2024-05-21 25:26

25. 日本の部活動の地域移行(前編) : どうして地域移行が進んでいる?

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■話の流れ

教員の働き方 / 勤務時間 / 勤務時間の内訳 / 教員の勤務時間の中での悩み / 部活の地域移行について / 海外の部活動の在り方


■参考リンク

文部科学省:教員勤務実態調査(2022年度)

https://www.mext.go.jp/content/20230428-mxt_zaimu01-000029160_1.pdf


ベネッセ総合研究所:教員の勤務時間(2016年)

https://berd.benesse.jp/up_images/research/Sido_SYOTYU_05.pdf


運動部活動の地域移行について

https://www.mext.go.jp/content/20220727-mxt_kyoiku02-000023590_2-1.pdf


■今週の1冊

冒険の書 AI時代のアンラーニング

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サマリー

今回と次回のエピソードでは、日本の部活動と地域移行について話しています。前半では、学校の働き方や現状を複数のデータを用いながら検討しています。後半では、他国の例も交えながら、学校の部活の現状について話を展開しています。地域移行により、部活動の先輩後輩の関係が緩やかになりつつも、大人との関わりを通じて人間関係を広げ、学校の部活動の目的である人間形成につながっていくことを改めて感じます。

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Audio Japan 〜あなたと一緒に日本を学ぶ〜。この番組は、日本の文化やトレンド、マニアックな情報などを掘り下げて楽しく学んでいく、そんな番組です。
英語で聞きたい方は、Audio Japan Learning Japan with you よりお聞きください。
パーソナリティーの Arai Taiki です。よろしくお願いします。
ゴールデンウィークが明けてから2週間ほど経ちましたね。
いやー、まじでここから7月中旬くらいにある海の日くらいまではですね、淡々とした日常になる気がしています。
新生活にも慣れて、どうしてもだれる時期かもしれないのですが、やると決めたことをコツコツやっていくのが一番いいのかなと感じています。
私、Arai Taiki も、やると決めたことを淡々と続けている今日この頃です。
ただですね、このポッドキャストは先週1週間スキップしちゃったんですよね。
お前何言ってんだよって思うかもしれないのですが、今週もやっていきたいなと思います。
今回と次回、2回に分けて日本の部活動と地域移行について話をしていきます。
これを聞いているあなたは、2023年度から3年かけて、学校で管轄している部活を地域に移行していくことを知っていますかね。
そこで今回は、部活動が地域に移行している背景について掘り下げていきます。
前半部分では、複数のデータを用いながら、学校の働き方ですとか現状について見ていきます。
後半部分では、他国の例も交えながら、学校の部活の現状について話を展開していきます。
エンディングでは、最近読んだ本の中でおすすめしたい一冊を紹介していきます。
どうぞ最後まで楽しんでくださいね。
学校の働き方と現状
では、はじめに公立学校で働いている先生について、全体的な話から共有していきたいなと思います。
中学校の教員の労働時間に関して、文部科学省が出している教員勤務実態調査2022年度によりますと、
2016年度と比較して、すべての職種で勤務時間は1時間程度減ったものの、校長は10時間10分、教頭は11時間42分、
教員は11時間1分という結果でした。
朝の会が8時から始まる学校ですと、7時過ぎには学校に着いて、18時から19時頃に退勤という生活ですね。
仮にですね、この勤務時間を会社勤めで置き換えてみると、
ほぼ毎日2時間から3時間残業しているってことですよね。
月20日勤務だとすると、60時間残業していることになるのですが、教員はですね、残業代が出ません。
基本給の4%分を教職調整額として一律に上乗せ支給されることになりますので、
言い方は少し悪くなるかもにはなるのですが、
定額働かせ放題という言葉が最近ニュースでも出てきたように、
いくらでも残業させようと思えれば残業させられるってことですよね。
いやー恐ろしいなと思いましたね。
次に勤務時間、今述べたのですが、その内訳はどうなっているのか気になりますよね。
内訳で多くを占めているのは、自分で授業を回すのが3時間16分、授業準備で1時間23分、
