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2024-07-01 03:27

#149【青空文庫】がちゃがちゃ

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夢野久作「がちゃがちゃ」

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Yumeno Kyusaku title:GACHA GACHA

00:01
がちゃがちゃ、夢の旧作。草の中で虫が寄り合って、相談を始めました。
コオロギが立ちあがって、「スズムシさん、オケラさん、スイッチョさん、もっとこっちへおよりなさい。
だんだん涼しくなりますから、みんなで合奏歌をやって、お月さまに聞かせようではありませんか。きっとご褒美をくださいますよ。」
と言いますと、みんなパチパチと手をたたきました。 虫たちはそれからすぐに合奏を始めました。
まずスイッチョが草のてっぺんへあがって、まじめくさって、「スイッチョ、スイッチョ。」 と合図をしますと、オケラが土くれの影に座って静かな声で、
リーリリーと羽を鳴らします。 それに続いてコオロギが草の根元から涼しい声で、
チンチロリンチンチロリンと歌い出します。 その中へスズムシがまたやさしい長いひげを振り回しながら、
リーンリーンリーン、 と鈴の音をさせます。
その静かで面白いこと。 ちょうどその時、東の山からおのぼりになった十五夜のお月さまは、
感心のあまり、虫たちが大好きなつゆをたくさんにそこいらの草の上にまいておやりになりました。 その静かで面白いこと。
ちょうどその時、東の山からおのぼりになった十五夜のお月さまは、 感心のあまり、虫たちが大好きなつゆをたくさんにそこいらの草の上にまいておやりになりました。
ところへ、一匹のクツワムシが飛び込んできました。
なんだ貴様たちは、俺を仲間はずれにして音楽会をやるなんてしっけえなやつだ。 そんなことをするなら、俺がまず返してやる。
ガチャガチャ、ガチャガチャ、ガチャガチャ、ガチャガチャ、 と大きな声で騒げ始めましたので、せっかく始めた静かな美しい音楽会がめちゃくちゃになってしまいました。
その勢いに驚いて、集まっていた虫たちもみんな逃げてしまいました。
クツワムシは大いばりで、そこいらのつゆをやたらに吸いながら、
さあれ見ろ、俺の音楽にかなうやつは一匹もいまい。 俺は夜泣く虫の中で一番の大きな声なんだ。
みんな感心したか。 ガチャガチャ、ガチャガチャ、ガチャガチャ、ガチャガチャ、ガチャガチャ、
とたった一人、一生懸命やってやるうちに、 「兄様、あそこにガチャガチャがいますよ。
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大きな声をしているから遠くでもわかりますよ。」 という人間の声がすぐそばで聞こえましたので、
これは大変と急いでガチャガチャ言うのをやめていると、まもなく頭からポカリと袋をかむせられて、 カゴの中へ入れられてしまいました。
03:27

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