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スピーカー 1
まさにその通りです。報告書の中に福島県板市のみんなの広場という、不登校の子どもたちを支援するフリースクールの事例があるんですけど、これが非常に象徴的なんですよ。
スピーカー 2
ほう。どんな状況だったんですか。
スピーカー 1
設立当初、なんと理事長が一人で、1日200キロの送迎から現場の子どもの対応まで全てをこなしていたんです。
スピーカー 2
え、1日200キロですか。それって運送業のドライバー並みですよね。
スピーカー 1
ええ、本当に。
スピーカー 2
そこに加えて子どもたちのケアまでやっていたら、いつ倒れてもおかしくないじゃないですか。
なんかスタートアップ企業の創業者が、この仕事は自分にしかできないって全てを抱え込んで、最終的に過労で倒れてしまうケースと全く同じ構造に見えますね。
スピーカー 1
ああ、まさにその通りです。発達に障害のあるお子さんもいる中で、もし緊急事態が起きたらどうするのかと、理事長が倒れたらその瞬間に組織が終わってしまう、非常に脆弱な状態でした。
スピーカー 2
それは恐ろしいですね。
スピーカー 1
そこで彼らは外部の支援を受けて、まず女性スタッフを1名雇用したんです。
なるほど。
これにより女子へのきめ細かな対応が可能になっただけでなく、理事長が送迎や現場から少し離れて、組織運営に時間を割けるようになったんですね。
スピーカー 2
それは大きな一歩ですね。でも、人を雇うということは当然お給料を払わなきゃいけないじゃないですか。
女性金とかで一時的にお金が入ったとしても、それってずっと続くわけじゃないですし、どうやってそのスタッフを継続して雇い続ける資金を確保したんですか?
スピーカー 1
彼らは持続可能な財源を確保するために、利用料の値上げに踏み切ったんです。
えっ、ちょっと待ってください。不登校の子どもを支援するフリースクールで値上げですか?
はい、値上げです。
スピーカー 2
今の時代、経済的に余裕のない家庭も多いはずですよね。利用者が、じゃあもう行けませんって離れてしまう危険性はなかったんでしょうか。本来の支援の目的と矛盾するような気がするんですが。
スピーカー 1
まあ、普通はそう考えますよね。でも、ここで非常に興味深いのはですね。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
彼らがその値上げをどうやって実現したかというアプローチが鍵なんです。彼らは単に明日から値上げしますと通達したわけではないんです。
スピーカー 2
と言いますと?
組織の収支決算、つまり帳簿の裏側まで全てをさらけ出して、なぜこの価格にしないと施設が存続できないのかを3ヶ月という猶予期間を設けて精神整備説明したんですよ。
スピーカー 2
つまり、自分たちの台所事情を隠さずにオープンにしたと。
スピーカー 1
ええ。
スピーカー 2
でも、それだけでじゃあ5割増しで払いますとはならないような気がするんですが。
もちろん、単に数字を見せただけじゃありません。この透明性の背後にある心理メカニズムが重要なんですよ。
スピーカー 2
心理メカニズム?
スピーカー 1
はい。利用者である保護者からすれば、料金が安くてもいつ潰れるかわからない綱渡りの施設に子どもを預けるのって非常に不安ですよね。
スピーカー 2
ああ、確かに。明日なくなるかもしれない場所には預けたくないですね。
スピーカー 1
ですよね。それよりも自分たちの抱える現状のコストとか経営状態を正直に開示して、適正価格をいただければ長期的かつ安定的にこの場所を守れますって約束してくれる施設の方が結果的に子どものためになるんです。
スピーカー 2
なるほど。
スピーカー 1
そのなぜという部分を丁寧に共有したことで、保護者たちとの信頼関係が逆に強固になって、結果として全員の理解を得て収入が5割アップしたんです。
スピーカー 2
安さよりも存続の確実性と信頼を選んだわけですね。すごいなあ。
スピーカー 1
さらに彼らは理事長の手が空いた時間を活用して、助成金の申請も積極化させました。専門用語を避けた誰にでも分かりやすい申請書を書くことで、6件中5件を獲得して、送迎用の車両まで手に入れているんです。
スピーカー 2
それは素晴らしいですね。個人の自己犠牲に依存するフェーズからシステムとして機能する組織への見事な脱皮ですね。
スピーカー 1
はい。
スピーカー 2
ただそこで新たな疑問が湧いてくるんですが。
スピーカー 1
何でしょう?
