日常の中の哲学
たこ焼き・死刑制度・洗濯物。 商店街の端っこに小さなたこ焼き屋がある。
いつも無口な親父が黙々と焼いている。 ある日、中学生のカズキが、死刑制度って必要やと思う、と親父に聞いた。
親父は手を止めず、 うーん
人の命の重さって、そんな簡単に決められるもんちゃうな、と呟いた。 その晩、カズキは家で母ちゃんに叱られた。
洗濯物、また取り込んでへんやろ。 カズキはむすっとして、
命ほど重くないやろ、と口応えした。 翌朝、たこ焼き屋に行くと、親父がポツリ、
小さなことから守らな。 でかいものも守られへんで。
そう言って渡されたたこ焼きは、 いつもよりちょっと焦げてたけど、優しい味がした。
カズキはその日、洗濯物を黙って取り込んだ。 命の話も、たこ焼きの味も、
心にじんわり残った。