生徒指導で54分、丸付けや採点を行う成績処理で36分となっております。
それ以外にも項目としては、学校行事、学級や学年の運営、職員会議、事務対応、
保護者、PTA対応、あるいは研修など多岐にわたっております。
それぞれの項目で5分から10分程度だったとしても、
調査でとっている期間は、2022年の8月、10月、11月のうち連続する7日間について調査したものでありますので、
年度始めや年度終わりはもっとバタバタしていますね。
ここから部活動の話に移っていきますと、
部活動の現状
勤務時間における部活動の時間というのは、2016年度は平日41分、休日は2時間9分だったのに対し、
2022年度は平日37分、休日は1時間29分という結果でした。
平日はそこまで変わらずなのですが、休日は30分以上減少していますね。
部活動の週あたりの活動日数は、2016年度ですと週に6日以上が64.3%だったのに対し、
2022年度は6.7%になっています。
この値がかなり減少しまして、その分、週に4日の割合が19.5%、週に5日が56.1%となっています。
これはちょっとうろ覚えになるのですが、
昨今の部活動は週に2回活動を休ませる必要がありまして、
そのうち少なくとも1日は休日に活動をやらないことが決まっていたと思います。
私が中学生の時は2007年から2010年だったのですが、
その時は基本週に1回休みで、1回あたりの練習は平日1時間半から2時間、
休日ですと2時間から長い時だと3時間とか、県の合同練習の時とかですと1日2日くらいやっていました。
当時は体育の先生が顧問をしていたので、他の国語や数学、英語といった教科と比べると、
事前準備はそこまで必要ないと予想できますので、それくらい時間をかけることができていたのかもしれません。
陸上に打ち込みたかった自分からすると、今思うとありがたい環境だったなと思います。
当時はなかなか練習きつかったんですけどね。
では教員の稼働時間の中で悩みの項目として上がっているものを見ていきますと、
ちょっと古いデータとはなるのですが、ベネッセ総合教育研究所が出しているものによりますと、
教員の仕事における悩みは、2010年も2016年も教材準備の時間が十分に取れない、作成しなければならない事務書類が多い、
教育行政が学校現場の状況を把握していないなどが上位に出てきました。
また、部活動による指導を少なくしたいと考える教員の割合としては6割ほどでした。
25歳以下の先生で部活動に積極的に取り組みたいと答えた割合は全体の52.8%に対して、年齢が上がるにつれてその割合は減少しているという結果になりました。
これはデータを見た時の私なりの仮説を浮かんだことになるのですが、
20代から30代ですと、体力もあって部活動を通じて生徒と積極的にコミュニケーションを図ったり、
競技力の向上やチームでまとまって活動するなど、学力以外の力を養ったりすることができるから積極的に活動した人が一定数いるのかなと推測しましたね。
その一方で、年を重ねるにつれて学年主任ですとか、業務主任などの役職、あるいは自身の家族のことなど、いろいろな意味で抱えるものが多くなったり、
体力の衰えなどを通じて積極的に活動したいと思わない人がちょこちょこ増えてきているのかなと推測しました。
他には、データを見たときに別の切り口で2つ浮かんできました。
1つ目は、教科を専門的に掘り下げたい層が浮かんできました。
英語教育に力を入れているですとか、理系科目を重点的にやりたいなどが挙げられます。
そういった層からすると、ただでさえ日々の業務で教材研究に時間を当てたくても当てられないのに、部活動が入ってしまうと、休日に何とか時間を年出してやっと研究できるのかなと思いました。
ただ、部活動の担当を持っているとなると、週末に大会ですとか練習試合があれば、生徒の引率、見守りなどで日中の時間がほぼなくなることが予想されます。
自分の時間がなかなか取れないってかなりきついなと思いましたね。
うーん、一体いつ休めるんだって感じですね。はい。
もう一つは、自分の担当以外の部活動になる場合が挙げられますね。
中学・高校とバレーボールを経験していたのに、学校で部活動を教えるときはサッカーとか野球になってしまうと、スポーツは好きではあるものの、専門的なことを教えるとなると、慣れるまでは大変そうだなと感じました。
私のように考えるのが好きだったり、教えるのが好きな人は、一からやるでも楽しいかもしれないのですが、教えること自体に力を入れたいと思わない人からすると、最初と最後だけ挨拶しに来て、それ以外は生徒主体でやってもらうしかないのかなと。
一方、生徒からすれば、仮に自分たちで考えてやってと言われたとしても、何をどうやってやればいいのかわからない生徒もいるのかなと思います。