スピーカー 2
理事長が事務作業に専念できるようになって初期の機器は出したとしますよね。
でも新しく車を維持したりスタッフの人数を増やしたりしていくと、今度は毎月必ずかかってくる固定費が跳ね上がりますよね。
スピーカー 1
そうなりますね。
スピーカー 2
助成金に頼らず日常的な活動を支えるお金をどうやって毎月稼ぎ続けるんでしょうか。
スピーカー 1
そこが次の大きなハードルなんですよ。ここからが本当に面白いところなんですが。
スピーカー 2
はい。教えてください。
スピーカー 1
交流市で放課後児童クラブ、いわゆる学童保育ですね。これを運営するココネットマムという団体がまさにその壁に直面しました。
スピーカー 2
学童保育ですね。
スピーカー 1
新しい拠点を確保して定員を増やした結果、毎月45万円の事業収入を自力で生み出す必要に迫られたんです。
スピーカー 2
45万円ですか。学童保育で毎月45万円の純粋な事業収入を利用料以外で稼ぎ出すってかなりハードルが高いですよね。
スピーカー 1
そうなんです。で、どうやって解決したかというと、ここで重要なのは代表が一人で悩まなかったことなんです。
12名のスタッフ全員でワークショップを開いて収益事業のアイディアを出し合いました。リユースコーナーを作ろうとか、オリジナル商品を販売しようとか。
スピーカー 2
みんなで考えたんですね。
スピーカー 1
はい。その中でスタッフの特技を活かしたお菓子作りなどのサロンを試験的に実施してみたんです。
スピーカー 2
なるほど。お菓子作り教室を開いてその参加費で稼ごうとしたわけですね。
スピーカー 1
ところが実際にサロンをやってみて、彼らはある重要な事実に気づきました。
スピーカー 2
何でしょう。
お菓子作りサロン単体では大した利益が出なかったんです。
スピーカー 2
え、ダメだったんですか。
スピーカー 1
ええ。しかし彼らはサロンを辞めませんでした。なぜだと思いますか。
スピーカー 2
えっと、利益が出ないのに続けたんですか。
うーん、あ、もしかしてサロンに来たお母さんたちに本業の学童放育を宣伝したとか。
スピーカー 1
その通りです。彼らは自分たちの真の強みはあくまで児童クラブや育児サービスの運営にあると再認識したんです。
スピーカー 2
なるほど、なるほど。
スピーカー 1
だから、サロンは直接的な収益源にするのではなく、
そこにお菓子作りの楽しさで惹かれてやってきたお母さんたちに、
本丸びある児童クラブを知ってもらうための強力なマーケティング手段として位置づけたんですよ。
スピーカー 2
ああ、なるほど。
これって、街のパン屋さんが生き残るためにコーヒーのテイクアウトを始めたら、
実はコーヒー自体の利益は雀の涙でも、
コーヒーの匂いに惹かれて店に入ってきたお客さんが看板商品の高いパンを買っていくことで経営が安定したという話に似ていますね。
スピーカー 1
全く同じ構造ですね。
これをもう少し広い視点に結びつけてみると、
この戦略の方向修正はあらゆるビジネスにおいて極めて重要だということがわかります。
スピーカー 2
と言いますと、
スピーカー 1
新しいアイディアをただ実行するだけじゃなくて、
その結果を冷静に分析して、
自分たちの本来のコアバリュー、つまり存在意義にどう結びつけるかを考えるということです。
スピーカー 2
なるほど。
スピーカー 1
さらにこの団体が素晴らしかったのは、情報発信の方法なんですよ。
スピーカー 2
情報発信というと、SNSとかですか?
