた、弁説の優れた貴婦人が住んでおりました。
その方はご立派なので、お名前を黙っているわけには参りませんでした。
その方はオレッタ夫人と呼ばれて、ジェーリ・スピーナ氏の奥様でございました。
夫人は、私たちのようにたまたま田舎に滞在しておりまして、その日、自分の家の食事に招いた宿女たちや騎士たちと一緒に、帰山時にあちらこちらと歩いておりました。
騎士の不適切な話し方
一同が出発したところから、これから歩いて行こうと考えていたところまで道が少し遠かったのでしょう。
その一段中の騎士の一人が言いました。
「オレッタ様、よろしかったら、これから私たちが行く道中の大部分を、この世で一番面白いお話を一つお聞かせして、馬に乗っているような気分でお連れ申しましょう。」
夫人は、騎士に向かって答えました。
「えー、かえってこちらから頭を下げてお願いいたします。とてもうれしいございます。」
話は舌に乗らないし、剣も腰にしっくりしないような男だった騎士殿は、そうした言葉を聞くと、その話を始めました。
それは実際のところ、話としては大変面白いものでございました。
でも、彼は三、四度、いや六度も同じ言葉を繰り返したり、話を後に戻したり、時々、「そいつは間違いました。」と言ったり、またよく名前を間違えて相手を取り違えて呼んだりしましたので、
人物の性格や起こった事件について話し方がこの上もなく不適合だったことは言わないといたしましても、話をひそく酷く打ち壊してしまいました。
ですから、おれた夫人はそれを聞いていて、まるで病人のように今にも死にそうだったと思われるほど何度も汗が出て胸苦しさを覚えました。
夫人は、騎士がのぼせて何を話しているのかまごまごしてしまって、そこから抜けていることができなくなったのを見てとって、もうこれ以上は我慢ができなくなりましたので、優しく申し出ました。
騎士様、このあなた様の馬は歩き方がきつすぎます。そこでお願いですから、どうか私を下に下ろしてください。
たまたま話し手としてよりもずっと優れた騎士であった騎士は、その騎士に富んだ言葉の意味がわかりましたので、それを喜んで冗談に受け流すと、いろいろと他の話をやり出しました。
そしてはじめにやって、うまく先が続けられなかったお話の方が尻切れとんぼで、それ切り、よしてしまいました。
05:07

コメント

スクロール