00:04
スピーカー 2
アイテム番号 SCP-1139-JP オブジェクトクラス 政府 推定 ニュートラライズド
スピーカー 1
特別収容プロトコル
現在、プロジェクト1139-JPは順調に進行中です。
担当職員は引き続き、SCP-1139-JPの発生に注視してください。
SCP-1139-JPの発生を確認した場合は、対処の削除及び関係者への記憶処理を行い、
スピーカー 2
カバーストーリー SCP-1139-JPαを使用した作品を留守してください。
説明
スピーカー 1
SCP-1139-JPは、インターネット上にアップロードされた動画、音源データに発生する異常現象です。
肉声が録音された動画、音源データがアップロードされた際、声質が録音時とは全く別の人物のものに変化します。
変化したデータを以下、対象。
スピーカー 2
この現象は、何らかの過小を録音したデータに発生しており、データが対象となる条件は判明していません。
スピーカー 1
対象を主張した人物、以降、暴露者は対象が歌った曲であると認識します。
しかし、という人物及び、という名義を使用している人物は存在しません。ここが修正されています。
また、対象に付属するテキスト類の記載はなく、対象が何らかの情報障害となっている可能性があります。
スピーカー 2
改変された音声を分析した結果、すべて同一の人物、以降、SCP-1139-JP-Aの音声であることが判明しています。
スピーカー 1
は、SCP-1139-JP-Aを指す名称であると思われます。
スピーカー 2
音声より推測されたSCP-1139-JP-Aの特徴は以下の通りです。
スピーカー 1
アジア系の人種、女性、10代半ばから後半、身長160cm程度、BMI17程度、歌唱に対しある程度の心得がある。
スピーカー 2
対象の音声を聞くと、その内容に関わらず気分の穏やかな高揚がもたらされると報告されています。
スピーカー 1
2006年に動画サイトに投稿された歌唱動画において、初めてSCP-1139-JPが確認されました。
03:07
スピーカー 1
以降、不定期に対象が確認されるようになり、当初は対象の削除及びカバーストーリー、音源データの破損によるピッチ変化等を留付していたものの、
次第にSCP-1139-JPの発生頻度が増加していることを受け、財団日本支部音声研究班との協議の上、
特殊な音声合成ソフトウェアの開発及びそれを用いた新たなカバーストーリーの留付を含む、
スピーカー 2
プロジェクト1139-JPの実行が決定されました。
スピーカー 1
プロジェクト1139-JP
概要
プロジェクト1139-JPは以下の手順によって合成されます。
1.テキストデータを元に音声を合成する
既存ソフトウェア最新バージョンの開発
2.SCP-1139-JP Aに類似した声質を持つ人物の選定、音声の収録
3.可能な限りSCP-1139-JPの声質に近づくよう加工を施し、インストール
4.完成したソフトウェア、SCP-1139-JP Aに指定の一般への留付
5.SCP-1139-JPの発生を確認次第カバーストーリー、SCP-1139-JP Aを使用した作品を留付及び関係者への記憶処理
スピーカー 2
SCP-1139-JPの発生状況に何らかの変化があった場合、プロジェクト1139-JPに変更・推奉が行われます。
スピーカー 1
当時、関連ソフトウェアの研究を行っていた社及び社協力の下でのソフトウェア最新バージョンの開発、研究及びSCP-1139-JP Aに類似した声質を持つ声優の選定に1年間を要しましたが、許容可能期限内にSCP-1139-JP Aが完成しました。
SCP-1139-JP Aへの理想的な性能の付与は達成されていなかったものの、SCP-1139-JPの発生数が緩やかながら二次関数的に増加していた状況、
使用方法次第では理想的な性能を発揮させることが可能だという事実を受け、SCP-1139-JP Aの不完全な状態での発売及び改良の続行が決定されました。
フロント企業を通し、関連企業と半年間の調整を行った後、社製品としてSCP-1139-JP Aが発売されました。
06:09
スピーカー 1
発売直後より、SCP-1139-JP Aは当初の予想を遥かに上回る売上を記録し、プロジェクト1139-JPは計画の数倍のペースで進行しました。
その想定外の普及速度のため、現在は財団流通部門の研究対象となっています。
その経済学的に先例から逸脱した普及に、SCP-1139-JPの異常性が関わっているのではないか、との指摘が存在しますが、