スピーカー 1
はい。彼らにはITの専門家がいなかったんですが、
スタッフ全員で分担して、
Facebookを毎日更新するというルールを作ったんです。
スピーカー 2
毎日ですか?それは大変そうですね。
スピーカー 1
ええ。でも特定の誰か一人に負担を押し付けるのではなく、
全員参加型でアイディアを出して発信を分担したんです。
これによりスタッフ一人一人が、
自分がこの組織を作っているんだという当事者意識を持つようになりました。
スピーカー 2
確かに自分が投稿した記事にいいねがつけば、
単なる雇われスタッフじゃなくて、
運営の主体としてのモチレーションが上がりますよね。
スピーカー 1
そうなんですよ。
スピーカー 2
事業の方向性を見直しただけでなく、
組織の内側の意識まで変えてしまったと。
スピーカー 1
はい。ただ、こうした自主事業でのマネタイズが機能するのは、
スピーカー 1
あくまでサービス自体にある程度の対価を払ってもらえる仕組みがある場合ですよね。
スピーカー 2
確かにそうですね。
世の中にはそもそも完全に無料で開放している施設もありますから。
スピーカー 2
例えば公園とか、誰でもフラッと立ち寄れるような子育て広場ですね。
スピーカー 1
ええ。そういう場所ってそもそもサービスを売って稼ぐという概念が成り立たないじゃないですか。
無料で開放しつつ、スタッフの給料とか家賃を払うなんて、どうやって実現するんですか。
スピーカー 2
そこでお話ししたいのが、栗山市の子育て支援コミュニティプチママンの事例です。
スピーカー 1
プチママン。
スピーカー 2
はい。彼らはいつでも親子が無料で遊べる広場や、半屋内の砂場を運営していました。
事業が拡大するにつれて、家賃やスタッフへの適正な支払いのために、市とが限定されない自由度の高い資金、つまり寄付を集めることが急務になったんです。
スピーカー 1
出ました。寄付。でも正直なところ寄付を物るっていうと、どうしてもお金が足りなくて困っています。
どうか助けてくださいってお願いして回るような、ちょっとネガティブで気まずいイメージがありません。
スピーカー 2
まあわかります。
スピーカー 1
それに支援者に向けてニュースレターを送るとかよく聞きますけど、あれって受け取る側からすると、またお金の無心かってスパムみたいに感じてしまうことありませんか?
スピーカー 2
その感覚は非常によくわかります。実際多くの団体がそのお願い営業の罠に陥ってしまうんですよね。
スピーカー 1
はい。しかしプチママンが成功したのは、ファンドレイジングの本質を完全に理解していたからなんです。
スピーカー 2
本質ですか?
ファンドレイジングの最大の目的は、実はお金を集めることではなく、共感を集めることなんですよ。
スピーカー 2
共感を集める。具体的にどういうことですか?
スピーカー 1
彼らはまず自分たちのビジョンや理念、つまり私たちは社会のどんな課題を解決しようとしているのかというのをスタッフ全員で再確認しました。
そして寄付を単なるお金の無心ではなくて、あなたのご支援があれば、この地域の子育ての孤立という課題を私たちはこういう具体的な方法で解決できますという提案に変えたんです。
スピーカー 2
なるほど。困っているから助けてではなく、私たちと一緒にこの問題を解決しませんかというオファーに変えたということですね。
スピーカー 1
その通りです。広場応援団という産女会員制度を作ったり、クラウドファンディングでキッチンの整備資金90万円をたった2ヶ月で集めたりしたんです。
スピーカー 2
2ヶ月で90万円ですか。すごい。
スピーカー 1
そしてご指摘のあったスパム化してしまうニュースレターの問題ですが。
スピーカー 2
はい、そこ気になります。
スピーカー 1
彼らは寄付者のデータベースを作って、お金が具体的にどう使われて、どんな親子の笑顔を生んだのかを徹底的に報告したんですよ。
スピーカー 2
ああ、なるほど。ただお金をくださいじゃなくて、あなたの投資がこんな社会的価値を生みましたよという報告書になっているから読む側も嬉しいわけですね。