考えてやるにしても、そもそもの考え方であったり、振り返りの仕方など、ハウを教えてできるようにならないと、それはある種、自由ではなくて放置に値しそうだなと感じましたね。
私も陸上をしていたときは、顧問の先生が長距離の経験者だったということもありまして、先生のいう練習メニューを黙々とこなして続けたからこそ、タイムが伸びたのかなと思います。
ここまでが学校の働き方ですとか、現状に関する内容となります。
ここから、部活動の地域移行について話をしていきます。
部活動の地域移行
部活動の地域移行について定義しておきますと、これまで中学校・高校の教員が担ってきた部活動の指導を、地域のクラブや団体などに移行していくことを指します。
具体的には、スポーツ庁と文化庁が2022年12月に策定したガイドラインに基づきまして、まずは2023年度から3年間かけて、公立中学校の休日の運動部の部活動を優先して、段階的に地域へと移行していきます。
運営方法としては主に2つありまして、1つ目は外部人材取り込み型、2つ目は外部団体受け皿型となります。
前者は運営主体が学校のままで、部活の時間に外部の人に来てもらって、専門的な指導などをお願いする。
後者は運営主体が外部で、専門的な指導はもちろん、何か怪我などがあったときは、その責任の所在が運営団体となります。
例えば、地域のスポーツクラブですとか、ヒットネスクラブ、あるいは株式会社などが担っていくことになります。
2023年度から始まって、今年で2年目となるのですが、地域移行が進んでいる背景としては、前半でも触れましたように、
1つ目、先生の稼働時間を減らして、少しでも教材研究ですとか、プライベートの時間を確保すること。
2つ目、少子化に伴う団体協議のチーム編成が難しい学校も出ているため。
3つ目、プロの専門的指導による技術向上などがあります。
全体で200名から300名、あるいは100名以下という学校もあると推測できますので、
そうなってしまうと、仮に野球がしたい、サッカーがしたいとなっても、人数が集まらなくてできないということも挙げられますね。
地域移行に伴うデメリットとしては、1つ目、地域の受け皿問題があります。
仮に地域へと移行した際、その地域に適切な指導者ですとか、練習場所がない場合、結局やりたいスポーツができないという状況も出てきます。
2つ目、保護者の負担が増加する。
学校内であれば、校庭や俳句館があったり、指導代金も基本的には支払わなくて済みましたが、
地域の外部機関に任せるとなりますと、月の会費ですとか、遠征費などが発生してきます。
家庭の経済状況によっては、やりたいスポーツができなくなる、そんな可能性も出てきます。
3つ目、指導の加熱化というところでいくと、地域に任せていくことで、その環境によっては指導が加熱化してしまい、
気づけば勝利市場主義のような雰囲気になる可能性も出てきます。
ただ、現時点でもそういった価値観で苦しんで困ってしまっている人もいるので、
これは地域移行だけが全てではないと思います。
そんな中で海外の部活事情を見てみますと、学校が運営したいとなって部活を行っている国は、
日本に加えて中国、韓国、台湾、フィリピンのみとなります。
中国では一部のアスリートのみ育成する側面が強いので、早期から競争を促して優秀な人材をどんどん排出していく中国っぽいなと思いました。
アメリカの部活ですと、学校型と地域型の両方兼ね備えていまして、多くの部活がシーズン制を採用しています。
シーズン制とは、季節に応じて行えるスポーツが決まっており、各季節ごとに異なる部活動に取り組んでいきます。
春から夏シーズン、夏から冬シーズン、冬から春シーズンのように、1年あたり2つから4つのシーズンに分けて実施することが多いです。
中学校よりも高校の方が力を入れていて、部活動の目的としては競技力の向上にあります。
また、誰でも受け入れる制度を取っているチームもあれば、トライアウトで即戦力を求める場合もあります。
部活動の地域移行
働き方で例えるのであれば、個人事業主っぽいなと思いましたね。
自分の実力ですとか、できることを伸ばした上で即席のチームで戦っていくスタイルだなと思いました。
個人的には、ドラフト制度を除いたシーズン制というのはいいなと思いまして、
例えば、夏から冬までは陸上の長距離や駅伝をやって、駅伝シーズンが終わったらバスケとかバレーをするなどですね。
複数の種目を経験しておくことで、いろいろな筋肉を鍛えることができたり、人間関係も広がっていくような気がしましたね。
ちょっとだけ余談を挟むのですが、実家の福井に帰ってきてから約1ヶ月くらい経ったのですが、
10年以上ぶりに地域のソフトバレーボールに、週に1回から2回参加してるんですよね。
四方衰退と言われていたり、人間関係が疎遠になったりしていると言われているのですが、
そこに参加していると、むしろそれに関しては逆なのかなと思っちゃうくらい、結構白熱してますね。
