僕のすごいコアな読者が喜ぶかもしれないけど、それだけかなと思ってたんですよ。
中央討論審査さんからこの企画をもらったときも、
しかも最初からタイトルは言論戦記ってタイトルだったんだけど、
これはやっぱり冗談みたいなタイトルで、いつか変わるのかなと思ってたら、
それで最後まで言っちゃって、
話もこんな話でいいの?って言ったら、これがいいんだとか言ってて、
本当の会社の話だけで本作っちゃったから、大丈夫なのかなと思ってたんだけど、
意外と多くの人が共感してくれて、
あと、僕にとっては、
実は裏方でずっと10年間そういう会社の悪戦苦闘をやっていたんで、
ツイッターで炎上してるとか、
どっかニコ生に出てるっていうのは、すごく表面の部分でしかないんですよね。
その背景が見えて、逆にその表面の部分も理解しやすくなったみたいで、
そういう意味では僕の仕事にとってもすごい良かったですね。
本当ですか。
いや、まさにいろいろ大変な時に泥臭く領収書1枚1枚とか、
そうそう。
私は起業してきたんで、まさにそれ分かるんですけど、
あずまさんもやったんだみたいな。
いや、まさにそうですよ。
そういうのを地味にペタペタペタペタってプラ貼ったり、
いろいろ領収書ちょいちょい切ったりとか、いろいろやってましたよ。
でも本当に個人的にこの言論選挙の中で一番本当に刺さったのが、
あずまさんはじめにというか前書きのところで、
会社の本体はむしろ事務だっていうふうに書かれてるじゃないですか。
これ多分きっと起業してそれなりに10年とかやってきた人なら分かるし、
そうじゃない人はやっぱなかなか分かんないんじゃないかな、
つまりクリエイターとかプレイヤーだけど。
どう思いますか。
実際問題事務ばっかりやってたら当たり前だけど何でもクリエイティブなことはできないんで、
クリエイティブなことをやるためには事務をいろんな人に任せたり、
そういう信頼できる人を探すっていうのは大事なんですよね。
ただ信頼できる人を探すためには一回自分で事務やってないと、
単にどんな仕事を任してるのかも分かんなくなっちゃうんで、
すごい大失敗するんですよ。
だからそういう意味ではクリエイターも一回事務を通るっていうか、
そもそも自分の仕事でお金をもらうといっても、
例えば請求書を出す。
請求書を出したら請求書ってどういう書式なのかとか、
どんなふうに送って、
そこで例えば厳選聴取とかがあったりなんだりとか、
そういうすごい基礎的な仕組みだけど、
でも本当にクリエイターしかやったことない人は、
そういうことも分かってない人もいると思うんですよ。
本当ですか。
だから絵を描いてる、音楽を作ってる、文章を描いてる、それしかやってなくて、
そもそも請求書を自分で出したりとか、
税金の計算をしたりとか、
そういうことをあんまり考えてない人たちが少なからずいると思うんだけど、
それもやっぱり一回やったほうがいい。
あと、うちの場合は自分たちで出版社っていうことをやってるわけだけど、
あとウェブサービスも作ってるけど、
そうするとやっぱりものを、
今度はクリエイターって搾取されてるって思いがちなわけですよ。
自分の本が本だったら1,000円で売れてると。
でも印税だとその1冊売れても10%しか入らないと。
残り9割はどういうことなんだと。
残り9割なんて本当は別に俺に入ってもいいじゃないかって思いがちなんですよね。
ところが出版社の側に立つと、
今度はクリエイターっていうのは、
いや、一回文章を書いてるだけじゃんと。納品してるだけだろうと。
あと売ってんのこっちだと。
本印刷してんのもこっちだし、
郵送してんのもこっちだし、
あとトラブルがあった時に謝ってんのもこっちであって、
お前らクリエイターはもの作ってるだけだろみたいな気持ちになってくるんですよ。
両方の気持ちがわかるんで。
そういう意味でも、
自分でいろいろやってみると、
俺は立場が弱い、搾取されてるだけじゃなくて、
あ、向こうから見たらこう見えんだなと。
向こうから見たらクリエイターってこう見えるんだとか、
そういうことがわかってくるんで、
そういう意味でもいいですよね。
その気持ちがわかると、ある意味謙虚になるっていうか、
あんまり自分の権利とかを主張するのは大事なんだけど、
向こうも大変なんだなって気持ちになると、
要望に対して少し想像力が働きますよね、向こうがミスしたときも。
例えば契約書送ってこねえじゃないかとか、
リリースしたのに告知が遅いとかAmazonで品切れてるとか、
みんなすごいいっぱい文句があるわけだよね。
でも出版社やると、Amazonってのはすぐ品切れして、
Amazonからこっちに連絡こないんだと、俺たちコントロールできないんだよとかね。
そういう事情がだんだんわかってくるんで、
俺らに言われてもな、みたいなこともまたわかってくるわけです。
それ一例ですけど、いろんな立場がわかるってのはやっぱりいいことですよね。
安俣さんおっしゃったように、クレイターも一回ジムをやってみた方がいいっていうのが
すごく腑に落ちたんですけど、もうちょっとそれを抽象化というか、
でかい話にすると、安俣さんも今、直接は経営者は一回は外れてるんですよね。
そうです。でも実際には、うちの会社は小さいので、
3人の取締役が幹部になって共同経営をやってるようなものなので、
僕も参加はしてる。ただ、前みたいに僕が完全にトップって状態ではないんで、
それがやっぱり社内の人々をすごく働きやすくしてるというか、
よくしてるみたいですね。
そうなんですよね。ジムとクリエイターっていう意味でもそうですけど、