現在、SCP-1139-JP A関連業務が財団フロント企業の重要な収入源となっていることから、SCP-1139-JP A関連業務の継続を妨げるあらゆる試みは許可されません。
使用者によるSCP-1139-JP Aイメージキャラクター以降SCP-1139-JP A1の故障より、プロジェクト1139-JPはプロジェクト1139-JP宇多姫と解消されました。
スピーカー 2
SCP-1139-JP Aの著しい不況により、プロジェクト宇多姫はほぼ達成されたと判断されています。
スピーカー 1
なお、SCP-1139-JP Aの衰退によるSCP-1139-JPの一般への露見の可能性が否定できないことから、SCP-1139-JP A最新バージョンの開発は継続中です。
2000年代、異常性コンピュータープログラムを留守していた時和市の研究施設を操作した際、SCP-1139-JPと関連があると思われる数点の資料が発見されました。
そのうち、何者かの日記と思われるノートの最終ページより、1点のL版写真が発見されています。
病院と思われる施設のベッドに横たわり、点滴を受ける若い女性、以下、SCP-1139-JP A1の写真であり、SCP-1139-JP A1がノートを書いた人物であると思われます。
写真を基にした骨格分析を行ったところ、78.2%の確率で、SCP-1139-JP Aと同一人物であるという結論が出されました。
また、ノートの記述より、SCP-1139-JP A1が生前イベント時に自らの名義としてを使用していたことが明らかになっています。
09:13
スピーカー 1
以下、付属文書1139-JP-82439、ノートより確認された記述の抜粋です。必須ではありませんが、研究状況に応じて参照してください。
付属文書1139-JP-82439を閲覧する。
2000年2月16日。
誰もいない部屋くらいでしか発声テストなんてできないから、個室の入院も意外と悪くないかもしれない。音がずれたら恥ずかしいもん。
でも、エラーみたいな間違いからこのアレンジの方がいいかも、なんて予想外の発見もあったりするから結構大事かも。
スピーカー 2
自分の中から出た選択肢が歌の要素になるなんて、敵じゃない?
スピーカー 1
7月21日。
寮室にいるとなんだか世界が違って見えてくるなぁ。ずいぶん味気ない感じ。
何もない。なんかなぁ、草木一本生えないとまでは言い過ぎだけど、そんな感じ。
スピーカー 2
まだ枯れてない井戸に縋ってるような、この場合井戸ってなんだろう、命?
スピーカー 1
まあ本当は何も変わってないんだから、私の心持ちが変わっただけだよね。なら気分上げてかなきゃ。
こんなの病気が全部治って元通りになるまでなんだから。
それまでほんのちょっと外とバイバイするだけ。簡単な話。
今日も一つ歌が降ってきた。思いついたら歩いてかなきゃ。
入院中に終わらせとけばよかったーってならないようにさ。
こんな状況でもいい感じの祈りの歌にたどり着けるんだから、大したもんよ、私。
この歌はウケる。さあ退院したら忙しいぞ。
7月31日。
この心も体も、記憶や経験で作った自分なんて投げ出して、本当に魂から好きになれる恋ってあるのかな。
どんな風なのか知らないけど。手を繋いだり、キスをしたりしたら、その時だけ少し幼くなってしまうって聞いたけれど、そういうことなのかな。
相手の新しい本当の一面を知って、もっとそばで寄り添いたくなるような、そんな恋。
心の奥底なんかよりもっと深い。
魂から愛し合ってれば、きっと何があっても一緒にいられるんだろうな。
スピーカー 2
一緒に未来を見たいと思えば、きっとそう言葉で約束なんかしなくたって。
スピーカー 1
思うだけで、いつでも笑顔に戻れる魔法になるんだろうな。
12:00
スピーカー 1
そんな魔法にかかりたい。
8月15日。
ずっと窓の外とパソコンだけ見てると、なんだか間違ったことばっかり落とし込まれてる気がしてくる。
自分がいるべき世界とは違う、みたいな。
だから今日もイヤフォンでハイテンポなカラオケ音源聴きながら、走り気味なくらいテンションを上げて歌った。
歌ってる間は周りのいろんなものが薄くなって、空気になじんでくような気がするから。
音のフードをかぶってるみたい。
8月30日。
どうしてずくめの毎日、嫌なことばっか。
どこかにいいことないかな、なんてもう一人の自分に聞いてみる。
自問自答なんだか、多問多答なんだか。
いいことずくめの夢は素敵。