自分が参加しているチームは50代の方が多いのですが、中には中学校2年生の男の子や20代前半の男の子もいまして、なかなかいい試合してます。
バレーボールが終わった後は、走った時とは違う筋肉の部位が筋肉痛で悲鳴を上げております。
マジでソフトバレー終わった後の右太ももの内転筋が異常に痛いです。
話を戻しますと、諸外国と比較した上で、日本の部活動の位置づけはどこにあるのか確認してみたところ、
人間形成や一般生徒の教育活動に重点を置いています。
ですので、中学校に入ったら多くの生徒が部活に入って、先輩後輩の上下関係ですとか、学力以外のところを伸ばしていくのかなと。
それが前年度から続いている地域行為と移っていくことで、先輩後輩の関係はちょっと緩くなりつつも、
普段家や学校では関わらない大人の人と関わることができるので、そういった人からいろいろと学べるのかなと思います。
私のラジオでたびたび話をしています、元リクルートで民間発の校長先生になった藤原和弘さんは、
生徒から見た時に、親や学校の先生との関係が縦の関係、同級生が横の関係、
そして地域の人との関係が斜めの関係だと説明していまして、この斜めの関係は一見すると緩い関係なのですが、
いざという時に相談に乗ってもらえたり、アドバイスをしてもらえたりします。
そういった関係が育めることで、学校の部活の目的としている人間形成につながっていくのかなと、
私は今回このトピックを取り上げて改めて思いましたね。
オーディオジャパン、あなたと一緒に日本を学ぶエンディングの時間となりました。
AI時代のアンラーニング
今週紹介する本はですね、孫大蔵さんの冒険の書、AI時代のアンラーニングです。
あの孫正義さんの弟さんですね。
著書が発売されたのは、2023年3月と今から約1年くらい前で、たまたま書店で見つけました。
本の表紙がとても良くて、発売当初に一目惚れで買いましたね。
中身としては、起業家の孫大蔵さんが日本の学校について考えるようになった際、
時代は刻々と変化しているのに、どうして学校だけ40年前と今とでそんなに変わらないのか、
そこから派生して、学校の歴史は能力とは何かなどなど、
大蔵さんがどんな問いを立てたのか、どんなことを探求したのかなど、思考のプロセスが記載されています。
ただですね、300ページ以上ありますので、発売して途中まで読んで、その後は積読状態になっていたんですよね。
今回の日本の部活について話をしていく中で、やっぱり誰しもが思う、
学校って何のためにある?それについて考えるのに良いきっかけになりそうと思いまして、採読しました。
著書の中で印象に残った箇所としては、評価に変わる指標としてアプリシエイトすることだ、そこが印象に残りましたね。
学校における評価と聞きますと、学校のテストの点数や運動ができるできないなどが挙げられますが、
こういった能力というのは本当は目に見えるものではありません。
それぞれのルールの中で決められたものに沿って、とりあえず定量化されているものになります。
この能力にとらわれてしまうと、能力を高めることで良い結果が出る可能性が高まり、だったら行動してみようかなと、そういったマインドになってしまいます。
このように、実際には存在しないものが存在すると信じることを信仰と言い表すことができまして、例えば能力信仰なんかがありますね。
ただ、あの人は能力が高いと評価されるのは、行動してたまたま良い結果が出たからであり、
その順番を間違えて、今お伝えした能力信仰にとらわれてしまうと、チャレンジすることに臆したり、行きづらくなったりすると思うんですよね。
そこで新しい指標になるのが、今述べましたアプリシエイトすることです。
アプリシエイトとは、鑑賞する、感謝するという意味がありまして、鑑賞するに関しては、
例えば絵を鑑賞する時のように、何かに触れてそこから湧き上がった感情とその感情が生まれるプロセスを大事にしていきます。
このアプリシエイトという概念を持つことで、自分の取り組みに対してアプリシエイトされたり、反対に他者の取り組みをアプリシエイトして味わったりすることができます。
昨今ですと、探求授業なんかが該当するかなと思います。
このアプリシエイトというのは、もともとアプリシエイトというように英語から知っていたのですが、
アプリシエイトされる関係性を持つことで、その人の能力ではなく、自制に対して尊敬や感謝を持ち、結果的に新たな挑戦を促すかもしれないなと感じましたね。
ぜひ気になった方は概要欄にURLを掲載していますので、手に取って読んでいただけたらなと思います。
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最後まで聞いていただきありがとうございました。
お相手は、パーソナリティの新井大輝でした。
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