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2024-08-22 11:46

56:【鋳物】金属が枯れる?「枯らし」の技術について【シーズニング】

金属が枯れるってどういうこと?

鋳物の「枯らし」の技術について話してみました。


■参考リンク

日本機械学会 機械工学事典

https://www.jsme.or.jp/jsme-medwiki/doku.php?id=02332


■プロフィール

つねぞう

ものづくりが好き。産業機械メーカーで設計をしている。猫を飼っている。


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こんにちは、常蔵です。
Design Review.fm第56回目、始めていきます。
このDesign Review.fmは、世の中の様々なもの、主に工業製品について、私の主観で勝手にデザインレビューをしていこうという番組です。
皆さん、「鋳物を枯らす」と聞いて、ピンとくるでしょうか?
鋳物とは、加熱して溶かした金属を型に流し込んで、そして冷えて固まった後に取り出す、そのような手順を踏んでできる金属製品のことです。
この時、その溶かした金属を流し込む型というのは、砂で作った砂型だったり、金属でできた金型だったりします。
そして、カラスは、花や観葉植物を枯らしちゃったカラスです。
鋳物を枯らす。金属部品である鋳物を枯らすという、不思議な言葉ですよね。
これは、作った鋳物の部品を数ヶ月から1年以上、数年間、その外、野外に放置しておくことを鋳物を枯らすと言います。
工場の横などに積み重ねられて、雨晒しになっているような状態が、あたかも枯らしているように見えるので、そう呼ばれているのかなと思います。
では、なぜ、せっかく作った鋳物部品を雨晒しで放置するようなことをするのでしょうか。
一見、ひどい、もったいないことをしているような感じがしますよね。
日本機械学会の機械工学辞典というページに、枯らしという項目で説明されていますので、これをちょっと読んでみましょう。
枯らし、英語ではシーズニングと言いますね。
一般に鋳造品は、その凝固、冷却の過程で温度変化が均一にならないために鋳造応力を生じ、
いっぱなし、いばなし、鋳造の中に放復の方ですね。
いばなしのままで使用すると、長い間にその応力のために変形を起こすことがあると。
それを防ぐために、あらかじめその応力を除去する処置が取られる。
これが枯らしであると。
かつてはですね、かつてはという言い方をしていますけれども、
かつて長期間待機中に放置しておくことにより、自然に応力が消滅するのを待つ方法が取られていたという説明があります。
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ということでですね、その溶かした金属が固まるときに発生したその残留応力というんですかね、
内部に残っている応力によって、その異物を工作機械で加工したときとかですね、
あとは加工が終わって、機械として組み立てられてから、しばらく時間が経ってからですね、
その歪み、変形というものが起こる可能性があるということですね。
この変形の量というのは、コンマ1ミクロンから数ミクロンと小さい値ではあるんですけれども、
その金属を工具で加工して部品を作る機械、工作機械ですね、この工作機械の部品だったり、
あとその自動車のエンジンですね、自動車のエンジンブロック、鋳鉄製のエンジンブロックなどのように、
高い精度を求められる部品ではこの数ミクロンという変形が問題となる場合があります。
これをですね、変形することを材料が暴れるなんてことをね、現場用語で言ったりもするみたいですけれども、
材料が暴れることで精度が狂ってしまう、求められる品質が出なくなってしまうというところの対策として、
材料が暴れないように残留応力が自然に解放されるように外に放置しておくということが行われていたということですね。
おそらくこれは偶然発見されたんでしょうね、この枯らしの効果というのはね。
なんかこの機械、この部品精度いいぞっていつか気づいたときに、
そういえばこの部品しばらく外に置いておいたなという経験が、
誰かが昔の人が経験してそこから編み出されたというか、経験的に素晴らしい技術だというところで、
枯らしというものが一般的に行われていたということですね。
あとは定盤、ちょっと話が変わりますけども定盤という組み立てや検査で、