スピーカー 1
ええ。寄付者をお金を出してくれる単なるスポンサーとして扱うのではなくて、社会課題を一緒に解決していくパートナーへと変えたわけです。
スピーカー 2
関係性を育てていくと。
はい。それこそが共感型ファンドレイジングの真髄なんです。
スピーカー 2
面白いですね。サービスを買ってもらうか、共感を買ってもらうかの違いだけで、根本的なマーケティングの考え方は同じだと感じました。
スピーカー 1
そうですね。
スピーカー 2
さて、ここまで来ると組織としてはかなり足腰が強くなってきたように見えますね。
スピーカー 1
ええ、かなり。
スピーカー 2
ただ、寄付とか自主事業だけで、さらに数十年と安定してスケールアップしていくのは限界がある気もするんですが。
スピーカー 1
非常に鋭い視点ですね。つまり、これは一体どういうことなんでしょうか。そこで登場するのが最後の究極の選択肢、公的制度の活用です。
スピーカー 2
公的制度ですか。
スピーカー 1
ええ。震災後、障害のある子どもたちの居場所として、交流サロンヒカリを開設した、「扶養堂2100」という団体の事例を見てみましょう。
スピーカー 2
扶養堂2100。
スピーカー 1
はい。彼らは当初、主に助成金頼みで運営していましたが、より安定した基盤を作るために、国の認可事業である放課後等デイサービス事業への移行を決断しました。
スピーカー 2
国の認可事業になれば、原則として利用料の大部分を国や自治体が負担してくれますよね。
スピーカー 1
そうなんです。
スピーカー 2
経営的にはとてもなく大きな安定基盤になりますね。でも、ちょっと待ってください。
スピーカー 1
はい。
これってどういう事態を引き起こすんでしょうか。国の認可を受けるということは、安定区引き換えに厳しい基準や制限、いわゆるお役所仕事のレッドテープに縛られるということですよね。
スピーカー 1
はい。これはすごく重要な問題を提起していますよね。そこにジレンマがあるわけです。
ですよね。NPOが本来持っている良さって、目の前の困っている人にルールの枠を超えてすぐ手を差し伸べる身軽さとか、自由な精神だと思うんです。
スピーカー 2
実際、国の制度に乗っかったことで、今まで助けられていた人が助けられなくなるような弊害は出なかったんですか。
スピーカー 1
まさにその壁にぶつかったんです。国の制度の枠組みでは、0歳から6歳の未就学児が支援の対象外になってしまうことが判明したんですよ。
スピーカー 2
え、対象外ですか。
スピーカー 1
はい。制度に乗れば、これまで通ってきていた未就学児たちを見捨てなければならない。でも制度に乗らなければ、組織が至近なんで倒れて、全員胸倒れになるかもしれない。
スピーカー 2
それは究極の選択ですね。どう決断したんですか。
スピーカー 1
扶養度2100が出した答えは、その両方を取りに行くことでした。
スピーカー 2
両方、どうやってですか。
スピーカー 1
彼らはまず、国の厳しい基準を満たすために、拠点やスタッフを確保して、放課後等デイサービス事業として認可を受けました。
これにより、組織全体の持続性とサービスの質を強固に担保して、太い収入の柱を作ったんです。
そして同時に、制度からこぼれ落ちてしまうゼロから六歳児への支援については、国の制度とは切り離した独自の自主事業として並行して継続することにしたんですよ。
スピーカー 2
なるほど。公的資金で巨大な缶となる基盤をしっかり確保しつつ、制度の枠に収まりきらない隙間の部分はNPO本来の身軽さを持った独自の事業でカバーする。完全にハイブリッド戦略ですね。
スピーカー 1
そうなんです。彼らはNPOの自由な精神を履き違えなかったんです。
と言いますと?
スピーカー 1
NPOの究極の目的は、制度と反発して自由を着取ることではなくて、対象者である子どもたちに質の高いサービスを継続して届けることです。
スピーカー 2
確かに。
スピーカー 1
その目的を見失わず、使える公的制度はしたたかに使い切って、足りない部分は自分だけで補う。
その冷静な判断が、組織と子どもたちを救ったんです。