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真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと川端です。
真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室では、
水曜日の夜に、ほっとできて明日が楽しみになる、
をテーマに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第167夜を迎えました、今夜のお便りをご紹介します。
ペンネーム、リボンチェロさんからいただきました。
バタやんさん、はじめまして。こんにちは。
こんにちは。先日の、真夜読のセクシー田中さんの件について、
触れた回を聞きました。私もあの件はとてもショックを受けていて、
漫画は未読ですが、ドラマはとても楽しく見ていただけに、
裏でつらい思いをされていたなんて、やるせない気持ちになりました。
バタやんさんは、もっと近いところにいるだけに、
いろんな立場をわかることもあって、言いづらいこともあったでしょうが、
言葉にしてくださって、ありがたかったです。
私は、ドラマや映画で知って、原作も読んでみようかと、
作家さんを知ることも多いです。読んでみようと思うだけで、
つい忘れてしまって、読めないことが多いですが、
ああ、わかりますよ。さて、バタやんさんは、
映画やドラマを見て、原作を読んでみようと思った作品はありました。
また、最近よかったものがあれば、教えてください。
と、いただきました。ありがとうございます。
そうですね、いっぱいありますよ。
そして、私も原作も読んでみようって、
すごい映画館を出たときは思うのに、思って読まないこともありますし、
もともとだいぶ前に原作を読んでて、
映画を見て、読み返そうって思うんだけど、
それをまたちょっと忘れちゃったりして、っていうのも結構ありますね。
今、原作を、映画を見てから原作を読んでみようと思っていながら、
まだ読んでない作品は、
あわれなるものたちです。
エマーストーンの映画って、めちゃくちゃよかったんですよ。
でも、原作も面白そうだなと思って、
ただ、まだ買ってないです。
さて、今夜の勝手に貸し出しカードは、
町田園子さんの52Hzのクジラたちにしました。
こちらは、ちょうど3月、今月から映画が公開になったばかりです。
私も見てきました、早速。
原作はですね、2021年に本屋大賞を受賞してまして、
その候補作になったタイミングで、実は読んでるんですね、私。
映画すごくよかったから、
もしまだリモンチェロさんが原作をお読みになってないようでしたら、
先に映画を見て、原作を後から、今は文庫になっているんで、
そちらをお求めになってはいかがかなと思って、
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今日ピックアップしました。
さて、では52Hzのクジラたちがどんな物語なのか、
そして、まだ未読でしたら、
私が映画ファーストを勧める理由を解説していきたいと思います。
52Hzのクジラたちの小説の始まりは、
主人公の女性三島紀子が東京から田舎の港町に移り住んで、
祖母の暮らした古い一軒家を修繕しながら暮らし始めたところから始まるんですね。
そこで母親から虫を回りされて虐待されている少年と出会うんです。
最初は髪が長くて少女かなって思うんですけど、
後に少年だってことが分かります。
東京から若い20代の女性が一人で移り住んできたってことで、
なんか訳ありなんじゃないかと町の人たちに思われるわけですよ。
家の修繕、リフォームに来た公務店の大工のお兄ちゃんたちが、
風俗で働いてたんじゃないかとか、
ヤクザに追われてるんじゃないかとか、
みんな勝手に町の人が噂してるっていうのをこぼしちゃうんですけども、
貴公はお腹に傷跡があって、噂半分外れてて半分当たってるみたいなところがありまして、
彼女はさて過去に何があって、なんで東京を飛び出して、
大分の町だったかな、祖母の古い家に来たのかっていうことで、
時系列がそこから遡るんですね。
小説では風俗やってたのかって天気を聞くみたいに、
大工のお兄ちゃんに聞かれて、
貴公が男の人をパチンと平手打ちするっていうところから始まるんですよね。
それを読んで、今回映画化されて、
貴公の役を杉崎花さんがやるって発表になった時に、
杉崎花さんだとちょっと清潔感がありすぎるっていうか、
いい子そうじゃないですか、じゃないかなってちょっと思ったんですよね。
あの女絶対訳ありだろうとか、
ヤクザに追われてるんじゃないかとか、噂されそうにないと言いますか、
杉崎さんの雰囲気的に、なんかいきなり平手打ちとかしなそうだしって、
ちょっと心配してたんですけど、
でもその口数は少ないんだけど、
そしていい子そうだけど、何かとんでもないことをやらかしてそうでもあるというか、
暗いバックグラウンドがあって、
その危うさだったり、いい子で痛い上の危なっかしさとか、
そういう雰囲気がすごく出ていて、
結果的に杉崎花さんでしかありえない貴公でした。
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貴公の過去に何があって、お腹の傷はどうしてっていうところは、
ちょっとあまり詳しく言わずにおこうと思うんですけれども、
貴公自身もネグレクトや虐待を受けてたり、
ヤングケアラーだったり、救いの手を差し伸べてくれる周りの出会う人たちも、
それぞれに痛みを抱えてたりするんですよ。