その上に部品を乗せて使う、その平面がバシッと出ている水平な台がですね、
そういう製品と言っていいのかな、そういう台があって、
この平面は三枚擦り合わせという技術と木下げという手法を使って作られるんですけども、
この定盤も異物で作られることが多いので、一度その擦り合わせをした後に、
その擦り合わせで分かった高い場所というんですかね、出っ張っている場所を木下げで落として、
そしたら数ヶ月その外に放置して、枯らして、変形を解放させてあげて、
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また擦り合わせをするということを何回も繰り返すことで、
その歪みを極限まで小さくして平面を出すということを定盤を作る過程でもしていたそうです。
ここでなぜその枯らしについて私が過去形で話しているかというと、
現在ではあまり主流な方法ではないんですね。
先ほどの日本機械学会のページの枯らしの説明に続きがありまして、
これを読んでみますと、ほにゃららら、これが枯らしであると。
かつては待機中にその放置しておくことにより自然に応力が消滅するのを待つ方法が取られていたが、
現在では焼きなましの熱処理により急速に応力を除去する方法が取られていると。
湖中鉄の場合、530℃ぐらいで3〜6時間保持した後に炉の中で冷やすと、炉冷すると。
そういう応力除去、焼きなましが行われているということで、
現状では長い間外に放置しなくても熱処理によって、
これが人工枯らしと同等の効果を得ることができるということで、
焼きなましの方が今終了になっているということですね。
現在のように製品の開発サイクルがどんどん短くなっていて、
どんどん新しいものを作っていかないといけないような状況では、
悠長に何ヶ月も何年も異物を枯らしておくというのは、
現実的ではない方法だと思います。
そういうこともありまして、
Twitterの方で今も枯らしをやっているメーカーはあるのかななんてポストをしてみたんですけども、
いくつか返信をいただきました。
その返信によると、今も枯らしをやっているメーカーはあるみたいですね。
なんでやっているのか、そこまでは聞けてはないんですけども、
返信の中で確かにそういうこともあるんだなと思ったものがあって、
熱処理する、さっきの焼きなましする炉に入らない特注の大きいものは野沢市にして枯らすそうですと。
そういう話がありました。
焼きなましという方法はあるんですけれども、
その炉の大きさというものも限界がありますので、
そこに入らないものというのは、野沢市にして昔ながらの枯らすという方法を取るしかないのかなと。
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そういう場合もあるかもなということですね。
ちょっとこの炉の大きさについて調べてみると、
大和重工株式会社のホームページが当ててきて、
大型の焼きなまし炉が完成しましたよというページがあったんですけれども、
この炉の大きさが長さ12メートル、幅3.5メートル、高さ2.7メートルとかなり大きい炉で、
工作機械の部品で考えると、このぐらいの炉があれば十分な大きさかなと。
大物の胃物でも入れられるような炉だと思いますね。
仮にこういった大型の炉にも入らないような大きさの胃物があったとすると、
昔ながらの枯らすという方法が必要なのかなと。
ただ主流ではないですよね。
この枯らしという技術は、木下げと同じような部類のものだと個人的には思っています。
昔の熱処理とか、木下げでいうと機械加工が十分ではなかった時代、
必要に迫られて仕方なく行っていた技術を、
人の手で行っていた技術を、
たくみの技だ、日本すげえ、というような祭りあげるような違和感を私は持っています。
木下げもよく日本の職人技だなんて祭りあげられたりしますけれども、
本当は木下げなんてやりたくないですよね。
工作機械による加工だけでは精度が不十分だから仕方なく人の手で直しているだけで、
加工でバッチリ出ていれば、木下げというのは必要ないんですよね。
工作機械の設計者としては、その木下げが有り難がられている現状を、
ちょっと恥ずかしいなと思わないといけないなと私は思っています。
ということで、枯れた技術、芋の枯らすについて今日は話してみました。
今週はここまでです。
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ではお疲れ様でした。
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