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2023-07-19 13:05

アイドルと性的消費問題。一番星たちの”闇”さえ最強の……!?

今夜の勝手に貸出カードは、児玉雨子さんの『##NAME##』(ネイム)です。←芥川賞候補作品 
かつてジュニアアイドルをやっていた女性が主人公の小説。いま何かと話題の「アイドル」の世界の本当の”闇”深い消費とは?

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真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと川端です。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、
水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに
おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第141夜を迎えました。今夜のお便りご紹介します。
ももこさんからいただきました。
バタやんさん、はじめまして。
はじめまして。いつも楽しく拝聴しています。
私は、かれこれ20年以上女性アイドルグループのファンを続けているのですが、
最近気になる男性アイドルグループが出てきました。
曲やグループの雰囲気が素敵で応援したい気持ちになっているのですが、
初めての異性アイドルということで、
無意識に性を消費してしまう立場になってしまうのではないかという不安があり、
一歩を踏み出せません。
近年、女性アイドルについては、性を消費しないことについて
アイドル本人やその周囲、ファンも意識する場面が増えてきているように思いますが、
男性アイドルについては、まだその意識が広まっていないように感じます。
男の子の子供がいる立場なのもあり、これをきっかけに一度しっかり考えてみたいのですが、
おすすめの本があればぜひ教えていただきたいです。
といただきました。
ありがとうございます。
興味深い、そしてホットなテーマですね。
私も女性アイドルグループがわりと好きなので、いろんなグループを追いかけていますけれども、
男性アイドルグループは実は一度も追いかけたことがないですね。
今日そんな桃子さんにおすすめしたい、今夜の勝手に貸し出しカードは、
こだまあめこさんのネイムにしました。
音にするとネイムですが、表記はシャープシャープ、NAME、シャープシャープと書きます。
今回の芥川賞候補作になっていまして、川手書房新書さんの文芸誌、文芸に掲載されていました。
単行本が7月15日発売とあるので、
今日あたりから全国の書店さんにどんと並び始めているのではないでしょうか。
そんなこだまあめこさんはですね、モーニング娘。とかアンジュルムの歌詞を書いていらっしゃる作詞家さんで、
小説は誰にも奪われたくないという小説を以前にこのポッドキャストでもご紹介したことがあります。
今回ご紹介するネイムは、かつてジュニアアイドルをやっていた女性が主人公なんですけれども、
どんな小説なのか、そしてネイムというタイトルの意味を解説していきたいと思います。
小説ネイムは冒頭から情報量が多くてぐっと引き込まれて、
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本屋さんで立ち読みしたんですけど、これは面白そうだと思ってすぐ買った本です。
こういうことを書いていこう、これに切り込んでいこうとする小説なんだなって、
剣を突きつけられる感じの冒頭でした。
主人公の刹那がミサノちゃんっていう同じ事務所に所属する女の子からニップレスを渡されるシーンから始まるんですね。
ハウススタジオのメイクルーム的なとこですかね。
どうやらスクール水着の上から制服を着て何か撮影をするっぽいんですよ。
そのミサノちゃんが私、刹那に台形の面積の公式を聞いてくるんですよね。
そのニップレスを渡しながら、そんな冒頭から始まります。
つまりニップレスっていう乳首を隠すものを貼らないといけないような撮影をするってことと、
台形の面積を求める公式を習うような年齢なんだっていうギャップがね、
台形って何歳で習うんだっけ?と思いを巡らせていると、
ミサノちゃんは自分のことミサノバカだからって何度も言うシーンが出てくるんですけど、
だから本当に台形の面積を習う年齢なのかわかんないなって思うんですよね、読者の私は。
すごい一気にいろんなことを考えさせられる冒頭でした。
中学受験がっていう描写が出てくるから、あ、そうか多分小学生なんだなと。
小学生、小学校の高学年かな。
ミサノちゃんはポーズを取ったりするのがうまいっぽいんですよ。
無邪気にプールではしゃいで見せる。
暑いからアイスキャンディ食べようよってスタッフさんから渡されてアイスキャンディを加える。
その間もシャッターがパシャパシャと切られていて、
そういうのもどういうメタファーかどういう意味か後々わかるのか、
もうわかってる年齢なのかわかんないくらいの年ですね。
でも小学校、高学年でビニールプールにそんなにはしゃぐかなって思ったりもするし、
ミサノちゃんはバカなフリをしているだけなのかもしれないとかね、
いろいろ考えちゃいますが、そういうふうにはっきりは書かれていて、
ギリギリ闇っぽくも見せないところがこの小説のうまいところというか、
楽しげな撮影の様子が淡々と書かれているだけなんですね。
生きたい学校の制服と似ている制服を着れるとか、
純粋にこの主人公の楽しそう、嬉しそうではあったりして、
この刹那ちゃんが目薬を挿すんですけど、
その時さっとメイクさんが綿棒を挿して、