安俣さんでいけば、今もそういう意味では経営にも当然関わってらっしゃるということで、
やっぱりクリエイターというか、いわゆる作る人と経営の両面持ってると思うんですけど、
そういう意味では昔それこそ、去年亡くなっちゃいました。
高田健三さんとかに話を伺ったときに、
こしのじゅんこさんも言ってましたけど、
やっぱりアーティストとかも本当はもうそれこそ極端なし、
美大とかで一回経営学んどいた方がいいんじゃない?みたいに言って。
星野さんはご主人がたまたま経営できるんで経営やってらっしゃって、
健三さんはやっぱりいろいろルイビトンとかに乗っ取られてとかですごい悲しい思いをしたらしいんで、
いわゆる経営者もクリエイターもアーティストも経営を学ぶことみたいな、
それはすごい思ったんですが、ただ実際どうでしょうね。
もちろんステージが違うんで比べるのも恐縮ですけど、
僕もあずまさんも10年以上そういう形でやってきて、
学校で学べることなんだろうかと。
学ばないよりはやっぱり学んだほうがいいと思いますよ。
つまりそれこそちょっと数ヶ月、数週間みたいな感じでも
なんかやったほうが全然ないよりはマシだと思いますが、
ただやっぱり自分で会社作って、結局不動産例えば借りる。
例えば僕だったらオフィス借りたりカフェ借りたりとかっていうので、
自分の会社で借りても保証人って必要だから、
誰かが、たぶん僕が保証人になるわけですよね。
でも保証人二人必要とかだと、
最初の頃は僕の父親とかに頼んでハンコもらったりしてたわけですよ。
途中からそうじゃないけど。
会社やるってそういうことなんだと、
だから父親とかにも頭下げなきゃいけないし、
だからあんまかっこよくないんですよ、そういう意味で。
借金とか融資とか受けるのだってすごく頭下げなきゃいけないし、
僕個人の銀行口座とかも出さなきゃいけないし、
そこでは僕が書き手としてどんな人かとか、
例えばテレビ出てるとか何の関係もないから、
単に普通に口座とか見られて、普通の人間として審査されるわけじゃない。
そうすると、俺テレビ局とかに行ったら、
アズマさんみたいな感じで先生みたいな扱われてるけど、
ここの融資のここでは単なる1借金をする人であって。
これちょっとすいません、口挟んじゃいますけど、
僕も当然経営者なんでそういうのわかるんですよ。
すごいシビアじゃないですか。
僕はもう無名なんで、その通りなんですけど、
やっぱりちょっとステレオタイプですけどね、
アズマさん当然有名人です。それこそ三島賞も取ったりとか。
でもアズマさん的にはあんまり全然そういうの聞いたことない。
全く何の関係もないですよ。
そういう意味での信用、信頼はなかった。
ないね。たとえば履歴書みたいなものを見て、
お、三島賞ですか?みたいな感じで。
ちょっとじゃあこちらからも前向きになんて、
いろんなポジティブなターニングポイント、ネガティブなターニングポイント、
もちろん両方持っているものがほとんどだと思うんですけど、
やっぱりそういう意味では言論っていうのはポジティブな、
いろいろ大変なことがあったにしても、大枠としてはポジティブだと思うんですけど、
今どちらかというとその言論を作ったことによって、
得たものをお伝えいただいたと思うんですけど、
逆に失ったものってあります?ネガティブな意味で。
失ったものはやっぱりね、とにかく会社を作るのは大変だったんで、
単に、漠然に時間を失われてると思いますよ。
ただ、それをね、子供を作った時にも思ったんですよね。
やっぱり子供を作って、うちの娘が生まれたのが2005年だと思うけど、
子供ができて、僕よりもうちの妻のほうがはるかに負担が大きかったんだけど、
やっぱり時間がすごいなくなるわけですよ、単純に。
若いころだからそれまで、僕はサブカルチャーも好きだったから、
いっぱい映画を見たり、アニメを見たり、
ライブに行ったりとかいろいろやってたんだけど、
そういうの本当にいけなくなるんで、
そこで一回生活パターンが変わったっていうか、
もう最先端の文化シーンについていくっていうのは、
諦めなきゃいけないんだなと。
何もかも抑えてるみたいなことはもうできないんだなって思ったんですよね。
それでさらに会社とか作ったら、本当にもうますますそうで、
それこそ事務仕事みたいなものもいっぱい発生したり、
会社やると人を動かさなきゃいけないから、人を動かすためには、
人と会って喋んなきゃいけないんですよね。
やっぱりいろいろ悩みも聞かなきゃいけないし、
メールとかで発注すればどんどんどんどん仕事が戻ってくるんだったらいいんだけど、
人間そんなもんじゃないから、
いきなり連絡が取れなくなるやつとか、
そういうのがあっても、そういうのに対処しなきゃいけないし、
本当に時間が取られて、
そういう意味ではインプットもアウトプットも、
すごい時間はなくなったんですよね、会社を作ったことで。
ただ、これも逆に言えば、人間みんなそうなのであって、
フルにインプットとアウトプットに時間を使えるなんていう生活をしてる人がすごい少ないし、
逆にそういう生活をしていると、自分が何のためにクリエイションしてるかとか、
誰のためにものを作ってるかってことも分かんなくなっちゃうわけだから、
そういう意味ではぐるっと回って、これでいいんだろうなと思ってるんですけどね。
なんかあれですよね、僕以前結構、それこそ5年くらい前ですかね、
ご家族で対談というか、定談、インタビュー受けてるのを拝見した時があって、
お嬢様の奥様。
すごい生まれないやつですね。1回しかないやつですよ。