00:03
真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。こんばんは、KODANSHAのバタやんこと河童です。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるをテーマにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
こんばんは、今夜はこの小説がすごかったベストブック2023発表の後編です。
2022年12月から2023年の12月24日までに刊行された新刊小説の中から、ベスト5を勝手に選出して発表するというものです。
今日は前振りなしで、早速2位と1位の発表に参りましょう。
2023年バタやんのベストブック第2位は、桐野夏夫さんの【真珠とダイヤモンド】です。
こちらは今年の2月に刊行された上下巻の長編小説となっています。
バブル期の証券会社を舞台に、お金に翻弄され追い詰められて社会から逸脱していく2人の女性の人生を描いた小説です。
詳しいあらすじは3月15日の放送会でご紹介しているので、ぜひ合わせて聞いていただけたらと思います。
この小説は株とかあまり興味ないなとか、バブル期って縁ないしみたいな人ほど読んでほしいなと思いますし、
最近長い小説全然読めてないんだよねっていう人にこそお勧めしたいです。
そしてそして、ぜひ上下巻セットで買うか借りるかしてください。下巻が手元にないまま上巻を読み終わっちゃうと本当に後悔します。
キリノ夏夫さんはヒロインに対して容赦ないっていうか、上下巻あると上巻で大事に大事に育ててきたヒロインを後半でガシャンってやる残酷さがすごいなと、手加減がないなって思いましたね。
キリノさんは今年この作品で作家30周年だそうなんですね。
顔に降りかかる雨でロガーランポションを取ってから毎年毎年途切れることなく渾身の長編を作り続けていて、すごいなと思います。
渾身の一撃って渾身の改作みたいなのって一生に何回かしか出せないやつなんじゃないのと思いますけどね。
一作品作品パンチの重み、パンチ力の重みがすごいなと思いますね。
ちょっとこの真珠とダイヤモンドについてはもう少しお話ししたいんですけれども、先に1位の発表に行きたいと思います。
共通点も多いので合わせてお話ししたいと思います。
03:08
2023年この小説がすごかったベストブック第1位は川上美恵子さんの黄色い家です。
主人公の花がネット記事で60歳の女性が捕まったっていうニュースを見つけるところから始まるこの小説は一冊で上下間に分かれることなく600ページ以上もありまして、
ずっしりと重たくて、まっきっきの掴んだらペンキが手につきそうな表紙もインパクトがあって、手強そうって思わせる一冊なんですけれども、
これまた一気読みなので時間に余裕があるときに読み始めてください。
ざっくりストーリーをお話しすると、主人公の花という少女がキミコさんという女性と出会って、家を出て疑似家族のような生活を送りながら、
お金に困って犯罪行為に手を染めていきっていう20年ほどを描いた小説になっています。
クライム小説でありノワール小説なんですけれども、お金がないってこうも人を狂わせるのかっていう頑張り屋さんでまっすぐな少女が、
良くも悪くもたくましく成長していって、悪い方へまっすぐ突き進んでいってしまうという話なんですね。
残酷な話ではありますが、どこか温かみがあるのは川上さんの独特の文体というか、
文体的にもひらがなが程よく配置されていて、漢字とひらがなのバランスがすごくいいんですよね。
だからグングン読めるんだと思う。難しい言葉が出てこないのは、花があまり額のあるタイプの主人公ではないからって川上さんがどっかのインタビューで答えてらっしゃいましたが、
優しい言葉で書かれた悲しいお話ほど胸に刺さるものはありませんね。
キリノ夏夫さんは真珠とダイヤモンドについてあるインタビューで、苦しい状況にある女性をずっと書いていきたいし、これは一線を越えてしまったなという瞬間のある人物を書いていきたいと、
やむにやまれず苦しい状況に追い込まれる人物のことをもっともっと書いていきたいっていうようなことをおっしゃっていて、
キリノさんと川上さんは世代も違うしアプローチも違いますけれども、同じようなテーマを自分の命題として抱えてらっしゃるのかなと思いました。