私の頭の中の環境はこんな病室とは全然違って、
想像の私はもっと歌が上手いのはちょっと嫉妬しちゃうけど、羨ましい。
スピーカー 2
最近自分でも心の内で二つに分裂しちゃってやばいなーって、笑うわこんなん。
スピーカー 1
10月14日。
私が最初に歌った歌ってなんだっけ。
私の初めての音は。
細かい発音ができるようになる前から、曖昧な発音で歌っていた気がする。
言葉が言えなくても、理解できなくても、歌は感情を伝えてくれた。
歌ってすごい。
日が過ぎて、年が過ぎて、心が疲れちゃっても、歌に感情を託せば、いつでも帰ってきてくれる。
歌は望めば、初めて歌った時のまま、そのままでいてくれる。
スピーカー 2
歌ってすごい。
スピーカー 1
11月22日。
今日はSCP-1139-JPA-1の友人が似顔絵描いて送ってくれた。
アニメ絵っていうのかな。
すごいなー。
感動しすぎて言葉が見つからないし、数えきれないし、伝えきれないや。
同盟。
うわ、なんでも同じ世界に描いちゃうもんな。
魔法の一筆。
描けない人間からしたらほんと魔法だよ。
スピーカー 2
このページにカラーイラストが1枚挟まっていましたが、SCP-1139-JPA-1の公式ビジュアルと告示していたことは特筆すべきです。
スピーカー 1
12月7日。
やっぱり歌といえば恋愛ソングだよね。
歌いたいなー。感情移入できる経験ないけど。
ショートが好きな人、ロングが好きな人って本当にいるのかな。
誰かに見せるために髪切って、次の日にどうしたの?って聞かれたりとか。
15:02
スピーカー 1
恋をすると目を合わせられなくなるって本当?
恋に落ちる音って歌で表現できるのかな。
とろけるような恋。
スピーカー 2
とろけるってなんだ?
スピーカー 1
12月14日。
この形のない曖昧な気持ちを忘れないように、描写の決まりきったレイアウトを変えた。
些細なことかもしれないけど、そんなちょっとしたことで気分なんて変わっちゃうからね。
いろんな気持ちをちゃんと掴んで、その時になんとなくふっと口ずさんだフレーズはきっと気持ちをよく表現してるはず。
そこに胸の中にある言葉を載せてあげれば、きっと心を余さず表せる。
言うはやすし、なんだけどね。
歌はいろんなバラバラの感情を人がやる以上にうまくつなぎ合わせて一つの流れにしてくれる。
点を線に、線を円にしてまとまった形にしてくれる。
あの頃は何も考えないでずっと何も変わらないって思いながらただただ歌ってたっけな。
何もせずに寝ても同じ朝は誰かがくれるものだろうってさ。
こんなことになるなんて想像してなくて、きっと歌みたいな未来があるんだろうなって。
今晩はきれいな雪が降ってる。ほんの小一時間で街が真っ白になるから不思議。
ホイップクリームを塗りつけたみたい。あるいは光るダイヤ。
あの雪景色の中真っ白い舞台で恋に落ちたら素敵だろうな。
スピーカー 2
スキー場で都合よく出会いはないですか?ダメですか?ロマンスの神様はいないみたいです。
スピーカー 1
冬が来るたびに大人になってく気がする。きっとこの弱い体にも勝ってどんどん思い出と練習を積み重ねて愛も歌えるようになるんだ。
検査の結果は良くなかった。また手術が必要かもって言われてる。
でもさ、窓から吐いた息は白かった。
ちゃんと生きてる。きっと戻れるよね。
4月8日。
歌えない。喉から歌声が出ない。どうして?変な音。まるで音を出す機械が壊れちゃったみたい。
思い通りに歌えないとこんなにつらいなんて。自分の心まで削られてるような気がしてくる。
なんとか歌おうとするだけで息が切れて体が痛くなる。寿命まで削ってるみたい。
いつか全部直してみんなに歌を聴いてもらえる仕事をするんだっていつも思ってたんだけどな。
都合のいい妄想は信じたって現実にはなってくれないのかな。
18:01
スピーカー 1
奇跡を願ってもそんなの無理だってどこかでわかってるから一人で追い詰められるだけなのかな。
スピーカー 2
まだ歌いたいよ。
スピーカー 1
4月22日。
悲しみが壊れて死にそう。どれだけ声を上げても窓から見える星空には響かない。
悲しみがあふれて泣きそう。自分で握った手が驚くほど冷たくて。
はは、私もなかなか詩人だね。
8月22日。
もうダメなのかな。自分の命に片思いしてるなんてちょっと素敵かもね。
もしかしたら体なんか捨てたら少し軽くなるだけかもしれない。
そう、糸をちぎるような感覚でさ。
もう捨てちゃえばいいかって思うんだ。きっと少しだけ痛いけどね。
スピーカー 2