特に家族との関係における痛みかな。
私、この町田園子さんの52Hzのクチラたちは、
本屋大賞候補作として読んだというふうに言ったんですけどね、
本屋大賞の候補作をその年全部読むっていう、
身漏れの企画で確か読んだんですよ。
町田園子さんの作品を読むのも初めてだったし、
買うときもあんまりあらすじとかちゃんと調べずに買って読み始めたわけなんです。
この本、表紙が単行本の表紙、結構可愛らしい、
メルヘンチックというかイラストの表紙で絵本みたいな感じなんですよ。
その想定の印象から何か心温まるフランタジーかなって、
勝手に思い込んで読んだんですね。
そしたらすごいヘビーな話で面食らったっていうのが正直なところで、
びっくりしたんですよね。
受け止めきれなかったんだったと思います。
心の準備ができていなかった虐待の話、
介護の話、トランスジェンダーのこと、結婚が破綻になったり、
やっと救い出されそうになって、抜け出せそうになって、
また負の連鎖から逃れられないみたいなことだったりね。
キコちゃんも少年もそんなつらい思いよっていうのが次々とやってきまして、
最初に小説を読み終えたときは消化しきれなかったんですね。
すごい小説だって思ったけど、
心が動かされすぎてつらかったっていうのが私の正直な感想でしたね。
心の準備ができていなかったというか、
ちゃんと調べてから読めばよかったとか、
咀嚼するだけの自分のキャパシティが足りなかったのかもしれないんですけどね。
そんな中でも映画化されて映画を見てよかったなって思った点は、
この時系列が行ったり来たりするところも割とすっきりと分かりやすく整理をされていましたし、
もちろん2時間余りに入れるために削ぎ落とされちゃったところもあるんですけど、
その分すっとそれぞれの主人公の心の動きだったり、
気持ちみたいなところが受け取りやすくなっていたように感じました。
あと何より杉崎花さんとしそんじゅんさんがいいなと思ったんですけど、
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主人公の2人の演技が素晴らしいの一言に尽きるのと、
紀子の友達役は小野佳林ちゃんがやってるんですけど、
彼女の明るさ、明るい演技に救われるところがありましたね。
あと物語の中では悪役になるんですけども、憎まれ役っていうか、
紀子の恋人になる御蔵子を宮沢博さんがやっていて、
少年を虐待する若いお母さん西野七瀬さんが、
トランスの子供を持った母親役を陽木美子さんがそれぞれ演じているんですね。
ちょっと原作のイメージからすると綺麗すぎないかなって思うところもありましたけれども、
それによって悪役って思ってた人たちもそれぞれに苦悩することがあって、
そうせざるを得ない、そう思わされていた被害者というか背景があったんだなっていうふうに思わせる人間っぽさを感じて、
そこにも救われましたかね。
あと実際に52Hzなのかどうかわからないですけども、
その鯨の声というか鯨の鳴き声、音として聞けたのも良かったですね。
映画になる甲斐があるなって思いました。
さて今日はそんな52Hzの鯨たちより紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
暑い中の作業は大変だろうと、こまめに冷たい飲み物を出し、
お茶菓子まで用意して心配りした依頼主に何て言うぐさだろうか。
とありまして、この先ほどご紹介した冒頭のシーンなんですけど、
公務店のお兄ちゃんたちにお茶菓子出したり、冷たいメロンも出してやったのにとか、
物草で心の中で毒付くんですよ。
そういうところがすごくいいなと思って。
そのお腹に傷があることも、町の病院に行ったせいでみんなが知ってるっていうのも、
個人情報がダダ漏れっていうことにムカついたりしていて、
そういうふうに貴公はただかわいそうなヒロインっていう感じじゃなくて、
人間味があって、加害者、被害者っていう線引きじゃない描き方もすごくいいなと思いましたし、
杉崎さんが貴公を演じるにあたって、貴公も無意識に人を傷つけてるっていう話をされていて、
すごいなって思いましたね。
杉崎さんがアカデミー賞の主演女優賞から上がってた映画、
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イチコは見てなかったんですけど、イチコも見なくっちゃと思いました。
というわけで、52Hzのクジラたちは、暗い話は苦手だなっていう人も、
映画はぜひ見てほしいですし、小説の方も結構ユーモラスなところもあってですね、
私はこの本を読んだ後に町田園子さんにすごくハマって、
あなたはここにいなくともが最近読みましたが、夜空に泳ぐチョコレートグラミーは文庫で読んですごく良かったですね。
どれも優しいタッチの表紙やタイトルにもう騙されないぞっていう、
暗いところにグッと引き込まれてしまうから、覚悟を持って読めるようになったからもう大丈夫です。
もう大丈夫ってなんだよって感じですけど、
そのビターさとビター寄りの優しさみたいな加減はすごく好きな感じで、これからも楽しみだなと思っています。
リモチェロスさんもよかったらぜひ見てみてください。
リクエストありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
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それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。