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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶應義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、昨日2021年12月3日の放送で語りきれなかった、10分で語りきれなかったものの続編です。
-ed という語尾ですね。これをエッドと発音する過去分詞形容詞の第2弾ということになります。
これはどういう例を言っているかと言いますと、昨日挙げた例で言いますと、「a learned man」のような博学な男性という時の、「learned」という形ですね。
これが普通、「learn」の過去分詞形は「learned」という形なんですが、過去分詞形容詞として、事実上も形容詞として、
「learn」とは別立てで辞書にも載っているぐらいの博学なという意味での単語は、「learned」というふうに二音節で発音すると、ちゃんとedの部分をedと発音するということですね。
「a learned man」のような形です。
それから、「my beloved son」。私の愛しい息子みたいな時ですね。
それから、「my aged father」のように、私の年老いた父親という時に、「my aged father」のように二音節で発音する。edをちゃんと発音するということですよね。一音節として。
「i」のこの母音が出るということなんですが、これリズム的に都合が良いから、この歴史的にはデフォルトであったedという発音が、こういうケースでは残ったということを主張したいと思うんですね。
リズムってどういうことかと言いますと、英語において典型的なリズムは、強い音節と弱い音節がですね、交互に繰り返される。
つまり強弱強弱強弱ですね。でんでんでんでんでん。これが英語の基本的なリズムなんです。
もちろん最初から最後までですね、メトロノームのようにこれが続くわけではないんですが、これをとりわけ好むということです。
とするとですね、例えば、a learned manという時に、これちょうどaは弱いですよね。で、learnという意味のある動詞ですから、これは強い。
ここの後にedが付いた時にedと弱い発音が繋がるとですね、a learnedということで弱強弱になります。
そして最後にmanですから、これ意味のあるしっかりした名詞ですから強ですよね。つまり弱強弱強と綺麗に続くんです。a learned manということです。
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でんでんでんでんっていうことですね。a learned manっていうことです。
これがもし順当にですね、learnにedを付けて実際に発音はdだけ、dだけとなると、a learned manっていうことで弱強強みたいな発音になるんですね。
で、これが絶対悪いってわけではありません。英語にはいくらでもこの弱強強はあるわけなんですけれども、思い出してください。
歴史的にはもともとa learned manというedが読まれたので、これが普通だったんですね。
そしてうまくリズムがいってるとなると、その後縮約してedがdに包まってしまうと、これリズムが悪くなってしまうんですよね。
なので、リズムをより良くしようという発想で、このa learned manという表現がプッシュされたわけではなくて、むしろ悪くならないように元の形、オリジナルデフォルトの形で残ったというふうに考えるんですね。
これでうまくいってたのに、なんでわざわざa learned manという風にリズムを悪くするのかというような理屈です。
多くはこのリズム問題とは別にですね、edはこのeの部分の発音が、母音が消えてdoだけになっていった。
それは事実なんですけれども、もともとがedでこの発音がちゃんと一音節分あったわけで、これを残しておいた方がリズム的に良いという場合ですね。
この場合に残る可能性があったということですね。
実際に残ったのがこのa learned manであり、my aged fatherであり、my beloved sonということです。
このmy beloved sonの場合は、myとbeというのは弱いので、うまくいかないといえば厳密に言えばいかないんですけれども、
my beloved sonという、この部分だけ見るとですね、そこそこリズム強弱強弱ですね。これがうまくいっているという話なんですね。
このリズムというのは、それほど絶対的なルールではなくて、むしろですね、むしろ弱い要因だと思います。比較的。
ただ、弱い要因といってもですね、常にこの英語の歴史を通じてですね、この弱強弱強というリズムは保たれていますので、弱い中でも常にある。
常に存在し続けているという意味では、なかなか影響力のある要因だと思うんですね。
そういう形で、このa learned manであるとか、my beloved sonとか、my aged fatherのようなEDが母音込みでですね、本節としては弱くなるんですが、むしろこの弱音節なんですが、この弱としての役割、位置付けというのをしっかり保っているというところに存在意義がある。
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こういうことなんですね。
そしてですね、このタイプのEDと発音される過去分詞形容詞。
昨日も挙げましたが、改めてリストアップしてみると、このaged, beloved, learnedというのが言いましたが、他にcrooked, dogged, jagged, naked, ragged, wicked, wretchedのように、合わせて2音節になることが多いんですね。
当然最初の音節が強くて、EDの部分が弱く読まれるということなんですが、これらに共通している面白い性質があります。
何かというと、形容詞は形容詞なんですけれども、いわゆる限定用法の形容詞なんです。主にですね。
限定用法ってのはどういうことかというと、つまり後ろに名詞が来るというタイプです。
形容詞にはもう一つですね、叙述用法っていうのがあって、例えばI am ホニャララって付くようなときですね。
文の述語になる場合と、そうではなく、何とか名詞という形で名詞を収束する形容詞ですね。直接すぐ後ろに来る。
これを限定形容詞と言いますが、限定用法の形容詞に実は今挙げたリストアップした単語はですね、特化してるんですね。
後ろに何か名詞が来るってことなんです。大抵名詞っていうのは頭にアクセントがありますので、
Aged, Beloved, Crooked, Dogged, Jagged, Learned, Naked, Ragged, Wicked, Wretchedって言いましたが、これはそれぞれ頭にアクセントが来て、EDの部分が弱い、つまり強弱になりますよね。
その後に名詞、これ強いアクセントが来ることが多いわけですが、強が来るんですよ。
なので、Learned Manというこのタイプになるわけですよね。アクセントの型としてはデンデンデンに乗っかるわけです。
しかもこのデンデンデンの直前には大体これ名詞句ですから、あとかざとかですね。
弱い、ちょっとした漢詩みたいなものが来ることが多いんですよ。弱いですね、これ。
そうすると全体として、弱強弱強っていう風にですね、Learned ManとかMy Aged Fatherのように綺麗に型にはまるっていうことなんですね。
もちろんそうじゃない場合もあるんですが、型にはまりやすいってことです。
この英語の大好きなリズムである弱強弱強にはまりやすいパターンがEDがですね、ちゃんと発音されることによって確保されると、確約されるというケースが確率的に多いってことなんですね。
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これがおそらくEDはですね、本来であればこのEが消えてDに縮約されてしまうようなケース。
他の場合全部そうだったんですが、こういった過去分詞形容詞、EDを持つ過去分詞形容詞に限っては、そして限定用語の過去分詞形容詞に限っては、こうしたリズムが保持されるべくEDというこの母音の発音が保持されたと。
そういう風に考えることができるっていうことなんですね。
EDなのになんでEDみたいに例外的に発音するんだという風に我々は思うわけですけれども、実は歴史的にはもともと発音したわけで、むしろこのデフォルトオリジナルのものを持ち続けているのがこういう表現だっていうことですね。