以下、ときわしに対し行った聴書の記録です。
スピーカー 1
インタビュー記録1139 JPA日付2000年代。
対象、ときわし。
実施者、東道研究員かな。
冬の金、冬に、金変に、銅人、自動の銅。
記録開始。
他の事案に関する聴書を行っている。東道研究員。
では、次は私から。
はじめまして、東道と申します。
ときわし、どうも。
東道研究員、これよりSCP-1139-JPについて質問させていただきます。
SCP-1139-JPに関する資料を提示する。
ときわし、
SCP-1139-JP、あなたたちはそう呼んでいるんですね。
東道研究員、あなたは成功事例4と呼称していたそうですが、このオブジェクトを作ったのはあなたですね。
ときわし、作ったと言っては語弊がありますが、まあそんなところです。
私は彼女の手助けをしました。
東道研究員、彼女とはSCP-1139-JP-A1のことですか。
ええ、ハルトリという姓です。
そう呼んであげてください。
彼女は歌が好きで、歌で身を立てることを夢見ていました。
ですが病弱で、ほとんど病院からは出られない毎日でしたね。
東道研究員、ハルトリ氏はすでに亡くなっているという認識でよろしいでしょうか。
ときわし、
ええ、残念ながら16という若さでいってしまいました。
21:03
スピーカー 1
彼女はとても歌が上手で、誰よりも歌を愛していましてね。
スピーカー 2
なんとかして夢を叶えてあげたかったんですよ。
スピーカー 1
東道研究員、我々はSCP-1139-JPについて調査し収容せねばなりません。
そのためにあなたの協力が不可欠であると考えています。
もし協力を得られないならば、我々は法的・倫理的に許容されないある程度の行為をあなたに対し行うことができます。
ときわし、
協力するのは構いません。
ですが残念ながら、あまりお力にはなれないと思いますよ。
東道研究員、なぜですか。
ときわし、
確かに私は彼女に大きく関わっています。あなた方の言う現象にも。
スピーカー 2
しかし、始めた者が終わらせ方も知っているとは限らないじゃないですか。
スピーカー 1
東道研究員、
つまりあなたはSCP-1139-JPの収容方法をご存知ないと。
ときわし、
ええ、それに彼女はもう夢を叶えました。あなた方のおかげでね。
東道研究員、どういう意味でしょうか。
ときわし、
わかるはずですよ。
何にせよ、彼女はもう世界に飛び立ったのです。
もう私の手の届く存在ではない。
記録終了。
聴取後の調査で、2000年代日付不明に亡くなったハルトリという女性の存在が確認されました。
また、すべての聴取が終わった後、ときわしは財団に雇用され、現在は音声研究班所属の研究員を務めています。
2000年。
ときわ研究員の端末より、製作者、製作年月日不明の音声データが確認されました。
SCP-1139-JPαを用い製作されたとみられ、初め、ときわ研究員の関与が疑われたものの、関係を示す証拠は一切発見されませんでした。
スピーカー 2
以下に音声データを添付します。
スピーカー 1
音声データの発見以降、SCP-1139-JPは年間確認されていません。
オンライン、コンピューター、交換、知識、記憶媒体、通信、電子デバイス、音声、添付、音楽、音波のタグが付いています。
注釈が一つ、戦術のSCP-1139-JPαと同一の名称です。
日記に書いているイメージキャラクターの名前ですね。
24:08
スピーカー 1
フフフンミクさんの話かな。
フフフンミクさんの話な気がしますね、これ。
スピーカー 2
16歳とかですよね、確かデビュー、デビューというか設定年齢が。
スピーカー 1
歌姫だし。
2000、何年とかにリリースされたっけな、あれ。
2000年前半ですよね、確かあれね。2004年とか。
その、ボーカロイド系を想起させるのもそうですけど、
最近見たアニメでディーバっていう、ネットフリックスで見たんですけど、
あれもなんか、ちょっとイメージ的に被るというか想起させるSCPでしたね。
あれめちゃくちゃ面白かったので是非見てください。ディーバっていう。
スピーカー 2
DI、あれディーバだっけな、ビーバだっけな。
スピーカー 1
なんかアンドロイドの歌を歌って人を喜ばせるために作られたアンドロイドが、
スピーカー 2
未来から来たサポートAIみたいなのと一緒に世界が崩壊する未来を助けようみたいな話です。
スピーカー 1
めちゃくちゃ説明下手だな。是非見てみてください。
じゃあ久しぶりにちょっと25分超えのSCPでした。また次回お疲れ様です。