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アイラインとかも書いているのかもしれないですよね。
その目薬でメイクが崩れちゃわないように、
メイクさんがそうやって綿棒でちょんちょんと直してくれるっていうシーンだと思うんですけど、
小学生の隣の子供たちに、
メイクさんが目薬を挿すんですけど、
その時、さっとメイクさんが綿棒でこぼれ落ちる目薬をちょんちょんと脱ぐシーンがあるんですが、
こういうとこううまいなーって思いましたね。
小学生の撮影だけど、
そうやってアイメイクしてるんだなーみたいなことに、
私はそりゃそうかって思ったけど、
そういうアイドル、ジュニアアイドル、
子供、無邪気、無垢な、みたいなものを切り取る撮影をするのに、
めちゃくちゃ大人の手が入ってるわけですよね、撮影って。
そういうところをさらっと書いてくるのは、
小玉さんがアイドルと近しいところで働いてらっしゃるからかもしれないなと思ったりしました。
そんなところから話は展開していって、
せつなちゃん、主人公は少年漫画の夢小説にハマって、
ネットで熱心に読んで、ファンと交流したりしてんですね。
夢小説ってどんなものかと簡単に言いますと、
二次創作的なものが多いと思うんですが、
登場する人物の名前を好きな名前、自分の名前とかに変換して読める小説、創作小説のことですね。
大抵は人気のアニメとか漫画とか、元になってる作品があったり、
実在のアイドルを題材にしてたり、生物って言ったりしますけど、
そのネーム、シャープシャープ、NAMEシャープシャープってなってるところに自分の名前を入れると、
例えば漫画ワンピースとかジャニーズのあるグループとかのメンバーの一員になったかのようにやりとりしている風に読めるっていう、
それを楽しむ小説ですね。
せつなちゃんは夢小説にハマってるんですけど、
名前を空欄のまま読んでいる、それがNAMEというタイトルの由来になっているわけです。
そういう実在のアイドルを二次創作的にして、そこに自分の名前を入れたり、
ある別のメンバーの名前を入れたりして楽しむ生物とか夢小説とかっていうのは気持ち悪いっていう人もいて、
好きな作品のキャラクターや現実のアイドルを、つまり桃子さんもおっしゃるように性的に消費している感があるからですかね、
一定の嫌悪感を持つ人も多いのが夢小説、生物のジャンルじゃないかなと思ったりします。
夢小説に自分の名前を入れずに読んでいるっていうこの主人公の一定の距離感を保ちたい気持ちとか、
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消費した後に残る虚しさみたいな感情と、名前と本人のアイデンティティーがこの本の核心にあたるところだと思うので、
この先はぜひ読んでからということであまり言わないでおきたいと思いますが、
ジニアアイドル時代に撮った水着の写真、せつなちゃんのね、小学生の時の写真が後々出てきちゃうんですよ。
バイトをするにしても就活するにしても、そういうことを通じていろいろ考えさせられる小説ですね。
本人がどのくらい自覚してやってたか、そういう写真撮られたりするの楽しいぐらいの気持ちはもちろんあったでしょうけど、
その後々まで残る影響までは多分考えていなかったでしょうし、
この母親との関係もなかなか読みどころがある小説なんです。
今日はこのネイムから紙フレーズをご紹介したいと思います。
また闇だ。自分の知らなかった領域やそこにいる人々に出くわした時の手に負えない現実を見切る時の呪文であり、
未知に遭遇した興奮にはしゃぐ時の掛け声のようで好きじゃない。
闇が深い。すごい闇。貧困の闇。業界の闇。児童ポルノの闇。どちらとも呼べない闇。
と行き通ったり哀れむような表情を浮かべたりしながら、割引シールを貼られた高い存在を見つけるように探している。
とあります。
このアイドルたちの被写体としてもてはやされる子たちのキラキラとした光を摂取するだけじゃなくて、
そこにある闇も美味しいネタというか、探していた存在が安くなっているのを見つけた時のような興奮、高揚感を持って、
学校の話題の種としてコンテンツ消費する感じについて、こんなにストレートに書いた文章はなかなかないなと思って、
今読むべき小説の一つかなと思いました。
今世界的に大ヒットしている夜遊びのアイドルという曲にも、センターを張る一番星の子がいれば、そうじゃない脇役Bの子がいて、
脇役Bの子は一番星の子に屈折した感情を持っているはずだって、そこもまたアイドルに物語性を生む光と影のお決まりみたいな、
皮肉っている歌詞なんだと思うんですけど、やや地味で売れない刹那ちゃんと花のある雪野ちゃんは、
雪野ちゃんに対して嫉妬しているはずっていう決めつけとか、アイドルには闇があるはずっていう決めつけにNOを言う小説でもあると読みました。
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一方で、先ほど言ったアイドルと母親にも注目して読めるので、桃香さんもよかったらぜひお読みになってみてください。
感想も伺いたい小説でした。
今日はリクエストありがとうございました。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
さて、今夜もお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は、リスナーの方からのお便りをもとにおすすめの本や漫画をご紹介しています。
インスタグラムバタヨムからメッセージをお寄せください。
それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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