やむにやまれず苦しい状況に追い込まれて、これは一線を越えてしまったなっていう瞬間がある話が好きなんですね。私もきっとそういう小説ばかりご紹介しているような気がします。
ホムラヒロシさんも大好きなんですけど、ホムラヒロシさんの鳥肌がっていうエッセイ集がありまして、そこに出てくるホムラさんの友人は電車のホームの列の先頭に立たないっていう話をしていて、
06:03
それは後ろから押されちゃったら落ちちゃうのが怖いからっていう理由なんですが、私も電車のホームで電車を待つとき一番前に立たないようにしてて、それは押されたら怖いからじゃなくて、ふって自分が一線を越えちゃいそうな黄色い展示ブロックを越えちゃいそうな気がして怖いからなんですよね。
いつも死にたいと思っているとかいうことでは全然ないんですけど、越えようと思ったら越えられちゃうっていう状況が怖いと言いますか、一線を越えないのは今日の仕事がしんどい予定が多いけれども、少しだけ楽しみな予定もあったり、家族との思い出があったり、大事な人からの嬉しい一言があったり、
あと人生に猶予をもたらしてくれるだけのお金はあるからっていうことですかね。それらの一つでも欠落したらいつでも一線を越えるかもしれないっていう怖さはあるんですよね。
というわけで、フィクションの世界に没頭して、フィクションだったってほっとするっていうところがあるのかもしれません。
さて、今日は1位に輝いた黄色い家から再び神フレーズをご紹介して、今年最後の配信を終わりたいと思います。
誰だってみんな金が必要で、だからこそ汗水垂らして働いているのだと。でも私は半笑いで言ってやりたかった。私も汗水を垂らしていますよと。
誰の汗水がいい汗水で、誰の汗水が悪い汗水なのかを決めることのできるあなたは、一体どこでその汗水をかいているんですか。
多分とても素敵な場所なんだろうね。よかったら今度、生き方を教えてくださいよとあります。
この歌手はですね、前回黄色い家をご紹介した時に神フレーズとして読んだ歌手の続きなんですね。
その前、前回ご紹介したのはこちらでしょうか。
金はいろんな猶予をくれる。考えるための猶予。眠るための猶予。病気になる猶予。何かを待つための猶予。というところを読みました。
この素敵な場所を教えてくださいよっていう素敵な場所っていうところで、真珠とダイヤモンドに出てくる餅月っていうヒロインの旦那さんなんですけど、
その旦那さんが働いている証券会社のことを思い浮かべたんですよね。
餅月も花ちゃんも汗水垂らして一生懸命働いていただけなのに、どうしてこうなっちゃったんだろうっていうね。
私は割と小説を並行して何冊か同時に読んだりするので、こうしてこういろんな小説が行き来して混ざったりすることがあるんですけれども、
09:04
この素敵な場所っていうのがバブル期の証券会社みたいなことをちょっと思ったりもしました。
現実の方の話にちょっと話を戻しますけれども、今年の日本はジャニーズに始まって宝塚とかビッグモーターとか日大とか、最近は芸人さんとか、
いろんなことが露呈した1年で、私自身の周りも含めて何かいろいろ考えることの多かった1年だったんですね。
みんなきっと一人一人は汗水垂らして一生懸命頑張っているのに、汗水垂らして一生懸命頑張りたいだけなのに、どうしてそうなっちゃったんだろうっていうことを考えることが多い1年でしたね。
今年はいろんな海が出て、来年は良い方向に少しずつ良くなっているって実感できる年になるといいなと思います。
さてさて、1年間お付き合いいただきありがとうございました。
たくさんのメッセージもリクエストをご紹介しきれてないですが、来年もいろんな本をご紹介していきたいなと思っていますので、引き続きよろしくお願いします。
良いお年をお迎えくださいね。
さて、今夜もお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、リスナーの皆さんからのお便りをもとにおすすめの本を紹介しています。
メッセージはインスタグラムのバタヨムから受け付けておりますので、ぜひお送りください。
それではまた来週、また来年、水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみー。